月末恒例の,教員不祥事報道のまとめです。今月私がキャッチした,教員がらみの不祥事報道は49件です。 先月よりもちょっと減っています。
記事名,日付,メディア名に加えて,処分を受けた教員の属性を記録しておきます。件の詳細を知りたい方は,記事名でググってみてください。
わいせつが多いのは毎月のことですが,児童に暴言を吐く,仕事のストレスを麻薬で紛らわせる,というような事案も顔をのぞかせています。教員の世界にも「イライラ」は相当蔓延しているようです。
教員の不祥事(犯罪)防止にあたっては,研修を強化するのもいいですが,それと並行して,勤務条件の改善等もなすべきでしょう。「締め付け」と「緩め」の双方がなされねばなりませんが,私のみるところ,前者に偏しているような印象を持ちます。このような不均衡の是正が求められると思います。
明日から7月。夏も盛りです。体調を崩されませぬよう,ご自愛のほど。
<2013年6月の教員不祥事>
・金曜夜は生徒と校内マージャン 大阪の中学教諭を処分へ(6/1,朝日,大阪,中,男,57)
・名作と誤って教室でアダルトビデオ再生した教諭(6/1,読売,香川,中,男,50代)
・中学教諭、盗撮目的で住居侵入容疑 女子中学生のぞく (6/2,朝日,三重,中,男,32)
・児童女子トイレにカメラ…「自分が」と男性教諭(6/4,読売,滋賀,小,男,40代)
・北照高スキー部監督、遠征先の韓国で酒飲み体罰(6/5,読売,北海道,高,男,35)
・保護者は見た…男女教諭が体育館で不適切行為(6/6,読売,埼玉,小,40代男女)
・複数児童に「死ね」「ごみ」…44歳教諭を停職3ヶ月(6/6,読売,栃木,小,男,44)
・児童への不適切な言動,体罰(6/6,読売,栃木,小・男44,中・男50)
・<建造物侵入容疑>中学校に日本代表の落書き 教諭逮捕(6/6,毎日,愛知,中,男,26)
・児童と不適切メール、小学校教諭を懲戒処分(6/6,読売,青森,小,男,46)
・戒告処分:スピード違反の延岡・教諭を(6/6,毎日,宮崎,小,男,45)
・生徒に「脳みそ手術しなさい」で謝罪の女性教諭(6/7,読売,宮城,中,女,40代)
・酒気帯び運転:逮捕の35歳教諭、懲戒免職(6/8,毎日,福岡,中,男,35)
・わいせつ容疑で逮捕 小学校教諭懲戒免職(6/8,産経,宮城,小,男,48)
・盗撮:吉野川市の小学校教諭を容疑で摘発(6/9,毎日,徳島,小,男,53)
・喉にオレンジ詰まらせ児童脳障害…教諭書類送検(6/10,読売,宮城,特,女,45)
・吹奏楽部女性顧問、部員に「消えろ」「邪魔」 山形の県立高校
(6/11,産経,山形,高,女,30代)
・強制わいせつ容疑で中学教諭逮捕=路上で女性の体触る
(6/11,時事通信,埼玉,中,男,24)
・<体罰>強豪テニス部顧問が主将平手打ち 奈良・高田商高
(6/12,毎日,奈良,高,男,55)
・児童ポルノ提供容疑 埼玉の小学校教諭逮捕(6/12,産経,埼玉,小,男,25)
・市立小教諭、女子大生のスカートにスマホかざす (6/13,読売,大阪,小,男,29)
・男子中高生3人を買春容疑、大阪 元男性教諭を逮捕(6/14,共同通信,大阪,小,男,31)
・保護者に暴行の中学教諭ら処分 県教委(6/15,産経,広島,中,男,58)
・同上:担任学級で実施したテストの答案用紙1572枚のうち910枚を紛失
(6/15,産経,広島,小,女男,46)
・同上:ストーブに給油する際、過失で教室の一部が燃える火災
(6/15,産経,広島,高,男,54)
・テスト3年分、大半返却せず…女性教諭を減給(6/15,読売,広島,小,女,46)
・部活出張旅費など72万円不正受給、高校教諭を懲戒免職(6/18,産経,新潟,高,男,47)
・同上:生徒に体罰を行った(6/18,産経,新潟,高,男,50代)
・パチンコカード盗んだ教諭、書類送検隠し授業(6/18,読売,愛知,小,男,27)
・済美高の教諭を書類送検 自動車運転過失傷害容疑 (6/18,朝日,兵庫,高,男,37)
・仕事のストレス…麻薬輸入の教諭、使用で再逮捕(6/18,読売,広島,小,男,41)
・選抜出場の京都翔英 野球部コーチが体罰 学生野球協会、謹慎処分
(6/20,産経,京都,高,男,27)
・「体罰もありだよね」20代女性教諭がツイート (6/20,読売,大阪,中,女,20代)
・部活顧問が部員に「人間のくずだ」 米沢の中学校、地区総体で発言
(6/20,山形新聞,山形,中,男,50代)
・違法ドラッグ密輸容疑、小学教諭を逮捕(6/22,朝日,愛知,小,男,43)
・ネット上の投稿動画で教師の体罰発覚 大阪の私立高校(6/24,産経,大阪,高,男)
・痴漢容疑で特別支援学校の教諭逮捕(6/24,産経,神奈川,特,男,56)
・「胸が見たくなった」教諭、校内で女児の胸触る(6/26,読売,福島,小,男,37)
・「犠牲者作れば真剣に」逆立ち20分強要 中学教諭懲戒(6/26,朝日,兵庫,中,男,27)
・女子生徒触った高校教諭を停職処分(6/27,埼玉新聞,埼玉,高,男,43)
・兵庫・西宮の県立高校教諭、発表前に合格漏らす (6/27,朝日,兵庫,高,男,48)
・松江工の実習助手 懲戒免職処分 盗撮目的トイレ侵入(6/27,産経,島根,高,男,37)
・我孫子市立中学の調査書ミス 当時の校長を戒告処分(6/27,産経,千葉,中,男,56)
・教室にデジカメ、女児着替え盗撮の教諭懲戒免職(6/27,読売,茨城,小,男,32)
・スカート内盗撮で中学教諭免職=通販でカメラ購入(6/27,時事通信,広島,中,男,54)
・女子生徒にキス 教諭を懲戒免職(6/27,北海道新聞,北海道,高,男,37)
・テニス部顧問「殺すぞ」 石川の高校 (6/28,産経,石川,高,男,40代)
・延岡学園高で体罰 男子部員の顔たたく(6/29,宮崎日日,宮崎,高,男,48)
・女子児童の着替え盗撮しようとした男性教諭謝罪(6/29,読売,岐阜,小,男,34)
2013年6月30日日曜日
2013年6月27日木曜日
家計を支える女性の国際比較
二神能基さんの『ニートがひらく幸福社会ニッポン-進化系人類が働き方・生き方を変える-』明石書店(2012年)を読んでいます。よくあるような,ニートへの説教論とは違った内容にひかれ,図書館で借りてきました。
今,第一章を読み終えたところですが,これがまた面白い。「ニートの魅力に気づいた女性たち」,「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼の『男らしさ』」等,興味深いケース報告が盛りだくさんです。
定職もないニート男と結婚する女性なんているわけない。こういう思い込みが蔓延していますが,それは100%妥当というのではありません。男女共同参画社会の進展により,定職を持つ女性が増えていますが,彼女らの中には,自分よりガシガシ稼ぐ男性よりも,癒しを提供してくれる男性を求める向きもあるのだそうな。
分かる気がします。仕事のことで常日頃イライラを募らせている男性よりも,稼ぎはなくともよいから,家事や育児をやってくれて,かつ,疲れて帰宅した自分を癒してくれる男性のほうがいい。こう考える女性が一定量いるとしても,何ら不可解なことではありません。
上記の「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼」とは,小学校の正規教員の女性と結婚した,バイト暮らしの男性です。教員にとって,今の職場はまさに戦場。せめて家庭くらいは,あらゆる緊張や葛藤から解放されることのできる,安らぎの場であってほしい。ニート男性は,それを実現してくれる条件を持った存在といえるのかもしれません。
さて私は,こういうケース報告に接すると,マクロな統計でみてそれはどれくらい存在するのか,という関心を持ちます。今回は,家計を主に支える女性の量でもって,この点を測ってみようと思います。
