昨日,2013年度の『全国学力・学習状況調査』の結果が公表されました。各紙が,学力テストの平均正答率の県別順位を報道している模様です。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html
ところで,この調査は教科の学力テストだけではなく,児童・生徒質問紙調査と学校質問紙調査も含んでいます。前者は,対象者の日頃の生活や意識について問うものであり,興味深い設問がたくさん盛られています。私としては,こちらのほうに関心を持ちますね。
児童・生徒質問紙調査では,今年度から,将来展望や国際的な関心・志向について尋ねられています。ほほうと思い,私なりに結果を整理しみたところ,後者について「おや」という傾向を見つけましたので,ここにてご報告します。
今年度より,以下のような設問が新たに設けられています。
①:英語の学習は好きですか。
②:外国の人と友達になったり,外国のことについてもっと知ったりしてみたいと思いますか。
③:将来,外国へ留学したり,国際的な仕事に就いたりしてみたいと思いますか。
グルーバル化が進む現代にあって,未来を担う子どもたちが,これらの問いにどういう回答を寄せているのか。興味が持たれますね。本調査の対象である小学校6年生と中学校3年生の回答分布を図示すると,下図のようになります。
煩雑さを避けるため,①は英語嗜好,②は外国への関心,③は国際志向,という表記で簡略化しています。
青と赤の肯定の回答に注目すると,英語嗜好と外国への関心はまあまあですが,国際志向が低くなっています。外国へ留学したいか,国際的な仕事に就きたいか,という問いに対する回答ですが,広義の肯定率は,小6で4割,中3で3割ほどにとどまっています。
最近,海外留学する若者が減っているといいますが,少し上の世代の「ウチ化」傾向が伝播しているのかしらん。
なお,学年の違いにも注意しなければなりません。どの設問でみても,小6よりも中3で肯定率は低くなっています。英語嗜好は,77%から54%へと20ポイント以上も減です。
小6の外国語活動は,音声やコミュニケーション重視の親しみやすい内容ですが,中学になると細かい文法とかが出てきて嫌気がさす,ということでしょうか。外国への関心や国際志向が低下するのは,受験で忙しくなったり,現実を思い知らされたりと,いろいろな事情を想起できます。
このように,子どもの国際関心・志向が学年を上がるにつれて萎んでいく傾向があるのですが,その程度は属性によって異なるでしょう。ちょっと検討してみたところ,学校の設置主体間の差が大きいことを知りました。下図は,先ほどの学年比較を,国公私別に行ったものです。
この図では,最も強い肯定の回答(そう思う)の比率の変異が図示されています。
公立よりも国私立校で肯定率が高いこと,小6から中3にかけての減少幅が公立校で大きいことがみてとれると思います。この傾向が顕著に表れているのは,①の英語嗜好です。
義務教育段階では国私立校はごくわずかですが,結構な差が見受けられます。国際理解教育を行うための条件が違いますので,当然といえばそうかもしれませんが,設置主体間の格差問題としての性格も見落とせないと思います。
図をよくみると,国立学校では,②と③の項目において小6から中3にかけての減少がほとんどありませんが,これなどは,在籍している児童・生徒の階層構成の違いにもよるでしょう。
最後にもう一つ。③の国際志向が,地域タイプ(都市-へき地)とリニアな相関関係にあることに気づきましたので,図を掲げておきます。こちらも,「そう思う」の回答比率です(公立校)。
撹乱一つないきれいな傾向ですが,ネットをはじめとした情報通信機器がこれほどまでに普及した現代にあっても,異国を知る情報量には地域差があるのでしょうか。画面上の2次元情報ではなく,現実の3次元情報です。たとえば,外国人と対面で接する機会など・・・。
国立教育政策研究所のホームページにて,調査結果の仔細な統計表が公開されていますので,単純集計からは知り得ない情報を,自分なりに引き出すことができます。みなさんも,興味をもった事項について,分析を深めてみてはいかがでしょう。
私は,今度は,将来展望に関わる設問に注目してみようと思います。将来の夢はあるか,なりたい職業はあるか,といった問いです。近年重視されているキャリア教育の成果は如何。47の小社会(都道府県)の違いも興味深いところです。
2013年8月28日水曜日
2013年8月27日火曜日
非伝統的夫婦
世には無数の夫婦が存在しますが,仕事と家事という役割の担い手が夫か妻かによって,大雑把なタイプを設定することができます。
夫が仕事で,妻は家事ないしは家計の補助的な意味合いの仕事(パート等)という夫婦は,お馴染みの伝統的夫婦といえましょう。双方とも仕事をしている夫婦は,共働き夫婦です。
あと一つは,伝統的夫婦と役割分担が反対で,妻が仕事,夫が家事という夫婦です。こちらは,ニュータイプの非伝統的夫婦と呼ぶことにしましょう。
私は,総務省の『国勢調査』にあたって,上記の3タイプの夫婦が数でみてどれほど存在するかを明らかにしました。最近の『国勢調査』の公表データは詳細になっており,夫と妻の労働力状態をクロスさせた夫婦数の統計表が出ています。2010年調査でいうと,第2次集計の全国結果の表25です。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
これを使って,各タイプに属する夫婦数を明らかにした次第です。追試をしたいという方もおられると思いますので,原表のどの部分の数字を拾ったのかを示しておきます。
説明は要りますまい。赤色のセルは伝統的夫婦,青色は共働き夫婦,黄色は非伝統的夫婦に相当します。
下表は,夫が20~40代である夫婦のタイプ内訳を整理したものです。その他は,合計から3タイプを差し引いた分です。最近5年間の変化も分かるようにしました。
夫が20~40代である夫婦数は,この5年間で1,197万から1,138万へと少し減っています。未婚化の影響でしょう。
