未婚率の話ばかりが続いたので,話題を変えましょう。ツイッターでも発信したのですが,女性のすがたの変化図をつくってみましたので,ブログにも載せておこうと思います。
ツイッターの図は,1992年と2012年の比較でしたが,ここでは1987年と2012年の比較図を提示いたします。男女雇用機会均等法が制定されたのは1986年のことですが,この四半世紀にかけて,女性の社会進出はどれほど進んだのでしょう。
私は,総務省『就業構造基本調査』のデータを使って,①自営・家族従業等,②正規職員,③パート・アルバイト,④派遣・契約社員等,⑤専業主婦,⑥通学,⑦その他,という成分の比重をみて取れる統計図をつくってみました。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
①~④は有業者,⑤~⑦は無業者です。では,ブツをみていただきましょう。
読みとれる点は以下のごとし。
イ)結婚・子育て期のM字カーブの底が浅くなり,有業女性の比重が増えている。
ロ)しかし増えているのは,パート・バイトやハケンといった非正規雇用である。
ハ)この四半世紀において,女性の社会進出は確かに進んだが,それは「非正規依存型」のものであった。
こんなところでしょうか。『男女共同参画白書』などで,昔に比べてM字カーブの底が浅くなったことが強調されますが,Mの中身をレントゲンで覗いてみると「・・・」という感じです。Mの外形だけに注目するだけでは足りないようですね。
なお,北欧のスウェーデンなどは,わが国と様相を異にしています。80年代から今世紀初頭にかけて,両国の働き盛りの女性のすがたがどう変わったかを解剖してみましょう。下の図は,『世界価値観調査』の時系列データをもとに作成した,30~40代女性の組成図です。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp
日瑞とも有業者の比重が増えていますが,その中身が違っています。スウェーデンではフルタイム就業の増加幅が大きいのですが,日本ではパートタイムの増が目立っています。
前者の社会進出を「フルタイム(正規)型」とすれば,わが国のそれは「パートタイム(非正規)型」と性格づけることができるでしょう。
働く女性の頭数やM字カーブの形状に関心が向けられることが多いのですが,その内訳を解剖するとこうなる,ということのご報告です。
2014年2月11日火曜日
2014年2月9日日曜日
職業別の生涯未婚率
生涯未婚率という指標をご存知でしょうか。読んで字のごとく,生涯,未婚の状態にとどまる者がどれほどいるかです。
これは,全人口の人生を死ぬまで追跡して出すような,込みいったものではありません。生涯未婚率としては,50歳時点の未婚率が用いられます。この年齢以降は,結婚する者はほとんどいないであろう,という仮定に立つわけです。
なお,多くの官庁資料の年齢統計は5歳刻みのものですが,5歳刻みの統計から生涯未婚率を出す場合,40代後半と50代前半の未婚率を平均するという便法がとられます。
私は,この方式に依拠して,男女の生涯未婚率を職業別に計算してみました。こういうデータは見かけないので,興味を持った次第です。正規・非正規の影響を除くため,正規職員男女の率を出すこととします。資料は,2012年の総務省『就業構造基本調査』です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
男性の教員でいうと,40代後半の未婚率は7.1%,50代前半の未婚率は7.6%です。よって,男性教員の生涯未婚率は,これらを均して7.3%と算出されます。ちなみに女性教員は16.1%なり。女性は男性の倍以上ですね。
では,上記資料から計算した,全職業の正社員男女の生涯未婚率をみていただきましょう。下表をご覧ください。「**」は,該当者がいないため,率が算出不能であることを意味します。
生涯未婚にとどまるであろう者の割合は,職業によって大きく違っています。医師などは,男性と女性の差がスゴイです。男性はわずか2.8%ですが,女性は35.9%にもなります。男性は36人に1人ですが,女性は3人に1人です。
高収入ということがあるでしょうが,激務なので,家庭生活との両立が難しいという事情もあるかと。また,ある方が教えて下さったところによると,大病院の医局などは,妊娠した女性医師へのマタハラがすさまじいそうです。仕事か家庭か。医師は,こうした選択を迫られる度合いが高い職業でいえるでしょう。生涯未婚率のジェンダー差,さもありなんです。
ほか,情報処理技術者も性差が大きくなっています。いわゆるIT技術者ですが,この業界では,正社員女性の半分が生涯未婚にとどまると見込まれます。音楽家・舞台芸術家などは,男女とも生涯未婚率が高いですね。