毎度利用する『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)では,15歳以上の対象者に対し,「お宅の家計を支えているのはあなたですか」と尋ねています。この問いに対し,「はい」or「いいえ」の有効回答を寄せた,日本の有配偶女性は371人。このうち「はい」という者は18人。比率にすると4.9%です。
パートナーがいる女性のうち,家計を主に支えている者(chief wage earner)は4.9%,20人に1人というところです。まあ,数でみるとこんなものでしょうか。
この調査は国際調査ですので,他国についても同じ値を出すことが可能です。日本を含む51か国について,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率を出し,高い順に並べてみました。このデータは,WVSサイトのオンライン集計ツールを使って,私が独自に作成したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
世界を見渡すと,女性が頑張っている社会が結構ありますね。最高は南米のペルーの42.8%,その次は北欧のフィンランドで36.1%です。二神さんの本でいわれている「ニートを愛する女性」がマイノリティーではない社会なのだと思われます。
日本はというと,4.9%という絶対値の低さもさることながら,51か国中の相対順位も低くなっています。下から3番目です。もうちと高い位置にあるかと思っていましたが,現実はこうなのですね。
これは各国の社会文化的な要因の所産であり,どうにも動かし難いものだという悲観を持たれるかもしれませんが,それは違うと思います。このことは,過去との比較から知られます。
私は,第3回『世界価値観調査』のデータを用いて,上図の51か国のうちの21か国について,同じ指標を出してみました。1990年頃の値です。上図の2005年近辺の数値と比べることで,1990年代以降の変化を明らかにしてみましょう。下図をみてください。
斜線の均等線よりも上にあるのは,この期間中に,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率がアップした社会です。フィンランドは17.8%から36.1%と倍増しています。ブラジルに至っては,伸び幅がもっと大きくなっています。値はすこぶる可変的です。
わが国は微変動にとどまっていますが,今後どうなるかは分かりません。男女共同参画に向けた取組は強まることはあれその逆はないでしょう。また,「男性不況」という言葉があるように,今の日本では製造業の比重が縮まり,代わって福祉・介護のような分野の市場が開けてきています。
こういう状況変化のなか,「ニートを愛する女性」,「ヒモで生きることを決意する男性」も増えてくることでしょう。それは,否定的に捉えられるべきことではありません。
また,もっと基底の部分では,結婚観の変化もじわじわと進行しているのではないかと思われます。双方の家柄が釣り合うか,相手の生涯獲得見込み所得はナンボかを気にした,算盤片手の結婚は,二神さんの言葉を借りると,物々交換にも似た「20世紀型価値観」に基づく結びつきです。
しかし21世紀の社会では,そういう条件だけにとらわれない,相手の内面や人間性にも思いを寄せた,「21世紀型価値観」に依拠した結婚が台頭してくることでしょう。昔みたいに,がつがつと「モノ」を追い求める時代ではなくなっています。若者に「欲しいものは何か」と尋ねても,「別に・・・」という素っ気ない反応が返ってくる時代です。
家計を支える女性の割合は,こういう社会変化がどれほど進行しているかを教えてくれるメルクマールでもあります。まさに,21世紀型社会の指標です。これから先,注意して観察していきたい指標の一つといえるでしょう。
今,第一章を読み終えたところですが,これがまた面白い。「ニートの魅力に気づいた女性たち」,「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼の『男らしさ』」等,興味深いケース報告が盛りだくさんです。
定職もないニート男と結婚する女性なんているわけない。こういう思い込みが蔓延していますが,それは100%妥当というのではありません。男女共同参画社会の進展により,定職を持つ女性が増えていますが,彼女らの中には,自分よりガシガシ稼ぐ男性よりも,癒しを提供してくれる男性を求める向きもあるのだそうな。
分かる気がします。仕事のことで常日頃イライラを募らせている男性よりも,稼ぎはなくともよいから,家事や育児をやってくれて,かつ,疲れて帰宅した自分を癒してくれる男性のほうがいい。こう考える女性が一定量いるとしても,何ら不可解なことではありません。
上記の「ヒモで生きる覚悟を決めた38歳の彼」とは,小学校の正規教員の女性と結婚した,バイト暮らしの男性です。教員にとって,今の職場はまさに戦場。せめて家庭くらいは,あらゆる緊張や葛藤から解放されることのできる,安らぎの場であってほしい。ニート男性は,それを実現してくれる条件を持った存在といえるのかもしれません。
さて私は,こういうケース報告に接すると,マクロな統計でみてそれはどれくらい存在するのか,という関心を持ちます。今回は,家計を主に支える女性の量でもって,この点を測ってみようと思います。
毎度利用する『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)では,15歳以上の対象者に対し,「お宅の家計を支えているのはあなたですか」と尋ねています。この問いに対し,「はい」or「いいえ」の有効回答を寄せた,日本の有配偶女性は371人。このうち「はい」という者は18人。比率にすると4.9%です。
パートナーがいる女性のうち,家計を主に支えている者(chief wage earner)は4.9%,20人に1人というところです。まあ,数でみるとこんなものでしょうか。
この調査は国際調査ですので,他国についても同じ値を出すことが可能です。日本を含む51か国について,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率を出し,高い順に並べてみました。このデータは,WVSサイトのオンライン集計ツールを使って,私が独自に作成したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
世界を見渡すと,女性が頑張っている社会が結構ありますね。最高は南米のペルーの42.8%,その次は北欧のフィンランドで36.1%です。二神さんの本でいわれている「ニートを愛する女性」がマイノリティーではない社会なのだと思われます。
日本はというと,4.9%という絶対値の低さもさることながら,51か国中の相対順位も低くなっています。下から3番目です。もうちと高い位置にあるかと思っていましたが,現実はこうなのですね。
これは各国の社会文化的な要因の所産であり,どうにも動かし難いものだという悲観を持たれるかもしれませんが,それは違うと思います。このことは,過去との比較から知られます。
私は,第3回『世界価値観調査』のデータを用いて,上図の51か国のうちの21か国について,同じ指標を出してみました。1990年頃の値です。上図の2005年近辺の数値と比べることで,1990年代以降の変化を明らかにしてみましょう。下図をみてください。
斜線の均等線よりも上にあるのは,この期間中に,有配偶女性中の「主たる家計支持者」比率がアップした社会です。フィンランドは17.8%から36.1%と倍増しています。ブラジルに至っては,伸び幅がもっと大きくなっています。値はすこぶる可変的です。
わが国は微変動にとどまっていますが,今後どうなるかは分かりません。男女共同参画に向けた取組は強まることはあれその逆はないでしょう。また,「男性不況」という言葉があるように,今の日本では製造業の比重が縮まり,代わって福祉・介護のような分野の市場が開けてきています。
