2018年6月23日土曜日

ロスジェネ固有の悲哀

 梅雨の最中,ジメジメとした日が続いていますが,いかがお過ごしでしょうか。

 ツイッターで,2010年から17年にかけての年齢層別の年収変化の表を発信したところ,注目を集めています。40代前半だけが減っており,ロスジェネがこの年代に達したことの影響がもろに出ているからです。

 厚労省の『賃金構造基本統計』に出ている,月収額と年間賞与額から計算したものですが,これらの要素ごとの変化も知りたい,という声がありました。また労働時間のほうはどうかと。さらに,収入を労働時間で除した時間給にも興味を持たれます。

 私は原資料にあたって,以下のa~cの数値を採取し,それをもとに,推定年収と時間給を出してみました。aは超過労働時間,bは残業代も含みます。

 月の労働時間=a
 きまって支給される月収額=b
 年間賞与その他特別給与額=c
 推定年収=12b+c
 時間給=(12b+c)/12a

 この5つの要素をもとに,ここ数年で労働条件がどう変わっているかを年齢層別にみてみようと思います。最近の景気回復で上向きにあるとは思いますが,4番目の年収を観察した所,40代前半だけが狙い撃ちされているかのごとく減っていました(冒頭のツイート)。他の要素はどうなっているか。

 まずは男性の変化表をご覧いただきましょう。大学・大学院卒(以下,大卒)の一般労働者のデータです。一般労働者とは,パート等の短時間労働者を除く人たちです。


 一番上の労働時間をみると,昨今の人手不足の影響もあってか,どの年齢層でも増えています。しかし増加幅は40代前半で最も多くなっています(6時間増)。

 月収は,40代前半は2万円ダウン。年間賞与額(ボーナス)は,最近の好況のゆえか,どの年齢層でも増えていますが,40代前半はたった1万円増えただけ。これら2要素から出した推定年収は,この年齢層だけが狙い撃ちされているかのごとく下がっています(マイナス25万円)。これは,ツイッターでもお見せしたデータです。

 40代前半は,労働時間の増加幅が大きく,年収はダウンしていますので,後者を前者で割った時間給も下がっています。40代後半も下がっていますが,下落幅はこちらのほうが多し(マイナス237円)。

 40代前半の悲哀。学校卒業時に就職氷河期に遭遇し,キャリアや昇給を順調に積めていないロスジェネがこの年齢層に達したことの効果でしょう。私はこの世代ですけど,こうも明瞭に不遇が可視化されると,ため息が出ます。

 女性の変化表も掲げておきましょう。上記の男性とほぼ同じ傾向です。


 この表の数値をみて,「年収や時間給が高すぎる,こんなに貰っているのか」という印象を持たれるかもしれませんが,これは月収やボーナスの平均値から試算した額です。中央値でみたら,値はうんと下がるはずです。中央値は,来月半ばに公表される『就業構造基本調査』(2017年)のデータで計算してみることにします。

 40代前半といったら,バリバリの働き盛り,子育ての最中の世代です。この層が置かれている状況は,以前と比して厳しい。これまで当たり前のように期待されていた,子どもの教育費負担も難しくなるでしょう。

 国もそれを認識しているのか,高校就学支援金や大学の学費無償化といった政策も施行され始めています。家計に依存しきった教育財政の構造が変わりつつあります(現状ではまだまだですが)。私は随所で述べていますが,ロスジェネとは,これまでのやり方が通用しないファーストジェネレーション,社会を変えてくれる「黒船世代」でもあると思っています。