2014年3月28日金曜日

日経DUALでの連載スタート

 春の陽気も増してきましたが,いかがお過ごしでしょうか。本日より,日経DUALにて連載が始まりました。「舞田敏彦のデータで読み解くDUALな疑問」です。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2332


 初回は,「児童相談から分かるヤバい年齢」としました。育児には「楽」あれば「苦」もあり。今は可愛いわが子も,やがては荒れ始めるもの。それがいつかを年齢別の児童相談統計から割り出し,子育てへの展望を持っていただけたらと思います。

 これから大よそ3週間スパンで記事が掲載される予定です。子育て中のママさん・パパさんの関心に応えるような記事を書かせていただこうと思っております。

 他の執筆者の方々は,ご自身の豊富な子育て経験や教育実践経験をもとに論を展開されているようですが,私にはそのような財産はありません。でも,子育て・教育に関わる統計データはたくさん貯め込んでいますので,それを開陳しようと考えております。

 個々の生々しい経験や実践から一歩引いた,それよりも高みに立った地点からの(マクロな)俯瞰的な視野。おこがましい言い方ですが,こういう特色を出せたらなと。

 家庭での子育て,学校,受験,子どもの問題行動,さらには就職・結婚など,テーマにバラエティを持たせるつもりでおります。お時間あるときに,よろしければ覗いてみてください。どうぞ,よろしくお願いいたします。

2014年3月26日水曜日

大学入学者の地元占有率

 最近,大学進学に際して「地元志向」が強まっているといわれます。不況のため,遠距離通学や下宿の費用を負担するのがキツイという家庭が増えているのでしょう。大学の学費だけでもバカ高なのに,下宿費用まで上乗せとなると,それは大変です。

 今回は,大学進学の地元志向の強まりを統計で可視化してみようと思います。各県内の大学入学者の中で,自県出身者の割合がどれほどいるかに注目してみましょう。いわゆる,地元占有率というやつです。

 まずは時計の針を20年戻して,1993年春の状況から。この年の大学学部入学者は55.5万人ですが,このうち,入った大学と同じ県内の高校出身者は19.8万人です(文科省『学校基本調査』)。よって地元占有率は,35.8%と算出されます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 2013年春について,この意味の地元占有率を出すと42.3%です。なるほど,各県内の大学入学者の占める地元出身者の比重が高まっていますね。

 では,大学入学者の地元占有率の変化を,都道府県別に観察してみましょう。各県内の大学入学者に占める,自県内の高校出身者の比率です。分子と分母の数値も提示いたします。


 黄色マークは最高値ですが,地理的に閉じた沖縄は地元占有率が高いですね。現在では,県内の大学入学者のうち,8割が地元出身者です。

 この20年間の変化をみると,全国的傾向と同様,地元占有率が増加している県がほとんどです。10ポイント以上増には<の記号をつけましたが,東北や北関東の県で地元志向の高まりが顕著であることが知られます。秋田で地元占有率が下がっているのは,国際教養大学ができたことの影響でしょう。

 ≪がついている長野と静岡は,地元占有率が20ポイント以上増です。私立の長野大学を公立化しようという議論がされているようですが,そうなった場合,この比率はもっと高まることでしょう。

 仕上げとして,上表の地元占有率を地図化しておこうと思います。30%未満,30%台,40%台,および50%以上という4階級を設けて,各県の濃淡をつけてみました。


 地図の色が全体的に濃くなってきています。大学進学の地元志向の高まりが,可視化されていますね。ちなみに,各県の大学進学者のうち,自県内の大学に入った者はどれほどかという「地元進学率」でみても,類似の傾向がみられることを付記しておきます。

 大学進学の地元志向の強まりは,不況による家計逼迫というネガティヴな側面から解釈されがちですが,別に悪いことではないでしょう。人口のアンバランスが緩和される契機にもなり得ます。そういえば,先日発刊の『プレジデントファミリー』誌に,こんなことが書いてありました。

 「高い教育費を払って都会の有名大学に進学し,苛酷な就職戦線で疲弊するよりも,地元の国立大学で安く学び,生まれ育った土地で働くほうが幸せだと考えることは,決して悪いことではない。…日本のさまざまな地域でそうした選択をする学生が増えれば,地域の活性化にもつながっていくだろう」。『プレジデントファミリー』2014年3月18日号,93ページより。
http://www.president.co.jp/family/

 そうだろうと思います。今回みたのは大学進学時の地域移動ですが,願はくは,大学卒業時のそれも知りたいものです。地元の大学に入っても,大学を出たら他県に出ていく人もいます。逆に,た県の大学に行っても,卒業したら地元に帰ってくる人もいます。