こういう状況変化のなか,「ニートを愛する女性」,「ヒモで生きることを決意する男性」も増えてくることでしょう。それは,否定的に捉えられるべきことではありません。
また,もっと基底の部分では,結婚観の変化もじわじわと進行しているのではないかと思われます。双方の家柄が釣り合うか,相手の生涯獲得見込み所得はナンボかを気にした,算盤片手の結婚は,二神さんの言葉を借りると,物々交換にも似た「20世紀型価値観」に基づく結びつきです。
しかし21世紀の社会では,そういう条件だけにとらわれない,相手の内面や人間性にも思いを寄せた,「21世紀型価値観」に依拠した結婚が台頭してくることでしょう。昔みたいに,がつがつと「モノ」を追い求める時代ではなくなっています。若者に「欲しいものは何か」と尋ねても,「別に・・・」という素っ気ない反応が返ってくる時代です。
家計を支える女性の割合は,こういう社会変化がどれほど進行しているかを教えてくれるメルクマールでもあります。まさに,21世紀型社会の指標です。これから先,注意して観察していきたい指標の一つといえるでしょう。
2013年6月25日火曜日
マスメディアへの信頼度の国際比較
日本は面積は狭小ですが,人口的には1億2千万人もの成員を抱えた超巨大国家です。こういう社会では,無数の匿名大衆に情報を伝達するマスコミュニケーションが重要な位置を占めており,そのための手段として,マスメディアが用いられています。
マス(大衆)に情報を伝達するメディアの総称ですが,新聞やテレビ等に加えて,最近ではインターネットも重要な役割を果たすようになっています。私はあまり外に出ませんが,これらのメディアの恩恵により,社会の出来事やニュースをほぼリアルタイムでキャッチできています。ありがたや。
しかし,メディアを操作する側も人間です。誤報に象徴されるように,重大な過ちがなされることもあります。マスメディアは,個々の成員にとっても,彼らを統率する社会にとっても有効なツールですが,あまりに盲目的な信頼を寄せるのは考えものです。
さて,「盲目的」かどうかは別として,日本の国民は,この手のメディアにどれほど信頼を寄せているのでしょう。国際比較によって,わが国の性格づけをしてみようと思います。
用いるのは,『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)のデータです。本調査には,制度・組織への信頼を尋ねる設問が盛られており,そこにて,新聞・雑誌やテレビジョンにどれほど信頼を寄せているかが問われています。
手始めに,新聞・雑誌への信頼度を日米で比べてみましょう。15歳以上の国民の回答内訳を面積図にしてみました。無効回答(DN,NA)を除いた構成比率です。下記サイトのオンライン集計機能を使って,私が独自に計算したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
新聞・雑誌への信頼度は,日本のほうがだいぶ高くなっています。「非常に」と「やや」を足し合わせた広義の信頼率は,日本では74.6%にもなりますが,アメリカでは23.9%にとどまっています。逆にいえば,この大国では国民の4人に3人が,新聞・雑誌に不信感を持っていることになります。
まあ,日本のほうが信頼率は高いだろうなと踏んでいましたが,ここまで異なるとは,私にとっては驚きです。
では,より広い国際的な布置構造の中に,わが国を位置づけてみましょう。私は,「非常に信頼」と「やや信頼」の回答比率を信頼率とし,横軸に新聞・雑誌,縦軸にテレビへの信頼率をとった座標上に,56の社会を散りばめてみました。点線は,56か国の合算値です。
日本の信頼率は,56の社会の中でみても「上」の分類に属しているようです。先ほどサシで比較したアメリカは「下」の部類です。大まかにいって,マスメディアへの信頼率が高い社会はアジアや発展途上国に多く,西洋ではその逆であることが知られます。*台湾のように例外もありますが。
このデータをどうみたものでしょう。報道関係の方は「名誉なことだ」と喜ばれるかもしれませんが,私としては少しばかり怖い思いを禁じ得ません。
マスメディアは無数の人々に情報を瞬時に伝えてくれますが,発信者がチョイスした(画一)情報が一方通行で流されるわけですから,思想統制の手段として使われる危険性も併せ持っています。
情報を受け取る側はというと,今の日本社会では,あらゆる絆や縁から隔絶された,いうなれば個々バラバラに分断された「大衆」がマジョリティーです。彼らは何らかの「よすが」を求めてやまないのですが,わが国のマスメディアへの信頼率の高さは,そのことの数値的な表現といえるかもしれません。
こうした人々は,マスメディアが一方的に大量伝達する情報によって,思想や心理を簡単に操作される弱さを持っていることに注意を払う必要があるでしょう。世論調査のデータをみると,若者の愛国心や公共心の強さは過去最高になっているとのことですが,そのことは,インターネットという新種のメディアが台頭している現代的な状況と関連していないかどうか・・・。
このような状況下で重要となるのは,一方的に伝達される情報を鵜呑みにしないで「自分で考え力」をつけることであると思います。
学生さんと議論する時,「テレビではこう言ってましたよ」「Wikiにはこう書いてましたよ」という言をよく聞くのですが,マスメディアへの信頼度が低い欧米では,そういうことはあまりないのかもしれません。この伝でいうと,上図の左下のゾーンにある社会のほうが健全度が高いのかも。
文科省の情報教育の方針をみると,情報教育においては,①情報活用の実践力,②情報の科学的な理解,および③情報社会に参画する態度,という資質・能力を身につけさせることを目指すのだそうです(『教育の情報化に関する手引き』2010年)。先ほど述べた「自分で考える力」は,この中の③に含まれると思いますが,当局はそれを認識しているのかしらん。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm
悲しいかな,わが国は機械的な「決めつけ」志向が幅を利かせている社会でもあります。「上司が言うことは間違いない」「上からの命令には従って当然」「苦しいのは自分が悪いから」というように。この上に,法を守ることをしない,やりたい放題の「ブラック企業」のような病理集団が蔓延っているともいえるでしょう。
自分で考えるのは億劫だ,何かすがることができる情報がほしい・・・。今の日本社会に,このような心性が蔓延していることを,今回のデータは示唆しているのかもしれません。話がずんずん逸れてきました。この辺りで止めにします。
マス(大衆)に情報を伝達するメディアの総称ですが,新聞やテレビ等に加えて,最近ではインターネットも重要な役割を果たすようになっています。私はあまり外に出ませんが,これらのメディアの恩恵により,社会の出来事やニュースをほぼリアルタイムでキャッチできています。ありがたや。
しかし,メディアを操作する側も人間です。誤報に象徴されるように,重大な過ちがなされることもあります。マスメディアは,個々の成員にとっても,彼らを統率する社会にとっても有効なツールですが,あまりに盲目的な信頼を寄せるのは考えものです。
さて,「盲目的」かどうかは別として,日本の国民は,この手のメディアにどれほど信頼を寄せているのでしょう。国際比較によって,わが国の性格づけをしてみようと思います。
用いるのは,『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)のデータです。本調査には,制度・組織への信頼を尋ねる設問が盛られており,そこにて,新聞・雑誌やテレビジョンにどれほど信頼を寄せているかが問われています。
手始めに,新聞・雑誌への信頼度を日米で比べてみましょう。15歳以上の国民の回答内訳を面積図にしてみました。無効回答(DN,NA)を除いた構成比率です。下記サイトのオンライン集計機能を使って,私が独自に計算したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
