2017年11月5日日曜日

年齢別の在籍学校

 年齢が分かったら,その人がどのライフステージ(教育期,仕事期,引退期…)にいるか見当がついてしまう。「エイジ」と「ステージ」が硬直的に結びついた社会。

 変動が速く,かつ人生100年の時代にあっては,こういう社会の仕組みは変えないといけない。リンダ・グラットン教授の名著『ライフ・シフト』で言われていることですが,その典型は日本でしょう。

 学校に通っている子ども・若者をとっても,年齢から当人の在籍学校は容易に言い当てることができます。7歳なら小学校,14歳なら中学校,17歳なら高校,21歳なら大学というように。

 その様は統計でも分かります。2010年の『国勢調査』では,何らかの学校に通っている通学者の在籍学校を,年齢別に集計しています。0~22歳の内訳を帯グラフにすると,以下のようになります。数値の出所は,下記リンク先の表13-1です。


 6歳,15歳,18歳といった節目の年齢を除くと,各年齢の在籍学校はほぼ一様に決まっています。7~14際の子どもは,ほぼ100%が小・中学生です。

 学校教育法で,この年齢の子ども(学齢児童・生徒)は,小・中学校への就学を義務付けられていますので,当然といえばそうなのですが。

 しかるに,諸外国ではそうではありません。内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)では,13~29歳の生徒・学生の在籍学校を調べています。いま,13~15歳の生徒を取り出し,在籍学校の内訳を国ごとに比べてみると,下図のようになります。ローデータを加工して,独自に作成したグラフです。


 日本ではほぼ100%が中学ないしは高校ですが,諸外国はさにあらず。韓国では7.813人に1人),アメリカでは4.1%(24人に1人)が大学・大学院に籍を置いています。優れた才能を持つ者は,年齢に関係なく大学に入学できる「飛び級」の制度が普及しているのでしょう。

 日本でも飛び級の制度はありまが,「高校に一定年数以上在籍したこと」という条件なので(学校教育法90条),10代前半の青少年が大学に入ることはできません。義務教育段階では,落第もなければ飛び級もない「年齢主義」になっています。*落第の国際比較は下記記事。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/12/2012.html

 しかるに,14歳で数学検定1級をとったとか,小学校低学年で優れた文芸作品を発表したとか,幼くして才能を発揮する子どももいます。それを伸ばすことも求められるでしょう。
 
 教育,とりわけ義務教育の目的は「調和のとれた人間形成」ですが,金太郎飴のごとく,均質な「バランスのとれた」人間を育てる必要はありますまい。斬新なイノベーションが重要となる21世紀では,バランスに欠けていても,特定分野の才能がずば抜けた逸材がもっと出てきてもいい。

 堀江貴文さんが「バランスのとれた人間はつまらない」と言われていますが,言い得て妙だと思います。皆が同じ時間に出社し,同じ服を着て,同じやり方でモノを大量生産する「20世紀型」の工業社会は終わっています。

 日本の労働生産性の低さは,年齢による役割規範が強すぎること,年齢によって才能を抑えつける風潮があることとも関連しているでしょう。

 何かにつけて,わが国では年齢が問われるのですが,悪しき年齢主義を打破するには,履歴書の年齢記入欄を撤廃することから始めるのもいいかもしれませんね。履歴書に年齢記入欄を設けること,求人票に「*歳まで」と書き込むなどは,諸外国では差別以外の何物でもありません。

 少子高齢化社会,イノベーション社会では,年齢主義は排除されるべきものです。

2017年11月1日水曜日

2017年10月の教員不祥事報道

 昨日で10月は終わりでした。教員不祥事報道の整理を忘れてましたので,今日やります。先月,私がネット上で把握した不祥事報道は35件です。

 わいせつが多いのは毎月のことですが,酔って書類をなくした,他人の家に上がり込んだなど,酒がらみの事案が目立ちます。これからお酒が入る機会が多くなりますが,飲酒運転も含め,酒がらみの不祥事を起こさぬよう,注意していただきたいものです。

 今年も11月。本当に早いですね。私は来週,また立川病院に入院し,歯根端切除の再手術を受けます。ちょうどいい機会ですので,入院前日にデスクトップパソコンを秋葉原に送り,メモリを現在の8GBから16GBに増やしてもらいましょう。

