2017年1月13日金曜日

中年期からでも参入しやすい職業

 私は40歳ですが,今もらっている仕事だけで食えなくなったら,どうするか。美味しい賄いも出ることだし,H屋でアルバイトでもしようかしらん。

 ちゃんとした正規雇用の仕事に就こうとしたら,選択肢はかなり限られるでしょうね。如何せん,もう40歳ですので。

 私は教員免許状を持っていますが,たとえば,高校教員になれるチャンスはどれくらい開かれているか。厚労省の『賃金構造基本統計』では,「職種×年齢×経験年収」のクロス集計がなされています。短時間労働者を除く,一般労働者のデータです。ほぼ正規職員に近いとみてよいでしょう。

 2015年の同統計によると,経験年数0年(1年未満)の男性の高校教員は1300人。このうち,40歳以上の者は160人となっています。新米の教員のうち,40歳以上の割合は12.3%ですか。少ないですね。多いのは,大学を出て間もないピチピチの20代でしょう。

 しかしタクシー運転手の場合は違っていて,経験年数が1年に満たない男性の新米運転手のうち,40歳以上が84.2%も占めています。中年期からでも参入しやすい職業といえるでしょう。確かに,そんなイメージはあります。

 他の職業についても,同じ値を計算してみました。経験年数1年未満の男性新米労働者のうち,40歳以上の中高年の割合です。割り算のベースが100人に満たない職業は,分析対象から外しました。計算に使った数値は,下記サイトの表3から得ています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001058843&cycleCode=0&requestSender=estat


 値が高い順に並べたランキング表です。トップは,自家用乗用自動車運転者で99.6%なり。この職業では,新米のほぼ全てが40歳以上です。いわゆる,お抱え運転手ですが,若い頃からの積み上げ(キャリア)は要しないでしょう。

 2位は大学教授ですが,教授昇進の年齢が大抵40歳以上であることによります。最近は,民間で長期のキャリアを積んだ社会人畑出身の教授も多くなっていますしね。

 守衛や用務員などは,定年後に始める人も多し。

 表の左上の職業は,中年期からでも比較的参入しやすい職業ですが,右下はその反対です。青色の職業は,新米のうち40歳以上は皆無。左官などは昔ながらの徒弟制で,若い頃からの「たたき上げ」がモノをいう伝統が生きているのでしょうか。

 40歳までニートだった者が,比較的就きやすい職業の目安になるでしょうか。新米の一般労働者(≒正規職員)のうち,40歳以上の中高年の割合を職業別に計算してみた結果でした。

2017年1月11日水曜日

著作物の使用条件

 先週の金曜,某出版社より,ニューズウィークWeb版に出した記事の図表を使わせてほしい,という連絡がきました。下記記事の図1「幼子の世話は,最初に誰がすべきか」です。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4532.php

 2月に刊行予定の新刊に使いたい,図表は原版を参考に新たに作り直すとのことでした。つまり,改変を施す,ということです。

 こういう依頼がくると喜ぶ人が多いのでしょうが,私はその逆です。またトラブルに巻き込まれ,嫌な思いをするのではないかと,憂鬱になります。

 私は,以下の3つの条件で使用を許諾すると返事しました。

 1)使用料をお支払いいただくこと。額は相談。
 2)事前に,該当箇所のゲラをお見せいただくこと。
 3)本が刊行されたら,一部お送りいただくこと。

 昨日,先方からリプがありました。「条件を検討した結果,許諾申請は取り下げる」とのことです。使用料をよこせだの,ゲラを見せろだの言ったので,不快に思ったのでしょう。

 しかるに,どれも当たり前の要求です。まず1)ですが,商業出版という営利事業に他人の著作物を使う場合は,使用料を払うのが普通です。

 先週発売された雑誌『プレジデント』に,私が計算した「職業別の時間給」のデータが転載されていますが,使用料はきっちりとお支払いいただきました。
https://twitter.com/tmaita77/status/818670778199613440

 学校の授業の教材に使うとか,入場料を徴収しない講演会の資料に使うとかの場合は,この限りではありません。こういう非営利の活動に使うというなら,使用料を請求したりはしません。しかし,営利目的の利用の場合は話が別です。