内訳をみると,夫は仕事,妻は仕事という夫婦が最も多くなっています。しかるに変化でいうと,このような伝統的夫婦の数は実数・比重ともに減じており,代わって共働き夫婦の数が増えてきています。2010年では,全体の3割が共働き夫婦なり。近年の男女共同参画政策も効いていると思われます。
あと一つ,夫が家事,妻が仕事という非伝統的夫婦ですが,このタイプは量的にはマイノリティーです。しかし,この5年間で1.5万から2.2万へと増えており,比重も微増しています。2010年の出現率は0.196%,510夫婦に1夫婦というところです。量的にはわずかですが,このニュータイプの夫婦が増えていることは注目されてよいでしょう。
二神さんの『ニートがひらく幸福社会ニッポン』明石書店(2012年)の中で,小学校教員の女性と結婚し,ヒモで生きる覚悟を決めたニート男性の事例が紹介されていました。また,先日のプレジデント・オンラインの「2050年の日本人の働き方」という記事には,「妻のほうが収入も出世の可能性も高いので,主に家事と育児を担当するのが私の役割」という夫の話が載っていました。
http://president.jp/articles/-/10320
人口減少の局面をむかえている日本社会において,働くのに男も女もありますまい。加えて,偏狭なジェンダー観念も揺らいできています。これから先,ここで設定したような非伝統的夫婦はますます増えてくることと思います。2015年の国調では,もしかすると5万を越えていたりして。
先ほど掲げた,「夫の労働力状態×妻の労働力状態」の夫婦数の統計表から,従来型とは違う,いろいろなタイプの夫婦を取り出すことが可能です。たとえば,言葉がよくないですが,夫がニートで妻がフルタイム就業の「ヒモ夫婦」とかはどうでしょう。夫(⑧)×妻(①)のセルの数字を拾えばいいわけです。
巷でいわれていることを数値で可視化すること。私の趣味の一つです。ちょっと涼しくなりました。気温の変化に,体調を崩されぬよう。
夫が仕事で,妻は家事ないしは家計の補助的な意味合いの仕事(パート等)という夫婦は,お馴染みの伝統的夫婦といえましょう。双方とも仕事をしている夫婦は,共働き夫婦です。
あと一つは,伝統的夫婦と役割分担が反対で,妻が仕事,夫が家事という夫婦です。こちらは,ニュータイプの非伝統的夫婦と呼ぶことにしましょう。
私は,総務省の『国勢調査』にあたって,上記の3タイプの夫婦が数でみてどれほど存在するかを明らかにしました。最近の『国勢調査』の公表データは詳細になっており,夫と妻の労働力状態をクロスさせた夫婦数の統計表が出ています。2010年調査でいうと,第2次集計の全国結果の表25です。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
これを使って,各タイプに属する夫婦数を明らかにした次第です。追試をしたいという方もおられると思いますので,原表のどの部分の数字を拾ったのかを示しておきます。
説明は要りますまい。赤色のセルは伝統的夫婦,青色は共働き夫婦,黄色は非伝統的夫婦に相当します。
下表は,夫が20~40代である夫婦のタイプ内訳を整理したものです。その他は,合計から3タイプを差し引いた分です。最近5年間の変化も分かるようにしました。
夫が20~40代である夫婦数は,この5年間で1,197万から1,138万へと少し減っています。未婚化の影響でしょう。
内訳をみると,夫は仕事,妻は仕事という夫婦が最も多くなっています。しかるに変化でいうと,このような伝統的夫婦の数は実数・比重ともに減じており,代わって共働き夫婦の数が増えてきています。2010年では,全体の3割が共働き夫婦なり。近年の男女共同参画政策も効いていると思われます。
あと一つ,夫が家事,妻が仕事という非伝統的夫婦ですが,このタイプは量的にはマイノリティーです。しかし,この5年間で1.5万から2.2万へと増えており,比重も微増しています。2010年の出現率は0.196%,510夫婦に1夫婦というところです。量的にはわずかですが,このニュータイプの夫婦が増えていることは注目されてよいでしょう。
二神さんの『ニートがひらく幸福社会ニッポン』明石書店(2012年)の中で,小学校教員の女性と結婚し,ヒモで生きる覚悟を決めたニート男性の事例が紹介されていました。また,先日のプレジデント・オンラインの「2050年の日本人の働き方」という記事には,「妻のほうが収入も出世の可能性も高いので,主に家事と育児を担当するのが私の役割」という夫の話が載っていました。
http://president.jp/articles/-/10320
人口減少の局面をむかえている日本社会において,働くのに男も女もありますまい。加えて,偏狭なジェンダー観念も揺らいできています。これから先,ここで設定したような非伝統的夫婦はますます増えてくることと思います。2015年の国調では,もしかすると5万を越えていたりして。
先ほど掲げた,「夫の労働力状態×妻の労働力状態」の夫婦数の統計表から,従来型とは違う,いろいろなタイプの夫婦を取り出すことが可能です。たとえば,言葉がよくないですが,夫がニートで妻がフルタイム就業の「ヒモ夫婦」とかはどうでしょう。夫(⑧)×妻(①)のセルの数字を拾えばいいわけです。
巷でいわれていることを数値で可視化すること。私の趣味の一つです。ちょっと涼しくなりました。気温の変化に,体調を崩されぬよう。
2013年8月25日日曜日
教員採用試験の実施タイプ
東京では,教員採用試験の一次試験合格者が19日に発表され,昨日から今日にかけて二次試験が実施されています。
東京は人物重視の方針なのか,一次はたくさん通して二次でバンバン落とす,といわれます。他の自治体もそうなのでしょうが,全国を見渡すならば,それとは逆の県もあると思います。
