2015年12月30日水曜日

2015年12月の教員不祥事報道

 もう30日,明日は大みそかです。明日は今年の総括記事を書きますので,恒例の教員不祥事報道の整理は,今日やってしまいます。

 今月,私がネット上でキャッチした不祥事報道は42件です。年末なので酒絡みの不祥事が多くなっていますが,公立中学校教諭が「赤旗」を配布し,反安保デモをけしかけたという事案もみられます。

 これは教育基本法違反です。同法第14条にて,学校における政治教育ないしは政治運動は禁止されています。私立学校も同じです。宗教教育(活動)は,私立学校の場合は許されますが,政治教育(活動)禁止の規定は,国公私立問わず全ての学校に適用されます。選挙年齢が18歳に引き下げられたこと,高校生の政治運動が解禁されたことと関連して,教員採用試験で出題されるかと思います。受験予定の方は,覚えておきましょう。

 明日は,今年(2015年)の総括記事をアップいたします。

<2015年12月の教員不祥事報道>
女子生徒にキス、24歳講師を懲戒免職
 (12/1,福島民友,福島,わいせつ:中男24,体罰:中男51,侮辱:小男56)
教諭 児童に触った容疑で逮捕(12/2,NHK,神奈川,小,男,28)
小学生男児ひき逃げの疑い 特別支援学校教師逮捕(12/4,FNN,熊本,特,男)
<酒気帯び運転容疑>岐阜の県立高校講師を逮捕(12/4,毎日,岐阜,高,男,64)
生徒に暴言、平手打ち…体罰の顧問を減給処分(12/4,産経,埼玉,中,男,32)
中学教諭が女子高生の下着を数千枚盗撮(12/7,スポーツ報知,大阪,中,男,26)
盗撮 | 勤務先体育館で4年間…小学校教諭54歳を起訴
 (12/12,毎日,愛知,小,男,54)
クラス全員前に生徒土下座 教諭を処分(12/12,神戸新聞,兵庫,中,男,30代)
教諭が万引、無免許運転… 滋賀県教委、2人処分へ
 (12/12,京都新聞,滋賀,万引:小女36,無免許運転:中男26)
女子高校生を盗撮か 教諭逮捕(12/12,NHK,千葉,中,男,37)
<盗撮>女子中学生被害、28歳の小学講師逮捕(12/12,毎日,福岡,小,男,28)
酒気帯びで人身事故 容疑の高校教諭逮捕(12/13,静岡新聞,静岡,高,男,40)
住居侵入容疑 | 教え子だった少女宅に…熊本の小学教諭逮捕
 (12/14,毎日,熊本,小,男,49)
三重県の教諭の不祥事相次ぎ、懲戒処分 女子児童をはねる
 (12/14,秋田放送,三重,高,男,34)
ビンタに頭突き約20分 教師が中1男子に(12/15,日テレ,愛媛,中,男,40代)
教諭2人を懲戒処分(12/15,読売,三重,交通事故:高男34,営利事業従事:小女53)
わいせつ行為、講師懲戒免 宮崎県教委(12/15,宮崎日日新聞,宮崎,高,男,27)
公立中教諭が教室で「赤旗」コピー配布 シールズの反安保デモを持ち上げる
  (12/16,サンケイビズ,埼玉,中,男,53)
生徒をたたいた教諭を懲戒処分(12/16,栃木放送,栃木,中,男,47)
懲戒処分 | 生徒21人に体罰18件 30代教諭を減給処分
 (12/16,毎日,岩手,中,男,30代)
「口開けろ」と口元にカッター |(12/16,共同通信,広島,中,男,20代)
中学教諭が万引で停職 福島県教委、体罰で3人に戒告処分
 (12/17,福島民友,福島,万引:中男48,体罰:中学校男性教諭(51)と高校男性教諭(45)、高校男性教諭(32)
交通死亡事故で教諭を停職 県教委(12/18,毎日,鹿児島,中,男,51)
40歳中学教員、強盗強姦未遂容疑で逮捕 堺、路上で20代女性襲う
 (12/18,産経,大阪,中,男,40)
フェンシング不正判定疑惑で高校教諭を戒告処分(12/19,日刊スポーツ,大分,高,男,49)
生徒平手打ちの中学教諭を戒告 県教委(12/19,毎日,宮城,中,男,46)
市場中で40万円紛失 女性教諭、持ち出し認める(12/21,徳島新聞,徳島,中,女,50代)
部活中に飲酒 教諭停職 (12/21,NHK,福岡,中,男,52)
熊本市の男の教諭 酒気帯び運転で懲戒免職処分(12/21,TKUテレビ,熊本,中,男,55)
教諭が生徒平手打ち 鼓膜破る(12/22,神戸新聞,兵庫,中,男,30代)
懲戒処分:女子生徒にキスの中学教諭 (12/22,毎日,埼玉,中,男,23)
盗撮、セクハラ、児童ポルノ 横浜市教委が男性教諭4人処分
 (12/23,神奈川新聞,神奈川,強制わいせつ:小男28,児童ポルノ:小男29,同僚自宅侵入:小男42,セクハラ:中男44)
セクハラ:生徒に水垂らし「若いからはじく」 教諭処分(12/23,毎日,広島,高,男,41)
教え子十数人にセクハラの教諭、停職6カ月(12/24,朝日,岐阜,高,男,53)
育休中に万引、教諭処分 滋賀県教委(12/24,京都新聞,滋賀,小,女,36)
<体罰>高校教諭、修学旅行中に2生徒殴る 頭縫うけが
 (12/25,毎日,茨城,高,男,27)
酒気帯び運転で中学教諭を免職(12/25,産経,新潟,中,男,51)
児童ポルノの元校長に有罪=比で少女買春「卑劣で悪質」
 (12/25,時事通信,神奈川,中,男,65)
柔道部の部員に命令「トイレでいじめろ」 (12/25,産経,茨城,高,男,36)
県立高校教諭が教え子にわいせつ行為 懲戒免職処分(12/25,産経,群馬,高,男,30)
男性教頭、温泉施設で男湯盗撮 (12/25,産経,大阪,小,男,53)
夫の不倫相手を脅迫 県教委、公立中教諭を文書訓告処分(12/26,中日,愛知,中,女)