職業別の正社員男女の生涯未婚率を視覚化してみましょう。横軸に男性,縦軸に女性の生涯未婚率をとった座標上に,男女双方の率が分かる62職業をプロットしてみました。点線は,全職業の値です。
右上は,男女とも生涯未婚率が高い職業ですが,高度な知識・技術を要する専門職が多いですね。出版社の編集者とかも高いんだなあ。
しかし,最も注視すべきは,やはり医師の特異性でしょう。諸外国でも,こんな位置になるのでしょうか。これから先,高度な専門職への女性の参入が進んでいくと思われますが,そのことが未婚化・少子化の進行をもたらすのではと懸念されます。そもそも,前者は後者の抑制要因になるものであり,その逆であってはなりません。
指導者層や専門職の女性比率を*%にしようという数値目標が掲げられますが,形の上でそれを実現すればよいという単純な話ではなさそうです。
これは,全人口の人生を死ぬまで追跡して出すような,込みいったものではありません。生涯未婚率としては,50歳時点の未婚率が用いられます。この年齢以降は,結婚する者はほとんどいないであろう,という仮定に立つわけです。
なお,多くの官庁資料の年齢統計は5歳刻みのものですが,5歳刻みの統計から生涯未婚率を出す場合,40代後半と50代前半の未婚率を平均するという便法がとられます。
私は,この方式に依拠して,男女の生涯未婚率を職業別に計算してみました。こういうデータは見かけないので,興味を持った次第です。正規・非正規の影響を除くため,正規職員男女の率を出すこととします。資料は,2012年の総務省『就業構造基本調査』です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
男性の教員でいうと,40代後半の未婚率は7.1%,50代前半の未婚率は7.6%です。よって,男性教員の生涯未婚率は,これらを均して7.3%と算出されます。ちなみに女性教員は16.1%なり。女性は男性の倍以上ですね。
では,上記資料から計算した,全職業の正社員男女の生涯未婚率をみていただきましょう。下表をご覧ください。「**」は,該当者がいないため,率が算出不能であることを意味します。
生涯未婚にとどまるであろう者の割合は,職業によって大きく違っています。医師などは,男性と女性の差がスゴイです。男性はわずか2.8%ですが,女性は35.9%にもなります。男性は36人に1人ですが,女性は3人に1人です。
高収入ということがあるでしょうが,激務なので,家庭生活との両立が難しいという事情もあるかと。また,ある方が教えて下さったところによると,大病院の医局などは,妊娠した女性医師へのマタハラがすさまじいそうです。仕事か家庭か。医師は,こうした選択を迫られる度合いが高い職業でいえるでしょう。生涯未婚率のジェンダー差,さもありなんです。
ほか,情報処理技術者も性差が大きくなっています。いわゆるIT技術者ですが,この業界では,正社員女性の半分が生涯未婚にとどまると見込まれます。音楽家・舞台芸術家などは,男女とも生涯未婚率が高いですね。
職業別の正社員男女の生涯未婚率を視覚化してみましょう。横軸に男性,縦軸に女性の生涯未婚率をとった座標上に,男女双方の率が分かる62職業をプロットしてみました。点線は,全職業の値です。
右上は,男女とも生涯未婚率が高い職業ですが,高度な知識・技術を要する専門職が多いですね。出版社の編集者とかも高いんだなあ。
しかし,最も注視すべきは,やはり医師の特異性でしょう。諸外国でも,こんな位置になるのでしょうか。これから先,高度な専門職への女性の参入が進んでいくと思われますが,そのことが未婚化・少子化の進行をもたらすのではと懸念されます。そもそも,前者は後者の抑制要因になるものであり,その逆であってはなりません。
指導者層や専門職の女性比率を*%にしようという数値目標が掲げられますが,形の上でそれを実現すればよいという単純な話ではなさそうです。
2014年2月7日金曜日
結婚の希望と現実
結婚相手を探しておられる女性のみなさん,現代ニッポンの未婚男性の年収は下図のごとし。昨日,ツイッターで発信した図では無業者を加えませんでしたが,ここではそれを加味した図にしています。資料は,2012年の総務省『就業構造基本調査』です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
パッと見で「こんなに低いの?」という印象を持たれたことでしょう。電車のつり広告で「20代女性が結婚相手に求める年収は600万」というフレーズをみたことがありますが,600万以上の者は,20代の未婚男性では0.7%しかおらず,30代でもわずか5.7%です。
現実に多いのは低収入層であり,私の年齢層の30代後半でも,半分が300万未満で,3分の1が200万未満のワープアです。