新聞・雑誌への信頼度は,日本のほうがだいぶ高くなっています。「非常に」と「やや」を足し合わせた広義の信頼率は,日本では74.6%にもなりますが,アメリカでは23.9%にとどまっています。逆にいえば,この大国では国民の4人に3人が,新聞・雑誌に不信感を持っていることになります。
まあ,日本のほうが信頼率は高いだろうなと踏んでいましたが,ここまで異なるとは,私にとっては驚きです。
では,より広い国際的な布置構造の中に,わが国を位置づけてみましょう。私は,「非常に信頼」と「やや信頼」の回答比率を信頼率とし,横軸に新聞・雑誌,縦軸にテレビへの信頼率をとった座標上に,56の社会を散りばめてみました。点線は,56か国の合算値です。
日本の信頼率は,56の社会の中でみても「上」の分類に属しているようです。先ほどサシで比較したアメリカは「下」の部類です。大まかにいって,マスメディアへの信頼率が高い社会はアジアや発展途上国に多く,西洋ではその逆であることが知られます。*台湾のように例外もありますが。
このデータをどうみたものでしょう。報道関係の方は「名誉なことだ」と喜ばれるかもしれませんが,私としては少しばかり怖い思いを禁じ得ません。
マスメディアは無数の人々に情報を瞬時に伝えてくれますが,発信者がチョイスした(画一)情報が一方通行で流されるわけですから,思想統制の手段として使われる危険性も併せ持っています。
情報を受け取る側はというと,今の日本社会では,あらゆる絆や縁から隔絶された,いうなれば個々バラバラに分断された「大衆」がマジョリティーです。彼らは何らかの「よすが」を求めてやまないのですが,わが国のマスメディアへの信頼率の高さは,そのことの数値的な表現といえるかもしれません。
こうした人々は,マスメディアが一方的に大量伝達する情報によって,思想や心理を簡単に操作される弱さを持っていることに注意を払う必要があるでしょう。世論調査のデータをみると,若者の愛国心や公共心の強さは過去最高になっているとのことですが,そのことは,インターネットという新種のメディアが台頭している現代的な状況と関連していないかどうか・・・。
このような状況下で重要となるのは,一方的に伝達される情報を鵜呑みにしないで「自分で考え力」をつけることであると思います。
学生さんと議論する時,「テレビではこう言ってましたよ」「Wikiにはこう書いてましたよ」という言をよく聞くのですが,マスメディアへの信頼度が低い欧米では,そういうことはあまりないのかもしれません。この伝でいうと,上図の左下のゾーンにある社会のほうが健全度が高いのかも。
文科省の情報教育の方針をみると,情報教育においては,①情報活用の実践力,②情報の科学的な理解,および③情報社会に参画する態度,という資質・能力を身につけさせることを目指すのだそうです(『教育の情報化に関する手引き』2010年)。先ほど述べた「自分で考える力」は,この中の③に含まれると思いますが,当局はそれを認識しているのかしらん。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm
悲しいかな,わが国は機械的な「決めつけ」志向が幅を利かせている社会でもあります。「上司が言うことは間違いない」「上からの命令には従って当然」「苦しいのは自分が悪いから」というように。この上に,法を守ることをしない,やりたい放題の「ブラック企業」のような病理集団が蔓延っているともいえるでしょう。
自分で考えるのは億劫だ,何かすがることができる情報がほしい・・・。今の日本社会に,このような心性が蔓延していることを,今回のデータは示唆しているのかもしれません。話がずんずん逸れてきました。この辺りで止めにします。
2013年6月23日日曜日
無職中年パラサイトシングル
昨日の『NEWSポストセブン』に「子供が働かなくても一生食べていけるプラン作成をFPが提唱」と題する記事が載っています。
http://www.news-postseven.com/archives/20130622_194810.html
いつまでも働こうとせず,親のスネをかじり続ける・・・。こういう子を持つ親御さんの関心事は,以前は「どうしたら仕事をさせられるか」でしたが,最近では「自分が死んだ後,ひとりになった子供はどうやって生きていくのか」ということに変わっているのだそうです。
なるほど。子が若いうちは「働け,働け」と尻を蹴っていたのでしょうが,30や40を過ぎた段階になると,「この子は一人になったら一体どうするのだろう」という悩みが頭をもたげてくるのは当然のことです。
これから先,保有資産や年金等のデータをもとに「子供が働かなくても一生食べていけるプラン」の作成を請け負う,FP(ファイナンシャルプランナー)への需要が高まることもあり得ますね。
それはさておき,このように先行きが懸念される人間は,統計でみてどれくらいいるのでしょう。ここにて私は,「未婚」「無業」「親同居」という3拍子がそろった中年層の数を明らかにしてみようと思います。簡単に表現すると,無職中年パラサイトシングルです。
2010年の総務省『国勢調査』によると,30~40代の中年層はおよそ3,490万人です。このうち,親同居の未婚者は575万人。これがいわゆるパラサイトシングルですが,このうち「非就業」というカテゴリーに収められているのは117万人となっています。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
2010年10月時点の無職中年パラサイトシングルは117万人。私が住んでいる多摩市の人口の約8倍です。結構な数になりますね。30~40代人口に対する相対量は3.3%であり,30人に1人というところです。
この117万人の性別内訳は,男性が71万人,女性が46万人です。私は女性が多くを占めるのではと思っていましたが,実態はその逆です。ベースあたりの出現率にすると男性は4.0%,女性は2.7%であり,差が出ています。
これは全国値ですが,「自分の県は?」という関心もあろうかと思います。30~40代の人口と無職パラサイトシングル数を都道府県別に収集し,割り算をして出現率を計算してみました。下表は,その一覧です。出現率の順位も添えています。
ほう。最高の青森と最低の滋賀では,出現率に倍近くの差が観察されます。青森では20人に1人ですが,滋賀では38人に1人です。2位は沖縄,3位は岩手,4位は奈良,5位は秋田・・・。地方県で率が高い傾向にありそうです。
表は資料としてみていただくこととして,表中の出現率を可視化してみましょう。0.5%の区分で各県を塗り分けた地図をつくってみました。
北東北,南近畿,および四国が濃い色で染まっています。一方,東京や神奈川のような大都市,そして愛知のような地方中枢県は白色です。地域における就業機会の多寡といった要因も関与していると思われます。
無職中年パラサイトシングル現象は,個々人の怠けだけに帰される単純な問題ではなく,社会的な側面も併せもっていることに注意したほうがよいでしょう。
ともあれ,今のわが国には,何から何まで親に依存している(せざるを得ない)中年層が100万人以上存在することを知りました。同世代の30人に1人,多い地域では20人に1人。むろん,この中には逆に親の面倒をみている者もいるでしょうが,未婚・親同居・無業の中年層がこれほどいるとは,私にとっては驚きでした。
ちなみに,2005年の『国勢調査』から分かる,無職中年パラサイトシングル数は100万人ほどです。2010年の数は117万人ですから,この5年間で1.17倍に増えたことになります。予想ですが,今後も増えていくのではないでしょうか。10年後,20年後はどういう事態になっていることか。ちょっと怖い思いがします。
問題への対処にあたっては,この現象が社会現象としての側面を持っていることにかんがみ,それをもたらす社会的条件を明らかにして,それを取っ払うことが肝要であると思います。地域別・属性別の計量分析は,そうしたアプローチをとるための礎石に位置づくものです。それを可能ならしめる,統計資料の整備がより進展することを願います。