2015年12月29日火曜日

年末のプチ・トラブル

 先週の土曜日(26日)のお昼前に,メールが一件きました。某ライターさんからで,ある雑誌記事の執筆に,私が作成したデータを使わせていただきたい,という許諾申請です。希望があったのは,三世代同居率の国際比較のデータ(↓)。

 まあ,よくあることです。しかし,こう書いてありました。

  「**という雑誌でも三世代同居についての提言を行うことになり,その記事の中でも,欧州の先進国では三世代同居は数%だということで,各国の数字も使用させて頂く予定です。舞田先生が作られた各国の数値一覧は,スペースの都合で使用できず,お名前などは入れられず申し訳ないのですが,先生のツイッターからヒントを得ていることを事前にご連絡しておきたいと思いました」。

 私がカチンときたのは,赤字の文言です。私の意向も聞かずに,「使用させていただく予定です」と決めつけています。また,私が『世界価値観調査』(以下,WVS)のローデータから労力をかけて計算した著作物であるにもかかわらず,クレジットは記入しない,と言ってきています。こんな書き方をして,相手が怒るとは思わないのでしょうか。

 出典のWVSサイトにも当たった,とありましたので,自分が調べた数値として使いたい,ということなのでしょう。しかし,出典はWVSサイトではありません。そこには,計算済みの数値は掲載されていないはずです。なぜなら,私がローデータ(個票データ)を申請して,独自に計算したものだからです。それを,クレジット(作成者)の明記もしないで,あたかも自分が調べたかのように使うというのは,剽窃以外の何物でもありません。

 表の下に「資料:『世界価値観調査』(2010-14) 作成者:舞田敏彦」と添えられているのを見て,WVSサイトに公表されている数値を舞田が拾って表にまとめたのだな,と勘違いしたのでしょうね。それでWVSに当たって確認した,自分が調べたものだ,だからクレジットは明記しないと。

 そこで私は,WVSサイトに当たって計算済みのデータを確認したというなら,その画面のURLを教えてほしい,ないしは画面のスクリーンショットを送ってほしい,と要求しました。答えは,確認していないとのこと。つまりこの人は,出典の所在も突き止めず,舞田作成のオリジナルデータと知りながら,クレジットをつけないで記事に使うつもりだったことになります。あたかも自分で調べたかのように。

 「では,クレジットを明記するので,データを使わせてもらっていいか」と尋ねてきましたが,私は,こういうことをする人にデータを使ってほしくないと思い,使用不許可の返事をしました。その後,返信がありましたが,読まずに削除しました。これでおしまい。

