2017年8月3日木曜日

『データで読む 教育の論点』が出ました

 拙著『データで読む 教育の論点』が晶文社より発刊されました。アマゾンでの発売が開始され,全国の大きな書店には置かれている模様です。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

 表紙写真と中身ちょい出しの写真を載せておきましょう。編集担当のA氏がツイッターで発信されているものを拝借いたします。
https://twitter.com/andorakia


 タイトルの『教育の論点』とはよく言ったものですが,本ブログの一部書籍化です。1)子ども,2)家庭,3)学校,4)若者,5)社会,という5つの柱を立て,72本の記事を精選し,一冊の書物として筋が通るよう配列し,文章やデータもリファインしています。

 印象やフィーリングで語られている教育事象を,データを使ってできるだけ丁寧に「見える化」しています。各地の議員さんから「議会質問に使いたい」というリクエストをいただいた,保育所在所率と児童虐待の相関図(102ページ)なども載せています。

 盛られている内容の詳細は,冒頭の出版社HPをご覧ください。教育関係者の方々の実務に寄与する部分もあるかと存じます。

 難しい理屈や数式を並べ立てた本ではありませんので,教育や社会に関心を持つ一般の方々に読んでいただけたらと思っております。統計がたくさん載っていますが,使われているのは四則演算だけです。中学校レベルの数学力で十分理解できる内容です。ひるむなかれ。

 本書に載っているデータは,公開されている公的統計資料から作成したものです。計算のプロセスについても仔細に説明していますので,読者はその気になれば,データの再現可能性を追試することができます。億劫な作業かもしれませんが,それをやってくれる人が出てくることを願います。公的統計を使いこなせる人が増えるからです。大学の調査統計法の作業課題としても,いいのではないでしょうか。

 社会現象を数で可視化する技法の手引きにもなるかと思いますが,私のやり方はかなり「自己流」です。したがって,反面教師として使っていただく用途もあろうかと思います。

 書店に平積みになっているという,うれしい情報提供もあります。夏休みの読み物として,多くの人に手にとっていただけたらと願っております。
https://twitter.com/kumiko_a_o/status/893065367848865792

2017年8月2日水曜日

治安と未婚単身女性比の相関

 ソロ社会研究者の荒川和久氏が,興味深いデータをツイッターで発信されています。
https://twitter.com/wildriverpeace/status/891639494104842241

 40代の単身未婚者数の男女差を都内23区別に出したところ,男性は北東の下町ゾーンが多いのに対し,女性は世田谷や目黒など,家賃が高いエリアで多いのだそうです。これをもって,「男女未婚者の貧富の差」が出ていると指摘されています。

 なるほど。男性は未婚者ほど年収が低いが,女性はその逆であることは,私も繰り返しデータを提示してきました。確かに,「男女未婚者の貧富の差」の表れともいえましょう。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/09/post-3882.php

 荒川氏は,2015年の『国勢調査』からデータを採取されたそうです。私も同じ資料にあたって,データを揃えてみました。年齢は一段下がって,35~44歳のアラフォー年代にすることにしましょう。

 以下に掲げるのは,都内23区別の35~44歳の未婚単身者数です。正確にいうと,単独世帯の世帯主の数です。下記リンク先の表6から得ることができます。ピンク色のDBボタンを使って,「地域×性別×年齢×配偶関係×世帯類型」のクロス表を作るとよいでしょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001077451&cycleCode=0&requestSender=search


 男性が多いか女性が多いかは,区によって違っています。右端に「女性/男性」の倍率を出しましたが,最も高いのは目黒区で1.39倍です。この区のアラフォー未婚単身者は,女性のほうがかなり多くなっています。

 その逆は足立区で,同じ倍率は0.49倍です。男性が女性の倍以上となっています(男性5739人,女性2812人)。

 赤字は,この倍率が1.0を超える区,つまり女性のほうが多い区を指します。中央区,港区,文京区,目黒区,世田谷区,渋谷区,そして杉並区ですか。なるほど。男女の対比でみる限り,荒川氏の言われるように,家賃(所得水準)が高い区で,未婚の単身女性は多いように見受けられます。

 反対の特性を持つ城東エリア(足立,葛飾,江戸川)では,この倍率は0.6に達しません。アラフォーの未婚単身者は,女性より男性がうんと多くなっています。

 以上は荒川氏のデータの「再現」ですが,上記のジェンダー倍率(未婚単身女性の相対量)は,地域の治安とも相関しているでしょう。独り身の女性の場合,治安を考慮して居住地を選択するといいますし。