 これで,PISAのローデータの超大規模ファイル(200MB!)を開いても,動作が不安定化しなくなります。私は,データ分析が生業ですので,こういう部分の投資は惜しみません。

 寒さが本格化してきました。かといって,昼になると気温が上がる。朝夕と昼の寒暖差が大きく,まいっています。体調管理には留意くださいますよう。

<2017年10月の教員不祥事報道>
中学校長 酒気帯び運転疑い 富士宮署逮捕
 (10/1,静岡新聞,静岡,中,男,57)
無免許疑い教諭逮捕 高岡で衝突、女性重体
 (10/3,北日本新聞,富山,小,男,28)
中学教諭、教え子の男子生徒に淫行疑い 部活動の遠征先で
 (10/5,沖縄タイムス,沖縄,中,男,40代)
「小学5、6年生が好き」 女児盗撮容疑で中学教諭逮捕
 (10/8,朝日,神奈川,中,男,40)
酒気帯び運転、教諭逮捕=車に追突―大阪府警
 (10/8,時事通信,大阪,中,男,35)
10代女性に乱暴疑いで教諭逮捕(10/10,NHK,北海道,高,男,34)
臨時講師 スクールセクハラで減給処分
 (10/10,大分テレビ,大分,高,男,40)
SNSで知り合った女子高生とのわいせつ動画撮影
 (10/10,産経,京都,特,男,23)
酒気帯び運転疑いで50代男性教諭摘発
 (10/11,福島民友新聞,福島,小,男,50代)
大津市で免許不更新の養護教諭採用が発覚、無効に
 (10/12,毎日,滋賀,中,女,30代)
スーパーで万引き、養護教諭に懲戒処分 愛知県教委
 (10/12,朝日,愛知,小,女,30)
「ナンパ断られ、むらむら…」強制わいせつ容疑でさいたま市立小教諭を逮捕
 (10/12,産経,埼玉,小,男,23)
横浜市立中学教諭を逮捕、路上で強制わいせつの疑い 
 (10/12,日刊スポーツ,神奈川,中,男,55)
少女の下半身をスマホで盗撮、小学教諭を懲戒処分 
 (10/13,日刊スポーツ,富山,小,男,29)
生徒の氏名入りテスト解答用紙が盗難 川口工業高の教諭が買い物中
 (10/14,埼玉新聞,埼玉,高,男,50代)
「お金もったいなかった」万引疑いで小学校教頭逮捕
 (10/16,サンスポ,北海道,小,男,48)
千円払って女子生徒に授業させる 定時制の61歳男性教諭を戒告
 (10/17,産経,東京,高,男,61)
女性スカートの中盗撮で30代教諭を懲戒免職
 (10/17,日刊スポーツ,山口,中,男,30代)
生徒にキス、高校教諭免職 教員わいせつ6人目 5年で最多
 (10/19,千葉日報,千葉,高,男,50)
酔って帰宅、あれウチじゃない? 住居侵入の校長停職
 (10/20,朝日,宮崎,中,男,59)
パチンコに負け、店の消火器壊す 沖縄県教委、中学教諭減給
 (10/20,琉球新報,沖縄,中,男,40代)
女子生徒にキスした教諭らを懲戒免職処分
 (10/20,神奈川新聞,神奈川,わいせつ:高男59,大麻所持:中男29)
万引で53歳小学教諭免職 島根県教委(10/20,産経,島根,小,男,53)
車にはねられ男性死亡 容疑の私立高校教諭を逮捕
 (10/22,埼玉新聞,埼玉,高,男,23)
教諭が盗撮した動画を削除・隠蔽容疑 校長ら書類送検
 (10/23,朝日,中,男,59,54)
運転代行で帰ったはずが飲酒運転 中学校の男性教諭を懲戒免職
 (10/24,岩手放送,岩手,中,男,53)
大分の特別支援学校で教諭が生徒に不適切指導(10/24,TBS,大分,特,女)
女子高生にわいせつ行為 臨時講師を懲戒免職
 (10/24,神戸新聞,兵庫,特,男,23)
スカート内にスマホ差し入れ 山梨、容疑の教諭逮捕
 (10/24,日経,山梨,高,男,30)
帰省先でスカート内盗撮を繰り返した小学校教諭を懲戒免職
 (10/27,産経,大阪,小,男,32)
千葉の教諭2人、うっかり失職 免許更新手続き行わず
 (10/28,産経,千葉,特女50代,中男40代)
水泳の授業中「溺れればいい」と暴言 新潟の中学教諭を減給処分
 (10/28,産経,新潟,中,男,40代)
教諭が酒酔い、テストなど紛失(10/30,神戸新聞,兵庫,小,男,53)
補習指導でスカート内にスマホ 滋賀、高校教諭を免職
 (10/31,京都新聞,滋賀,高,男,28)
懲戒処分:泥酔し暴行の男性教諭停職 横浜市教委
 (10/31,毎日,神奈川,中,男,57)