********************

 どうやら,「資料:『世界価値観調査』(2010-14) 作成者:舞田敏彦」では不十分で,「資料:『世界価値観調査』(2010-14) 元データ計算・表作成者:舞田敏彦」,あるいは「*『世界価値観調査』(2010-14)のローデータより舞田敏彦が計算」と書かないといけないようです。また一つ,お勉強をさせてもらいました。

 しかしまあ,「クレジット明記の使用を許可いただけますか」と聞いてくればいいものを,「お名前などは入れられず」などと書いたのが,そもそもの誤りです。よほど,自分が調べたデータということで書きたかったのでしょうか。「舞田敏彦氏が『世界価値観調査』から計算したデータによると」という,一文を添えるのも嫌だったのでしょうか・・・。

 実はこの人は,同じ媒体で連載を持っている同志です(面識はありませんが)。私とは真逆のアプローチをとる人で,毎回楽しく読ませてもらっていました。「いいこと書くなあ,血が通っているなあ」と敬服していたのですが,こんな人だと分かってガッカリです。

 デュルケムは,「犯罪は社会にとって有益である。それによって,人々の道徳意識が進化するなど,社会が発展する」という趣旨のことを述べていますが,人は,自分が遭遇したトラブルから学ぶもの。私が揉め事の経緯を細かく記録するのは,せっかく得た教訓を忘れないようにするためです。今回の件で,発信する表やグラフのクレジット表記に不備があることを知りました。それを教えてくれたという意味では,このライターさんに感謝はしています。

2015年12月27日日曜日

高卒者の正社員就職率

 昨日,面白いツイートをみつけました。柔軟な発想をなさる方なので,ちょくちょくツイッターをのぞかせていただいているのですが,以下のようなものです。
https://twitter.com/sateco/status/679497811172306944


 なるほど。数の上では,今となっては高卒者より大卒者が多く,希少性では前者のほうが上です。早く働き始めれば,スキルは身につくし,学費も浮くと。

 「高卒で就ける仕事なんてねーだろ」といわれるかもしれませんが,大卒の知識や技術が必要な仕事って,どれほどあるでしょう。企業が大卒者を好んで雇うのは,彼らのタレントに期待してのことではありません。「大卒者なら仕事の覚えも早かろう,間違いなかろう」と踏んでのことです。数多い応募者の中から,間違いのない人材を選ぶためのシグナルとして,学歴を使っているだけのこと。これを,シグナりリング理論といいます。

 腹の底では,上記の小林さんのような考えを持っている人が多いのでは,と思います。たしか,2013年の国際成人力調査(PIAAC)でも,日本では,「今の自分の仕事は,自分よりも低い学歴の人でもこなせる」と考える人が多かったのですよね。

 さて,今の日本は大学進学率が50%を超えているのですが,(賢明にも)高卒で就職する生徒もいます。統計でみて,高卒の就職率はどれくらいかと思い,2015年度の『学校基本調査』をみてみたら,なんと今年度から正規就職者と非正規就職者に分けて集計されているではありませんか。これを使えば,高卒者の正社員就職率を出せます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 私は,今年春の高卒者の進路構造図を描き,正規就職者がどれほどいるかを可視化してみました。高卒者の特徴を出すため,短大卒,高専卒,大卒者の図もつくってみました。下図がそれです。


 左上が高卒者の進路構造図ですが,上級学校進学者が4分の3を占めます。正社員就職者は色つきの四角形ですが,卒業生全体に占める比率は17.6%です。就職の意思のない進学者を除いた,非進学者ベースでみると,正社員就職率は76.2%となります。こちらを使うのがいいでしょうね。

 非進学者ベースの正社員就職率(以下,正社員就職率)は,短大は77.9%,高専は96.7%,大学は80.3%となっています。さすが,高専はスゴイですね。高度経済成長を担う中堅技術者の養成のため,1961年にできた学校ですが,現在でも産業界から高く評価されているそうな。

 でも,高卒の正社員就職率は,短大や大学と大きくは違いませんね。高卒の「その他・不詳」には宅浪も含まれるでしょうが,この部分のベースから除くと,正社員就職率は大学より高くなるかもしれません。

 当然ですが,高卒者の正社員就職率は,地域によって違っています。上図にみるように全国値は76.2%ですが,都道府県別に値を出すと,かなりの開きが観察されます。下表は,高い順に並べたランキング表です。