 私は前に,都内23区別の犯罪発生率を計算したことがあります。2015年中の刑法犯認知件数を,各区の昼間人口で除した値です。都内23区は通勤・通学の移動が激しいので,定住人口に流入人口を加えた昼間人口をベースにするほうがよいでしょう。計算方法の詳細は,下記リンク先の記事をお読みください。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/05/23.html

 アラフォーの未婚単身者の「女性/男性」倍率と,2015年の犯罪発生率の相関をとると,下図のようになります。


 犯罪発生率と「女性/男性」倍率の間には,マイナスの相関関係が観察されます。相関係数は-0.6164であり,1%水準で有意です。

 犯罪発生率が低い区は,未婚の単身女性が多く住まう傾向があると。予想はしていましたが,治安との相関関係は出てくるものですね。完全にきれいな傾向ではないのですので,オートロック物件の比重など,他にもファクターはあるでしょうけど。

 都内23区の統計をいじってみると,いろいろな側面の地域分化(regional segregation)を浮かび上がらせることができます。

2017年7月31日月曜日

2017年7月の教員不祥事報道

 いやあ,暑くなりました。快晴の日が続きますが,昼食後の散歩は暑くてできません。7月も今日で終わりです。今月,私がネット上で把握した教員不祥事報道は40件です。

 赤字は珍事案。ツイッターでの問題投稿,掲示板への書き込みでわいせつ行為発覚とありますが,SNSをやる先生も多いかと思います。最近の教員採用試験では,不祥事防止の問題がよく出るのですが(大阪は毎年),ネットルールの問題も出るようになるかもしれません。

 埼玉の小学校教諭の「窓から飛び降りろ」発言。私の頃は,「ここ(4階)から突き落としてやろうか」とか「簀巻きにして屋上から放り投げるぞ」とか,ポンポン言われたことを思い出します。世代別に,私が聞いた「先生のトンデモ発言集」みたいのを編集して本にしてほしい…。

 アンケートの書き直し強要事案(兵庫,小学校)。今は評価の時代ですが,児童・生徒のアンケートもやるんですね。指導材料にするため実名制にするのでしょうが,自身の指導改善のための事情聞き取りならいいですが,回答改竄は論外。

 明日から8月,いよいよ夏本場です。ここ横須賀の夏は,前住の多摩市よりも暑そう。でも海辺ですので,心地よい海風が吹き,嫌な暑さではないです。

 今週の木曜(8/3),新刊『データで読む 教育の論点』が晶文社より刊行されます。夏休みの読み物として,広く一般の方々に読んでいただけることを願っております。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