2017年10月31日火曜日

教員の教育職以外の経験年数

 OECDの国際教員調査「TALIS 2013」では,各国の中学校教員に対し,教育職以外の経験年収を尋ねています。
http://www.oecd.org/edu/school/talis.htm

 この問いに対し「0年」と答えた教員の割合は,教育職以外の経験がない教員の出現率と読むことができます。この数値を国別に出し,高い順に並べたグラフをツイッターで発信したところ,多くの方に見ていただけました。日本は79.2%で,対象国の中ではトップです。
https://twitter.com/tmaita77/status/924223243887640578

 しかるに,回答の分布にも関心が持たれるでしょう。アメリカでは,0年という教員(17.6%)よりも,10年以上という教員が33.6%と,ずっと多くなっています。この大国では,中学校教員の3人に1人が,教育職以外の仕事を10年以上経験してきているのですね。

 上記調査のローデータを加工して,ラフな4区分の分布を国ごとに出してみました。0年,1~4年,5~9年,10年以上,の4カテゴリーです。下表をご覧ください。赤字は,最頻値(Mode)です。無回答・無効回答は除いた有効回答の分布です。


 日本と同様,0年(≒経験なし)という教員が最多である国が多いですが,そうではない国もあります。メキシコとアメリカでは,10年以上という教員が最も多し。メキシコでは,4割近くにもなります。

 上表のデータをグラフにしましょう。そうですねえ。「0年」の比率と「5年以上」の比率を拾って,帯グラフにしましょうか。朝日新聞流に,中抜きのグラフにしてみました。国の配列は,0年の比率が高い順によります。


 かつてジョン・デューイは,「学校は陸の孤島である」と述べ,地域社会と学校の間に橋をかける必要があると提言しました。その中に人事交流が含まれていたか,記憶が定かでないですが,日本はそれが最も活発でない社会であるようです。

 22歳まで学生をやり,その後もずっと学校に奉職し続ける。学校の外の世界を知らない…。こういう教員が,全体の8割も占めるというのは,少しばかり怖い気がします。近年重視されているキャリア教育は,民間経験のある教員のほうが高いパフォーマンスを発揮するという説をどこかで聞いたことがありますが,そういう面もあるでしょう。

 現行の採用試験では,社会人採用の枠もありますが,これをもっと広げてもいいのではないか。もっと思い切ったことを言えば,一定年数の就業経験をもって,採用試験の受験資格にしてもいい。「学生しか経験してない私に何が教えられるのだろう?」。大学を卒業してすぐに教壇に立たされることに,戸惑いを覚えている学生もいるのでは。
https://twitter.com/kanas_office/status/924588992133083139

 ただ,現行の制度でも,民間人が教員になれる道は開かれています。にもかかわらず,現状は上記のデータのごとしというのは,教員は「ブラック」であることが知れ渡り,敬遠されているからかもしれません。待遇を改善しなければ,優秀な人材(社会人経験者)は集まらない。これは道理です。

 タイムカードや残業代という概念がない。民間の感覚からすれば驚愕するようなことが,学校ではまかり通っています。学校と外部社会の間に「橋」をかけるには,採用試験の制度改革だけでは足りないでしょう。

2017年10月28日土曜日

学用品に恵まれない子ども

 日本は,学用品に恵まれない子どもが多いそうです。
http://www.from-estonia-with-love.net/entry/pc-in-jp

 この記事によると,8つの学用品(机,パソコン,辞書,教科書…)のうち4つ未満しか家にない生徒の割合は,日本は5.6%であり,OECD加盟国の中で4位となっています。