 2)の条件は,クレジット・出典の記載が適切であるかを確認するためです。先方の依頼メールに,「先生のお名前,記事名,媒体名を明記する」と書いてありましたが,私はゲラを見せていただくことにしています。

 先日,信じられない経験をしたからです。私が某Web誌に書いた記事を紙雑誌に転載したい,という依頼で,依頼のメールに「クレジット・出典を明記します」とありました。

 しかし,念のためゲラを見てみるとビックリ。クレジット表記が「舞田敏彦=文,A=図表作成」となっています。Aとはデザイナーで,私がエクセルで送った図表をちょっとアレンジしただけの人です。

 これでもって,このAという人があたかも図表の著作権者であるかのように書かれるとあっては,たまったものではありません。編集部に抗議して修正してもらいましたが,もしこのまま出版されていたら,大問題になっていたところです。ウェブなら修正ができますが,紙媒体の場合は取り返しがつきません。ゲラを確認して,本当によかったと思います。

 あとひとつ,ゲラを見せてもらう目的は,自分の著作物がどういう使われ方をするかを確認するためです。今回の依頼では,使用にあたって,原版を参考に先方が図表を新たに作り直す(=改変する)とのことでした。その改変が常軌を逸したものではないか,許容の範囲内か。これをゲラで確認したいというのは,著作権者の当然の思いでしょう。

 3)については,他人の著作物を使った作品を,一部謹呈するというのは当然のことです。

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 今回,転載許諾を申請してきた出版社さんには,こういう思いが伝わらなかったのでしょうね。私のメールの文面がぶっきら棒だったためかもしれませんけど・・・。

 図表の転載依頼をいただくことが結構ありますが,私がこういう考えの人間であることを,告知しておこうと思います。

2017年1月8日日曜日

231職業の学歴水準スコア

 前回は,68職業の学歴水準を測るスコアを計算してみました。高学歴の職業はどういうものかについて,目星がついたかと思います。

 この記事がウケているようですので,調子に乗って,もうちょっと深めてみましょう。前回は,『就業構造基本調査』のデータを使って,職業中分類(68職業)の学歴水準スコアを出したのですが,基幹統計の『国勢調査』では,もっと細かい職業小分類のデータも得ることができます。

 下記サイトの表13に,2010年の職業小分類と学歴のクロスが出ています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001050829&cycleCode=0&requestSender=search

 性別の影響を除くため,男性に対象を絞りましょう。年齢も統制したいところですが,職業小分類では,年齢まではコントロールできません。今回の分析対象は,15歳以上の各職業の男性就業者です。

 まず全職業の就業者でみると,最終学歴が判明する者は約3058万人。学歴の内訳は,①小・中卒が11.2%,②旧中・高卒が45.4%,③短大・高専卒が10.0%,④大学・大学院卒が33.4%となっています。高齢者も含みますので,高卒が最も多くなっています。昔は,大学進学率は低かったですので。

 前回と同様,就業者の学歴分布をもとに,学歴水準の高低を測るスコアを計算しましょう。①に1点,②に2点,③に3点,④に4点を与えると,全職業の男性就業者の学歴スコアは,以下のようになります。

 {(1×11.2)+(2×45.4)+(3×10.0)+(4×33.4)}/100.0 = 2.656点

 このスコアを,細かい小分類の職業別に計算してみました。231の職業のスコアです。高い順に並べたランキング表を作ってみましたが,長くなりますので,2つに区切ることにします。まずは上位半分,1位から116位までです。


 医師や教員の学歴スコアが高くなっています。これらの職業には大卒学歴が要るので,大卒・大学院卒のスコア(4点)に近くなっています。

 なお『国勢調査』では,大卒と大学院卒のカテゴリーが同一になってますので,院卒の割合はスコアに反映されていません。そのため,研究者や大学教員のスコアは低く出ています。

 コメントは省いて,今度は残りの半分,117位から231位までです。


 以上です。先に述べたように,年齢を統制していませんので,各職業の年齢構成の影響が入っていることに留意してくださいまし。

 『国勢調査』では,西暦が「0」の年の大調査にて,対象者の最終学歴も調査されます。今度は2020年調査ですが,この時には,「大学院卒」というカテゴリーができるのかな。今では「大学・大学院卒」というようにまとめられてますが,大学院進学率が高まっているので,大卒と院卒が分離されることになると思います。そうしたら,もっと精緻に学歴スコアを出せるでしょう。

