2013年5月時点でみて,日本の大学学部学生は256万人ほどですが,その組成はどうなっているのでしょう。設置主体でバラしてみると,国立が17.5%,公立が5.0%,私立が77.6%という構成です(「学校基本調査」)。
高等教育が私学依存型のわが国では,このように大学生の8割近くを私大が占めるのですが,その中身は決して一様ではありません。伝統ある一流大学と,いわゆるFラン大学では,学生の意識や行動に大きな違いがあることは誰もが知っています。
今回は,量的に多数を占める私大生の「中身」も分かる,大学生の組成図をつくってみようと思います。国公私という大雑把な区分では,「私」の領分が甚だ大きくなりますが,このゾーンを偏差値で塗り分けた図です。
私は,学研教育出版の「大学受験案内2015年度用」という資料を使って,全国の私立大学の学部の偏差値を調べました。下図は,本資料から明らかにした,566私立大学の1616学部の偏差値分布です。
http://hon.gakken.jp/book/1130421200
おおよそ,下が厚く上が細い「ピラミッド」型になっています。一番下のBFとは,「ボーダーフリー」の略です。ボーダー(敷居)がなく,誰でも入れる超カンタン学部です。このBFと偏差値30台の学部が,いわゆるFラン学部とみてよいでしょう。
右上の構成の円グラフによると,この手のFラン学部が全体の36.4%を占めています。私立大学の学部の3分の1は,リメディアル教育で中学レベルの内容をやっている学部であると推察されます。
これは学部単位の偏差値(ランク)分布ですが,ここで知りたいのは,学生数のそれです。各学部の学生数が分かれば,簡単に明らかになりますが,あいにく上記の学研資料では,大学ごとの学生数(2013年5月時点)しか載っていません。そこで,擁する学部の偏差値の平均値を当該大学の偏差値とし,学生数の偏差値分布を出すことにします。
たとえば,私が勤務する武蔵野大学の各学部の偏差値は,法学部が50.0,経済学部が52.5,文学部が50.0,グローバル・コミュニケーション学部が52.5,人間科学部が52.5,教育学部が57.5,薬学部が55.0,看護学部が55.0,です。これらを均して,当大学の偏差値を53.1とみなします。
このやり方で,566私立大学の偏差値を出し,学生数の分布をとってみました。BF(35.0未満),35.0以上40.0未満,40台,50台,60以上という5つの階級を設けると,学生数の分布は以下のようになります。
BF(35.0未満) ・・・ 90017人(4.6%)
35.0以上40.0未満 ・・・ 320331人(16.3%)
40台 ・・・ 719078人(36.6%)
50台 ・・・ 649150人(33.0%)
60以上 ・・・ 188687人(9.6%)
学生数でみると,センターの40台が最も多いですね。30台やBFの大学は,小規模校が多いためです。
では,作図をしてみましょう。①まず,10cm四方の正方形を用意します。②「学校基本調査」(2013年度)の学部学生数のデータをもとに,ヨコを国公私で3区分します。③「私」のゾーンを,上記の偏差値比率で区分けします。④ついでに,国立大学の旧帝大(東大,京大,東北大,九大,北大,阪大,名大)のシェアも明らかにします。
この手続きでできた,2013年5月時点の学部学生の組成図は,以下です。
私大の偏差値30台とBFは,大学レベルの教育を受けているのか怪しい学生ですが,このゾーンの学生は全体の16.0%です。Fラン学生の出現率は,およそ6人に1人なり。
これが,大学進学率50%超の現代日本の大学生の組成図です。一口に大学生といっても,その生態は実に多様。よく大学生を対象とした調査がされますが,サンプルの組成が,上記の図柄に接近することはほとんどないでしょう。そうしようとしたら,莫大な費用がかかることになり,科研費を取らないといけなくなります。
だから,調査って難しい。しかし望むべくは,層化抽出の原理に依拠して,上図の層ごとにサンプルを割り振ることでしょう。そのための目安として,母集団の組成を精密に明らかにすることが必要になります。今回したのは,そうした作業の一部です。