 日本は経済大国であると同時に,子どもの貧困大国でもあるといいますが,それを象徴するデータですね。上記記事のデータソースは,OECDの「PISA 2006」です。今から10年以上前のデータですが,最近ではどうなのか。最新の「PISA 2015」のデータで追試をしてみようと思います。

 「PISA 2015」の生徒質問紙調査では,13の学用品を提示し,それぞれが家にあるかを尋ねています(Q11)。調査票の質問のスクショを掲げましょう。調査対象は,15歳の生徒です。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/


 全部持っている子もいれば,2・3個しかないという子もいるでしょう。学用品に恵まれない子どもを取り出すためのラインをどこに引くべきか。「PISA 2006」では4個未満としていますが,尋ねている品目の数も違うので,この基準を流用するわけにはいきません。

 個票データを加工して,家にある個数の分布を観察することから始めましょう。13の品目全てに有効回答を寄せたのは,64か国の40万584人です(小地域は除く)。家にある学用品の個数の分布は,下表のようになっています。


 中央に山があるノーマル分布ではなく,上方に偏っています。最も多いのは10個です(13.86%)。右端の累積相対度数から,ちょうど真ん中の生徒(中央値)も10個であることが知られます。

 どうやら,10個というのがフツーの生徒であるようです。しからばその半分の5個に満たない生徒をもって,学用品に恵まれない子としましょう。上表の分布でいうと,その割合は5.37%です。

 当然,この割合は国によって大きく違っています。たとえば,メキシコでは20.30%(5人に1人)にもなります。一方,北欧のデンマークでは0.85%しかいません。

 この国際基準(13個中5個未満)を適用して,64か国の15歳生徒のうち,学用品に恵まれない子どもが何%いるかを計算してみました。下表は,高い順に並べたランキングです。


 トップはアルジェリア,2位はインドネシアです。この2国では,15歳の4人に1人が学用品剥奪状態にあるとみられます。当然ですが,上位には発展途上国が多くなっています。

 しかし,表をちょっと下がると日本が出てきます。学用品に恵まれない子どもの割合は5.23%で,64か国中17位。主要国の中では,アメリカを抜いてトップです。

 下位のほうをみると,ロシア,ラトビア,ポーランドなどがありますが,共産主義の名残りでしょうか。

 しかし,日本とアメリカが主要国の中でトップだとは…。両国はGDPが世界トップレベルの経済大国で,多くの富を有しているのですが,それが子どもの生活には届いていないと。

 上表から,OECD加盟の34か国を取り出し,各々の名目GDP額(2015年)と絡めてみると,下図のようになります。アメリカはGDPがぶっ飛んで高いので,横軸は端折っています。GDPの出所は,総務省『世界の統計2017』です。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm


 単純に考えれば,多くの富を持っている(GDPが高い)国ほど,学用品剥奪状態の子どもは少なくなるように思えますが,さにあらず。メキシコとトルコを除くと,プラスの相関関係すら見受けられます。

 為政者は,富が増えると使い方を誤る性を持っているのか。GDPが低くとも,原点付近の社会のほうが,子どもにとって「生きやすい」という見方ができなくもありません。

 学用品という所持の点でも,日本の子どもの「貧しい」状態が露わになりました。冒頭の品目表のうち,日本の子どもの所持率が際立って低いのは,パソコンと勉強用のソフトウェアです。これは,教育のICT化の遅れの表れですが,それが進んだ国では,こういうアイテムも必需品とみなされるのでしょう(生活保護世帯にも支給される)。

 日本も,状況は変わっていくでしょう。社会の変化に伴い,何を必需品(奢侈品)をみなすかのラインは,絶えず変えていかないといけません。

 現状でいえるのは,日本は,豊かな富と子どもの貧困を併せ持った,何とも奇妙な社会である,ということです。

2017年10月25日水曜日

労働量ベースの労働生産性

 一国の経済活動のパフォーマンスを測る指標として,労働生産性というものがあります。頻繁に聞く言葉ですが,概念を知っている人はどれほどいるでしょうか。

 労働生産性とは,就業者1人あたりのGDP額のことです。日本は,GDPの額は世界でもトップレベルですが,それを就業者数で割った労働生産性は,さほど高くありません。2014年の数値は7.3万ドルで,統計が分かる34か国中21位です(総務省統計局『世界の統計2017』)。