 細かい小分類でみた,職業別の学歴レベルの比較です。参考資料として,掲載しておきます。

2017年1月6日金曜日

職業別の学歴水準スコア

 今週は火曜から木曜にかけて更新をサボったので,今日2本目の記事を投稿しましょう。

 主題は,タイトルの通りです。職業によって年収は違いますが,学歴水準も異なります。医師のように,高度な職務の遂行上,長期にわたる学び(高学歴)が必要な職業もあれば,そうでない職業もあります。

 そういう機能上の必要がなくとも,自分たちの職業の威信を保持するため,参入資格として高学歴を求めている職業もあります(コリンズ)。2012年の中教審答申で,教員志望者には修士の学位をとらせようという案が出されましたが,これは,教える知識内容の高度化というような,機能上の必要ゆえにあらず。今時,保護者の多くが大卒なので,教員の学歴水準を一段高くして,箔をつけようというだけのこと。

 理由はどうであれ,職業によって学歴水準が大きく違うことは,誰もが知っているでしょう。品のない作業ですが,現実を統計で可視化してみましょう。

 毎度使っている総務省『就業構造基本調査』から,それぞれの職業従事者の学歴構成を知ることができます。年齢と性別の影響を除くため,働き盛りの35~44歳男性に限定して,職業別の学歴構成のデータを採取しました。ソースは,下記サイトの表15です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search

 たとえば,教員と介護サービス従事者の学歴構成は,以下のようになっています。


 右欄の構成比をみると,やはり違うものですねえ。教員は9割上が大学ないしは大学院を出ていますが,介護職では高卒が43.8%と最も多くなっています。

 この分布をもとに,学歴水準の高低を測るスコアを出してみましょう。中卒には1点,高卒には2点,専門卒には3点,短大・高専卒には4点,大卒には5点,院卒には6点のスコアを与えます。この場合,教員の学歴スコアは,以下のようにして出されます。

 {(1×0.1)+(2×3.3)+(3×2.3)+(4×1.2)+(5×64.2)+(6×28.9)}/100.0 = 5.126点。

 教員は大半が大卒以上なので,5点を超えます。対して介護職の学歴スコアを同じやり方で出すと3.110点で,教員よりもかなり低くなっています。

 このやり方で,68の職業(中分類)の学歴水準スコアを計算してみました。以下に掲げるのは,その一覧表です。


 スコアが最も高いのは研究者の5.533点で,最も低いのは包装従事者の1.925点となっています。研究者になるには,大学院卒の学歴が要りますからね。

 それに次ぐのは医師で,3位は先ほどみた教員です。赤字は,スコアが4.5点を超える職業なり。法務従事者や記者・編集者なども,屈指の高学歴の職業です。

 スコアが高い順に並べたランキング表も載せておきます。


  これは学歴ですが,年収なんかはどうなのかなあ。教員は学歴は3位ですが,年収のランクはかなり下になるのでは。

 学歴と収入は完全にリニアに相関するのではなく,インテリでも稼げない職業もあり。教員はその典型で,戦前期では待遇が悲惨を極めていたことはよく知られています。今述べたことは,社会学でいう「地位の非一貫性」という概念に通じます。

 職業別の学歴水準の測定作業でした。

都道府県別の未婚男性の結婚チャンス

 40を過ぎたら結婚はなかなか難しくなるでしょうが,私くらいの中年未婚オトコの結婚チャンスには,地域による違いもあるでしょう。

 2015年の厚労省『人口動態統計』によると,同年中に届け出をした40代男性の初婚件数は3万5555件(①)。2015年の『国勢調査』によると,同年10月時点の40代の未婚男性数は,248万2257人(②)。双方とも,日本人のデータです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200521

 よって,この年の40代未婚男性の結婚チャンスは,①/②=1.432%となります。およそ70人に1人。同じやり方で他の年齢層の結婚チャンスを計算すると,10代が0.173%,20代が4.290%,30代が5.556%,50代が0.296%,60以上が0.079%となります。

 2015年の1年間の結婚率ですので,値がすこぶる低いですが,結婚チャンスの指標にはなるでしょう。上記の分子・分母は,都道府県別に得ることができます。下表は,県別・年齢層別の未婚男性の結婚チャンスの一覧表です。


