2019年7月21日日曜日

教員採用試験の合格率・人物重視度

 陽は出てませんが,蒸し暑く夏らしくなってきました(横須賀)。7月も下旬ですが,多くの自治体で教員採用試験の一次試験が行われていることと思います。東京都は先週でした。受験者のみなさん,お疲れ様でした。

 「これから二次試験対策だ」と意気込む人がいる一方で,「どうせ筆記はパスしないだろうから,二次対策は止めだ」と消沈している人もいるでしょう。また,筆記が受かるかどうか予測がつかず,困惑している人もいるはず。

 結果がどうなるかは神のみが知りますが,過去のデータ(経験的事実)で見当をつけることはできます。合格者を受験者で割った,合格率という指標です。東京アカデミーが自治体別のデータを調べ,HPで公開してくれています。2017年夏に実施された,2018年度試験のデータです。
http://www.tokyo-ac.jp/adoption/outline/result/hokkaido.html

 東京都の小学校教員採用試験の数値は,以下のようになっています。

 A)受験者数 = 3544人
 B)1次合格者数 = 2581人
 C)2次合格者数 = 1979人

 これに基づくと,1次の筆記試験合格率は,2581/3544=72.8%となります。筆記の合格率は7割,じゃんじゃん通すのですね。東京都の試験問題は結構難しく,「ダメだろうな」と気落ちしている人もいるでしょうが,案外大丈夫かもしれないですよ。

 2次試験の合格率は,1979/2581=76.7%ですか。これも思ったより高いな,という印象です。受験者ベースの最終合格率は,1979/3544=55.8%,半分を超えています。受験者の2人に1人が通ると。

 教員採用試験も競争率が低下し,難易度が下がっているといいますが,ホントにそうなのですね。私の世代(ロスジェネ)が新卒だった頃と比べると,隔世の感があります。「まさかあの人が…」という優秀な人がバンバン落とされてましたから。

 他の自治体についても同じ数値を計算しましたので,一覧をお見せしましょう。石川県は,1次合格者数が非公表なんで,データを出せませんでした。


 どの自治体も合格率が高くなっています。70%,80%を超える数値がちらほら見られます(赤字)。北海道の1次合格率は97.9%(受験者758人,合格者742人)。二次の合格率も82.9%で,受験者ベースの最終合格率は両者をかけて81.1%,「ホントかよ」と目を疑います。

 1次と2次の合格率が乖離している自治体もあります。福島県は1次はちょっとばかり難しいようですが,2次で落とされることはほとんどないようです。逆に高知県のように,1次はたくさん通して,2次でバンバン落とす自治体もあり。

 筆記重視か人物重視かは,自治体によって異なるようです。高知県の受験者は,1次をパスしたからといって安堵せず,面接対策に本腰を入れる必要がありそうです。

 自分が受ける自治体がどれほど人物(面接)重視か? こういう関心をお持ちの学生さんもいるかと思います。まあ,上記の合格率から見当はつきますが,単一のメジャーを作ってみます。2次試験の不合格者が,不合格者全体に占める割合(%)です。

 計算式=(1次合格者数-最終合格者数)/(受験者数-最終合格者数)

 東京都の場合,(2581-1979)/(3544-1979)=38.5%となります。残念ながら不合格となった人のうち,2次面接で落とされた人が38.5%であったと。私が住んでいる神奈川県だと,57.8%となります。お隣同士ですが,神奈川県のほうが人物重視のようです。

 全自治体のデータをご覧いただきましょう。


 50%超は赤字にしましたが,結構ありますね。北海道,大阪府,大分県では不合格者の8割以上が面接での脱落者となっています。

 この数値は人物重視度を測る尺度であって,2次試験の難易度を示すものではありません。北海道は,2次の合格率も高いですしね(最初の表)。ただ大阪府は,2次の合格率が低いので,対策に万全を期す必要がありそうです。

 福島県と沖縄県は,筆記で決まる度合いが高いようです。不合格者のうち,面接で落とされた人はごくわずかです。筆記試験の難易度は高くなっています。福島県の教職教養では,学習指導要領の原文の空欄補充問題が毎年出ます。選択肢なしで,書かせる問題です。拙著『教職教養らくらくマスター』にて,赤シートを使った暗記学習をしておくとよいと思います。

 以上,2018年度の小学校教員採用試験の経験データを紹介しました。受験生諸氏の展望を晴らすのに役立てばと思います。「合格率,こんなに高いんだ」と安堵されましたか。自治体によって難易度は違いますけど,普通にやっていれば大丈夫です。これから2次試験対策を始める学生さん,面接では気負いは禁物。肩の力を抜きましょう。

 ただ,知的武装はしておいたほうがいいです。最近の教育時事を取り上げ,「あなたはどう思うか」「どうしたらいいか」と,意見を求められることがあります。それに対し,口ごもるようではアウト。最近の政策文書の概要には目を通し,自分なりの考えは持っておきたいものです。

 日頃から新聞をマメにチェックしている人は特別の準備は要らないでしょうが,そういう人は少ないでしょう。そこで,拙著『速攻の教育時事・2020年度試験対応』をおススメいたします。新学習指導要領の改訂の答申,教員の働き方改革,第3期・教育振興基本計画等,重要文書のエッセンスを見開きでまとめています(合計71テーマ)。短期間で,教育時事に精通できるよう,工夫を凝らした本です。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b432109.html

 健闘を祈ります。