http://www.news-postseven.com/archives/20130622_194810.html
いつまでも働こうとせず,親のスネをかじり続ける・・・。こういう子を持つ親御さんの関心事は,以前は「どうしたら仕事をさせられるか」でしたが,最近では「自分が死んだ後,ひとりになった子供はどうやって生きていくのか」ということに変わっているのだそうです。
なるほど。子が若いうちは「働け,働け」と尻を蹴っていたのでしょうが,30や40を過ぎた段階になると,「この子は一人になったら一体どうするのだろう」という悩みが頭をもたげてくるのは当然のことです。
これから先,保有資産や年金等のデータをもとに「子供が働かなくても一生食べていけるプラン」の作成を請け負う,FP(ファイナンシャルプランナー)への需要が高まることもあり得ますね。
それはさておき,このように先行きが懸念される人間は,統計でみてどれくらいいるのでしょう。ここにて私は,「未婚」「無業」「親同居」という3拍子がそろった中年層の数を明らかにしてみようと思います。簡単に表現すると,無職中年パラサイトシングルです。
2010年の総務省『国勢調査』によると,30~40代の中年層はおよそ3,490万人です。このうち,親同居の未婚者は575万人。これがいわゆるパラサイトシングルですが,このうち「非就業」というカテゴリーに収められているのは117万人となっています。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
2010年10月時点の無職中年パラサイトシングルは117万人。私が住んでいる多摩市の人口の約8倍です。結構な数になりますね。30~40代人口に対する相対量は3.3%であり,30人に1人というところです。
この117万人の性別内訳は,男性が71万人,女性が46万人です。私は女性が多くを占めるのではと思っていましたが,実態はその逆です。ベースあたりの出現率にすると男性は4.0%,女性は2.7%であり,差が出ています。
これは全国値ですが,「自分の県は?」という関心もあろうかと思います。30~40代の人口と無職パラサイトシングル数を都道府県別に収集し,割り算をして出現率を計算してみました。下表は,その一覧です。出現率の順位も添えています。
ほう。最高の青森と最低の滋賀では,出現率に倍近くの差が観察されます。青森では20人に1人ですが,滋賀では38人に1人です。2位は沖縄,3位は岩手,4位は奈良,5位は秋田・・・。地方県で率が高い傾向にありそうです。
表は資料としてみていただくこととして,表中の出現率を可視化してみましょう。0.5%の区分で各県を塗り分けた地図をつくってみました。
北東北,南近畿,および四国が濃い色で染まっています。一方,東京や神奈川のような大都市,そして愛知のような地方中枢県は白色です。地域における就業機会の多寡といった要因も関与していると思われます。
無職中年パラサイトシングル現象は,個々人の怠けだけに帰される単純な問題ではなく,社会的な側面も併せもっていることに注意したほうがよいでしょう。
ともあれ,今のわが国には,何から何まで親に依存している(せざるを得ない)中年層が100万人以上存在することを知りました。同世代の30人に1人,多い地域では20人に1人。むろん,この中には逆に親の面倒をみている者もいるでしょうが,未婚・親同居・無業の中年層がこれほどいるとは,私にとっては驚きでした。
ちなみに,2005年の『国勢調査』から分かる,無職中年パラサイトシングル数は100万人ほどです。2010年の数は117万人ですから,この5年間で1.17倍に増えたことになります。予想ですが,今後も増えていくのではないでしょうか。10年後,20年後はどういう事態になっていることか。ちょっと怖い思いがします。
問題への対処にあたっては,この現象が社会現象としての側面を持っていることにかんがみ,それをもたらす社会的条件を明らかにして,それを取っ払うことが肝要であると思います。地域別・属性別の計量分析は,そうしたアプローチをとるための礎石に位置づくものです。それを可能ならしめる,統計資料の整備がより進展することを願います。
2013年6月22日土曜日
自殺念慮者数の推計
ここ数年,統計に表れるわが国の年間自殺者数は3万人ほどですが,その下には,相当な数の「死にたい願望」を持った人間がいることと思います。
自殺率は代表的な社会病理指標ですが,「死にたい」と思っている(思ったことがある)人間の量にも注意する必要があるでしょう。今回は,それを推し量ってみようと思います。ネーミングですが,自殺志願(志望)者などというのは何ともヘンですので,念慮者という言葉を使うこととします。
内閣府の『2011年度・自殺対策に関する意識調査』によると,最近1年間に自殺を考えたことがある者の比率は,20歳以上の成人の5.3%だそうです。2012年の1月に実施された調査ですから,2011年中の自殺念慮経験者率とみてよいでしょう。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/survey/
総務省の『人口推計年報』から分かる,2011年10月時点の成人人口は約1億502万人。上の比率を乗じると,自殺念慮経験者数は557万人ほどと見積もられます。ほう。年間3万人の自殺者の下には,膨大な予備軍が潜んでいることが知られます。
上記資料に載っている自殺念慮率ですが,属性によって値は大きく変異します。性別・年齢層別の様相を視覚化してみましょう。横軸に自殺念慮率,縦軸に自殺率をとった座標上に各年齢層を位置づけ,線でつないだ図をつくってみました。
縦軸の自殺率は,2011年中の自殺者数を同年10月の人口で除したものです(自殺者数の出所は,厚労省『人口動態統計』)。自殺念慮率を,自殺の既遂率との関係において吟味できる仕掛けになっています。
よく知られているように,自殺率は女性よりも男性で高く,また概して高齢層ほど高いのですが,自殺念慮率のほうは違っています。高齢層よりも若年層で高く,それは女性で顕著です。20代の女性の場合,15.0%,すなわち7人に1人が自殺念慮を経験していることになります。
世間では自殺率ばかりに注目されますが,潜在量指標としての自殺念慮率に目をやると,違った側面がみえてきますね。
では,先ほどと同じやり方で,各グループの自殺念慮者数を割り出してみましょう。私が属する30代男性でいうと,2011年中の自殺念慮率は3.1%,同年10月時点の人口は903万人。ゆえに,自殺念慮者の実数は28万人ほどとなります。
上表は,他の属性グループも含めた一覧です。どうでしょう。20代の女性では,2011年中の自殺念慮経験者は100万人近くであり,『人口動態統計』に載っている自殺既遂者の993倍にもなります。
表面化した自殺に対し潜在予備軍がどれほど存在するかを示す「潜在倍率」でみると,若年層のヤバい状況が際立っています。もっとも,若者は軽々しく「死にたい」と口にするなど,回答上のバイアスがある可能性も考慮しないといけませんが。
さて,若い女性では,自殺既遂者(b)と念慮者(a)の数のギャップが著しく大きいことを知ったのですが,このことは,自殺に傾斜した人間を押しとどめるブレーキが有効に作用していることをも示唆しています。そのブレーキとは如何。最後に,この点をみてみましょう。
内閣府の上記調査では,自殺を考えたことがある者に対し,「自殺を考えたとき,どのように乗り越えたか」を尋ねています。回答を20代の男女で比べてみます。下図は,横軸に男性,縦軸に女性の選択率(複数選択可)をとった座標上に,6つの解決策をプロットしたものです。
青色のゾーンにあるのは,男性の選択率のほうが高い,いうなれば「男性的」な解決策ですが,「何もせず」,「趣味や仕事で気を紛らわせる」というものが位置しています。対して女性の戦略としては,専門家や周囲の人に相談する,休養をとる,というものが多いのです。