 ほう,12の県で9割を超えているではないですか。私の郷里の鹿児島もそう。東京などの都市部の率が低いのは,宅浪が多いためでしょう。*予備校入学者は各種学校入学者にカウントされるので,ここでの率のベースには含まれません。

 まあ,上位の県では専門学科の比重が高いからでしょうね。ご存じのとおり,高校は普通科だけではなく,専門技術を教授する専門学科(工業科,商業科・・・)があり,総合学科という「第3の学科」もありますが,学科別の正社員就職率はどうでしょう。下表は,その計算表です。卒業生の数が少ない学科もありますので,分母・分子の値も示します。


 卒業生全体では76.2%ですが,農業,工業,商業,水産,そして福祉学科では9割を超えています。工業科は96%! これは,大学の理系学部の正社員就職率と比しても遜色ありません。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3276

 建築や介護とかは,今は需要ありますから・・・。ただ,ここでみた正社員就職率は非進学者ベースであり,ホントは就職希望だけど無理そうなので,仕方なく専修学校に進学したというような生徒は,分母から除かれています。

 以上が,高校から社会への移行(Transition from School to Work)の現状ですが,この経路がもっと太くなってほしいと思います。高卒就職「トーゼン」の社会。現段階では絵空事で,時計の針を戻すような難事業ですが,これが実現したら,少子化のような問題はイッキに解決するのでは。

 大学に行くのは後からでもいいわけです。しかし,日本ではこれがなかなか難しい。「児童期(C)→教育期(E)→仕事期(W)→引退期(R)」を直線的に進む,直線モデルのライフコースが支配的。求められるのは,EとW(R)の間を自由に往来できる「リカレントモデル」の構築です。北欧では,これがある程度具現されています。それは,成人の通学人口率の国際データから分かること。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/post-3823.php

 今後,わが国では少子高齢化が進む,近未来には「子ども1:大人9」という社会になります。こういう社会においては,直線モデルは通用せず,リカレントモデルがふさわしい。社会変化がますます加速化し,人々は生涯にわたって「学びなおし」をする必要にも迫られます。人生の初期(子ども期)に教育の機会を集中させ,あとは一切ナシという現在のシステムは,時代にそぐわなくなります。

 選挙権が20歳から18歳に引き下げられましたが,18歳で社会に出るのがもっと「トーゼン」になっていい(大学を出てないとこなせない仕事なんて,数えるほどしかないのですし)。そうなった時,教育行政が為すべきは,成人の「学びなおし」の機会の拡充です。

 教育の機会が人生のあらゆる段階に分散し,18歳時において,大学への進学を社会的に強制されない社会になったら,どんなにいいか。私は教育社会学の「生涯学習」の講義で,このことを毎年話しています。

2015年12月25日金曜日

子ども1人育てるのにいくらかかるか?

 表記の問いですが,子育て中の親御さんなら,誰しも関心のあること。銀行や生命保険会社による,いろいろな試算レポートもあります。しかるに,官庁統計を使って計算したらどうなるでしょう。

 昨日,文科省の『子どもの学習費調査』(2014年度)の結果が公表されました。隔年で実施されている調査で,幼稚園児から高校生の子がいる保護者に対し,子ども1人あたりの年間教育費を尋ねています。授業料,PTA会費,通学費などの学校教育費,学校給食費,そして学習塾費や習い事月謝などの学校外教育費までをも含む,広義の教育費です。

 原資料には,学年ごとの年間教育費の平均値が載っています。幼稚園3歳から高校3年生までを合算すると,高校を卒業させるまでにかかる教育費総額を試算できます。今朝の朝日新聞記事によると,オール公立の場合は523万円,オール私立の場合は1770万円だそうです。後者は前者の3.4倍。

 私は原資料に当たって,学年別の年間教育費を採取し,同じ値になるか追試してみました。下表をご覧ください。


 高校3年生までの累積をみると(右欄),オール公立は523.1万円,オール私立は1769.9万円。なるほど上記の記事でいわれている通りですね。

 これは高校までの総額ですが,大学進学率が50%を超えている今日,大学まで出すにはナンボかも気になります。大学の教育費は,上記の文科省調査には載っていませんが,日本学生支援機構の『学生生活調査』(2012年度)によると,国立大学の年間学費(授業料,学納金,課外活動費,通学費等)は67.4万円,私立は132.0万円となっています。

