2017年9月9日土曜日

1つの中華料理店にいくらのおカネが落ちるか

 国民の消費性向を知れる便利な資料として,総務省の『家計調査年報』があります。細かい品目ごとに,1世帯あたりの年間支出額を知ることができます。
http://www.stat.go.jp/data/kakei/npsf.htm

 この資料の目玉は,47都道府県の県庁所在地別のデータも載っていることです。「納豆の首位は水戸市」「ギョーザは宇都宮市」といったフレーズが新聞によく踊りますよね。商売を始めようという人が開業の地を考える際の参考にもなるでしょう。

 しかるに,支出額が多い(消費性向が強い)ことだけをもって,開業の地を決めるのは危険です。当然そこは競合店も多く,激戦であることでしょう。商売敵がどれほどいるか,またお客さんが落としてくれるおカネの絶対額も考慮したいもの。

 私は,メジャーな外食産業の中華料理店を例に,これらの条件を勘案した参考指標を計算してみました。タイトルに記した通り,「1つの中華料理店にいくらのお金が落ちるか」です。

 2014年の総務省『経済センサス』の産業小分類統計によると,同年7月時点の全国の中華料理店は5万5095店です(a)。個人営業店のほか,チェーン店なども含みます。

 『家計調査年報』によると,2014年の1年間における,1世帯あたりの中華そば・中華食(外食)の年間支出額は1万481円(b)。単身世帯もひっくるめた,総世帯でみた額です。『住民基本台帳』に掲載されている,同年1月時点の世帯数は5595万2365世帯(c)。

 よって2014年の1年間に,全国の中華料理店に流れたおカネの総額は5864億3674万円と見積もられます(b×c)。これを全国の中華料理店数(a)で除すと,1店舗あたりの額は1064万円となります。

 店舗の維持費,原材料費,従業員の給料等の諸経費が半分かかるとしたら,アガリは500万ちょっとくらいでしょうか。まあ全体の分布をみれば,年に500万円も儲けているラーメン屋さんは,そう多くないでしょう。一部の超有名店(チェーン)によって釣り上げられた額と考えられます。

 それはひとまず置いて,この値を47都道府県の県庁所在地別に計算してみました。計算に使った3つの値(a~c)と,算出された値の一覧表を以下に掲げます。上記と同様,2014年のデータによる試算結果です。


 最高は大津市の2190万円,最低は宮崎市の554万円です。大津市は店舗が少なく,近郊都市で市場もそこそこ大きいので,1店当たりの額が多くなっています。大津市民が中華料理の外食に費やしたおカネの全てが,市内の63店舗に流れたとは限りませんが。

 マーケットが最大の東京都区部(23区)は,店舗数が7176店とケタ違いに多いので,1店あたりの配分額は827万円と少ないですね。

 競合店の数,落としてくれるおカネの総額を勘案した,1店舗あたりのベネフィットの試算値です。お客さんの地域移動を度外視していますが,流入と流出がトントンになる(相殺する)という仮定を置くならば,全く的外れということにはなりますまい。

 今回は中華料理店を例にしましたが,ハンバーガー店,すし店などについても,同じ値を出すことが可能です。『経済センサス』の産業小分類統計に店舗数は出てますし,1世帯あたりの年間支出額は『家計調査年報』に出ています。興味ある方は,どうぞ計算してみてください。私が上表のデータを作成するのにかかった時間は,およそ30分です。

 ところで,青森市の1店舗あたりの額は768万円とあまり多くないですね。しかるに最近,この北の地にとても魅力的な中華料理店があるのを知りました。王味(わんみ)というお店です。
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2010/04/post_1488.html

 とくに,ニンニクたっぷりの餃子が絶品であるとのこと。青森はニンニクの産出量がダントツでトップですが,そういう地の利が出ていますね。ニンニク大好きの私にとっては,たまりません。写真を見るだけで,唾液反応が出ます。

 秋の旅行で,この店に行ってみようかなと考えています。青森まで開通した新幹線にも乗ってみたいですし。晩秋の楽しみができました。