上表から分かるように,自殺に傾斜した者が既遂に至ってしまう確率は,男性よりも女性で低く抑えられています。このことは,一人で抱え込むことをせず,相談する,休むというような,無理を伴わない「外向的」な戦略が効をなすことを暗に示しているように思います。
自殺既遂者と念慮者の統計の対比から,こういうことを探り当てることができます。内閣府の『自殺対策に関する意識調査』は,サンプルをもっと増やしていただき,地域別や職業別等の分析も可能になればと思います。
自殺率は代表的な社会病理指標ですが,「死にたい」と思っている(思ったことがある)人間の量にも注意する必要があるでしょう。今回は,それを推し量ってみようと思います。ネーミングですが,自殺志願(志望)者などというのは何ともヘンですので,念慮者という言葉を使うこととします。
内閣府の『2011年度・自殺対策に関する意識調査』によると,最近1年間に自殺を考えたことがある者の比率は,20歳以上の成人の5.3%だそうです。2012年の1月に実施された調査ですから,2011年中の自殺念慮経験者率とみてよいでしょう。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/survey/
総務省の『人口推計年報』から分かる,2011年10月時点の成人人口は約1億502万人。上の比率を乗じると,自殺念慮経験者数は557万人ほどと見積もられます。ほう。年間3万人の自殺者の下には,膨大な予備軍が潜んでいることが知られます。
上記資料に載っている自殺念慮率ですが,属性によって値は大きく変異します。性別・年齢層別の様相を視覚化してみましょう。横軸に自殺念慮率,縦軸に自殺率をとった座標上に各年齢層を位置づけ,線でつないだ図をつくってみました。
縦軸の自殺率は,2011年中の自殺者数を同年10月の人口で除したものです(自殺者数の出所は,厚労省『人口動態統計』)。自殺念慮率を,自殺の既遂率との関係において吟味できる仕掛けになっています。
よく知られているように,自殺率は女性よりも男性で高く,また概して高齢層ほど高いのですが,自殺念慮率のほうは違っています。高齢層よりも若年層で高く,それは女性で顕著です。20代の女性の場合,15.0%,すなわち7人に1人が自殺念慮を経験していることになります。
世間では自殺率ばかりに注目されますが,潜在量指標としての自殺念慮率に目をやると,違った側面がみえてきますね。
では,先ほどと同じやり方で,各グループの自殺念慮者数を割り出してみましょう。私が属する30代男性でいうと,2011年中の自殺念慮率は3.1%,同年10月時点の人口は903万人。ゆえに,自殺念慮者の実数は28万人ほどとなります。
上表は,他の属性グループも含めた一覧です。どうでしょう。20代の女性では,2011年中の自殺念慮経験者は100万人近くであり,『人口動態統計』に載っている自殺既遂者の993倍にもなります。
表面化した自殺に対し潜在予備軍がどれほど存在するかを示す「潜在倍率」でみると,若年層のヤバい状況が際立っています。もっとも,若者は軽々しく「死にたい」と口にするなど,回答上のバイアスがある可能性も考慮しないといけませんが。
さて,若い女性では,自殺既遂者(b)と念慮者(a)の数のギャップが著しく大きいことを知ったのですが,このことは,自殺に傾斜した人間を押しとどめるブレーキが有効に作用していることをも示唆しています。そのブレーキとは如何。最後に,この点をみてみましょう。
内閣府の上記調査では,自殺を考えたことがある者に対し,「自殺を考えたとき,どのように乗り越えたか」を尋ねています。回答を20代の男女で比べてみます。下図は,横軸に男性,縦軸に女性の選択率(複数選択可)をとった座標上に,6つの解決策をプロットしたものです。
青色のゾーンにあるのは,男性の選択率のほうが高い,いうなれば「男性的」な解決策ですが,「何もせず」,「趣味や仕事で気を紛らわせる」というものが位置しています。対して女性の戦略としては,専門家や周囲の人に相談する,休養をとる,というものが多いのです。
上表から分かるように,自殺に傾斜した者が既遂に至ってしまう確率は,男性よりも女性で低く抑えられています。このことは,一人で抱え込むことをせず,相談する,休むというような,無理を伴わない「外向的」な戦略が効をなすことを暗に示しているように思います。
自殺既遂者と念慮者の統計の対比から,こういうことを探り当てることができます。内閣府の『自殺対策に関する意識調査』は,サンプルをもっと増やしていただき,地域別や職業別等の分析も可能になればと思います。
2013年6月20日木曜日
共働きか否かによる家事・育児時間の変化
博報堂こそだて家族研究所が「こそだて家族とパパ」という調査レポートを公表しています。キー・ファインディングは,「ママがフルタイムで働いていると,パパのイクメン度もアップ」ということです。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/10914
妻がフルタイム就業の家庭では,夫の家事・育児時間が全体でみた場合よりも長くなるとのこと。その差は1.5倍だそうです。まあ,常識的に考えて首肯できるところですが,1.5倍も違うとは・・・。わが国の男性の家事・育児時間が短いことはよく知られていますが,条件によって値は大きく変異するものですね。
本調査は,10歳未満の子がいる20~40代の既婚女性1,200名余りを対象としたネット調査だそうですが,官庁統計からも同種のデータをつくることができます。今回は,その結果をご報告します。
用いるのは,2011年の総務省『社会生活基本調査』の結果です。この資料から,対象者のライフステージ別に,1日あたりの家事・育児時間の平均値を知ることができます。前々回の記事の県別分析ではこの統計を使ったわけですが,地域別にバラす前の全国統計の場合,共働きか否かの別もみることができます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
私は,就学前の幼子がいる夫婦の家事・育児時間が,共働きか否かによってどう変異するかを観察することとしました。具体的な関心事は,妻が正規就業者であるか無業者(専業主婦)であるかによって,正規就業の夫の家事・育児時間がどう変わるかです。
原資料によると,幼子がいる正規就業の夫は535万人ほどと見積もられます。このうち,妻も正規就業という者は78万人(14.6%),妻は無業(専業主婦)という者は243万人(45.4%)なり。量的には,やはり専業主婦世帯がマジョリティーのようですね。
では,共働き家庭か専業主家庭であるかによって,夫婦の家事・育児時間がどれほど異なるかをみてみましょう。ここで提示するのは,「週全体」でみた1日あたりの平均時間です。平日と土日をひっくるめた値ということになります。
なお,対象者全体でみた総平均時間に加えて,行動実施者のみの実施者平均時間も拾ってみました。参考情報として,実施者が全体のどれほどかを示す実施者率も添えてあります。
表がやや見づらいですが,正規就業の夫の家事・育児時間は,共働き世帯のほうが長くなっています。最下段の合算値でみると,総平均では1.7倍(76/45≒1.7),実施者平均では1.2倍ほどの差が観察されます。前者の総平均の差は,冒頭で引いた博報堂調査でいわれている差(1.5倍)とほぼ同じですね。
妻のほうはというと,こちらは共働き家庭で短く,専業主婦家庭で長くなっています。総平均でみると,1日あたりの家事・育児平均時間は,共働き家庭の妻は315分ですが,専業主婦家庭の妻では479分にもなります。その差は164分,2時間44分にも及びます。
様相を可視化してみましょう。下図は,上表の最下段の数値をグラフ化したものです。総平均と実施者平均とで分けています。
