前に,殺人率と自殺率の国際比較図をツイッターで発信したところ,見てくださる方が多いようなので,ブログにも載せておきます。横軸に自殺率,縦軸に殺人率をとった座標上に,188の社会を位置づけたものです。
殺人率とは人口10万人あたりの殺人事件件数をいい,自殺率とは人口10万人あたりの自殺者数を意味します。双方とも2008年のデータです。
日本は殺人率が非常に低く,自殺率が高いので,右下の底辺を這うような位置にあります。他の先進国もおおむね同じです。アメリカは物騒だとかいわれますが,世界全体でみれば,この国よりも殺人率が高い社会がわんさとあります。邦人の殺害事件があった南米のエクアドルが,だいたい中間というところです。
ところで,殺人と自殺という,性質が真逆の逸脱行動の量を同時観察することで,それぞれの社会の国民性のようなものがみえてきます。極限の危機状況に置かれたとき,他人を殺るか,それとも自らを殺めるか。図の数値は,各国の国民の内向性を可視化したものです。
日本の殺人率は0.5,自殺率は24.8です。殺人と自殺の合算量のうち,98.0%が自殺で占められています。対して中米のホンジュラスの場合,この値はわずか9.0%です。両国のお国柄のコントラストが明らかです。
わが国では,危機状況のほとんどが,誰にも危害を加えない形で処理されている。結構なことではないか,という意見もあるでしょう。しかし,際立って高い内向率の裏には,「他人に助けを求めるのは恥ずべきこと」「なんでもかんでも自己責任」といった機械思考が蔓延している,日本社会の病理兆候も見え隠れしています。
上記の国際統計は,こうした視点から読み解くべきだと思いますが,いかがでしょうか。