 大学の全学年とも同じと仮定すると,「幼稚園から高校まで公立,大学は国立のコース」の総額は792.6万円,「幼稚園から大学まで私立」のコースは2297.8万円と見積もられます。大学までオール私立だと,2000万円を超えると。まあ,そうなるでしょうね。

 しかるに,多くの子どもがたどる標準コースは「幼稚園は私立,小学校から高校は公立,大学は私立」というものでしょう。この標準コースの教育費総額は,黄色マークの数値を合算すれば出せます(累積欄の右端)。総計=1136.8万円なり。

 この試算値には大学の初年度納付金が含まれていませんので,実際はもう少し高くなると思われます。しかし,標準コースで1000万超えとは・・・。巷でいわれるウン千万というのはオーバーにしても,「高いなあ」というのが印象です。

 東京では,「幼稚園は私立,小・中学校は公立,高校・大学は私立」というコースも多いでしょうが,これだと総額は1311.5万円です。他にも,「中学から私立」,「大学だけは私立」など,いろいろなバリエーションが想起されます。子育て中のママさん・パパさん,お子さんの想定コースの総額を試算してみてください。

 なお,一口に教育費といっても,その中身は多様です。小学校1年生から高校3年生の学年別に,主な費目の組成が分かるグラフをつくってみました。公立学校の児童・生徒のものです。


 教育費の内訳は,学年によって違います。中学生では,家庭教師・学習塾の比重が高いですね。中3では,教育費全体の6割をも占めます。平均実額は,年間35万円ほどです。1か月あたり3万円ほどでしょうか。

 各学校の1年生で「その他学校教育費」の比重が高いのは,制服費や通学用品費などがかさむためです。

 話がそれましたが,本記事のタイトルの問いに対する答えとして,標準コースで見積もった場合,大学まで出すのに約1137万円かかる,という答えを記しておきます。低く見積もった試算値です。

2015年12月23日水曜日

都道府県別の未婚男性の年収

 婚活産業が隆盛と聞きますが,当該産業の関係者さんが欲しい,知りたいデータがあるかと思います。それは,未婚男性の年収の相場です。

 女性会員が「年収**万超の男性を紹介してほしい」と,やや非現実的な要望を出してきた場合,「最近の未婚男性の年収はこんな感じですよ」とデータを突きつけたい…。こういう方もおられるかと思います。だいぶ前ですが,地方の某結婚相談所の社員さんから,この手のデータはないかと,相談を受けたことがあります。

 遅まきながらお答えしますが,あります。総務省『就業構造基本調査』には,男性有業者の年収分布が配偶関係別に集計されています。結婚相談所に通う女性の多くは30代あたりかと思いますが,同じ30代の未婚男性の年収分布はどうなっているか。

 最新の2012年の同調査によると,年収が判明する30代の未婚男性有業者は約294万人。その年収分布を大雑把にみると,200未満未満が6.8%,200万台が20.0%,300万台が24.2%,400万台が21.7%,500万台が12.4%,600万以上が14.9%,となっています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 年収300万円台が最も多く,その下を合わせると年収400万未満が44.2%を占めると。願わくは600万超のお相手を希望する女性が多いのでしょうが,その条件を満たしているのは同年代の未婚男性の14.9%,およそ7人に1人。狭き門ですね。

 これを円グラフにして,相談コーナーの壁に貼っておくといいかもしれません。しかしこれは全国のデータであり,実情は地域によってかなり違います。上記の相談をもちかけてきた社員さんは,北東北の方でしたが,このゾーンでは,未婚男性の年収はもっと低いでしょう。

 そこで,同じ30台未婚男性有業者の年収分布を,都道府県別に出してみました。下図は,同じ階級区分の帯グラフです。


 全国統計では年収300万円台が最も多いのですが,県別にみると,200万円台が最多の県が多いようです。大都市の東京では,600万超が3分の1を占めます。

 これが官庁統計から分かる,30代の未婚男性の年収分布です。これをつきつけて,「本県の未婚男性の年収はこうですよ」と言ってみたい,という婚活関係者もおられるでしょうか。

 以上は30代のデータですが,他の年齢層はどうか,という関心もあるでしょう。しかし上記のような分布を年齢層ごとに示すのは厄介ですので,平均値に丸めた値を提示します。原資料の細かい階級区分の年収分布表をもとに,20代,30代,40代,50代の未婚男性有業者の平均年収を計算してみました。下表は,その一覧です。