夫婦とも正規就業の共働き家庭になると,ジェンダー差が縮まる様がみてとれます。また,博報堂調査にある「ママがフルタイムで働いていると,パパのイクメン度もアップ」という傾向も可視化されていますね。
「イクメン」という語が創出され,男性の家事・育児参加が推奨されているのは,女性だけに押しつけられるのは不公平だ,そのことが女性の社会進出の足かせになっている,という問題意識からでしょう。
しかるに,男性の側にしても,仕事一辺倒の偏った生活構造を是正する上において,重要なことであると思います。「生活者」としての自己を取り戻すことです。
この点は女性についても言い得ることです。一方の親(多くは母親)が一人こもって育児をしている県ほど,虐待の発生頻度が高い,という統計的事実を思い出しておきましょう。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/08/blog-post_28.html
以前は,「子が小さいのに母親が働きに出るなんて・・・」と蔑まれたものですが,統計分析をしてみると,共働きのマイナスの効果はあまりみられず,むしろその反対の面が明らかになることがしばしばです。
上でみたように,量的にみると共働き家庭はまだ少なく,専業主婦家庭のほうがマジョリティーです。しかし,このタイプの家庭の中に,夫婦の協働の様をみてとることができます。今後,意図的な働きかけによって,この部分の拡張を図っていくべきでしょう。保育所増設などは,その一端に位置します。そうした取組の総体が,男女共同参画社会の実現へとつながることでしょう。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/10914
妻がフルタイム就業の家庭では,夫の家事・育児時間が全体でみた場合よりも長くなるとのこと。その差は1.5倍だそうです。まあ,常識的に考えて首肯できるところですが,1.5倍も違うとは・・・。わが国の男性の家事・育児時間が短いことはよく知られていますが,条件によって値は大きく変異するものですね。
本調査は,10歳未満の子がいる20~40代の既婚女性1,200名余りを対象としたネット調査だそうですが,官庁統計からも同種のデータをつくることができます。今回は,その結果をご報告します。
用いるのは,2011年の総務省『社会生活基本調査』の結果です。この資料から,対象者のライフステージ別に,1日あたりの家事・育児時間の平均値を知ることができます。前々回の記事の県別分析ではこの統計を使ったわけですが,地域別にバラす前の全国統計の場合,共働きか否かの別もみることができます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
私は,就学前の幼子がいる夫婦の家事・育児時間が,共働きか否かによってどう変異するかを観察することとしました。具体的な関心事は,妻が正規就業者であるか無業者(専業主婦)であるかによって,正規就業の夫の家事・育児時間がどう変わるかです。
原資料によると,幼子がいる正規就業の夫は535万人ほどと見積もられます。このうち,妻も正規就業という者は78万人(14.6%),妻は無業(専業主婦)という者は243万人(45.4%)なり。量的には,やはり専業主婦世帯がマジョリティーのようですね。
では,共働き家庭か専業主家庭であるかによって,夫婦の家事・育児時間がどれほど異なるかをみてみましょう。ここで提示するのは,「週全体」でみた1日あたりの平均時間です。平日と土日をひっくるめた値ということになります。
なお,対象者全体でみた総平均時間に加えて,行動実施者のみの実施者平均時間も拾ってみました。参考情報として,実施者が全体のどれほどかを示す実施者率も添えてあります。
表がやや見づらいですが,正規就業の夫の家事・育児時間は,共働き世帯のほうが長くなっています。最下段の合算値でみると,総平均では1.7倍(76/45≒1.7),実施者平均では1.2倍ほどの差が観察されます。前者の総平均の差は,冒頭で引いた博報堂調査でいわれている差(1.5倍)とほぼ同じですね。
妻のほうはというと,こちらは共働き家庭で短く,専業主婦家庭で長くなっています。総平均でみると,1日あたりの家事・育児平均時間は,共働き家庭の妻は315分ですが,専業主婦家庭の妻では479分にもなります。その差は164分,2時間44分にも及びます。
様相を可視化してみましょう。下図は,上表の最下段の数値をグラフ化したものです。総平均と実施者平均とで分けています。
夫婦とも正規就業の共働き家庭になると,ジェンダー差が縮まる様がみてとれます。また,博報堂調査にある「ママがフルタイムで働いていると,パパのイクメン度もアップ」という傾向も可視化されていますね。
「イクメン」という語が創出され,男性の家事・育児参加が推奨されているのは,女性だけに押しつけられるのは不公平だ,そのことが女性の社会進出の足かせになっている,という問題意識からでしょう。
しかるに,男性の側にしても,仕事一辺倒の偏った生活構造を是正する上において,重要なことであると思います。「生活者」としての自己を取り戻すことです。
この点は女性についても言い得ることです。一方の親(多くは母親)が一人こもって育児をしている県ほど,虐待の発生頻度が高い,という統計的事実を思い出しておきましょう。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/08/blog-post_28.html
以前は,「子が小さいのに母親が働きに出るなんて・・・」と蔑まれたものですが,統計分析をしてみると,共働きのマイナスの効果はあまりみられず,むしろその反対の面が明らかになることがしばしばです。
上でみたように,量的にみると共働き家庭はまだ少なく,専業主婦家庭のほうがマジョリティーです。しかし,このタイプの家庭の中に,夫婦の協働の様をみてとることができます。今後,意図的な働きかけによって,この部分の拡張を図っていくべきでしょう。保育所増設などは,その一端に位置します。そうした取組の総体が,男女共同参画社会の実現へとつながることでしょう。
2013年6月18日火曜日
産業別の正規就業者の就業時間
某報道機関の記者さんとコラボして,現代の雇用の歪みを可視化する作業をしています。これまでは,ワーキングプアや非正規というような,給与や雇用形態の面に焦点を当ててきましたが,今回は,労働時間に注目してみようと思います。
ここでみるのは,短時間雇用が多い非正規を除いた,正規就業者の週間就業時間分布です。
総務省『就業構造基本調査』から,規則的就業をしている正規就業者の週間就業時間分布を知ることができます。ここでいう「週間就業時間」とは,「就業規則などで定められている時間ではなく,ふだんの1週間の実労働時間」とされています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2007/index.htm
最新の2007年調査のデータをもとに,15歳以上の正規就業者の週間就業時間分布を明らかにしてみましょう。参考までに,一般飲食業の分布もお見せします。外食チェーン等ですが,こちらはおそらく,長時間労働が多いのではないかと思われます。
全産業の3,354万人の分布をみると,35~42時間という者が最も多くなっています。ちょうど真ん中です。週5日勤務とすると,1日あたり7~8時間であり,おおむね法定労働時間とマッチしていますね。
しかし一般飲食業では,分布の山がマックスの65時間以上の階級にあります。65時間といったら,1日13時間ほど働いていることになります。完全な過労状態です。この業界の正社員では,こういう人間がマジョリティーであることに驚かされます。25%,4人に1人です。
上表の就業時間分布を,簡易な代表値で要約してみます。まずは平均値(average)です。カッコ内の階級値を使うと,全産業の正規就業者の週間平均就業時間は,次のようにして算出されます。