30代に焦点を当てて,未婚女性が結婚相手に最低限求める年収と,未婚男性の年収(上図)を照合してみましょう。前者は,明治安田生活福祉研究所の『結婚・出産に関する調査』(2013年)から知ることができます。
http://www.myilw.co.jp/life/enquete/07_marriage.html
両者の間には,少なからぬズレがみられます。最低でも400万を望む女性は全体の65.8%いますが,この基準を満たす男性は26.2%しかいません。男性の側からすると,半分ちょっとが年収300万未満ですが,これでよしとしする女性はたったの1割なり。
言葉が不適切かもしれませんが,これが結婚市場の現実です。上記の図をツイッターに載せたところ,「男性だけに稼ぎを期待するのは間違いだ」「共働きすれば何とかなる」「夫婦協力して稼げばいい」という意見が多数ありました。
まったくもって,その通りだと思います。男性の腕一本で一家を養えるような時代は終わっています。時代は変わっているのです。しかし,当事者の意識は旧態依然のまま。このギャップに,未婚化の進行の一因をみてとれるでしょう。その克服には,女性の社会進出を促す条件の整備,男女の給与差の是正が必要であることは言うまでもありません。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
パッと見で「こんなに低いの?」という印象を持たれたことでしょう。電車のつり広告で「20代女性が結婚相手に求める年収は600万」というフレーズをみたことがありますが,600万以上の者は,20代の未婚男性では0.7%しかおらず,30代でもわずか5.7%です。
現実に多いのは低収入層であり,私の年齢層の30代後半でも,半分が300万未満で,3分の1が200万未満のワープアです。
30代に焦点を当てて,未婚女性が結婚相手に最低限求める年収と,未婚男性の年収(上図)を照合してみましょう。前者は,明治安田生活福祉研究所の『結婚・出産に関する調査』(2013年)から知ることができます。
http://www.myilw.co.jp/life/enquete/07_marriage.html
両者の間には,少なからぬズレがみられます。最低でも400万を望む女性は全体の65.8%いますが,この基準を満たす男性は26.2%しかいません。男性の側からすると,半分ちょっとが年収300万未満ですが,これでよしとしする女性はたったの1割なり。
言葉が不適切かもしれませんが,これが結婚市場の現実です。上記の図をツイッターに載せたところ,「男性だけに稼ぎを期待するのは間違いだ」「共働きすれば何とかなる」「夫婦協力して稼げばいい」という意見が多数ありました。
まったくもって,その通りだと思います。男性の腕一本で一家を養えるような時代は終わっています。時代は変わっているのです。しかし,当事者の意識は旧態依然のまま。このギャップに,未婚化の進行の一因をみてとれるでしょう。その克服には,女性の社会進出を促す条件の整備,男女の給与差の是正が必要であることは言うまでもありません。
2014年2月6日木曜日
年収と未婚の関連(改)
昨年の9月10日の記事では,30代後半男女の年収別の未婚率を出したのですが,この記事をみてくださる方が多いようです。
結婚とは,男女の自由意思に基づくものとみられがちですが,フタを開けてみると,年収のような経済条件に強く規定されています。こういうデータが珍しかったのでしょうか。また,男女では傾向が逆になっていることも,興味をひいたのだと思われます。
しかるに,問題点のご指摘もいただきました。一つは,各年収階層の量を考慮していないこと。二つは,無業者を入れていないことです。
なるほど,年収1,500万以上の女性の未婚率が飛びぬけて高いのですが,この層は量的にはごくわずかです。各階層の量も提示しないといけませんよね。また,働いていない無業者の存在も無視することはできません。最近は,働き盛りの層でも無業者が増えてきていますし。
今回は,こうした点をふまえて作り直した図をご覧に入れようと思います。まずは,素材から見ていただきましょう。無業者と,有業者の年収別の3階層です。先の記事と同様,30代後半男女のデータを収集しました。ソースは,2012年の総務省『就業構造基本調査』です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
男性では年収400万以上の有業者が最多ですが,女性では無業者と200万未満の有業者が拮抗しています。前者は専業主婦,後者は家計補助のパート等が多くを占めるでしょう。
このデータを使って,層別の未婚率の様相が分かるグラフをつくってみましょう。とはいえ,単純な折れ線グラフでは,この前と同じです。ここでは,各層の量も分かる図にしたいと思います。