 若い20代は,オール300万未満です。「20代の女性が結婚相手に求める年収は600万」という,週刊誌のつり広告を見たことがありますが,その願いが叶う確率はかなり小さいでしょう。地域を問わずです。

 年齢を上がると年収もアップしてきますが,400万以上(赤色)は多くないですね。この表も,目立つ所に貼ってみたらいかがでしょう。

 ここでお見せしたデータが,全国の婚活関係者の方々の参考になれば幸いです。

 私は,高望みする女性を批判しているのではありません。男性との収入格差,結婚・出産後のキャリア閉塞など,女性がそうせざるを得ない状況をば,まずもって変えないといけないことは,重々承知しています。

 今回のデータは,女性の社会進出の道を開かないと,わが国の未婚化・少子化は一向に解消されない,ということの主張とも読めます。男性の腕一本で一家を養える時代は,とうに終わっているのです。

2015年12月20日日曜日

職業別の睡眠・仕事時間

 2013年の国際教員調査(TALIS 2013)で,日本の教員は世界一働いていることが分かりました。日本の中学校教員の週間平均勤務時間は53.9時間で,OECD平均の53.9時間を大きく上回っています(下記サイトのtable6.12)。

 これは各種メディアで報じられ,すっかり知れ渡っていますが,国内の他の職業に比してどうなのか。国内の職業比較における位置は,あまり明らかにされていないように思います。今回は,それをやってみましょう。

 依拠する資料は,2011年の総務省『社会生活基本調査』です。平日1日あたりの平均仕事時間を職業別に知ることができます。仕事と対極の睡眠の時間も拾ってみましょう。性別の影響を除くため,男性に限定します。

 結果を整理すると,下表のようになります。調査対象の平日に,当該の行動をした行動者の平均時間です。下記サイトの表15から採取した数値であることを申し添えます。


 全職業の平均睡眠時間は439分,仕事時間は554分です。教員のそれは順に410分,612分であり,平均的な労働者より寝ておらず,長く働いています。

 教員の平日1日の平均仕事時間は612分(10時間12分)ですか。これはあくまで平均値ですので,分布をとれば12時間を超える者もザラでしょう。睡眠時間の平均は410分(6時間50分)で,「そこそこ寝てるじゃん」という印象ですが,これも平均であることに注意。

 表には31の職業の値が掲載されていますが,教員の位置はどうでしょう。黄色マークは最高値,青色マークは最低値ですが,教員は仕事時間がトップで,睡眠時間は技術者の405分に次いで短くなっています。長く働いて,寝ていない。この度合いが最も大きい,つまり過労度が最も大きい職業であることが知られます。

 上記の職業別のデータを視覚化しておきましょう。横軸に平均睡眠時間,縦軸に平均仕事時間をとった座標上に,31の職業を配置してみました。2変数のグラフ化は,これがよいと考えています。


 左上は,相対的に仕事時間が長く,寝ていない「キツイ」職業ですが,教員はその極地です。対極は農林漁業ですが,これは高齢者が多いためでしょうね。清掃や運搬業は,非正規雇用が多いためとみられます。性別の影響は除きましたが,年齢や雇用形態までは統制できていません。

 若年の正規職員に限ったら,どういう図柄になるか。私の予想ですが,教員の位置は変わらないような気がします。いやむしろ,もっと左上にかっ飛ぶのではないでしょうか。下図にみるように,わが国の教員は,若手ほど勤務時間が長いという,きれいな構造ですので。


 日本の教員の勤務時間が長いのは,授業とは別の様々な雑務を負わされているためです。他国なら事務員がやるような仕事も,教員が負わされています。最近取りざたされている部活も然り。北欧では,この種の活動は地域のスポーツクラブ等に委ねられていると聞きます。

 この問題がようやく認識され,「チーム学校」という外部人材組織が学校に導入されることとなり,教員の負担が軽減されることとなりました。部活指導を担う,部活指導員もその中に含まれるそうです。

 8月18日のニューズウィーク記事にも書きましたが,これを機に,教員の仕事(専門性)とは何かについて,真剣に議論をすべきでしょう。

 2012年の中教審答申にて,教員を高度専門職と位置づける方針が明示されました。教員は専門職かという議論が古くからありますが,教員があたかも「何でも屋」のごとくみなされていることが,教員の専門職化を阻んでいることは間違いありません。