[(12.5時間×0.8人)+(17.5時間×0.4人)+・・・(70.0時間×7.2人)]/100.0人 ≒ 47.5時間
法定の週間労働時間(40時間)を上回っていますが,これは置くとして,一般飲食業の平均値を出すと54.0時間にもなります。1日10時間超・・・。平均でみてコレです。巷でいわれる長時間労働常態化の様が可視化されています。
これは全体を均した値ですが,あと一つの測度を計算してみましょう。週60時間以上就業者の比率です。1日12時間以上働いている長時間就業者率ですが,上表から分かるように,全産業では15.2%,一般飲食業では41.2%となります。
週間平均就業時間と長時間就業者率。この2指標をもとに2次元のマトリクスを構成し,98の産業の正規就業者を位置づけてみました。下図がそれです。点線は,全産業の値を意味します。
右上にあるのは長時間労働が常態化している業種ですが,先ほどみた一般飲食のほか,漁業,運送業,商品先物取引業などが位置しています。分かるような気がする・・・。ネットで頼んだ商品がその日のうちに届く「Todayサービス」なんかは,こういう長時間労働に支えられてのものなのだろうなあ。それなら,2~3日かかってもいいのに(外国では当たり前)。
対極の左下にあるのは労働時間が短い業種ですが,公務員は分かるとして,介護や児童福祉(保育士等)がこのゾーンに位置するのはちと意外です。当直等,勤務時間管理がきちんとなされているためでしょうか。教員等の学校教育は,平均水準よりも少しばかり上というところです。
以上は週間就業時間に着目した分析ですが,『就業構造基本調査』では年間就業日数も調査されており,週間就業時間と絡めたクロス表が掲載されています。私は,98の産業の正規就業者について,「年間300日以上就業&週60日以上就業」という者の比率を出してみました。
単純にみて,12時間労働を月に25日こなしている者の比率です。まさにスーパー過重労働率とでもいい得るものです。
98産業の平均値は3.6%でした。28人に1人。かなりの少数派です(そうでなくちゃ困る!)。しかし産業別にみると,この恐ろしい指標の値が1割,2割を超える業種もあります。
1割を超えるのは6業種です。高い順に示すと,①宗教(20.6%),②一般飲食(19.0%),③遊興飲食(18.4%),④漁業(17.7%),⑤農業(12.8%),⑥飲食料品小売業(11.3%),であります。ひたすらな帰依を求められる宗教,自然を相手にする農業や漁業では,こういう超長時間労働が少なくないのですね。飲食業がランクインしているのは,イメージ通りです。
以上,『就業構造基本調査』の統計を加工して,現代の正社員の労働時間を明らかにしてみました。まあ,週休2日制の普及等により,わが国の労働時間は,総体として昔よりも短くなっていることでしょう。
ですが,年齢層ごとにみるとどうでしょうか,とくに若年層は,今の大変な不況のなか,正社員の地位を剥奪されたくないという強迫観念から,違法な長時間労働を粛々と受け入れている向きもあります。2月22日の記事でみたように,そういうように仕向けられる側面もあり。
年齢層別の分析を今後の課題としたいと思います。
ここでみるのは,短時間雇用が多い非正規を除いた,正規就業者の週間就業時間分布です。
総務省『就業構造基本調査』から,規則的就業をしている正規就業者の週間就業時間分布を知ることができます。ここでいう「週間就業時間」とは,「就業規則などで定められている時間ではなく,ふだんの1週間の実労働時間」とされています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2007/index.htm
最新の2007年調査のデータをもとに,15歳以上の正規就業者の週間就業時間分布を明らかにしてみましょう。参考までに,一般飲食業の分布もお見せします。外食チェーン等ですが,こちらはおそらく,長時間労働が多いのではないかと思われます。
全産業の3,354万人の分布をみると,35~42時間という者が最も多くなっています。ちょうど真ん中です。週5日勤務とすると,1日あたり7~8時間であり,おおむね法定労働時間とマッチしていますね。
しかし一般飲食業では,分布の山がマックスの65時間以上の階級にあります。65時間といったら,1日13時間ほど働いていることになります。完全な過労状態です。この業界の正社員では,こういう人間がマジョリティーであることに驚かされます。25%,4人に1人です。
上表の就業時間分布を,簡易な代表値で要約してみます。まずは平均値(average)です。カッコ内の階級値を使うと,全産業の正規就業者の週間平均就業時間は,次のようにして算出されます。
[(12.5時間×0.8人)+(17.5時間×0.4人)+・・・(70.0時間×7.2人)]/100.0人 ≒ 47.5時間
法定の週間労働時間(40時間)を上回っていますが,これは置くとして,一般飲食業の平均値を出すと54.0時間にもなります。1日10時間超・・・。平均でみてコレです。巷でいわれる長時間労働常態化の様が可視化されています。
これは全体を均した値ですが,あと一つの測度を計算してみましょう。週60時間以上就業者の比率です。1日12時間以上働いている長時間就業者率ですが,上表から分かるように,全産業では15.2%,一般飲食業では41.2%となります。
週間平均就業時間と長時間就業者率。この2指標をもとに2次元のマトリクスを構成し,98の産業の正規就業者を位置づけてみました。下図がそれです。点線は,全産業の値を意味します。
右上にあるのは長時間労働が常態化している業種ですが,先ほどみた一般飲食のほか,漁業,運送業,商品先物取引業などが位置しています。分かるような気がする・・・。ネットで頼んだ商品がその日のうちに届く「Todayサービス」なんかは,こういう長時間労働に支えられてのものなのだろうなあ。それなら,2~3日かかってもいいのに(外国では当たり前)。
対極の左下にあるのは労働時間が短い業種ですが,公務員は分かるとして,介護や児童福祉(保育士等)がこのゾーンに位置するのはちと意外です。当直等,勤務時間管理がきちんとなされているためでしょうか。教員等の学校教育は,平均水準よりも少しばかり上というところです。
以上は週間就業時間に着目した分析ですが,『就業構造基本調査』では年間就業日数も調査されており,週間就業時間と絡めたクロス表が掲載されています。私は,98の産業の正規就業者について,「年間300日以上就業&週60日以上就業」という者の比率を出してみました。
単純にみて,12時間労働を月に25日こなしている者の比率です。まさにスーパー過重労働率とでもいい得るものです。
98産業の平均値は3.6%でした。28人に1人。かなりの少数派です(そうでなくちゃ困る!)。しかし産業別にみると,この恐ろしい指標の値が1割,2割を超える業種もあります。
1割を超えるのは6業種です。高い順に示すと,①宗教(20.6%),②一般飲食(19.0%),③遊興飲食(18.4%),④漁業(17.7%),⑤農業(12.8%),⑥飲食料品小売業(11.3%),であります。ひたすらな帰依を求められる宗教,自然を相手にする農業や漁業では,こういう超長時間労働が少なくないのですね。飲食業がランクインしているのは,イメージ通りです。
以上,『就業構造基本調査』の統計を加工して,現代の正社員の労働時間を明らかにしてみました。まあ,週休2日制の普及等により,わが国の労働時間は,総体として昔よりも短くなっていることでしょう。
ですが,年齢層ごとにみるとどうでしょうか,とくに若年層は,今の大変な不況のなか,正社員の地位を剥奪されたくないという強迫観念から,違法な長時間労働を粛々と受け入れている向きもあります。2月22日の記事でみたように,そういうように仕向けられる側面もあり。
年齢層別の分析を今後の課題としたいと思います。
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