<2017年7月の教員不祥事報道>
<忘れ物>多い児童の名前ランキング掲示 教諭に注意 長野
 (7/1,毎日,長野,小,女,50代)
無免許運転の教諭 停職6か月(7/4,日テレ,大分,男,58)
高校教諭が下半身映った動画投稿(7/3,京都新聞,京都,高,男,31)
県立高校教師が書類を不法投棄し 書類送検
 (7/3,朝日放送,滋賀,高,男,31)
強制わいせつ:小学校臨時講師を再逮捕(7/5,毎日,愛知,小,男,29)
懲戒免職:覚醒剤譲受で逮捕 小学教諭を処分
 (7/7,毎日,鹿児島,小,男,35)
23歳女性の服に手入れ胸触る 37歳保育教諭を強制わいせつで逮捕
 (7/9,産経,滋賀,幼,男,37)
「援交募集」女子生徒なりすまし投稿容疑 高校教諭逮捕
 (7/10,朝日,滋賀,高,男,35)
わいせつ行為 中学講師を免職処分 岡山市教委
 (7/11,山陽新聞,岡山,中,男,29)
「首相殺してもらうしかない」ツイッターで高校教諭が投稿
 (7/12,神戸新聞,兵庫,高,男,60)
児童の成績一覧表など挟んだノート紛失(7/13,産経,大坂,小,男,20代)
公然わいせつの男性講師を「停職1か月」の懲戒処分
 (7/13,岩手放送,岩手,高,男,20代)
女性はね死亡させる…県教委が女性教諭処分 男性教諭も別事故で処分
 (7/14,埼玉新聞,埼玉,小女57,高男33)
教師が小4児童に「窓から飛び降りろ」(7/17,日テレ,埼玉,小,男,40代)
中学校男性教師がサバイバルナイフ“所持”で逮捕
 (7/19,テレ朝,青森,中,男,49)
高校教諭が個別指導時に女子生徒の胸触る(7/19,サンスポ,千葉,高,男,26)
2歳娘にかみつく、虐待か=傷害容疑で教員逮捕
 (7/19,時事通信,大阪,小,男,22)
思い込みで無実の児童を平手打ち 宮古島の小学校教諭
 (7/19,沖縄タイムス,沖縄,小,男,50代)
女子中学生に淫行容疑で小学校教諭逮捕(7/20,産経,広島,小,男,26)
酒気帯び運転で男性教諭を懲戒免職処分(7/20,日テレ,長野,高,男,47)
理科実験で爆音、18人病院へ 教頭が水素の量ミスか
 (7/20,神戸新聞,兵庫,小,男,51)
教諭2人を懲戒免職 盗撮、路上で女性の体を触る
 (7/21,日刊スポーツ,山口,盗撮:小男52,わいせつ:特男24)
授業中に児童の骨折る 担任の講師を懲戒処分(7/21,朝日,福岡,小,男,30)
県立高女子サッカー部の顧問 部員名簿なくす
 (7/21,毎日放送,滋賀,高,男,48)
教諭がアンケの書き直し強要か(7/22,神戸新聞,兵庫,小,男,30代)
飲酒運転疑いで教諭逮捕 群馬・渋川(7/22,産経,群馬,高,62)
懲戒処分:免停講習後当日に運転の男性教諭(7/24,毎日,大分,男,58)
女子高生スカート内撮影で逮捕の小学校講師を免職 
 (7/24,日刊スポーツ,奈良,小,男,23)
盗撮で伊勢市の中学教諭を懲戒免職(7/25,CBCテレビ,三重,中,男,34)
男児にわいせつ 臨時講師を逮捕(7/25,CBCテレビ,愛知,小,男,29)
サンダルにカメラで盗撮の中学講師を免職(7/26,産経,福岡,中,男,46)
「事故に遭えばいい」 教諭が児童たちに発言
 (7/26,西日本新聞,熊本,小,男,50代)
住居侵入の疑い 今治西高教諭の男を逮捕(7/26,愛媛新聞,愛媛,高,男,42)
相模原市立中教諭を逮捕=同僚の財布窃盗容疑
 (7/27,時事通信,神奈川,中,男,51)
「一緒に飲みませんか」電車内で男性に痴漢(7/27,産経,東京,高,男,53)
女性教諭1200万円着服で免職 夫にせがまれ 親の医療費のはずが競馬代に
 (7/28,産経,大阪,高,女,29)
小学校教頭、女性下着持ち帰り免職「楽しみになっていた」
 (7/28,サンスポ,長崎,小,男,59)
教諭懲戒処分:女児に手紙「恋愛感情が抑えられなかった」
 (7/28,毎日,埼玉,小,男,28)
体罰で中学教諭を停職3カ月 奈良県教委(7/31,京都新聞,奈良,中,男,53)
女子生徒と淫行容疑、中学校講師を逮捕 書き込みで発覚
 (7/31,産経,大阪,中,男,24)

2017年7月29日土曜日

卑怯者よ

 先ほど更新の記事「相関と因果について」に,以下のコメントが書き込まれました。公開拒否にしてますが,スクショを掲げます。


 画像が見にくいですので,転写しましょう。

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舞田先生,いつもブログを楽しみにしています。
また,新刊の発売,おめでとうございます。

さて,1ファンとして,1つ懸念がございます。

舞田先生は,プレジデント社やコンサルの方などについて,ブログで言及していらっしゃいますが,あのような記事は早めに削除したほうがよいのではないでしょうか。

と言いますのも,8月3日になれば,誰でも,アマゾンで新刊のレビューを書くことが出来てしまいます。

舞田先生のお気持ちは分かりますが,できるだけ敵を減らしておいた方が,アマゾンレビューに変なことを書き込まれなくてよいのではないか,と思った次第です。

特に,最近,下記のブログ記事が,少しずつ拡散しているようでございます。
★匿名の誹謗中傷ブログのURL(転写者)

↑のような記事が,アマゾンレビューに掲載されてしまいますと,先生の名誉が地に落ちてしまうのではないか,と危惧いたしております。

そのような理由で,老婆心ながら,先生にとって,まずいことにならないよう,コメントさせて頂いた次第です。

それでは,暑い日が続きますが,お体ご自愛くださいませ。

かしこ
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 匿名ですが,発信者が誰かは容易に推測されます。末尾に「かしこ」とつけて女性を装っていますが,何とも滑稽です。

 いやあ,コンサルさん。例の事件の記事で仕事が減って困っているとはいえ,ここまでやりますか。「当該記事を削除しろ,さもなくばアマゾンに誹謗中傷レビューを書き込む」ですか?