2015年12月18日金曜日

貧困といじめ被害・不登校の関連

 先日,厚労省『21世紀出生児縦断調査(2001年生まれ)』の第13回調査の結果が公表されました。2001年に生まれた子ども約3万人を追跡し,各年齢時点での生活状況を把握する調査です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-9.html

 昨年(2014年)に実施された第13回調査では,13歳になった子どもの状況が把握されています。学年でいうと,中学校1年生です。

 思春期の難しい年頃であるだけに,親御さんの悩みもさぞ多いことでしょう。この調査では,調査対象の子どもの保護者に,子どもを育てていて大変と思うことを複数回答で尋ねています。それをグラフにすると,以下のようになります。


 子どもの成績,子育て費用,子どもの将来に関する悩みが多くなっています。13歳の親のうち,3割以上がこの種の悩みを持っていると。さもありなんです。中学校に上がったら塾通いもするようになり,出費もかさむでしょうし。

 4位には,「子どもの反抗的な態度や言動」が挙がっています。13歳といえば反抗期の盛りの時期です。親からの独立を志向し始め,親の言うことに反抗するようになります。体が大きくなっているにもかかわらず,一人前の役割を与えられない。昔に比べて現在では,そのギャップがますます大きくなってきています。第2次反抗期は,それに由来する心的葛藤の表われです。

 親や教師は,そうしたあがきを抑えつけるだけではなく,それを伸ばしていく構えも求められるでしょう。この点については,日経デュアルにも書きました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2332

 ちなみに上記の悩みの率は,子が男子か女子かによって違います。男子の親は女子の親よりも,子どもの成績や将来のことで悩んでいる者の率が高くなっています。これなどは,子どもに対する教育期待のジェンダー差の表われとみてよいでしょう。

 しかるに,子どものジェンダーによる違いよりも注目されるのは,家庭の年収による違いです。下表は,両親の年収総額別に,13歳の親の悩みがどう変化するかを整理したものです。数値は,それぞれの項目の悩みを抱いている親の割合です。


 同じ13歳の子を持つ親であっても,家庭の年収階層によって,悩みの率が異なっています。おおむね,どの悩みも貧困層で多いようで,14項目のうち8項目の率が,年収200万未満の層で最も高くなっています(アミかけ)。

 ところで私が注目したいのは,赤字の項目の傾向です。子どもの反抗的態度,いじめ被害,不登校,病気のことで悩んでいる親の率が,貧困層ほど高くなるという,ほぼリニアな傾向があるのです。学力についてはこういうデータをよく見かけますが,問題行動についてもこうしたクリアーな傾向が出るとは,ちょっと驚きです。

 いじめ被害と不登校で悩んでいる親の率を,折れ線グラフにしておきましょう。


 いじめ被害や不登校の率は,貧困層の子どもほど高いことをうかがわせるデータです。おそらく学校での友達との軋轢に関する原因が多いと思いますが,経済的理由からスマホなどが持てず,つまはじきにされてしまうのでしょうか。

 高校生にもなれば自分でバイトしてカバーすることも可能ですが,中学生ではそれも不可。いわゆる「スクール・カースト」の決定要因として,家庭の経済状況が関与する度合も大きいと思われます。

 なお,上記の調査に回答した,13歳の保護者のサンプル数によると,年収200未満は5.4%,200万以上400万未満が12.1%,400万以上600万未満が26.1%,600万以上800未満が25.1%,800万以上が31.3%,という分布です(年収不明は除外)。

 年収200万未満の貧困層は,20人に1人です。まさに「豊かさの中の(少数の)貧困」という地位に置かれているわけですが,それだけに,この層が抱く相対的剥奪感は相当なものでしょう。それは,多感な思春期の子どもの自我を傷つけるのに十分です。

 師匠の松本良夫先生は,大都市・東京のデータをもとに,豊かな地区の中の貧困家庭から非行少年が多出する傾向を明らかにされています。これなども,上記の心理効果から解釈される現象といえそうです。この伝でいうと,貧困といじめ被害・不登校の関連は,東京のような大都市に限ったら,もっとクリアーに出るのではないかと推測されます。「豊かさの中の(少数の)貧困」の地位にある家庭には,支援の重点が置かれるべきでしょう。

 学力のみならず,問題行動にも社会的規定性があることは,押さえておかねばならない事実です。