2015年3月22日日曜日

首都圏の子育て人口の転入超過率地図

 政府は「地方創生」を掲げ,東京から地方への人口移動を促そうとしていますが,人の動きを知ることのできる公的な統計資料として,総務省の「住民基本台帳人口移動報告」があります。1年間で人口がどれほど入ってきたか,どれほど出て行ったかが地域別に掲載されています。
http://www.stat.go.jp/data/idou/

 地域といっても都道府県単位だろうと思っていたのですが,最近の資料では,区市町村別のも出ているではありませんか。おまけに,5歳刻みの年齢層別の数値も出ています。これを使えば,子育て人口を引き寄せている地域はどこかを,県よりも下りた区市町村レベルで明らかにできます。

 私は,首都圏(1都3県)の242区市町村について,25~34歳の転入超過率マップをつくってみました。2014年中の転入人口から転出人口を引いた値を,同年1月1日時点の人口で除した値です。この値がプラスであれば,「転入>転出」,すなわち子育て人口が増えていることを意味します。マイナスの場合は,その逆です。

 私が住んでいる東京都多摩市でいうと,2014年中の25~34歳の転入者数は1812人,転出者数は2112人です。同年1月1日時点の25~34歳人口は17570人。よって転入超過率は,以下のようになります。

 (1812-2112)/17570 = -1.71%

 値はマイナス,転入よりも転出が多い,つまり子育て人口を逃しているわけですか。公園などの緑地面積が首都圏1位で,子育てにはよい地域だと思うのですが,ママ・パパ人口が出て行っているのだなあ。都心から遠いという,地の利の条件ゆえでしょうか。

 同じやり方で,1都3県の242区市町村の率を計算してみました。下図は,それを地図にしたものです。色つきは値がプラス,つまり子育て人口が増えていることを意味します。


 やっぱり都心ですね。通勤や通学に便利という,地の利の条件が効いているようです。都内特別区の真ん中に濃い色がありますが,千代田区,中央区,港区です。これら3区では,子育て人口の転入超過率,つまり増加率が5%を超えています。

 しかし,地理的ロケーションが全てというわけではなく,周辺部にも色つきの地域はあります。これらの中には,子育て支援を充実させることで,子育て人口を引き寄せている努力地域も多いと思いますが,具体的にどこでしょう。算出された転入超過率が高い順に,242区市町村を並べたランキング表をつくってみました。上位10位だけというケチなことは言わず,全てを掲げます。紙と違い,ブログの場合は,スペースは無制限。いいですねえ。


 赤字は上位10位ですが,東大和市や流山市のほか,千葉の睦沢町のような郡部も入っています。千葉の流山市は,「母になるなら流山」と大々的にRPし,駅前保育送迎ステーションなど,子育て環境を充実させていることで知られています。
http://www.nagareyama-city.jp/

 睦沢町は,定住促進のための重要戦略として「子育て支援」を位置付け,病児保育利用の助成,子ども医療費の無償化など,経済面の支援を充実させているもようです。

 前に日経デュアル誌でも書きましたが,人の動きというのは正直です。水が高きから低きに流れるがごとく,魅力的な地域にはどんどん人が入ってくる。今回出したような指標を絶えずモニタリングして,施策の評価・改善に役立てていくことが重要でしょう。

 2014年の実態資料として,上表のデータを提示しておきたいと思います。