 正論で叶わないとなると,陰(匿名)でコソコソ人を陥れるようなことをする。あなたは,どうしようもない卑怯者ですね。

 あなたには何としても,人様に物を教えるような仕事は退いてもらわないといけません。例の記事は永久に公開することといたします。恥を知れ,卑怯者よ!!

相関と因果について

 つまらないことをベチャベチャ言っている人がいますので,私の考えを示しておきましょう。面倒なので,間もなく出る新刊『データで読む 教育の論点』(晶文社)の一部で替えさせていただきます。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=4364

 コラム「見かけの相関に注意」のゲラのスクショです。改ページしてますので,行間が空いてますが気にしないでください。


 慎重なのは結構ですが,それが過ぎて何も言わない(言えない),というのはつまらないと思います。生煮えでもいいから情報(アウトプット)を出して,議論のタネにしてもらったほうがいい。私は,こういう考えでいます。

 風変わりな発言をして叩かれる著名人がいますが,そういう人に私は敬意を表します(他人への人格攻撃などは論外ですが)。私は,「面白い人」が好きです。

 「舞田はいい加減なデータで社会を惑わす犯罪者だ」と言われたことがありますが,実に光栄です。お礼に,次の言葉を贈りましょう。「犯罪は,社会にとって有益である」(デュルケム『社会学的方法の規準』)。

2017年7月28日金曜日

学歴社会の可視化

 学歴別の年収・労働時間を,一風変わったグラフで表現してみました。ツイッターで発信したところウケているようですので,元データも添えてブログにも載せておきましょう。

 労働者のお給料を学歴別に知れる公的な資料は,厚労省の『賃金構造基本統計』です。最新の2016年調査には,同年6月の月収と,前年(2015年)の年間賞与額が記載されています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 月収(諸手当込)を12倍して年間賞与額を足すことで,年収を推し量れます。この資料には,月の所定内労働時間と超過労働時間も出ていますので,両者の合算を12倍して,年間の労働時間としましょう。

 私の年代(40代前半)の一般労働者について,学歴別の年収と年間労働時間を計算すると,以下のようになります。一般労働者とは,パート等の短時間労働者を除く労働者です。フルタイム労働者に近いとみてよいでしょう。

 10人以上の民間企業に勤務する,一般労働者のデータです。原資料では,学歴は4つの区分になっています。


 バリバリの働き盛りですが,男女とも年収は学歴によって大きく違っています。男性の中卒の年収は449万円ですが,大卒は720万円。女性の中卒と大卒は,倍近くの開きです。学歴社会ニッポン,未だに健在なり。

 性差も大きいですね。男性の高卒(519万円)と女性の大卒(533万円)が同じくらいです。学歴差よりも性差に憤る人がいてもおかしくないでしょう。

 労働時間にも学歴差があります。低学歴ほど長い傾向です。これは知らなかった…。

 高学歴ほど年収が多く,労働時間が短いですので,前者を後者で割った時間給(a/b)は学歴ときれいに比例しています。男性では,大卒であるかどうかで違いが大きくなっています。

 右端は,該当する労働者の推定数です。70年代生まれの私の世代では,中卒はマイノリティです。ただ今ほど大学進学率は高くなかったので,数としては男女とも高卒が最も多くなっています。20代だったら,大卒が最も多い「逆ピラミッド」になっているでしょう。

 さて,上表のデータをグラフにしてみましょう。2次元の平面を駆使して,年収,労働時間,時間給,労働者数の4要素を軒並み表現してみます。


 男女とも低学歴になるほど,労働時間が長く,年収が少ない右下にシフトしてきます。時間給も,男性の中卒は2000円,女性の中卒は1500円を割ります(斜線)。

 アラフォーの学歴格差の可視化ですが,いかがでしょう。高学歴の労働者は生産性が高いのだから,高い給与を得て当然。ベッカー流の人的資本論に基づくコメントがツイッターで多数寄せられましたが,この古典理論を支持する人は今はそう多くないでしょう。