 『学校基本調査』において,大卒者の就職先の県別統計をつくっていただけないでしょうか。これがあれば,自県定着率やUターン率なども出せ,先ほどの引用文にあるような,未来展望の具現の度合いを可視化することもできます。

 勝手な注文ですが,ぜひとも検討していただきたい事項です。

2014年3月24日月曜日

無業者の自殺率

 自殺とは「孤立の病」であるといわれます。「人は集団に属さずして,自分自身だけを目的にして生きることはできない」。デュルケムの名言ですが,あらゆる縁から隔絶されている人間の自殺率がべらぼうに高いことはよく知られています。

 縁といっても,血縁・地縁などいろいろありますが,職業生活の比重が増している現代では,職縁,つまり職業集団に属しているかどうかが大きいと思われます。デュルケムも,自殺の防止に際して職業集団の役割を強調していますしね。

 今回は,生産年齢人口の自殺率が,有業か無業かによってどう変異するかをみてみようと思います。こういうデータは,当局の白書等で公表されていないようですので,みなさんの参考になればと存じます。

 まずは分子の自殺者数ですが,厚労省の『人口動態職業・産業別統計』から,2010年度間の自殺者数を有業・無業別に知ることができます。私の属性(30代後半男性)でいうと,有業者の自殺者数は752人,無業者は627人です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/135-1.html

 30代後半の男といえば,ほとんどがバリバリ働いていますが,自殺者では有業者と無業者がほぼ拮抗していますね。それだけ,無業者の自殺率がメチャ高ということでしょう。

 自殺率を出すための分母としては,2010年の総務省『国勢調査』の数値を使いましょう。これによると,同年10月の30代後半男性の有業者(就業者)は421万人,無業者(完全失業者+非労働力人口)は38万人です。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm

 以上の数値から,30代後半の有業男性の自殺率は17.9,無業者の自殺率は164.3と算出されます。ベース10万人あたりの自殺者数です。ほう。無業者の自殺率は有業者の9倍にもなるのですね。

 私は,他の年齢層の数値も出し,それらをつないだ曲線を描いてみました。ジェンダー差もみるため,グラフは男女で分けています。


 自殺率の性差はよく知られていますが,無業者に限るとすさまじいですね。男性の場合,加齢とともにぐんぐん上がり,45~54歳の層では自殺率が200を超えています。就労はもちろん,ローン返済,子どもの高等教育学費負担,親の介護など,さまざまな役割が課せられる層ですが,それだけに,無業者に対する圧力も大きい,ということでしょうか。

 デュルケムが指摘するような,職業集団のはく奪による,自己アイデンティティの喪失という要因も無視できません。女性でも「有業者<無業者」ですが,最近は女性にあっても職業集団が自我の拠り所となる度合いも高まっています。昔に比したら,無業者の相対的苦悩が増しているのではないでしょうか。女性の社会進出の必要は,こういう面からも指摘できます。

 さて,とりわけ男性の中高年層において,無業者の自殺率が高いことを知ったのですが,地域別のデータもみてみましょう。先ほど説明した分子と分母の数値は,都道府県別に得ることもできます。私はこれを使って,30~50代男性の有業者・無業者の自殺率を県別に出してみました。

 下の表は,47都道府県の一覧表です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをつけました。


 どの県でも,有業者より無業者の自殺率が高くなっています。無業者の自殺率のマックスは,首都の東京です。有業者と比した相対倍率も,東京で最も高くなっています(12倍!)。

 赤色は,無業者の自殺率が有業者の10倍を超えるという意味ですが,埼玉,東京,神奈川,富山,大阪,そして奈良というように,多くが都市県です。

 「相対的はく奪」という概念がありますが,生活水準が高い都市部において無業状態に置かれることは,苦痛を増幅させる,ということであると思われます。「豊かさの中の貧困」というやつです。

 そういえば,松本良夫先生の研究でも,生活水準が高い大都市内の相対的に貧しい地区で非行少年の出現率が高いことが明らかにされています。*「最近の東京における少年非行の生態学的構造」『犯罪社会学研究』第3号,1978年。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002779579

 無業者の自殺率が有業者の何倍かの倍率を地図化すると,構造がよりクリアーになります。上表の相対倍率に依拠して,各県を塗り分けてみました。


 色が濃いのは,首都圏,近畿圏,愛知,広島,そして北陸2県です。都市的地域における,無業者の相対的苦悩が見受けられます。「相対的はく奪」感のような文脈要因だけでなく,より直に,各県の雇用斡旋や生活保護等の施策と関連しているかもしれません。