横幅で4つの階層の量を表現し,各層の未婚・既婚構成が分かるようにしました。未婚者を除いた全てが既婚者とは限りませんが,離別・死別の者はそう多くないので,まあ既婚(有配偶)と括ってもよいでしょう。
男性では,年収が上がるほど未婚率は低下していきます。男性にあっては,無業者と年収200万未満のワープア(Ⅰ)はわずかですが,量的に少ないこの層にしわ寄せがいっている模様です。無業者の未婚率は80.6%,ワープアの未婚率は61.7%なり。
しかるに女性は,おおむね高年収層ほど未婚率が上昇します。自分で稼げるので結婚を望まないのか,結婚を望みつつも稼ぐ女性は敬遠されるのか。事情は分かりませんが,年収と未婚率の関連の性差に,「男が養うべし」というわが国のジェンダー観念がみてとれます。
ところで,年収と未婚の関連のジェンダー差は,地域によって若干違います。上図のような傾向が顕著な東京と,それが比較的薄い沖縄のケースをみていただきましょう。
東京の場合,年収と未婚の関連ならびにその性差が,全国傾向にも増してクリアーです。無業男性の9割,ワープア男性の8割が未婚であり,年収200万以上の女性の半分近くは未婚なり。
対して沖縄はというと,無業男性やワープア男性でも既婚者が結構いるのではないですか。女性にあっても,年収階層による未婚率の傾斜がゆるくなっています。「男女ともに稼ぐ」。こういう考えが浸透しているのかもしれません。所得水準が低いので,共働きでないとやっていけない,という事情もあるでしょうが。
「男は仕事,女は家庭」というジェンダー観念が強いのは地方であり,都市部ではそれがなくなってきているといわれますが,実情は逆なのかもしれませんね。
偏狂なジェンダー観念についてどう思うかと世論調査で尋ねることは簡単ですが,口でなら何とでも言えます。ジェンダーの克服の度合いは,目に見える行動量でもって把握すべきでしょう。年収による未婚率の傾斜の男女差が,今から10年後,20年後になくなっているか。こうした点にも注意していきたいものです。
結婚とは,男女の自由意思に基づくものとみられがちですが,フタを開けてみると,年収のような経済条件に強く規定されています。こういうデータが珍しかったのでしょうか。また,男女では傾向が逆になっていることも,興味をひいたのだと思われます。
しかるに,問題点のご指摘もいただきました。一つは,各年収階層の量を考慮していないこと。二つは,無業者を入れていないことです。
なるほど,年収1,500万以上の女性の未婚率が飛びぬけて高いのですが,この層は量的にはごくわずかです。各階層の量も提示しないといけませんよね。また,働いていない無業者の存在も無視することはできません。最近は,働き盛りの層でも無業者が増えてきていますし。
今回は,こうした点をふまえて作り直した図をご覧に入れようと思います。まずは,素材から見ていただきましょう。無業者と,有業者の年収別の3階層です。先の記事と同様,30代後半男女のデータを収集しました。ソースは,2012年の総務省『就業構造基本調査』です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm
男性では年収400万以上の有業者が最多ですが,女性では無業者と200万未満の有業者が拮抗しています。前者は専業主婦,後者は家計補助のパート等が多くを占めるでしょう。
このデータを使って,層別の未婚率の様相が分かるグラフをつくってみましょう。とはいえ,単純な折れ線グラフでは,この前と同じです。ここでは,各層の量も分かる図にしたいと思います。
横幅で4つの階層の量を表現し,各層の未婚・既婚構成が分かるようにしました。未婚者を除いた全てが既婚者とは限りませんが,離別・死別の者はそう多くないので,まあ既婚(有配偶)と括ってもよいでしょう。
男性では,年収が上がるほど未婚率は低下していきます。男性にあっては,無業者と年収200万未満のワープア(Ⅰ)はわずかですが,量的に少ないこの層にしわ寄せがいっている模様です。無業者の未婚率は80.6%,ワープアの未婚率は61.7%なり。
しかるに女性は,おおむね高年収層ほど未婚率が上昇します。自分で稼げるので結婚を望まないのか,結婚を望みつつも稼ぐ女性は敬遠されるのか。事情は分かりませんが,年収と未婚率の関連の性差に,「男が養うべし」というわが国のジェンダー観念がみてとれます。
ところで,年収と未婚の関連のジェンダー差は,地域によって若干違います。上図のような傾向が顕著な東京と,それが比較的薄い沖縄のケースをみていただきましょう。
東京の場合,年収と未婚の関連ならびにその性差が,全国傾向にも増してクリアーです。無業男性の9割,ワープア男性の8割が未婚であり,年収200万以上の女性の半分近くは未婚なり。
対して沖縄はというと,無業男性やワープア男性でも既婚者が結構いるのではないですか。女性にあっても,年収階層による未婚率の傾斜がゆるくなっています。「男女ともに稼ぐ」。こういう考えが浸透しているのかもしれません。所得水準が低いので,共働きでないとやっていけない,という事情もあるでしょうが。
