年が明けました。みなさま,晴れやかな新年を迎えられたことと存じます。
さて,元旦の楽しみといえば,年賀状の枚数をカウントすることでしょう。郵便屋さんのバイクの音が聞こえるや否や,玄関を飛び出して,ポストをカパ。そこには,輪ゴムで括られた葉書の束が鎮座しています。「あれっ。今年は思ったより少ないな(多いな)」,「あの人から来てる」・・・。元旦の午前中は,ツイッターなどで,このようなつぶやきが多いのではないかしらん。
でも,年賀葉書とは別のツールを使って,新年の挨拶を済ませる人もいることと思います。ある大学の先生はあまりに多忙で,膨大な数の年賀状を認めるヒマがないので,一斉メールの形で済ませているとか。パソコンや携帯電話が普及している今日,年賀「状」から年賀「メール」に乗り換える人が増えるのは,しごく自然な成り行きです。
日本郵政の発表によると,2011年度に発行された2012年用の年賀葉書の枚数は36.7億枚だそうです。2001年度発行の2002年用葉書の発行枚数は40.2億枚でした。この10年間で,およそ1割の減です。この期間中,上記の情報機器の普及率が上がったことと無関係ではないでしょう。
年賀葉書の発行枚数の変化を,もっと長期的なスパンでみてみましょう。1950年度(1951年用)から2011年度(2012年用)までの発行枚数の推移を跡づけてみます。資料は,旧日本郵政公社と日本郵政の発表資料です。1950年度から2006年度までの発行枚数は,下記サイトの時系列データから知ることができます。2007年度以降は,日本郵政のホームページの「お知らせ」から知ることができます。
http://www.japanpost.jp/toukei/2006/yu06.html
なお,1995年以降のパソコン・携帯電話の保有率(世帯単位)も併せて観察します。資料は,総務省の『通信利用動向調査』です。
年賀葉書の発行枚数は,戦後間もない1950年度では4億枚(国民一人当たり4.8枚)でした。その後,時代と共に発行枚数は増え,2003年度には44.6億枚に達します。国民一人当たり34.9枚です。しかし,それ以降は減少に転じ,2011年度の36.7億枚に至っています。
近年の年賀葉書の発行数の減少は,情報機器の普及と関連していることと思われます。図にみるように,1990年代後半以降,パソコンと携帯電話の世帯保有率はうなぎ昇りに上昇しています。1995年では,パソコンの保有率16.3%,ケータイの保有率10.6%であったのが,2010年では,順に83.4%,93.2%にまで高まっているのです。
今後,年賀葉書の発行数はどうなるかは定かでありませんが,社会の情報化の進展により,新年の挨拶の形式が多様化していくことは間違いないでしょう。しかるに,このような社会的状況を共有しながらも,旧来の慣行にこだわる方もいます。
試みに,年賀葉書の利用頻度の地域差を明らかにしてみましょう。日本郵便の速報資料から,2012年の「年賀郵便物元旦配達物数」を知ることができます。年賀郵便物のほとんどは,年賀葉書とみてよいでしょう。日本郵便の支社ごとの数字を整理すると,下表のようです。この数字は配達物数であるので,先ほどみた年賀葉書の発行枚数とは大きく異なることに留意ください。
http://www.post.japanpost.jp/whats_new/2012/0101_01.html
各支社の配達数を管轄地域の人口で除して,人口一人当たりの配達数を計算しました。この指標をみると,最も数が多いのは北陸で,一人当たり20.9枚です。最も少ない沖縄(6.5枚)の3倍を超えています。すごい差です。
「ゆいまーる」に象徴される沖縄は,地域住民の交流度が高いと思うのですが,対面(face to face)での挨拶が多い,ということでしょうか。信越や九州の値が低いのも,このような事情なのでしょうか。なお,東北や関東(茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉)の値が低いのは,昨年の震災の影響かと思います。
ひとまず,このようなデータが出たことをご報告いたします。明日も明後日も,追加の賀状が届くことと思います。そうした個々人のやり取りを集積すると,今回みたような数字になることをお知りいただければ,と存じます。
では,みなさま,よいお正月をお過ごしください。