前々回の記事では,40代前半男性の所得中央値を出しました。1992年は524万円,2017年は472万円で,50万円以上減っています。都道府県別にみると,500万円を超えるのは,2017年ではたった5県しかありません。「失われた25年」の表れです。
このように収入はかなり減っているのですが,支出のほうはどうでしょう。食費や遊興費などは節約もできますが,税金や保険料,住居費などはそうはいきません。毎月定額払わないといけない固定支出です。
今回は,生活の基盤である「住まい」を維持するための費用を見てみようと思います。住居は持家と借家(賃貸)に分かれ,前者では住宅ローン,後者では家賃という固定費用がかかります。後者の家賃については,総務省『住宅土地統計』にて詳細なデータを得られます。
前々回の所得と同じく,90年代初頭の頃と最近のデータを比べてみましょう。原資料には借家世帯の平均家賃月額が出ていますが,代表値としての精度(信頼度)が高い中央値を算出します。まずは,借家世帯の家賃月額の分布を整理することから始めましょう。
家賃が分かる借家世帯は,1993年は1550万世帯,2013年は1797万世帯です。持家が「負動産」になるという認識が広まっているためか,20年前に比して借家に住む世帯が増えています。
真ん中の相対度数(%)をみると,分布が高いほうにシフトしています。家賃4万円未満の借家に住んでいる世帯は,1993年では50.2%と半分を超えていましたが,2013年では18.4%(5分の1)です。最頻階級(Mode)も,3万円台から5万円台に移っています。
右端の累積相対度数をみると,求めようとしている中央値(Median)は,1993年は3万円台,2013年は5万円台の階級に含まれていることが分かります。中央値は,全体を高い順に並べた時ちょうど真ん中にくる値,累積相対度数が50ジャストの値です。
按分比例を使って,この値を推し量りましょう。本ブログをずっと読まれている方は,もう慣れっこですよね。
1993年:
按分比=(50.0-33.2)/(50.2-33.2)=0.987
中央値=3万円+(1万円×0.987)=3.99万円
2013年:
按分比=(50.0-46.1)/(62.9-46.1)=0.233
中央値=5万円+(1万円×0.233)=5.23万円
借家世帯の家賃の中央値は,1993年は3.99万円,2013年は5.23万円と見積もられます。この20年間で,フツーの借家世帯の家賃は1万2000円ほど上がっています。所得は下がる一方で,家賃という基礎経費は上がる。なるほど,多くの人が生活の逼迫を感じるのは道理です。
言わずもがな,家賃は地域によって大きく違っています。地方より都会で家賃が高いのは,誰だって知っています。『住宅土地統計』には,借家世帯の家賃分布が都道府県別に出ています。上記と同じやり方にて,47都道府県の借家世帯の家賃月額の中央値を計算してみました。下の表は,高い順に配列したものです。
どの県でも家賃中央値は上がっています。両年のランキング表を「鳥の目」で眺めてみると,列島・家賃高騰化とでも言い得る現象が明らかです。1993年では家賃中央値4万円を超えるのは7県でしたが,2013年では40県です。5万円を超える県も,3県から10県に増えています。
2013年では東京は7.15万円,神奈川は6.64万円。中央値でコレです。申すまでもないですが,私のアパートの家賃はこれよりもずっと安くなっています。神奈川県内でも,横須賀市は安し。
上記の都道府県データを地図にしない手はありますまい。ドラスティックな変化を浮き彫りにすべく,4万円以上の県に色を付けた簡素なマップにしましょう。
前々回の所得マップは薄くなっているのに,支出の代表格の家賃マップは濃くなっています。繰り返しますが,生活の逼迫を感じる人が多くなるわけです。
収入と家賃を照らし合わせることで,生活のゆとり度を測る指標が出てきます。一昨日公開のニューズウィーク日本版記事では,借家世帯の「家賃/年収」比を出しました。分母は下がり,分子は上がっているのですから,この値は上昇しています。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/07/20-52.php
アベノミクスの虚を暴露している,生活苦の条件をあぶり出していると,多くの方に読まれたようで,ヤフートピックス「経済」にも選ばれました。
とりわけ若年世帯は酷いもので,京都や東京の若年借家世帯では,「家賃/年収」比が半分にもなります。単身学生が多いためでしょうが,勤め人の場合,家賃を払うために働いているようなものです。