「男は仕事,女は家庭」というジェンダー観念が強いのは地方であり,都市部ではそれがなくなってきているといわれますが,実情は逆なのかもしれませんね。
偏狂なジェンダー観念についてどう思うかと世論調査で尋ねることは簡単ですが,口でなら何とでも言えます。ジェンダーの克服の度合いは,目に見える行動量でもって把握すべきでしょう。年収による未婚率の傾斜の男女差が,今から10年後,20年後になくなっているか。こうした点にも注意していきたいものです。
2014年2月3日月曜日
殺人率と自殺率の国際比較図
前に,殺人率と自殺率の国際比較図をツイッターで発信したところ,見てくださる方が多いようなので,ブログにも載せておきます。横軸に自殺率,縦軸に殺人率をとった座標上に,188の社会を位置づけたものです。
殺人率とは人口10万人あたりの殺人事件件数をいい,自殺率とは人口10万人あたりの自殺者数を意味します。双方とも2008年のデータです。
日本は殺人率が非常に低く,自殺率が高いので,右下の底辺を這うような位置にあります。他の先進国もおおむね同じです。アメリカは物騒だとかいわれますが,世界全体でみれば,この国よりも殺人率が高い社会がわんさとあります。邦人の殺害事件があった南米のエクアドルが,だいたい中間というところです。
ところで,殺人と自殺という,性質が真逆の逸脱行動の量を同時観察することで,それぞれの社会の国民性のようなものがみえてきます。極限の危機状況に置かれたとき,他人を殺るか,それとも自らを殺めるか。図の数値は,各国の国民の内向性を可視化したものです。
日本の殺人率は0.5,自殺率は24.8です。殺人と自殺の合算量のうち,98.0%が自殺で占められています。対して中米のホンジュラスの場合,この値はわずか9.0%です。両国のお国柄のコントラストが明らかです。
わが国では,危機状況のほとんどが,誰にも危害を加えない形で処理されている。結構なことではないか,という意見もあるでしょう。しかし,際立って高い内向率の裏には,「他人に助けを求めるのは恥ずべきこと」「なんでもかんでも自己責任」といった機械思考が蔓延している,日本社会の病理兆候も見え隠れしています。
上記の国際統計は,こうした視点から読み解くべきだと思いますが,いかがでしょうか。
殺人率とは人口10万人あたりの殺人事件件数をいい,自殺率とは人口10万人あたりの自殺者数を意味します。双方とも2008年のデータです。
日本は殺人率が非常に低く,自殺率が高いので,右下の底辺を這うような位置にあります。他の先進国もおおむね同じです。アメリカは物騒だとかいわれますが,世界全体でみれば,この国よりも殺人率が高い社会がわんさとあります。邦人の殺害事件があった南米のエクアドルが,だいたい中間というところです。
ところで,殺人と自殺という,性質が真逆の逸脱行動の量を同時観察することで,それぞれの社会の国民性のようなものがみえてきます。極限の危機状況に置かれたとき,他人を殺るか,それとも自らを殺めるか。図の数値は,各国の国民の内向性を可視化したものです。
日本の殺人率は0.5,自殺率は24.8です。殺人と自殺の合算量のうち,98.0%が自殺で占められています。対して中米のホンジュラスの場合,この値はわずか9.0%です。両国のお国柄のコントラストが明らかです。
わが国では,危機状況のほとんどが,誰にも危害を加えない形で処理されている。結構なことではないか,という意見もあるでしょう。しかし,際立って高い内向率の裏には,「他人に助けを求めるのは恥ずべきこと」「なんでもかんでも自己責任」といった機械思考が蔓延している,日本社会の病理兆候も見え隠れしています。
上記の国際統計は,こうした視点から読み解くべきだと思いますが,いかがでしょうか。
2014年2月2日日曜日
子育て期における人口増加率地図(首都圏版)
昨日は,都内49市区の「子育て期における人口増加率地図」をご覧いただきましたが,1都3県にまで射程を広げた首都圏版をつくってみましたので,展示しようと思います。
子育て期における人口増加率とは,20代後半から30代前半にかけての増加率を意味します。2008年1月の25~29歳人口と,2013年1月の30~34歳人口を照合して計算しました。参照したのは以下の資料です。
・埼玉県:『埼玉県町(字)別人口調査』
http://www.pref.saitama.lg.jp/site/a009/
・千葉県:『千葉県年齢別・町字別人口』
http://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/nenreibetsu/index.html