 同じ生活状況に置かれた人間であっても,当人をとりまく文脈(context)によって,自殺へと傾斜する確率は異なる。社会学的な自殺論の存在意義の一つは,この点を目に見える形で明らかにすることであると考えております。

2014年3月20日木曜日

職業別の年収

 保育士不足が深刻化していますが,資格を持ちつつも当該の職に就いていない「潜在保育士」は相当数いるものと見込まれています。

 子育てや介護に忙しいなど,事情はいろいろでしょうが,なり手がつかない最大の理由は「給与が安い」ことだそうです。教員などと同じ専門職であるにもかかわらず,給与が安すぎる。なるほど,確かによく耳にする話です。
http://www.j-cast.com/2013/10/27186948.html

 上記のリンク先記事によると,保育士の年収は315万円だそうですが,最新の官庁統計から計算するとどういう値になるでしょう。厚労省の『賃金構造基本統計』にあたって,目ぼしい職業の年収を割り出してみました。

 最新の2013年版には,一般労働者の2013年6月の月収と,前年(2012)年中の年間賞与等の額が職業別に掲載されています。一般労働者とは,従業員10人以上の事業所に勤務する,短時間労働者以外の労働者です。月収には,残業代等の超過労働手当も含みます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chingin_zenkoku.html

 この2つの数字を使って,6つの職業の年収を推し測ってみました。医師,弁護士,大学教授,高校教員,保育士,そして福祉施設介助員(介護員)です。ジェンダーの影響を除くため,男性に限定します。


 医師,弁護士,大学教授は年収1000万超です。スゴイ。高校教員は710万円。私の知り合いに高校の先生が何人かいますが,結構稼いでいるんだな(全年齢をひっくるめた額ですが)。

 しかし,残りの2つになると,年収が一気に下がります。保育士は323万円,介護員は333万円です。保育士の年収ですが,女性も含めれば,上記のJ-cast記事でいわれている315万円に近くなるでしょう。高校教員の半分以下。同じ専門職であるにもかかわらず,給与が安すぎる。納得です。

 年収の計算の仕方についてご理解いただけたかと存じます。私は同じやり方で,126の職業の年収額を計算してみました。ジェンダー差も気になりますので,男女別の数値も出しました。一覧表を提示することはできないので,視覚的なグラフをみていただきましょう。

 下の図は,横軸に男性,縦軸に女性の推定年収額をとった座標上に,それぞれの職業を位置づけたものです。点線は,126職業の平均値です。斜線は均等線であり,この線よりも下にある場合,「男性>女性」であることを意味します。


 職業別の年収の布置図ですが,どうでしょうか。年収が飛びぬけて高いのは,弁護士,大学教授,医師,航空機操縦士(パイロット)ですね。常識に照らしても頷けます。

 医師やパイロットは,「男性>女性」の性差が大きいですね。逆に弁護士は,女性のほうが高くなっています。高収入の専門職に,こうしたジェンダー差があることは知りませんでした。

 なお弁護士ですが,全体平均でみたらこのように高いのですが,職業内部で収入格差が大きくなっています。「イソ弁」とかいいますしね。この職業の月収分布をとってみると,ワープアに近い収入層も存在します。歯科医師も然り。専門職といっても,内部格差が大きい職業もあるようです。
https://twitter.com/tmaita77/status/446171239174787072

 さて保育士と介護職ですが,図の左下のゾーンにあります。男女とも平均を下回っています。女性の社会進出や少子高齢化が進む中,非常に重要な仕事であるにもかかわらず収入が少ないことに,驚きを禁じ得ません。待遇改善が考えられて然るべきでしょう。

 なお,保育士と介護職の年収の年齢曲線を描くと,下図のようになります。先ほどと同様,10人以上の事業所に勤める一般労働者のデータです。


 これらの職業の多くは女性ですので,女性に限定していますが,年齢を問わず,女性全体の値より低くなっています(保育士の50代後半を除く)。加えて注目されるのは,介護職の場合,加齢に伴う上昇がないことです。むしろ減少の傾向すらみられます。人の入れ替わりが激しいためでしょうか…。

 各職業の収入の規定要素は,当該の職に就くためにどれほど専門的な訓練を受けたか(投資費用)と社会的重要性といいますが,原点に立ち返って,後者の側面をもっと重視すべきではないかと思うのです。

