先日,新規学卒者の離職状況に関する資料が厚労省より公表されました。それによると,2010年4月の入職者のうち,3年目となる2013年3月までに辞めた者の率は,高卒で39.2%,大卒でも31.0%になるそうです。3年以内の離職率,大卒で3割ですか。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/24.html
これは全業種をひっくるめた値ですが,宿泊・飲食業に限定すると,3年以内の離職率は大卒で51.0%,高卒だと66.6%にもなります。この業界では,大卒の2人に1人,高卒の3人に2人が,3年以内に離職している計算になります。
このように離職率は高いのですが,離職の理由はどういうものなのでしょう。まあ若者は,労働条件が悪い(キツイ)というものが大半を占めると思われますが,それだけではありますまい。女性の場合は,育児離職も少なくないと思われます。
総務省の『就業構造基本調査』には,前年の1年間に離職した者の数が,離職の理由別に掲載されています。私は,最新の2012年調査の結果を参照して,2011年10月~2012年9月までの期間に正規雇用職(正社員)を辞した者の離職理由を調べました。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
この期間中の正社員離職者のうち,離職理由が分かる者はおよそ223万人。その内訳を年齢層ごとに示すと,下図のようです。ここでいう年齢は調査時点(2012年10月)のものであり,離職時点のものとは違いますが,双方のラグは小さいので,ほぼ同じとみてもよいでしょう。
離職理由の内訳をみると,年齢層ごとの特徴が出ていますね。60代では定年,それより上の高齢層では「病気・高齢のため」という理由がほとんどです。50代において,リストラが幅を利かせているのが痛々しい。
次に若年層の部分に目をやると,予想通り,「労働条件が悪い」という理由が最も多くなっています。若者を食い物にするブラック企業が蔓延っている現状を思うと,さもありなんです。25~34歳では,結婚や育児の比重も高し。多くが女性でしょう。
いま,女性という言葉が出ましたが,理由構成の性差も気になるところです。結婚,育児,および50代の箇所にある介護といった,家庭関連の理由比重のジェンダー差はどうなのかしらん。
私は,20~50代の生産年齢に限定して,上記と同じ図を男女別につくってみました。以下に,2つの内訳図を並べてみます。
結婚,育児,および介護のゾーンはピンク色で囲いましたが,やっぱり男女では全然違いますね。女性の30代前半では,結婚・育児が離職理由の4割を占め,50代後半では介護の比重が1割強になっています。
女性の正規就業(フルタイム就業)を阻むものとして,結婚・育児・介護があるといわれますが,統計にもまざまざと表れています。
そんなこと当たり前だろう,といわれるかもしれませんが,これらのイベントが女性の正規就業に影響を及ぼすのは,わが国の特徴であるともいえます。3月25日の記事でみたように,北欧のフィンランドでは,子の有無によって女性のフルタイム就業率が変わることはほとんどありません。対して日本では,子どもができることで率はガクンと下がります。
ゆえに,上図の模様は,わが国に固有のものであるともいえましょう。若年層で幅を利かせている悪条件離職,女性だけに広くみられる結婚・育児・介護離職。ここにて可視化したのは,こういう問題です。