・東京都:『住民基本台帳による東京都の世帯と人口』
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukiy/jy-index.htm
・神奈川県:『神奈川県年齢別人口統計調査』
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f11000/
神奈川県の資料は,各年4月時点の人口が掲載されていますので,当県の自治体は,2008年と2013年の4月時点の人口比較によります。他の3都県は,1月時点の比較です。
都内の中央区でみると,2008年1月の25~29歳人口は9,477人(a)ですが,5年後の2013年1月の30~34歳人口は14,034人(b)にまで膨れ上がっています。増加率にすると,+48.1%にもなります。計算式は,<(b-a)/a >です。
1都3県に視界を広げた場合,この増加率を上回る自治体はあるでしょうか。首都圏242市区町村の増加率を同じやり方で出し,マッピングすると,下図のようになります。
全体的にみると,子育て期にかけて人口が減っている地域が多くなっています。242市区町村のうち,133の地域が白色か薄い緑色です。
それ以外は人口が増えた地域ですが,増加率が5%を超える濃い緑色は,都心もしくはその近辺に多いですねえ。前回も書きましたが,子どもができたら家庭の時間を長く持ちたいということで,通勤時間が短くなる都心に移り住む,ということでしょうか。あるいは,早期受験なども見越してのことか。
しかるに,都心か周辺部かという,地域ロケーションが決定的かというと,そうではありません。濃い緑色は,都心から離れたゾーンにも点在しています。その中には,町村もあり。
ここにて,子育て期における人口増加率が高い地域の顔ぶれをみてみましょう。やや飛躍していうなら,子育てに選ばれている地域はどこかです。20代後半から30代前半にかけての増加率が10%を超える地域を一覧表にしてみました。高い順に並べています。
首都圏全体でみても,トップは中央区です。ほか,都心かその近辺の市区が多く名を連ねています。千葉県の流山市がありますが,当市はホームページのトップで「母になるなら流山・父になるなら流山」とうたっています。さぞ充実した子育て施策を実施しているのでしょう。
http://www.city.nagareyama.chiba.jp/index.html
なお,表の中には郡部(町村)も含まれており,神奈川県の開成町は14.9%の増です。この町のホームページをみると,「子育て支援センター,のびのび子育てルーム,チビッ子らんど,地域育児センター」などを通した育児支援を実施しているようですが,そうした実践の賜物でしょうか。
上表に掲げられた自治体の子育て施策一覧表をつくってみるのも一興ではないでしょうか。保育に関心のある学生さん,卒論のテーマになりかもしれませんよ。
子育て期における人口増加率とは,20代後半から30代前半にかけての増加率を意味します。2008年1月の25~29歳人口と,2013年1月の30~34歳人口を照合して計算しました。参照したのは以下の資料です。
・埼玉県:『埼玉県町(字)別人口調査』
http://www.pref.saitama.lg.jp/site/a009/
・千葉県:『千葉県年齢別・町字別人口』
http://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/nenreibetsu/index.html
・東京都:『住民基本台帳による東京都の世帯と人口』
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukiy/jy-index.htm
・神奈川県:『神奈川県年齢別人口統計調査』
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f11000/
神奈川県の資料は,各年4月時点の人口が掲載されていますので,当県の自治体は,2008年と2013年の4月時点の人口比較によります。他の3都県は,1月時点の比較です。
都内の中央区でみると,2008年1月の25~29歳人口は9,477人(a)ですが,5年後の2013年1月の30~34歳人口は14,034人(b)にまで膨れ上がっています。増加率にすると,+48.1%にもなります。計算式は,<(b-a)/a >です。
1都3県に視界を広げた場合,この増加率を上回る自治体はあるでしょうか。首都圏242市区町村の増加率を同じやり方で出し,マッピングすると,下図のようになります。
全体的にみると,子育て期にかけて人口が減っている地域が多くなっています。242市区町村のうち,133の地域が白色か薄い緑色です。