 黄色マークは全県の最高値,青色マークは最低値,赤字は上位5位です。

 30~40代のトップは,東京なんですね。20代の首位は,わが郷里の鹿児島。こういうデータはあまりないと思いますので,地域別の「結婚しやすさ」の指標として,ここに掲載しておこうと思います。

2017年1月2日月曜日

深夜族

 外食産業で,24時間営業を縮小する動きが広まっているそうです。最大の理由は人手不足ですが,深夜の客が減っていることもあるとのこと。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161226-00000004-jij-bus_all

 2番目の理由は初耳でした。まあ人口の高齢化により,昼型のライフスタイルの高齢者が増えていますから,深夜に出歩く人が減り,客足が遠のいていることはあるかもしれません。

 深夜に出歩いている人の量は知ることはできませんが,深夜に起きている人の量は,統計から割り出せないことはありません。今回は,深夜に起きている人(深夜族)が国民の何%いるか,以前に比して増えているか,それとも減っているか。この点を吟味してみましょう。

 総務省の『社会生活基本調査』では,対象の15歳以上の国民に対し,1日の各時間帯(15分刻み)において,何をしていたかを尋ねています。起きている人の率は,寝ていた者の率を100%から引くことで算出できます。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm

 2011年の同調査によると,平日の深夜0:00~0:15に寝ていた者の率は82.9%ですから,この時間帯に起きていた者の率は,100-82.9=17.1%となります。深夜0:00~4:00の各時間帯において,起きていた者の比率をこのやり方で出すと,下表のようになります。


 16の時間帯(15分刻み)の平均値をとると,平日は7.8%,土曜が8.7%,日曜が9.3%なり。この値をもって,深夜の時間帯に起きていた者,すなわち深夜族の出現率とみなすことにしましょう。仕事のない土曜や日曜のほうが,平日よりも少し高くなっています。

 なお20年前の1991年のデータから,同じ方法で15歳以上の国民の深夜族出現率を出すと,平日が6.0%,土曜が7.3%,日曜が8.2%となります。

 人口の高齢化により,深夜族は減っているかと思いきや,現実はその逆ですね。人手不足により,深夜までこき使われる若者が増えているためでしょうか。あるいはネットの普及により,夜通しでネットサーフィンなどをする人が増えているのか。

 変化の事情の検討をつけるには,深夜族の率が高まっているのはどの層かを突き止めるのがよいでしょう。人間を分かつ基本属性である,性別・年齢層別に変化の様相をみてみましょう。下図は,深夜族の出現率の年齢曲線(平日)を,1991年と2011年で比べたものです。


 曲線は右下がりで,当然ながら,深夜族の率は若者ほど高くなっています。

 男女とも,曲線が上方にシフトしています。どの年齢層でも深夜族は増えていますが,増加幅は若者で大きいようです。増加ポイントが最も大きいのは,25~34歳の男性で,この20年間で11.4%から17.8%に上昇しています。

 入職して間もないフレッシュマンですが,先に書いたように,昨今の人手不足による過重労働が影を落としているのでしょうか。ネットの普及により,仕事は際限なくどこまでも追いかけてくる。そんな時代の変化を感じさせられます。ネット通販の配達や介護など,24時間にわたる仕事が増えていることもあるでしょう。あるいは,無職者やニートの増加により,昼夜逆転の人間が増えているのか・・・。

 相対変化ですが,国民の生活の深夜化が進んでいることが知られます。人口の高齢化にもかかわらずです。

 最後に,地域差もみておきましょう。上記と同じやり方にて,15歳以上の深夜族出現率を都道府県別に計算してみました。2011年の平日の全国値は7.8%ですが,県別にみると,東京の11.3%から福島の4.4%までの開きがあります。東京は若者が多いので,率が高い。

 下図は,1991年と2011年の都道府県を同じ基準で塗り分けたマップです。


 20年前に比して,地図の模様が濃くなっています。若者が多い都市部で率が高い構造が保たれていますが,今後,全国的にますます色が濃くなるのでしょうか。

 人口の高齢化に伴い,国民の生活の「昼型」化が進んでいるかと思いきや,現実はその反対でした。深夜に働く人がいないと社会が成り立たないのは事実ですが,今回みた「深夜」化は,必ずしも必要でない過剰サービス労働の増加や,国民の生活の乱れを示唆するものともとれましょう。2番目のグラフから分かるように,こうした歪みが若者に集中していると。

