2017年1月2日月曜日

深夜族

 外食産業で,24時間営業を縮小する動きが広まっているそうです。最大の理由は人手不足ですが,深夜の客が減っていることもあるとのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161226-00000004-jij-bus_all

 2番目の理由は初耳でした。まあ人口の高齢化により,昼型のライフスタイルの高齢者が増えていますから,深夜に出歩く人が減り,客足が遠のいていることはあるかもしれません。

 深夜に出歩いている人の量は知ることはできませんが,深夜に起きている人の量は,統計から割り出せないことはありません。今回は,深夜に起きている人(深夜族)が国民の何%いるか,以前に比して増えているか,それとも減っているか。この点を吟味してみましょう。

 総務省の『社会生活基本調査』では,対象の15歳以上の国民に対し,1日の各時間帯(15分刻み)において,何をしていたかを尋ねています。起きている人の率は,寝ていた者の率を100%から引くことで算出できます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm

 2011年の同調査によると,平日の深夜0:00~0:15に寝ていた者の率は82.9%ですから,この時間帯に起きていた者の率は,100-82.9=17.1%となります。深夜0:00~4:00の各時間帯において,起きていた者の比率をこのやり方で出すと,下表のようになります。


 16の時間帯(15分刻み)の平均値をとると,平日は7.8%,土曜が8.7%,日曜が9.3%なり。この値をもって,深夜の時間帯に起きていた者,すなわち深夜族の出現率とみなすことにしましょう。仕事のない土曜や日曜のほうが,平日よりも少し高くなっています。

 なお20年前の1991年のデータから,同じ方法で15歳以上の国民の深夜族出現率を出すと,平日が6.0%,土曜が7.3%,日曜が8.2%となります。

 人口の高齢化により,深夜族は減っているかと思いきや,現実はその逆ですね。人手不足により,深夜までこき使われる若者が増えているためでしょうか。あるいはネットの普及により,夜通しでネットサーフィンなどをする人が増えているのか。

 変化の事情の検討をつけるには,深夜族の率が高まっているのはどの層かを突き止めるのがよいでしょう。人間を分かつ基本属性である,性別・年齢層別に変化の様相をみてみましょう。下図は,深夜族の出現率の年齢曲線(平日)を,1991年と2011年で比べたものです。


 曲線は右下がりで,当然ながら,深夜族の率は若者ほど高くなっています。

 男女とも,曲線が上方にシフトしています。どの年齢層でも深夜族は増えていますが,増加幅は若者で大きいようです。増加ポイントが最も大きいのは,25~34歳の男性で,この20年間で11.4%から17.8%に上昇しています。

 入職して間もないフレッシュマンですが,先に書いたように,昨今の人手不足による過重労働が影を落としているのでしょうか。ネットの普及により,仕事は際限なくどこまでも追いかけてくる。そんな時代の変化を感じさせられます。ネット通販の配達や介護など,24時間にわたる仕事が増えていることもあるでしょう。あるいは,無職者やニートの増加により,昼夜逆転の人間が増えているのか・・・。

 相対変化ですが,国民の生活の深夜化が進んでいることが知られます。人口の高齢化にもかかわらずです。

 最後に,地域差もみておきましょう。上記と同じやり方にて,15歳以上の深夜族出現率を都道府県別に計算してみました。2011年の平日の全国値は7.8%ですが,県別にみると,東京の11.3%から福島の4.4%までの開きがあります。東京は若者が多いので,率が高い。

 下図は,1991年と2011年の都道府県を同じ基準で塗り分けたマップです。


 20年前に比して,地図の模様が濃くなっています。若者が多い都市部で率が高い構造が保たれていますが,今後,全国的にますます色が濃くなるのでしょうか。

 人口の高齢化に伴い,国民の生活の「昼型」化が進んでいるかと思いきや,現実はその反対でした。深夜に働く人がいないと社会が成り立たないのは事実ですが,今回みた「深夜」化は,必ずしも必要でない過剰サービス労働の増加や,国民の生活の乱れを示唆するものともとれましょう。2番目のグラフから分かるように,こうした歪みが若者に集中していると。

 まあ私も,院生の頃までは完全に昼夜逆転の生活でしたが,今はすっかり昼型(朝型)に切り替えています。集中力の要る原稿書きは,頭が冴えている午前中に済ませる。日の出と共に起きる生活っていいな,と感じています。