それ以外は人口が増えた地域ですが,増加率が5%を超える濃い緑色は,都心もしくはその近辺に多いですねえ。前回も書きましたが,子どもができたら家庭の時間を長く持ちたいということで,通勤時間が短くなる都心に移り住む,ということでしょうか。あるいは,早期受験なども見越してのことか。
しかるに,都心か周辺部かという,地域ロケーションが決定的かというと,そうではありません。濃い緑色は,都心から離れたゾーンにも点在しています。その中には,町村もあり。
ここにて,子育て期における人口増加率が高い地域の顔ぶれをみてみましょう。やや飛躍していうなら,子育てに選ばれている地域はどこかです。20代後半から30代前半にかけての増加率が10%を超える地域を一覧表にしてみました。高い順に並べています。
首都圏全体でみても,トップは中央区です。ほか,都心かその近辺の市区が多く名を連ねています。千葉県の流山市がありますが,当市はホームページのトップで「母になるなら流山・父になるなら流山」とうたっています。さぞ充実した子育て施策を実施しているのでしょう。
http://www.city.nagareyama.chiba.jp/index.html
なお,表の中には郡部(町村)も含まれており,神奈川県の開成町は14.9%の増です。この町のホームページをみると,「子育て支援センター,のびのび子育てルーム,チビッ子らんど,地域育児センター」などを通した育児支援を実施しているようですが,そうした実践の賜物でしょうか。
上表に掲げられた自治体の子育て施策一覧表をつくってみるのも一興ではないでしょうか。保育に関心のある学生さん,卒論のテーマになりかもしれませんよ。
2014年2月1日土曜日
子育て期における人口増加率地図
昨日の読売新聞が報じたところによると,2013年中の転出超過が全国一だったのは,神奈川県の横須賀市だそうです。とりわけ転出が多いのは子育て世代とのこと。これに対し市長は,「誠に遺憾。転出の抑制と転入の促進の方策を打ち出したい」とコメントしています。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140131-OYT1T00535.htm?from=tw
前にどこかで書きましたが,ヒトの動き(mobility)というのは正直です。水が高きから低きに流れるがごとく,魅力的な地域には人が入り,そうでない所からは人は出ていくというのは道理です。
私はこういう考えのもと,子育て期における人口増減を,都内の49市区別に明らかにしてみました。計算したのは,20代後半から30代前半にかけての人口増加率です。この値が高いほど,子育てに選ばれている地域という見方をとります。
参照したのは,『住民基本台帳による東京都の世帯と人口』という資料です。現在公表されている最新の数値は,2013年1月時点のものです。この時点の30~34歳人口は,5年前の2008年1月では25~29歳ということになります。
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukiy/jy-index.htm
この2つの数値を照合することで,同一世代(コーホート)について,20代後半から30代前半にかけての人口増減を明らかにすることができます。下の表は,都内49市区別の結果一覧です。
子育て期における人口増加率が最も高いのは,中央区となっています。20代後半では9,477人だったのが,30代前半になるや14,034人にまで膨れ上がっています。増加率にすると,実に+48.1%にもなります。1.5倍近くの増加です。
2位は台東区の40.3%,3位は港区の39.3%なり。人口増加率という単純な指標ですが,これでみる限り,子育てに選ばれている地域といえるかもしれません。
なお,赤色は増加率が10%を超える数値ですが,ほとんどが都心ではないですか。子育ては自然が多い地域でのびのびと。こんなふうに考える人が多いかと思いますが,そうでもないのかなあ。
西部では,人口が減っている地域もあり,私が住んでいる多摩市に至っては10.4%の減でワーストです。多摩市は公園面積が首都圏で1位であり,子育てにはうってつけの環境だと思うのですが。ちと複雑な気持ちです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/01/blog-post_30.html
子どもができたら,家庭の時間を多く持ちたいということで,通勤時間が短くなる都心が選ばれるのでしょうか。あるいは,早期受験などを見越してとことでしょうか。まあ好みは人それぞれですのでとやかくは申しませんが,ちょっと意外でした。
私は視覚人間ですので,上表の増加率を地図化しておこうと思います。4つの階級を設けて,49市区をグラデーションで塗り分けてみました。