自分が受ける県が筆記重視か,それとも面接・重視か。品のないことかもしれませんが,こういうことを知っておくことは,採用試験への対策にあたって不可欠でしょう。この点に関するデータは,昨年の4月8日の記事でも提示しましたが,今回は,やや違った角度から各県のタイプ分けをしてみようと思います
東京アカデミー社のホームページにて,昨年夏実施の2013年度試験の結果を自治体別に知ることができます。載っている情報は,受験者数,一次試験合格者数,および最終合格者数です。私はこれを使って,各県の小学校教員採用試験の一次試験合格率,二次試験合格率を計算しました。
http://www.tokyo-ac.jp/adoption/outline/
下表は,対照的な性格を持つ2県のデータです。福島と神奈川。後者は,横浜市等の政令指定都市も含みます。
福島は一次試験は難関ですが,それをクリアすれば後は楽勝?の感があり,二次で落とされる者は多くありません。神奈川のほうは,筆記は7割近くを通していますが,面接や実技でそのうちの6割を振り落としています。
性格づけると,前者は筆記重視型,後者は面接・実技重視型であるといえましょう。福島を受ける人は筆記試験対策に力点をおき,神奈川を受ける人は面接や模擬授業等の対策に力を入れる,というような傾斜をつけることが必要かと思います。
他の県はどうなのでしょうか。私は,試験の区分を設けていない石川を除いた46県について,上表にある一次試験合格率と二次試験合格率を明らかにしました。政令指定都市は,当該都市が立地する県の分に含めています。なお,栃木と群馬は,2013年度試験の一次合格者が非公表のようですので,2012年度試験のデータを使っていることを申し添えます。
下の図は,横軸に一次合格率,縦軸に二次合格率をとった座標上に,46の都道府県をプロットしたものです。点線は,46県の平均値を意味します。
右下にあるのは,一次試験の合格率は高いが二次のそれは低い,「面接・実技重視型」です。先ほどみた神奈川はここに位置しています。対極にあるのは,福島のように,筆記は難関だがその後は楽勝?の「筆記重視型」です。
残りの2タイプとして,一次・二次の合格率とも全県平均より高い「簡単型」と,その反対の「難関型」を設定しました。
大都市の東京は,面接・実技重視型に括られます。古都の京都は,福島と同じく筆記重視型に属します。
東北の青森と岩手は難関型。青森の一次合格率は18.0%,二次合格率は34.0%ですから,全受験者ベースの合格率はたったの6.1%,16人に1人です。まさに「難関」県です。一方,広島は43.1%であり,志望者の5人に2人が教壇に立てるようです。これは,教員の年齢構成というマクロ的な要因の所産でしょう。
さて,上記の散布図では一部の県名しか記せませんでしたが,自分の志望する県がどのタイプか分からない方がおられるといけませんので,タイプごとに塗り分けた地図を掲げておきます。石川は欠損値として斜線模様にしてあります。
教員採用試験の方針は各県の教育委員会が決めるものですが,同タイプが結構固まっていることからして,地域性のようなものも見受けられますね。それもそのはず。筆記か面接かはともかく,簡単県になるか難関県になるかは,人口要因によって決まるものですから。
今回のデータが,教員志望の方の参考になればと思います。また,学術的には,上図にみられるタイプの違いによって,各県の教員集団のパフォーマンスがどう異なるか,という問題が提起され得ることを指摘しておこうと思います。
多くの自治体で教員採用試験の二次試験が実施中,ないしはこれから行われることと思います。受験生諸氏のご健闘をお祈りいたします。
東京は人物重視の方針なのか,一次はたくさん通して二次でバンバン落とす,といわれます。他の自治体もそうなのでしょうが,全国を見渡すならば,それとは逆の県もあると思います。
自分が受ける県が筆記重視か,それとも面接・重視か。品のないことかもしれませんが,こういうことを知っておくことは,採用試験への対策にあたって不可欠でしょう。この点に関するデータは,昨年の4月8日の記事でも提示しましたが,今回は,やや違った角度から各県のタイプ分けをしてみようと思います
東京アカデミー社のホームページにて,昨年夏実施の2013年度試験の結果を自治体別に知ることができます。載っている情報は,受験者数,一次試験合格者数,および最終合格者数です。私はこれを使って,各県の小学校教員採用試験の一次試験合格率,二次試験合格率を計算しました。
http://www.tokyo-ac.jp/adoption/outline/
下表は,対照的な性格を持つ2県のデータです。福島と神奈川。後者は,横浜市等の政令指定都市も含みます。
福島は一次試験は難関ですが,それをクリアすれば後は楽勝?の感があり,二次で落とされる者は多くありません。神奈川のほうは,筆記は7割近くを通していますが,面接や実技でそのうちの6割を振り落としています。
性格づけると,前者は筆記重視型,後者は面接・実技重視型であるといえましょう。福島を受ける人は筆記試験対策に力点をおき,神奈川を受ける人は面接や模擬授業等の対策に力を入れる,というような傾斜をつけることが必要かと思います。
他の県はどうなのでしょうか。私は,試験の区分を設けていない石川を除いた46県について,上表にある一次試験合格率と二次試験合格率を明らかにしました。政令指定都市は,当該都市が立地する県の分に含めています。なお,栃木と群馬は,2013年度試験の一次合格者が非公表のようですので,2012年度試験のデータを使っていることを申し添えます。
下の図は,横軸に一次合格率,縦軸に二次合格率をとった座標上に,46の都道府県をプロットしたものです。点線は,46県の平均値を意味します。
右下にあるのは,一次試験の合格率は高いが二次のそれは低い,「面接・実技重視型」です。先ほどみた神奈川はここに位置しています。対極にあるのは,福島のように,筆記は難関だがその後は楽勝?の「筆記重視型」です。
残りの2タイプとして,一次・二次の合格率とも全県平均より高い「簡単型」と,その反対の「難関型」を設定しました。