 しかるに,GDPを就業者数で除すだけというのは,いささか不十分な気がします。生産の費やされた労働量は,就業者数と就業時間の掛け算で決まります。厳密には,後者の要素も考慮する必要があるでしょう。私は,以下の式を適用して,各国の労働生産性を計算し直してみました。

 労働生産性 = 名目GDP額/(就業者数 × 就業時間)

 タイトルのごとく,生産に費やされた労働量ベースでみた労働生産性です。計算に必要な3つの要素は,総務省統計局『世界の統計2017』で知ることができます。

 まずは,主要国の試算結果をご覧いただきましょう。お隣の韓国は就業時間のデータが載っていないので,対象から外しました。


 日本の15歳以上の就業者は6億3770万人,週間の平均就業時間は39.3時間,2015年の名目GDP額は4兆3835億8400ドルなり。就業時間が思ったより少ないのは,女性や高齢者も含めた,全就業者のものだからです。

 上記の式に当てはめると,日本の労働量ベースの労働生産性は,1.75と算出されます(単位は度外視)。お決まりですが,欧米諸国と比して低いですね。

 ノルウェーは4.29で,日本の2.5倍近くです。費やされた労働量あたりの生産性は日本よりもずっと高し。就業者数のみを考慮した場合よりも,差が大きくなっています。それもそのはず,就業時間も違いますからね。

 では,他国はどうでしょう。a~cの3要素を知ることができた38か国について,同じやり方で,労働量ベースの労働生産性を出してみました。下図は,高い順に並べたグラフです。


 日本は,ちょうど真ん中あたりです。38か国の平均値(1.78)には及びません。うーん,就業時間も加味した労働生産性では,お気楽な働き方をするブラジルやスペインにも劣るのですねえ。

 トップは北欧のノルウェー,下位には発展途上国の諸国があります。まあ,納得がいく順位構造です。

 労働生産性が高いノルウェーについては,いろいろ言われています。ネットで検索してみると,フレックスタイム制やリモート労働制が進んでいることを強調する記事がたくさん出てきます。

 それもあるでしょうが,社会の基底的な特性に注目すると,次の3つが進んでいることが大きいと思います。1)女性の社会進出,2)ICT化,3)生涯学習化,です。女性のタレントを活かす,業務を効率ならしめるICT機器を活用する,労働者が絶えず(外部機関で)学び続ける…。いずれも,労働生産性を高めるための必須の条件でしょう。

 上記の3つの度合いを,簡単な指標で数値化し,日本とノルウェーで比べてみましょう。下表をご覧ください。BとCは,国際ランキングをツイッターで発信したところ,多くの方に興味を持っていただけました。
https://twitter.com/tmaita77/status/922404634471284737
https://twitter.com/tmaita77/status/922362605791875073


 働き盛りの女性の労働参加率は,ノルウェーのほうが高し。これは分かり切ったことですが,ICT教育の進み具合(B)は,両国では比較にならぬほど違っています。

 この指標のランキングを見た人が,「日本は未だに人海戦術依存型」とつぶやいておられましたが,少子高齢化が進む中,これがいつまでも持たないことは明らかです。

 Cは生涯学習化の指標ですが,大学等の入学者の平均年齢は,日本は18歳,ノルウェーは23歳。これは初めて入学した人に限ったもので,何回も入り直している人(リカレント学生)も含めたら,ノルウェーの平均年齢はもっと高くなるでしょう。

 変動社会では,人生の初期に学校で学んだ知識や技術などすぐに陳腐化します。絶えず学んで,最新の知識・技術を摂取しないといけません。それは企業内教育だけでは不十分で,どこでも通用する汎用性あるスキルを身に付けるには,職場を離れた外部機関(大学等)で学ぶことも必要になります。

 こうした「Off-JT」は,職業訓練とは別の効用も持っています。職場を離れた別の世界の空気を吸うことで,イノベーションのきっかけが得られる,ということです。わが国では,「閉じた」職場内訓練が支配的ですので,こういう機会が決定的に不足しています。これなども,労働生産性向上の阻害要因になっているのではないでしょうか。

 投入できるインプット(労働力量)は,ますます制限されるようになってきます。移民受け入れについて議論されていますが,インプットをひたすら増やす「人海戦術型」ではなく,労働の質を向上させる。随所で言われていることですが,できることはあるでしょう。上記の3つは,その切り口の一端です。