東高西低が明瞭ですね。特別区(23区)ではほとんどが10%以上の増ですが,西部では白色,すなわち人口減の地域も結構あります。
大雑把にみればこんな感じですが,各市区の人口増加率は,子育て施策による部分も大きいと思われます。ある方がツイッターで教えてくださったところによると,「中央区に流入が多いのは 待機児童が比較的少ないこと,出産祝い金(3万)があることなんかがありそう」とのこと。また,「移動教室の際,保護者の方からの集金は賄い費(食事代)だけでした。バス代も宿泊費も区からお金が出ていました」という経験談もお聞きしました。なるほどなあ。
http://www.city.chuo.lg.jp/kosodate/index.html
繰り返しますが,ヒトの動きというのは正直です。今回出した,子育て期における人口増加率のような指標は,各地域の子育て施策の効果を評価するメジャーとして使えるでしょう。経年変化にも関心を向けていただきたいものです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140131-OYT1T00535.htm?from=tw
前にどこかで書きましたが,ヒトの動き(mobility)というのは正直です。水が高きから低きに流れるがごとく,魅力的な地域には人が入り,そうでない所からは人は出ていくというのは道理です。
私はこういう考えのもと,子育て期における人口増減を,都内の49市区別に明らかにしてみました。計算したのは,20代後半から30代前半にかけての人口増加率です。この値が高いほど,子育てに選ばれている地域という見方をとります。
参照したのは,『住民基本台帳による東京都の世帯と人口』という資料です。現在公表されている最新の数値は,2013年1月時点のものです。この時点の30~34歳人口は,5年前の2008年1月では25~29歳ということになります。
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukiy/jy-index.htm
この2つの数値を照合することで,同一世代(コーホート)について,20代後半から30代前半にかけての人口増減を明らかにすることができます。下の表は,都内49市区別の結果一覧です。
子育て期における人口増加率が最も高いのは,中央区となっています。20代後半では9,477人だったのが,30代前半になるや14,034人にまで膨れ上がっています。増加率にすると,実に+48.1%にもなります。1.5倍近くの増加です。
2位は台東区の40.3%,3位は港区の39.3%なり。人口増加率という単純な指標ですが,これでみる限り,子育てに選ばれている地域といえるかもしれません。
なお,赤色は増加率が10%を超える数値ですが,ほとんどが都心ではないですか。子育ては自然が多い地域でのびのびと。こんなふうに考える人が多いかと思いますが,そうでもないのかなあ。
西部では,人口が減っている地域もあり,私が住んでいる多摩市に至っては10.4%の減でワーストです。多摩市は公園面積が首都圏で1位であり,子育てにはうってつけの環境だと思うのですが。ちと複雑な気持ちです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/01/blog-post_30.html
子どもができたら,家庭の時間を多く持ちたいということで,通勤時間が短くなる都心が選ばれるのでしょうか。あるいは,早期受験などを見越してとことでしょうか。まあ好みは人それぞれですのでとやかくは申しませんが,ちょっと意外でした。
私は視覚人間ですので,上表の増加率を地図化しておこうと思います。4つの階級を設けて,49市区をグラデーションで塗り分けてみました。
東高西低が明瞭ですね。特別区(23区)ではほとんどが10%以上の増ですが,西部では白色,すなわち人口減の地域も結構あります。
大雑把にみればこんな感じですが,各市区の人口増加率は,子育て施策による部分も大きいと思われます。ある方がツイッターで教えてくださったところによると,「中央区に流入が多いのは 待機児童が比較的少ないこと,出産祝い金(3万)があることなんかがありそう」とのこと。また,「移動教室の際,保護者の方からの集金は賄い費(食事代)だけでした。バス代も宿泊費も区からお金が出ていました」という経験談もお聞きしました。なるほどなあ。
http://www.city.chuo.lg.jp/kosodate/index.html
繰り返しますが,ヒトの動きというのは正直です。今回出した,子育て期における人口増加率のような指標は,各地域の子育て施策の効果を評価するメジャーとして使えるでしょう。経年変化にも関心を向けていただきたいものです。
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