2014年3月18日火曜日

『プレジデントファミリー』5月号に掲載

 本日発売の『プレジデントファミリー』5月号に,拙稿が掲載されております。
http://www.president.co.jp/family/


 大学進学率の格差の問題について書かせていただいています。写真の次の見開きページでは,東大・京大合格者の供給源を分析した図も掲げています。

 これまでの論文やブログで何回か書いたテーマですが,編集の方のアドバイスをいただきながら,一般向けの文章にしてみました。本誌は,書店だけでなくコンビニにも置かれていると思います。ご覧いただければと存じます。

 本誌には,興味深い記事が満載です。冒頭の「お金をかけずに,東大生・京大生を育てた母の秘密」とかも面白い。私的には,岡野雅行さんのインタビュー記事「腕一本で生きるカリスマ職人の教育費のかけ方-100万円やるから,世界を旅してこいや!」がよかった。ぜひ,お手にとってください。

2014年3月16日日曜日

専業主婦率と母親の虐待率の相関

 児童虐待が社会問題化していますが,虐待の加害者の多くは母親です。2012年度間の児童相談所が対応した虐待相談件数でみると,総数66,701件のうち,加害者が実母であるケースは38,224件となっています。率にすると57.3%です(厚労省『福祉行政報告例』)。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/38-1.html

 子どもと接する時間が長いのは母親ですから,当然といえばそうですが,今回は,母親による虐待発生率が環境条件によってどう変わるかを明らかにしてみましょう。

 上記の厚労省資料から,加害者が実母である虐待相談件数を県別に知ることができます。大都市の東京でみると,2012年中の件数は2,452件です。同年10月時点の子ども人口(20歳未満)は202万人。よって,子ども人口1万人あたりの件数は12.1件となります。この値を,母親による虐待発生率をみなしましょう。

 この指標を47都道府県別に計算してみると,最高の大阪(37.1)から最低の鹿児島(1.8)まで,甚だ大きな地域差が観察されます。前者は後者の20倍超です。これは両端ですが,全県の値を地図で表現してみると,下図のようになります。2012年の母親の虐待率マップです。


 5.0刻みで塗り分けてみましたが,首都圏や近畿といった都市部で色が濃くなっています。あとは,中国の中枢県や石川ですか。全体的にみて,大よそ,都市性の度合いと関連しているように思えます。

 都会ほど人間関係が希薄で,母親の育児が孤立しやすいことを思うとさもありなんですが,「都会ほど虐待が多い」というオチでは物足りません。虐待と関連していそうな,各県の母親の生活条件を具体的に表す指標との相関をとってみましょう。

 私が着目したいのは,専業主婦率です。母親が一人家にこもって育児をしている県ほど,虐待が多いのではないかと思われます。この現象を統計で可視化できるでしょうか。

 ここでいう専業主婦率とは,6歳未満の子がいる核家族世帯(母子・父子世帯は含まない)のうち,「夫有業・妻無業」の世帯の比率です。三世代世帯の影響を除くため,核家族世帯に限定します。2012年の総務省『就業構造基本調査』からこの指標を県別に出し,先ほどの虐待発生率との相関をとってみました。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm


 撹乱はありますが,専業主婦率が高い県ほど,母親の虐待率が高い傾向が見受けられます。相関係数は+0.534であり,1%水準で有意です。

 上図の相関は,祖父母と離れて暮らしている核家族世帯の率を介した疑似相関ではないか,という疑いもあります。しかし,6歳未満の子がいる世帯の核家族世帯率との相関を出したところ,係数値は+0.367であり,主婦率との相関よりも小さいのです。

 母親の主婦率と虐待率が因果関係的な面を持っているとしたらどうでしょう。ある方がツイッター上で,「母親が一人,小さい子と24時間接するのはとても危険なことだ」とつぶやいておられました。言い得て妙だと思います。

 虐待の被害者の多くは就学前の乳幼児ですが,この時期の子どもは言語による意思疎通も困難で,なかなか言うことを聞いてくれません。2~4歳頃には,第1次反抗期も迎えます。一人,こうした存在と四六時中向き合うというのは,確かに「危険なこと」なのかもしれません。周囲からのヘルプが得られない場合,なおさらのこと。

 それに,専業主婦は自分の役割を「子育て」に特化しているため,いわゆる「パーフェクトチャイルド願望」が高いのが常です。そうした(高き)理想と現実とのギャップも,虐待発生の素地を準備すると考えられます。

 人間は,一つではなく多様な顔(役割)を持ったほうがいいといわれます。子育てをしている女性も,「母親」だけではなく,職業人や地域人としての顔を備えた方がいいのではないでしょうか。それは男性にもいえることで,職業人だけではなく,父親や地域人としての顔を前面に出さねばなりません。それがないと,自分が手がける仕事に「社会性」が生まれません。営利追求一辺倒に陥りやすくなります。