大都市の東京は,面接・実技重視型に括られます。古都の京都は,福島と同じく筆記重視型に属します。
東北の青森と岩手は難関型。青森の一次合格率は18.0%,二次合格率は34.0%ですから,全受験者ベースの合格率はたったの6.1%,16人に1人です。まさに「難関」県です。一方,広島は43.1%であり,志望者の5人に2人が教壇に立てるようです。これは,教員の年齢構成というマクロ的な要因の所産でしょう。
さて,上記の散布図では一部の県名しか記せませんでしたが,自分の志望する県がどのタイプか分からない方がおられるといけませんので,タイプごとに塗り分けた地図を掲げておきます。石川は欠損値として斜線模様にしてあります。
教員採用試験の方針は各県の教育委員会が決めるものですが,同タイプが結構固まっていることからして,地域性のようなものも見受けられますね。それもそのはず。筆記か面接かはともかく,簡単県になるか難関県になるかは,人口要因によって決まるものですから。
今回のデータが,教員志望の方の参考になればと思います。また,学術的には,上図にみられるタイプの違いによって,各県の教員集団のパフォーマンスがどう異なるか,という問題が提起され得ることを指摘しておこうと思います。
多くの自治体で教員採用試験の二次試験が実施中,ないしはこれから行われることと思います。受験生諸氏のご健闘をお祈りいたします。
2013年8月23日金曜日
資料:都道府県別の育児休業等利用率
2012年の総務省『就業構造基本調査』にあたって,子育て期の正社員男女の育児休業等利用率を都道府県別に出してみました。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
25~34歳の正規雇用者で育児をしている者のうち,育児休業等制度を利用している者がどれほどいるか,という比率です。
分母の「育児をしている者」とは,「未就学児(小学校入学前の幼児)を対象とした育児」をしている者をいいます。分子の「育児休業等制度を利用している者」は,育児休業,短時間勤務,子の看護休暇,およびその他の制度のいずれかを利用している者のことです(用語解説)。
下表は,都道府県別の一覧表です。47都道府県中の最高値には黄色,最低値には青色のマークをつけました。赤色の数値は上位5位です。
各県の位置を視覚的にみてとれる図も載せておきましょう。横軸に男性,縦軸に女性の利用率をとった座標上に,47都道府県をプロットしたものです。点線は全国値を意味します。
無精して恐縮ですが,コメントは添えません。ネット上でざっとみたところ,県別の育児休業利用率のようなデータはあまり公開されていないようなので,ここにて資料として掲げておこう,と考えた次第であります。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
25~34歳の正規雇用者で育児をしている者のうち,育児休業等制度を利用している者がどれほどいるか,という比率です。
分母の「育児をしている者」とは,「未就学児(小学校入学前の幼児)を対象とした育児」をしている者をいいます。分子の「育児休業等制度を利用している者」は,育児休業,短時間勤務,子の看護休暇,およびその他の制度のいずれかを利用している者のことです(用語解説)。
下表は,都道府県別の一覧表です。47都道府県中の最高値には黄色,最低値には青色のマークをつけました。赤色の数値は上位5位です。
各県の位置を視覚的にみてとれる図も載せておきましょう。横軸に男性,縦軸に女性の利用率をとった座標上に,47都道府県をプロットしたものです。点線は全国値を意味します。
無精して恐縮ですが,コメントは添えません。ネット上でざっとみたところ,県別の育児休業利用率のようなデータはあまり公開されていないようなので,ここにて資料として掲げておこう,と考えた次第であります。
2013年8月22日木曜日
純ニート
無業かつ就業非希望。しかもその理由が,通学,家事・育児,進学準備,ボランティアというような,一般に想定されるものでもない。統計をみると,働き盛りの年齢層でも,こういう人間が結構います。
前回は,20~40代人口のうち,「仕事をする自信がない」という理由での就業非希望者がどれほどいるかを明らかにしましたが,今回注目するのは別の部分です。それは,「特に理由はない」という就業非希望者です。
この層の位置についてイメージしていただくため,当該年齢人口の内訳表を提示しておきましょう。2012年の『就業構造基本調査』をもとに作成したものです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
働き盛りの年齢層のうち,無業かつ就業非希望であり,そのことの理由が定かでない者は49万3千人なり。ベース人口で除した比率にすると10.2‰,およそ100人に1人です。
就業せず,教育も職業訓練も受けていない。これがよくいわれるニート(NEET)ですが,上記の約50万人は,就業意欲すら有しておらず,かつ,その理由が明確でない者です。「なんとなく(だるいから)働きたくね~」。こんな感じでしょうか。
ネーミングが適切か分かりませんが,ニートの純度がより高いという点にかんがみ,ひとまず純ニートと呼んでおくことにしましょう。
2012年では,20~40代の純ニートはおよそ50万人であり,ベース人口あたりの出現率は10.2‰ですが,この統計量を5年前と比較すると,下表のようになります。ジェンダー差もみれるようにしました。
この5年間にかけて,実数でみても出現率でみても,純ニートの量が増えています。男性でみても女性でみても同じです。しかるに,出現率の水準は女性で高いようです。
専業主婦の場合,出産・育児や家事という理由カテゴリーに収まるでしょうから,ここでいう純ニートにはほとんど含まれないと思われます。家事すらお手伝いさんに任せている有閑マダムでしょうか。それとも,親同居の未婚パラサイト女性か。あるいはヒッキー?
