2019年12月20日金曜日

50代も子育て期

 晩婚化・晩産化が進んでいます。

 私が前にご一緒していた編集者氏(女性)は,40歳を過ぎてから出産されたと仰っていました。ってことは,60歳まで子育てが続くことになります。当人が大学院に行きたいなどと言い出したら,これは大変。定年後も,かなりの費用負担を覚悟しないといけません。これから定年は延長,ないしは無くなることも見込まれますが。

 こういう人は,どれくらいいるんでしょう。厚労省『人口動態統計』によると,2018年中に生まれた子どもは91万8400人ですが,このうちの5万2917人(5.8%)が,40歳以上の母親から生まれた子となっています。さすがに少数派ですが,35歳以上だと28.8%,30歳以上だと65.3%と多数派に転じます。

 今となっては30歳以上での出産がマジョリティです。2018年では,子を産んだ母親の年齢の中央値は32.1歳となります。私は母が36歳で産んだ子ですが,1976年当時では立派な晩産の部類でも,今はそうでもありません。

 こうなると,子育て期は後ろへとずれ込むことになります。最近では,50代でも小・中学生の子育て中というママさんも少なくはいなず。各年齢の既婚女性の何%が子育て中か? 「同居している未成年の子どもがいるか」という問いへの回答から見当をつけられます。

 下のグラフは,同居している未成年の子がいると答えた人の割合です。各年齢時点の数値をつないだカーブを,1985年と2015年で比べています。基幹統計の『国勢調査』から作成しました。


 どうでしょう。ピークをみると1985年では35歳でしたが,2015年では39歳となっています。この30年間で,子育て中のママさん率のカーブが右にシフトしており,子育て期が中高年期までずれ込んでいるのが知られます。

 50歳の既婚女性を取り出すと,未成年の子と同居している人の率(子育て中率)は,1985年ではわずか7.6%でしたが,2015年では52.0%と半数を超えています。一昔前は50代にもなれば子は独立し,親は一息つけていたのですが,現在はそうではありません。50代も,立派な子育て期です。

 同居している未成年の子の人数分布も分かります。幅を広げ,50代の既婚女性(1985年は723万人,2015年は674万人)を取り出し,分布を整理すると以下のようになります。


 1985年では,50代の既婚女性のうち子育て中の人は2.5%しかいませんでしたが,2015年では21.7%います。50代でも,5人に1人が子育て中であると。2人以上育てている人も,ネグリジブルスモールではありません。

 2015年の50代既婚女性の子育て中率は21.7%と出ましたが,これは全国の数値であって,地域差もあります。同じ値を47都道府県別に計算し,高い順に並べた表を見ていただきましょう。


 最も高いのは東京で28.7%となっています。50代の既婚女性のうち,子育ての最中にある人はおよそ3割です。上位には都市的な県が多いですが,晩婚化・晩坂が地方に比して進んでいるからでしょう。

 地方で低いのは,進学や就職で,18歳にして家を出ている子が多いからかもしれません。戸籍は移してないケースは多いのですが。

 淡々とデータを示しましたが,子育て期は時代と共に後ろにずれこんでおり,今では50代のステージも子育て期の色合いが強し。これがどういうインパクトを持つかは,3つの側面に分けられると思います。

 まずは,親の負担に関わること。50代といえば,親の介護ものしかかってきます。自身の体力も衰えてくる時期に,「育児+介護」のダブルケアを課される人(とくに女性)が増えてくると。これは脅威です。

 上記の地域データから,こういうケースは都市部に多くなるとみられますが,両親を地方において上京してきている人も多いでしょうから,遠隔介護も増えてくるでしょう。子どもが独立した後なら,定期的に介護帰省することもできるでしょうが,子育て中となるとそうはいかない。前から言われていますが,地方においては,老親の見守り(世話)代行というサービスへの需要が増すかもしれません。

 2つ目は,教育費に関わること。大学進学該当年齢の子の親の年齢は45~54歳とされてきましたが,これが一段ズレて50代後半,場合によっては60歳を越えちゃうかもしれません。今は,子どもの大学進学期が,親の年収ピークの記事とうまく重なってますが,これからは齟齬が出てきます。年収が下り坂にさしかかった50代後半,下手したら定年後にもつれ込むこともあり得ますね。

 これを機に,大学の学費の家計依存構造を見直すべきでしょう。高等教育の費用を家計に負担させるやり方は,年齢と共に給与が上がる年功賃金を前提にしていますが,これが崩れつつあるのも,よく指摘されること。卒業後に,本人の所得に応じて学費を払わせる,授業料の後払い制が導入されてもいいでしょう。負担の主体を,親から本人にシフトするわけです。

 最後の3つ目は,子どもの社会化に関わること。子どもにすれば,父母や祖父母という親族関係において,体の弱ったお年寄りに接する機会が増すことになります。父母が祖父母を介護する姿を目の当たりにすことも増えます。

 10代の後半にして,父母ないしは祖父母の世話をするヤングケアラーも多くなるかもしれません。度が過ぎると学業に支障が出ることになりますので,ヘルパーの費用補助等の支援も求められるでしょう。

 子育て期が後ろにシフトしていることは,教育にも少なからぬインパクトをもたらすとみられます。