 私は,専業主婦が悪いなどというのではありません。地域単位の統計から,「専業主婦ほど虐待をしやすい」という行為命題を導くのは早計です。上図の相関は,背後の共通要因を介した疑似相関であることでしょう。おそらく,地域のソーシャルキャピタルの強度といったものだと思います。

 求められるのは,それを可視化する指標を開発ことです。しかし目下,いろいろな指標と虐待率との相関をとったところ,最も強く相関しているのは専業主婦率なので,その事実を提示しておこうと考えた次第です。

2014年3月14日金曜日

理系専攻率の国際比較

 理系人材を増やすことの必要がいわれていますが,わが国では,教育期に理系分野を専攻した者の比率はどれくらいなのでしょう。その国際的な位置は? こういう基本的なことが明らかになっていないように思えます。

 OECDの国際成人学力調査(PIAAC2012)の質問紙調査では,最後に卒業した学校で専攻した学問分野を尋ねています。この設問への回答結果を国別に集計してみましょう。25~34歳の成人男女に焦点を当てます。

 私は,PIAAC2012のローデータを分析して,日本を含む22か国の回答分布を明らかにしました。下の図は,男性の回答分布です。無回答,無効回答は含めていません。
http://www.oecd.org/site/piaac/publicdataandanalysis.htm


 選択肢が9つもあるので図がゴチャゴチャしていますが,日本をみると,一般教養の比重が他国に比して大きいですね。多くが普通科高校の卒業者でしょうが,明瞭な専攻(major)を持たない者が多いのは,日本の特徴のようです(カナダ,エストニアも)。

 しかし,量的に最も多いのは機械工学を専攻した者であり,全体の3割を占めます。これは理系の代表格ですが,自然科学と農学も加えた「理系専攻率」を出すと39.2%,およそ4割です。

 この理系専攻の領分(赤枠)を他国と比べると,日本は少ないですね。最高のスロバキアでは65.5%,その次のチェコでは59.6%が理系専攻者です。いずれも東欧国ですが,社会状況が近似しているお隣の韓国も,わが国より理系専攻率がかなり高くなっています。他の先進国も然りです。

 以上は男性のデータですが,興味が持たれるのは女性です。理系を専攻した女性(リケジョ)の比率はどうなっているのでしょうか。

 横軸に男性,縦軸に女性の理系専攻率をとった座標上に,22か国を位置づけた図をつくってみました。理系専攻率とは,自然科学,機械工学,農学のいずれかを専攻した者の比率です。点線は,22か国の平均値を意味します。


 ほう。日本は,男女とも理系専攻率が最も低い社会であるようです。とくに女性の率はすこぶる低く,わずか7.8%です。お隣の韓国のリケジョ率は27.8%であり,大きく水を開けられています。しかし,韓国がリケジョ大国だとは知らんかった・・・。

 しかし,こういうデータをみると,「女子の脳は男子に比して理系向きにできていない」という生理説を疑いたくなりますねえ。やっぱ社会的なものなんですよ,ホント。

 ひとまず,わが国の国際的な位置が明らかになりましたが,政府がリケジョを躍起になって増やそうとしているのも,分かる気がします。それは大学も同じで,新潟大学の工学部などは,イケメンの写真入りの入学パンフを配布しているそうな。

 しかるに,2012年11月8日の記事でみたように,日本は女子生徒の理系志向そのものが最も低い社会でもあります。このことを汲むと,人生初期の人間形成(社会化)のジェンダー差に,われわれはもっと目を向けねばなりますまい。

 小・中学校の理科教育をみるとどうでしょう。村松泰子教授らが中学校2年生を対象に行った調査によると,理科でよい成績をとることを教師から期待されていると感じている生徒の割合は,女子よりも男子で高いそうです。教えられる内容が男女で異なることはあり得ませんが,こうした「見えざる」期待が存在しないか。

 また家庭において,女児が理系の道に進みたいと口にした時,保護者が歓迎しないような素振りを見せていないか。さらに,小学校の理科専科担当教員や中学校の理科教員の多くは男性ですが,このことが「女子は理系に行くべからず」というような「ジェンダー・メッセージ」となって,生徒に伝わっていないか。こういう疑いも出てきます。

 もともと日本は「ヒト」しか資源のない国ですが,少子高齢化が進行する中,この資本の重要性はますます高まってきます。人口の半分を占める女子の理系タレントが,人為的に潰されるような事態は避けねばなりません。

 今回みたのは成人男女の理系専攻率ですが,この国際統計は,わが国の教育への問題提起を多分に含んでいるものと私は考えます。