いろいろ想像をめぐらすことができますが,上表の出現率が属性条件によってどう変わるかを観察することで,事態を少しは正確に推定できるようになるでしょう。ちょっとばかり試行してみたところ,学歴による差がクリアーであることを知りました。下表をご覧ください。
性を問わず,低学歴群ほど純ニートの出現率が高くなっています。撹乱一つない,きれいな傾向です。中卒女性の場合,母集団あたりの出現率は29.3‰,34人に1人です。
若者の純ニート化は,学歴によ疎外(差別),もっと広くいえば労働市場からの疎外の問題を色濃く含んでいるような気がします。中学時代の不登校経験者や高校中退者がニート化する確率が一般群に比して格段に高いことは,昨年の9月1日の記事でみた通りです。
「ニート=怠け,平和ボケ」という解釈からは,うざったい説教論や精神論しか出てきません。求められるのは,階層的な要因とも関連があることをも見越した,社会的な視座でしょう。政府の白書の類では「階層」という言葉は滅多にでてきませんが,これはおかしなことではないかしらん。
二神能基さんの『ニートがひらく幸福社会ニッポン-進化系人類が働き方・生き方を変える-』明石書店(2012年)を読んで,ニートはこれからの日本を変える「進化系人類」だ,という考えを持ちました。上表のような明瞭な学歴差がないなら,それが補強されたのでしょうが,現実はさにあらず。まだまだ,「社会的排除」の要素を含んだ問題であることに気づかされます。
前回は,20~40代人口のうち,「仕事をする自信がない」という理由での就業非希望者がどれほどいるかを明らかにしましたが,今回注目するのは別の部分です。それは,「特に理由はない」という就業非希望者です。
この層の位置についてイメージしていただくため,当該年齢人口の内訳表を提示しておきましょう。2012年の『就業構造基本調査』をもとに作成したものです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
働き盛りの年齢層のうち,無業かつ就業非希望であり,そのことの理由が定かでない者は49万3千人なり。ベース人口で除した比率にすると10.2‰,およそ100人に1人です。
就業せず,教育も職業訓練も受けていない。これがよくいわれるニート(NEET)ですが,上記の約50万人は,就業意欲すら有しておらず,かつ,その理由が明確でない者です。「なんとなく(だるいから)働きたくね~」。こんな感じでしょうか。
ネーミングが適切か分かりませんが,ニートの純度がより高いという点にかんがみ,ひとまず純ニートと呼んでおくことにしましょう。
2012年では,20~40代の純ニートはおよそ50万人であり,ベース人口あたりの出現率は10.2‰ですが,この統計量を5年前と比較すると,下表のようになります。ジェンダー差もみれるようにしました。
この5年間にかけて,実数でみても出現率でみても,純ニートの量が増えています。男性でみても女性でみても同じです。しかるに,出現率の水準は女性で高いようです。
専業主婦の場合,出産・育児や家事という理由カテゴリーに収まるでしょうから,ここでいう純ニートにはほとんど含まれないと思われます。家事すらお手伝いさんに任せている有閑マダムでしょうか。それとも,親同居の未婚パラサイト女性か。あるいはヒッキー?
いろいろ想像をめぐらすことができますが,上表の出現率が属性条件によってどう変わるかを観察することで,事態を少しは正確に推定できるようになるでしょう。ちょっとばかり試行してみたところ,学歴による差がクリアーであることを知りました。下表をご覧ください。
性を問わず,低学歴群ほど純ニートの出現率が高くなっています。撹乱一つない,きれいな傾向です。中卒女性の場合,母集団あたりの出現率は29.3‰,34人に1人です。
若者の純ニート化は,学歴によ疎外(差別),もっと広くいえば労働市場からの疎外の問題を色濃く含んでいるような気がします。中学時代の不登校経験者や高校中退者がニート化する確率が一般群に比して格段に高いことは,昨年の9月1日の記事でみた通りです。
「ニート=怠け,平和ボケ」という解釈からは,うざったい説教論や精神論しか出てきません。求められるのは,階層的な要因とも関連があることをも見越した,社会的な視座でしょう。政府の白書の類では「階層」という言葉は滅多にでてきませんが,これはおかしなことではないかしらん。
二神能基さんの『ニートがひらく幸福社会ニッポン-進化系人類が働き方・生き方を変える-』明石書店(2012年)を読んで,ニートはこれからの日本を変える「進化系人類」だ,という考えを持ちました。上表のような明瞭な学歴差がないなら,それが補強されたのでしょうが,現実はさにあらず。まだまだ,「社会的排除」の要素を含んだ問題であることに気づかされます。
2013年8月21日水曜日
仕事をする自信がない
人口は,就業という観点からすると,有業者と無業者に大別されます。後者の無業者は,就業意欲の有無において,就業希望者と就業非希望者に分かたれます。
ここまでの内訳は,新聞や白書等でしばしば報じられるのですが,私は,就業非希望者の理由構成に関心を持ちます。まあ,通学や育児・家事が大半でしょうが,総務省『就業構造基本調査』をみると,他にも細かい理由カテゴリーが設けられているようです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
最新の2012年調査によると,同年10月時点の20~40代人口は4,812万人。この働き盛りの年齢層の内訳を解剖すると,下表のようになります。就業非希望者については,就業を希望しない理由ごとの数を示しています。
当然ですが,この年齢層では働いている者がほとんどで,全体の8割を占めています。残りの2割が無業者ですが,無業者の中でも,就業を希望しない者よりは,それを希望する者のほうが多いようです。足繁くハロワ等に通っておられる方でしょう。
ここまでで全体の91.4%が占められ,残りの8.6%が就業を希望しない無業者です。理由ごとの数をみると,通学や育児というものが多くなっています。学生や専業主婦でしょう。その次に多いのが「特に理由なし」ですが,これは純粋ニートに相当するのではないかしらん。