 「大卒なら間違いない,地頭がいいので訓練可能性に富む」。こういう見方をとっている大企業が,人材選抜の(手軽な)シグナルとして学歴を使っているだけのこと。企業が大卒者を好んで雇うのは,彼らが大学で身に付けた知識やスキルに期待してのことではない。訓練可能性を見込んでのこと。こうした「シグナリング理論」が現実を言い当てているように思えます。

 ただ上記のグラフは,学歴格差よりもジェンダー格差を如実に表しているともいえます。同学歴でも,男性と女性のドットの距離が大きい。労働時間を加味した時間給も,男性のほうがずっと多くなっています。諸外国のデータで同じグラフを作ったら,こんなふうになるでしょうか。

 当人の仕事の質(何ができるか)よりも,性や学歴といった属性(何であるか)がモノをいう。近代社会が否定したはずの属性主義が生き長らえることを,われわれは見逃すべきではありません。

2017年7月26日水曜日

強い町田市

 「子どもの転入超過数全国3位,子育てしやすい町田」という記事を見かけました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170725-00000059-minkei-l13

 転入超過数とは,1年間の転入者数から転出者数を差し引いた数で,人口流入の度合いの指標としてよく使われます。町田市は,2016年の15歳未満人口の転入超過数が808人で,全国3位であったとのこと。

 私はこれまで,親年代(25~39歳など)の転入超過数をもとに,「子育てに選ばれる街はどこか?」という主題を考えたことがあります。しかるに,この中には未婚者も含まれますので,事態を読み違える危険もあるでしょう。

 考えてみれば,子ども人口の動きに着眼するのがベストかもしれません。上記の記事に触発され,首都圏(1都3県)の市区町村について,年少人口の転入超過数を拾ってみました。

 資料は,総務省『住民基本台帳人口移動報告』です。最新のデータは2016年のものですが,ちょっと前の2010年との比較もしましょう。もっと前まで遡りたいのですが,年齢別の転入超過数を市区町村レベルで知れるのは,2010年調査からのようです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000000070001

 両年について,1都3県の市区町村の年少人口の転入超過数を採取し,高い順に並べてみました。上位20位までを示すと,以下のようになります。言わずもがな,年少人口とは15歳未満人口のことです。


 子ども人口の流入度を指標とした,「子育てに選ばれる街」の一覧です。ほう,2010年と2016年とも,トップは町田市ではないですか。東京南端のこのエリアは,一貫して強いのですね。

 黄色マークは,両年とも上位10位にランクインしている地域で,安定して子ども人口を吸い寄せていることが知られます。東京の町田と八王子,千葉北西の3エリアです。「母(父)になるなら流山」のフレーズで知られ,駅前保育を展開している流山市も入っています。

 赤字は,両年とも上位20位に入っている地域。黄色マークの最強5エリアには及びませんが,これらも安定して子育てに選ばれている地域といえましょう。さいたま市や,神奈川の茅ヶ崎市が顔を見せています。

 しかし,町田市がこんなに強いとは知りませんでした,一時,ヤンキーが多いとか,都内で少年非行の発生率が最も高いとか言われたことがありますが,ここまで安定して子ども人口を引き寄せているとは。

 冒頭の記事によると,駅チカの子どもセンター,子育て支援サイトできめ細やかな情報発信をし,今年10月には駅から保育所までの送迎サービスも開始するとのことです。来年には小田急線も複々線化し,都心へのアクセスがさらに快適になります。「伸びしろ」も多く残しています。

 1都3県の全市区町村の転入超過数を拾いましたので,それを地図にしておきましょう。最新の2016年のマップです。4つの階級を設け,242の市区町村を塗り分けてみました。


 白色は転入超過数がマイナス,つまり子どもが出て行っているエリアです。東京の都心は,ほぼ真っ白ではないですか。それを濃い色が円状に取り巻いていて,小学校の社会科で習った「ドーナツ化現象」のような模様になっています。

 都心を取り巻く濃い色は,子育てに選ばれる地域で,千葉の北西部,さいたま市,町田・八王子,そして湘南エリアが該当します。

 親年代の転入超過数のマップは都心が濃い色になり,「子育ても都心回帰」という印象を与えるのですが,この中には未婚者が含まれるので,誤解が生じる恐れがあります。子ども人口の動きに着眼した,上記のマップのほうがベターでしょうね。

 冒頭の記事に接したおかげで,認識を改めることができました。今は,ネットでいろいろな記事を読めますので,とてもありがたい。それを参考に,自分が作ったデータを絶えず精緻化させていこうと思っています。