 まあ私も,院生の頃までは完全に昼夜逆転の生活でしたが,今はすっかり昼型(朝型)に切り替えています。集中力の要る原稿書きは,頭が冴えている午前中に済ませる。日の出と共に起きる生活っていいな,と感じています。

2017年1月1日日曜日

都道府県別の保育士の時間給

 年が明けました。お正月ですが,私の場合,過ごし方は普段と何ら変わりません。することがないので,ブログでも書きましょう。

 社会的需要が著しく高まっている保育士ですが,この職業が慢性の人手不足に陥っていることの最大の原因は,待遇がよくないこと,ズバリ言えば給与が激安であることはすっかり知られています。

 保育士の給与についてはこのブログで何度も紹介し,都道府県別の年収比較をしたこともあります。今回はもう一歩踏み込み,労働時間を考慮して,保育士の時間給を計算してみようと思います。一般に労働条件は,給与と労働時間の2要素から測られますが,双方を考慮した尺度として,時間給に注目してみようと考えました。

 依拠する資料は,2015年の厚労省『賃金構造基本統計』です。この資料から,以下のA~Dの値を職業別に知ることができます。10人以上の事業所に勤める,短時間労働者を除く一般労働者のデータです。数値は,保育士のものです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 A 残業代等込みの月収(2015年6月) ・・・ 21.92万円
 B 年間賞与額(2014年) ・・・ 60.30万円
 C 月間の所定内労働時間(2015年6月) ・・・ 171時間
 D 月間の超過労働時間(2015年6月) ・・・ 4時間

 これらを使って,保育士の年収と年間労働時間を割り出すと,次のようになります。

 年収 = 12A+B = (12×21.92)+60.30 = 323.34万円
 年間労働時間 = 12×(C+D) = 12×(171+4) = 2,100時間

 よって時間給は,年収を年間労働時間で除して,1,540円となる次第です。短時間労働者を除く,一般労働者の保育士の時給は1,540円なり。同じやり方で,全職業の一般労働者の時間給を計算すると,2,303円となります。予想通りですが,フツーの職業よりもかなり低いですね。

 しかるに,様相は地域によって違っています。私は,上記のデータを都道府県別に収集し,47都道府県の保育士と全職業の時間給を計算してみました。計算に使った分子(年収)と分母(年間労働時間)にも興味を持たれると思うので,これらの値も掲載した一覧表を掲げます。


 黄色マークは全県の最高値,青色マークは最低値です。保育士の時給をみると,最高は愛知の1879円,最低は鳥取の954円なり。鳥取の値には驚愕しますが,この県は調査対象のサンプルが著しく少なくなっていますので,値に歪みが出ていると思われます。参考程度にとどめてください。

 保育士の時給は,どの県でも全職業より低くなっています。保育士には若手や女性が多いこともありますが,都市部では差が大きいですね。

 東京をみると,保育士の年間労働時間は2088時間と,全労働者(2052時間)よりも働いているにもかかわらず,年収はたった352.9万円。それが時給の違いにもろに反映されています。東京の保育士の時給は1690円で,全体(3039円)の半分ほどです。

 保育士の時給が全職業に比してどうかという,相対倍率も出してみましょう。下表は,「保育士/全職業」の倍率が高い順に都道府県を並べたものです。


 どの県でも,保育士の時給は全体に比して低いのですが,その程度には幅があります。上位5位(赤字)は,全職業の8割には達しています。

 一方,対極の下位の県は悲惨で,大都市の東京の相対倍率は0.556となっています。保育士の時給は,全職業の半分ほどということです。保育士が抱いている相対的はく奪感も大きいことでしょう。

 まあ,年収で出した相対倍率とほぼ同じ結果ではありますが,今回はもう一歩深めて,労働時間を考慮した時間給で同じ分析をしてみました。むろん,他の職業でも可能です。たとえば,教員とかはどうでしょう。教員は,普通の職業に比して高給ですが,労働時間を加味した時間給では,別の面が出てくるかもしれません。面白い結果が出ましたら,ご報告します。

 では,よいお正月をお過ごしください。