この部分に焦点を合わせるのは別の機会にして,今回注目したいのは,「仕事をする自信がない」という理由による就業非希望者です。最近,自分のスキルや人づきあいへの不安から,就労に踏み出せない者が増えているといわれます。この理由カテゴリーによる就業非希望者数をもとに,実態をみてみましょう。
上表によると,「仕事をする自信がない」という理由による,20~40代の就業非希望者は約11万人。ベース人口1万人あたりの数にすると,23.0人となります。
5年前の2007年調査では,この数は8万9千人ほどであり,1万人あたりの出現率は17.9でした。ほう。絶対数,出現率とも増加をみています。働き盛りの層において,「仕事をする自信がない」という者が増えていることが知られます。私もそのうちの一人かも。
以上は,20~40代と広く括った場合ですが,より細かい属性ごとの傾向も出してみましょう。性別・年齢層別に,「仕事をする自信がない」就業非希望者の出現率を計算してみました。同じく,ベース人口1万人あたりの数です。
男性の40代後半を除く全ての層において,出現率が高まっています。増加倍率が最高なのは,男性は40代前半,女性は30代前半です。バリバリの働き盛りですね。
ところで,年齢による変化は性によって違っており,男性は若年層ほど高く,女性はその逆になっています。女性は,育児の手間が少なくなり,そろそろ(再び)働こうかという段になって大きな不安が押し寄せる,ということでしょうか。就業未経験,ないしは就業中断に由来するものです。
そういうイベントのない男性では,就業への不安は,20代の入職期に集中しています。この点は,学校から社会への移行期にまつわる問題の一面と捉えることができるでしょう。ブラック企業で酷い目に遭い,そうしたトラウマから「仕事をする自信がない」とふさぎ込んでしまう若者が増えている,という解釈も可能かと思います。
入職・再就職の双方の過程において,働くことへの不安の量が増えていることが分かりました。これは,大学等の中等後教育機関における職業教育の問題,再就職への橋渡しに関わる条件整備の不足の問題,就業者にトラウマを与えるようなブラック企業,さらには若者の対人関怠避など,多様な問題要素を含んでいるでしょう。
「仕事をする自信がない」 という不安の内実がもっと具体的に分かれば,と思います。上でちょっと書いたように,スキルへの不安なのか,組織で対人関係を持つことに対する不安なのか・・・。どの面が大きいかによって,問題への対処の在り方も変わってきます。私としては,後者の部分が結構大きいように思えるのですが。職業教育の未熟・不足という問題だけに集約されるべきではないでしょう。
最初の表でみたように,就業非希望の理由は,他にもいろいろあります。興味を持ったものについて,より仔細なデータをつくってみるのも面白いかと存じます。次回は,「特に理由なし」という就業非希望者(≒純粋ニート)に着目してみようかと。こちらは数が多いので,都道府県別の数値も出せそうです。
ここまでの内訳は,新聞や白書等でしばしば報じられるのですが,私は,就業非希望者の理由構成に関心を持ちます。まあ,通学や育児・家事が大半でしょうが,総務省『就業構造基本調査』をみると,他にも細かい理由カテゴリーが設けられているようです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
最新の2012年調査によると,同年10月時点の20~40代人口は4,812万人。この働き盛りの年齢層の内訳を解剖すると,下表のようになります。就業非希望者については,就業を希望しない理由ごとの数を示しています。
当然ですが,この年齢層では働いている者がほとんどで,全体の8割を占めています。残りの2割が無業者ですが,無業者の中でも,就業を希望しない者よりは,それを希望する者のほうが多いようです。足繁くハロワ等に通っておられる方でしょう。
ここまでで全体の91.4%が占められ,残りの8.6%が就業を希望しない無業者です。理由ごとの数をみると,通学や育児というものが多くなっています。学生や専業主婦でしょう。その次に多いのが「特に理由なし」ですが,これは純粋ニートに相当するのではないかしらん。
この部分に焦点を合わせるのは別の機会にして,今回注目したいのは,「仕事をする自信がない」という理由による就業非希望者です。最近,自分のスキルや人づきあいへの不安から,就労に踏み出せない者が増えているといわれます。この理由カテゴリーによる就業非希望者数をもとに,実態をみてみましょう。
上表によると,「仕事をする自信がない」という理由による,20~40代の就業非希望者は約11万人。ベース人口1万人あたりの数にすると,23.0人となります。
5年前の2007年調査では,この数は8万9千人ほどであり,1万人あたりの出現率は17.9でした。ほう。絶対数,出現率とも増加をみています。働き盛りの層において,「仕事をする自信がない」という者が増えていることが知られます。私もそのうちの一人かも。
以上は,20~40代と広く括った場合ですが,より細かい属性ごとの傾向も出してみましょう。性別・年齢層別に,「仕事をする自信がない」就業非希望者の出現率を計算してみました。同じく,ベース人口1万人あたりの数です。
男性の40代後半を除く全ての層において,出現率が高まっています。増加倍率が最高なのは,男性は40代前半,女性は30代前半です。バリバリの働き盛りですね。
ところで,年齢による変化は性によって違っており,男性は若年層ほど高く,女性はその逆になっています。女性は,育児の手間が少なくなり,そろそろ(再び)働こうかという段になって大きな不安が押し寄せる,ということでしょうか。就業未経験,ないしは就業中断に由来するものです。
そういうイベントのない男性では,就業への不安は,20代の入職期に集中しています。この点は,学校から社会への移行期にまつわる問題の一面と捉えることができるでしょう。ブラック企業で酷い目に遭い,そうしたトラウマから「仕事をする自信がない」とふさぎ込んでしまう若者が増えている,という解釈も可能かと思います。