2017年10月21日土曜日

学部と修士の正社員就職率

 「頭のいい女子はいらないのか:ある女子国立大院生の就活リアル」と題する記事が目に止まりました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171020-00010000-binsider-bus_all

 内容は,タイトルから推して知るべし。シューカツに臨んだ院生が,「大学院ねえ。そんなに勉強してどうするの」「あなたの学歴ではもったいない」などと,嫌味を言われるケースです。

 女子の場合,男子にもまして,こういう風当たりは強いでしょう。私が修士課程で一緒だった女子院生も上記のようなことを言われたことがあるそうで,「逆学歴差別だ」と憤っていました。

 大学院まで行くと,かえって就職がなくなる。だいぶ前からこういうことが言われていますが,データでみるとどうなのでしょう。今年春の卒業生の正規職員就職率を,大学学部と修士課程で比べてみましょう。分子と分母は以下です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 分子=正規職員就職者数+臨床研修医数
 分母=卒業生数-大学院等進学者数-専修学校等入学者数

 分子ですが,医学部の場合,キャリアが臨床研修医からスタートすることが多いですので,この数も含ませます。分母は,就職の意思がない大学院等進学者と専修学校等入学者は除外します。

 このやり方で,学部卒業者と修士課程修了生の正規職員就職率を計算してみました。下図は,結果をグラフにしたものです。ジェンダー差をみるため,性別で分けています。


 男子は,学部から修士にかけて,正社員就職率がちょっと上がります。しかし女子は,学部では85.4%だったのが,修士になると69.5%と大きく陥落します。学部では「男子<女子」だったのが,修士卒では大逆転です。

 ただこれは,専攻の違いによるかもしれません。理系では,学部卒より院卒が有利といいますが,理系の院生の大半は男子です。対して,女子院生の多くは文系の専攻であると。

 そこで,学部・修士の正社員就職率を専攻別に出してみました。下表は,結果の一覧です。上段は学部,下段は修士の専攻別の正社員就職率です。


 女子でも,理学専攻は,学部から修士にかけて正社員就職率がアップします(87.4%→90.6%)。

 予想通りといいますが,下落が大きいのは文系の専攻です。人文科学の女子では,学部の83.3%から修士の45.0%へと,40ポイント近くも落ちています。社会科学も,88.7%から59.1%と大下落です。

 文系の院に行くと悲惨であるのは男子も同じですが,女子はそれが顕著であると。ちなみに冒頭の記事で紹介されているのは,国立大の社会学の女子院生のケースです。

 男女の専攻別の正規職員就職率が,学部から修士にかけてどう変化するか。この点を視覚的に見て取れるグラフを作ってみましょう。横軸に学部卒,縦軸に修士卒の正社員就職率をとった座標上に,男女の10専攻のドットをプロットしてみました。

 青色は男子,オレンジ色は女子です。専攻名は,頭文字で略記しています(人=人文科学,社=社会科学…)。


 斜線は均等線です。このラインより上にあるのは,学部より修士の正社員就職率が高い専攻です。下にあるのは,その反対です。

 修士に行くメリットがあるのは,男子の理系専攻ですね。男子の理学専攻は,学部の78.6%から修士の89.3%へと,10ポイント以上の増。この専攻に限っては,女子も院進学の利点があるようです。

 しかるに女子にあっては,理学を除く全ての専攻で,大学院に進学すると正社員就職チャンスが狭まります。その度合いは,均等線からの垂直距離で見て取れますが,悲惨を極めているのが,人文・社会系です(緑枠)。

 最近は大学院修士課程への進学率が上がっているといいますが,正社員就職率という点でみると,メリットがあるのは男子の理系専攻に限られるようです。

 素朴な人的資本論に従えば,学部卒より院卒のほうが生産性に優れているので重宝されるはずなのですが,わが国の現実はさにあらず。ある方がツイッターでつぶやいていましたが,「欲しいのは学力・能力ではなく,ただの奴隷」なんだなと。
https://twitter.com/WadaJP/status/921264218728361984

 確かにそうかもしれませんねえ。採用面接で,学校で何を学んだかなんて聞かれないし…。先方が知りたいのは,性格にクセがないか,言われたことを従順にやってくれるか,これだけです。知識や技術は入社後に訓練すると。