入職・再就職の双方の過程において,働くことへの不安の量が増えていることが分かりました。これは,大学等の中等後教育機関における職業教育の問題,再就職への橋渡しに関わる条件整備の不足の問題,就業者にトラウマを与えるようなブラック企業,さらには若者の対人関怠避など,多様な問題要素を含んでいるでしょう。
「仕事をする自信がない」 という不安の内実がもっと具体的に分かれば,と思います。上でちょっと書いたように,スキルへの不安なのか,組織で対人関係を持つことに対する不安なのか・・・。どの面が大きいかによって,問題への対処の在り方も変わってきます。私としては,後者の部分が結構大きいように思えるのですが。職業教育の未熟・不足という問題だけに集約されるべきではないでしょう。
最初の表でみたように,就業非希望の理由は,他にもいろいろあります。興味を持ったものについて,より仔細なデータをつくってみるのも面白いかと存じます。次回は,「特に理由なし」という就業非希望者(≒純粋ニート)に着目してみようかと。こちらは数が多いので,都道府県別の数値も出せそうです。
2013年8月19日月曜日
貯蓄ジニ係数
社会は,有する富の量を異にする人々から成り立っています。各人の富量の指標としては収入がよく用いられますが,貯蓄という側面にも注意する必要があるでしょう。収入が少なくても(なくても),貯蓄で暮らしている人だっているわけですから。
各世帯の貯蓄額分布が分かる公的資料としては,厚労省の『国民生活基礎調査』がありますが,本調査において貯蓄が調査項目に加えられたのは,つい最近のようです。よって,長期的な時系列をたどれない,という難点があります。
そこで私は,金融広報中央委員会が毎年実施している『家計の金融行動に関する世論調査』のデータを使うことにしました。この調査から,1991~2012年現在までの,2人以上世帯の貯蓄額分布の変化を明らかにすることができます。単身世帯が調査対象に含まれていませんが,この点はよしとしましょう。
http://www.shiruporuto.jp/finance/chosa/yoron2012fut/
下図は,本調査の時系列データをもとに,2人以上世帯の貯蓄額(金融資産保有額)の分布がどう変わってきたかを図示したものです。無回答の世帯は除外しています。
この20年間で,貯蓄がゼロという世帯が増えてきています。バブル末期の1991年では8.6%でしたが,2012年現在では28.0%にもなっています。最も高かったのは2011年の30.6%です。これは,11日のサンケイビズの記事でもいわれているように,東日本大震災の影響でしょう。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/130811/ecc1308111830007-n1.htm
現在では,全世帯のおよそ3割が貯蓄なしの世帯です。湯浅誠さん流にいうと「溜め」がない世帯。ここでいう「溜め」とは金銭だけに限られませんが,何かのきかっけで生活が即崩壊するリスクのある人々が増えていることは確かだろうと思います。
一方,図の上のほうをみると,3,000万以上がっつり溜めこんでいる世帯の比重もわずかながら増えています(7.4%→10.9%)。ふうむ。収入格差ならぬ貯蓄格差の拡大を匂わせる図柄です。
上記の分布データを使って,貯蓄額の不平等度を測るジニ係数を,それぞれの年について出してみましょう。名づけて,貯蓄ジニ係数。最新の2012年を例にして,計算の過程を提示します。
2012年調査において,貯蓄の有無ないしは貯蓄額が把握されるのは3,648世帯。この世帯を12の階層に分け,各階層の世帯が有する貯蓄額の総量を出したのが,表中の貯蓄量です。
階級値の考え方に依拠して,100万円台の世帯は一律に150万円,200万円台は一律250万円,というように仮定しましょう。すると,調査対象の3,648世帯が有する貯蓄額総量は,364億1,400万円となります。
この莫大な貯蓄量が12の階層にどう配分されているかを相対度数の欄でみると,一番上の階層が全体の43.5%をもせしめているではありませんか。この階層は,量の上では全体のわずか10.9%しか占めていないにもかかわらずです。
逆にいうと,累積相対度数のマークの箇所をみれば分かるように,全体の半分を占める貯蓄額500万未満の世帯には,貯蓄総量の5.2%しか行き届いていません。すさまじい偏りですね。
こうした偏りを,ローレンツ曲線を描いて可視化してみましょう。横軸に世帯数,縦軸に貯蓄量の累積相対度数をとった座標上に12の階層をプロットし,線でつないだものです。実線は2012年,点線は1991年の曲線です。
「失われた20年」にかけて,曲線の底が深くなってきています。すなわち,貯蓄の世帯間格差が拡大した,ということです。
われわれが求めようとしているジニ係数とは,対角線と曲線で囲まれた部分の面積を2倍した値です。算出された係数値は,1991年が0.537,2012年が0.640なり。
以前に比して値がアップしていることに加えて,0.6を超えるという絶対水準の高さにも驚かされます。昨年の11月30日の記事で計算した,収入のジニ係数は0.4ほどでしたが,ここではじき出された貯蓄のジニ係数は,それよりもうんと高くなっています。単身世帯も含めれば,値はもっと跳ね上がるでしょう。
それはさておいて,1991~2012年の貯蓄ジニ係数の逐年推移をたどると,下図のようになります。今世紀以降に値が上昇し(小泉政権の影響?),震災が起きた2011年に0.643とピークになっています。
わが国において人々の収入格差が開いていることはよく聞きますが,貯蓄の格差も拡大してきているようです。さらに,格差の規模でいうと,前者よりも後者においてはるかに大きいことも知りました。
人々が有する富とは,インカムとプールという2つの要素からなりますが,これから先,高齢化が進行するなか,後者の面により注意を払う必要があるでしょう。推測ですが,貯蓄格差がとりわけ大きいのは高齢層であると思われます。
祖父母から孫への教育援助を非課税にする動きがあります。貯め込んだお金を使っていただこうという意図には賛成ですが,高齢世代の貯蓄格差が,子の世代の教育格差となって現出しないかどうか。こういう点にも目を向けていかなければなりますまい。
ところで,金銭的な「溜め」を持たない人が増えているなか,今後は,困った時に助け合う「人間関係」面での溜めが重要になってくるでしょう。ちょっと格好つけていうと,社会関係資本です。
国立社会保障・人口問題研究所の『生活と支え合いに関する調査』にて,人づきあいの頻度とか調査されていたような気がします。これを使って,関係面での「溜め」のジニ係数とか出せないかしらん。「孤族」という言葉に象徴されるように,一人ぼっちの人間が増えていますので,こういう面での「溜め」の格差も広がってきていると思うけどなあ。今後の作業メモとして記録。
各世帯の貯蓄額分布が分かる公的資料としては,厚労省の『国民生活基礎調査』がありますが,本調査において貯蓄が調査項目に加えられたのは,つい最近のようです。よって,長期的な時系列をたどれない,という難点があります。
そこで私は,金融広報中央委員会が毎年実施している『家計の金融行動に関する世論調査』のデータを使うことにしました。この調査から,1991~2012年現在までの,2人以上世帯の貯蓄額分布の変化を明らかにすることができます。単身世帯が調査対象に含まれていませんが,この点はよしとしましょう。
http://www.shiruporuto.jp/finance/chosa/yoron2012fut/
下図は,本調査の時系列データをもとに,2人以上世帯の貯蓄額(金融資産保有額)の分布がどう変わってきたかを図示したものです。無回答の世帯は除外しています。
この20年間で,貯蓄がゼロという世帯が増えてきています。バブル末期の1991年では8.6%でしたが,2012年現在では28.0%にもなっています。最も高かったのは2011年の30.6%です。これは,11日のサンケイビズの記事でもいわれているように,東日本大震災の影響でしょう。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/130811/ecc1308111830007-n1.htm
現在では,全世帯のおよそ3割が貯蓄なしの世帯です。湯浅誠さん流にいうと「溜め」がない世帯。ここでいう「溜め」とは金銭だけに限られませんが,何かのきかっけで生活が即崩壊するリスクのある人々が増えていることは確かだろうと思います。
一方,図の上のほうをみると,3,000万以上がっつり溜めこんでいる世帯の比重もわずかながら増えています(7.4%→10.9%)。ふうむ。収入格差ならぬ貯蓄格差の拡大を匂わせる図柄です。
上記の分布データを使って,貯蓄額の不平等度を測るジニ係数を,それぞれの年について出してみましょう。名づけて,貯蓄ジニ係数。最新の2012年を例にして,計算の過程を提示します。
2012年調査において,貯蓄の有無ないしは貯蓄額が把握されるのは3,648世帯。この世帯を12の階層に分け,各階層の世帯が有する貯蓄額の総量を出したのが,表中の貯蓄量です。
階級値の考え方に依拠して,100万円台の世帯は一律に150万円,200万円台は一律250万円,というように仮定しましょう。すると,調査対象の3,648世帯が有する貯蓄額総量は,364億1,400万円となります。
この莫大な貯蓄量が12の階層にどう配分されているかを相対度数の欄でみると,一番上の階層が全体の43.5%をもせしめているではありませんか。この階層は,量の上では全体のわずか10.9%しか占めていないにもかかわらずです。
逆にいうと,累積相対度数のマークの箇所をみれば分かるように,全体の半分を占める貯蓄額500万未満の世帯には,貯蓄総量の5.2%しか行き届いていません。すさまじい偏りですね。
こうした偏りを,ローレンツ曲線を描いて可視化してみましょう。横軸に世帯数,縦軸に貯蓄量の累積相対度数をとった座標上に12の階層をプロットし,線でつないだものです。実線は2012年,点線は1991年の曲線です。
「失われた20年」にかけて,曲線の底が深くなってきています。すなわち,貯蓄の世帯間格差が拡大した,ということです。
われわれが求めようとしているジニ係数とは,対角線と曲線で囲まれた部分の面積を2倍した値です。算出された係数値は,1991年が0.537,2012年が0.640なり。
以前に比して値がアップしていることに加えて,0.6を超えるという絶対水準の高さにも驚かされます。昨年の11月30日の記事で計算した,収入のジニ係数は0.4ほどでしたが,ここではじき出された貯蓄のジニ係数は,それよりもうんと高くなっています。単身世帯も含めれば,値はもっと跳ね上がるでしょう。
それはさておいて,1991~2012年の貯蓄ジニ係数の逐年推移をたどると,下図のようになります。今世紀以降に値が上昇し(小泉政権の影響?),震災が起きた2011年に0.643とピークになっています。
わが国において人々の収入格差が開いていることはよく聞きますが,貯蓄の格差も拡大してきているようです。さらに,格差の規模でいうと,前者よりも後者においてはるかに大きいことも知りました。
人々が有する富とは,インカムとプールという2つの要素からなりますが,これから先,高齢化が進行するなか,後者の面により注意を払う必要があるでしょう。推測ですが,貯蓄格差がとりわけ大きいのは高齢層であると思われます。
祖父母から孫への教育援助を非課税にする動きがあります。貯め込んだお金を使っていただこうという意図には賛成ですが,高齢世代の貯蓄格差が,子の世代の教育格差となって現出しないかどうか。こういう点にも目を向けていかなければなりますまい。
ところで,金銭的な「溜め」を持たない人が増えているなか,今後は,困った時に助け合う「人間関係」面での溜めが重要になってくるでしょう。ちょっと格好つけていうと,社会関係資本です。
国立社会保障・人口問題研究所の『生活と支え合いに関する調査』にて,人づきあいの頻度とか調査されていたような気がします。これを使って,関係面での「溜め」のジニ係数とか出せないかしらん。「孤族」という言葉に象徴されるように,一人ぼっちの人間が増えていますので,こういう面での「溜め」の格差も広がってきていると思うけどなあ。今後の作業メモとして記録。
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