 中には,学生の有している資質・能力に関心を持つ会社もあるでしょう。「大学院でプラス2年間学んだそうだが,それで得られたものは何か」と。学生の側は,それを分かりやすく伝える術を身に付けないといけません。
https://twitter.com/vc66AaZmbH5oZbE/status/921313998938578944
 
 ただ,同じ専攻にもかかわらず,大学院に進むと一般社会に出るチャンスが明瞭に「男子>女子」となるのは,「学のある女は要らぬ」という,旧態依然としたジェンダー観念が未だに蔓延っていることの証左といえるでしょう。

 国際比較をやったら,日本固有の傾向なのかもしれません。

2017年10月12日木曜日

18歳と19歳の投票率

 今月22日は衆院選の投票日ですが,昨年より選挙権の付与年齢が18歳に引き下げられ,高校生も投票できるようになっています。それに伴い,各地の高校で主権者教育が行われています。

 関心が持たれるのは,若きティーン(18・19歳)の投票率ですが,昨日の神戸新聞の記事によると,18歳から19歳にかけて投票率がガクンと下がる傾向があるそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171011-00000016-kobenext-soci

 「ホンマかいな」と,昨年の参院選の年齢別投票率をグラフにすると,下図のようになります。昨日,ツイッターで発信した図です。


 ほう。18歳では51.2%と半分を超えていたのが,19歳では39.7%に急落し,22歳まで低下を続けます。大学在学中にかけて投票率は下がるのですねえ。

 上記の神戸新聞でも言われていますが,18歳の高校生は,学校で密な主権者教育(啓発)がされますが,教師と学生の距離が大きい大学はさにあらず。要するに,野放しの大学生は投票所に足を運ばないのでしょう。

 あと考えられるのは,住民票を移していない学生が多いということ。これでは,自分が住んでいるアパートに投票案内は届きません。実家に戻って投票するなんて,億劫なことはしたくない。よって,投票率が低くなると。

 それをうかがわせるデータもあります。問題の19歳の投票率が,都道府県でどう違うかです。昨年の参院選でいうと,19歳の投票率の全国値は39.7%ですが(上図),都道府県別にみると,最高の53.8%から26.6%までの開きがあります。倍の格差です。

 各県の19歳の投票率を地図にすると,以下のようになります。


 値が相対的に高いのは,都市部ですね。実家から大学等に通っている学生が多いためでしょう。

 対して西日本のエリアでは,投票率が35%に満たない県(白色)が多くなっています。私の郷里の鹿児島も然り(34.3%)。住民票を移さないまま都会に出ている学生が多いので,投票率が低くなってしまうのでしょう。

 このマップの白色の県は,大学進学の際,住民票をきちんと移すよう,指導を強化する必要があるのではないでしょうか。

 住民票を移してない学生さんも,帰省せずして投票できる「不在者投票制度」なるものもあるようですが,結構手続きが煩瑣です。また,利用できない自治体もあるとのこと。住民票を移すのがベストであるのは,言うまでもありません。
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirenakazono/senkyo-hitorigurasi-touhyo?utm_term=.ile5gOdVDM#.xuEPnaZv6J

 私は,事情あって18歳から独立生計でしたので,役所関係の諸手続きはきちんとする習性が身についています。そうでないと,病院すらいけないですからね。

 学生さんもやがては親の扶養を離れ,独立生計者となりますが,各種の行政手続きを「親任せ」ばかりにしていると,後々痛い目をみるでしょう。大学入学に伴い転居したら,まずはその地の役所に足を運び,ちゃんと住民登録をしましょう。

 さて,今月の衆院選は,ティーンに選挙権が与えられた2度目の国政選挙ですが,投票率はどうなるでしょう。今年の19歳は,昨年(18歳時)の経験があるので,最初のグラフのような大幅な陥落傾向は消えているかもしれませんね。

 ここ数日,10月とは思えぬ暑さが続きましたが,明日は気温が一気に下がり,肌寒くなるそうです。今日のマックスが28度に対し,明日は17度(横浜)。10度以上の落差です。ちゃんと,布団を被って寝ましょう。

 今日は立川病院に行き,先日受けた歯根端切除手術の予後観察を受けましたが,「予後不良,再手術の必要あり」という判断。確定ではありませんが,来月にまた入院し,手術を受ける可能性が高くなってしまいました。やれやれです。(-_-;)