ここまで家賃が重くのしかかるとなると,実家を出て世帯を構えることは困難で,親元にパラサイトせざるを得ません。若者の自立支援の意味でも,「住」に対する公的支援が欠かせないでしょう。公的な住宅手当が手厚い国ほど,世帯形成率が高いというデータもあります(藤田孝典『貧困世代』講談社新書,2016年,160ページ)。
それは未婚化・少子化に歯止めをかけ,世帯形成の際に必要な家電の消費を促すなど,景気の刺激することにもつながります。
景気の話が出ましたが,収入が減る一方で,税金や保険料,住居費が増えるとあっては,人々の財布の紐は固くなろうというものです。少子高齢化のなか,増税や保険料アップは止むを得ませんが,「住」に対する支援を増やす余地はあると思います。
人間の生活の基盤は住居で,この部分を保障されることで,人は大いに安心できます。若者に生活支援金を支給すべしという案がありますが,住居費(家賃)に用途を限定したお金を与えるべきだと思います。若気の至りで,使い方を誤ることもありませんし。
上記の藤田氏も,「住宅こそ最大の福祉政策」と主張されています。
2018年7月20日金曜日
2018年7月18日水曜日
40代前半男性の所得の診断表
前回は,40代前半男性の所得の中央値を出しました。とても多くの方にご覧いただき,「職業別の未婚率」の記事を抜いて,本ブログのPV首位に一気に躍り出ました。90年代初頭に比して,所得が大幅にダウンしていることに驚かれたのでしょう。「自分もロスジェネなんでよく分かる」という声も多数でした。
中央値(Median)というのは,値を高い順に並べたとき,ちょうど真ん中にくる値のことです。これより上なら半分より上,下なら半分より下,ということになります。2017年の40代前半男性の所得中央値は472万円ですが,私の所得はこれを下回っています。
「自分の所得は半分より下」。これは分かり切ったことですので,さして驚きませんが,さすがに下位10%にも満たないとなると,気心も変わってきます。逆に中央値を上回っている人は,上位25%や10%のラインを超えているかしら,という関心があるでしょう。
今回は,中央値とは別の分布値も出してみようと思います。そうですねえ。全体を6つのゾーンに分かつ,下位10%値,下位25%値,中央値,上位25%値,上位10%値を出してみましょうか。これにより,自分の所得が全体のどの辺かを知れる,やや詳細な診断表を作れます。
中央値と同じく,他の4つの値も按分比例を使って計算できます。2017年の『就業構造基本調査』から,40代前半男性有業者(439万人)の所得分布を採取し,相対度数・累積相対度数の形に整理すると,以下のようになります。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html
真ん中の相対度数(%)をみると,中ほどが厚いきれいなノーマル分布です。最も多いのは,所得400万円台となっています。一昔前の人からすれば「こんなに少ないの?」という印象でしょうが,今の当事者のわれわれからすれば何の違和感もありません。
右端の累積相対度数から,下位10%値(累積相対度数=10)は200万円台前半,下位25%値(25)は300万円台,中央値(50)は400万円台,上位25%値(75)は600万円台,上位10%値(90)は800万円台の階級に含まれることが知られます。
では按分比例を使って,目的の値を割り出しましょう。
下位10%値:
按分比=(10.0-7.9)/(14.4-7.9)=0.324
下位10%値=200万円+(50万円×0.324)=216.2万円
下位25%値:
按分比=(25.0-20.9)/(37.4-20.9)=0.250
下位25%値=300万円+(100万円×0.250)=325.0万円
中央値:
按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.717
中央値=400万円+(100万円×0.717)=471.7万円
上位25%値:
按分比=(75.0-70.0)/(80.7-70.0)=0.466
上位25%値=600万円+(100万円×0.466)=646.6万円
上位10%値:
按分比=(90.0-88.1)/(92.5-88.1)=0.439
上位10%値=800万円+(100万円×0.439)=843.9万円
こんな感じです。私の所得は中央値より低いのは前回の記事で分かりましたが,ここにて,さらに2つのライン(下位10%値,下位25%値)を得ることができました。うーん,自分の相対位置がより詳しく分かりました。
これは全国の分布値ですが,言わずもがな,地域によって大きく違います。鹿児島で上位10%に入っていても,東京では中央値よりちょっと上という所ではないでしょうか。私は双方の生活を知っていますので,この温度差はよく分かります。
同じやり方を適用し,47都道府県ごとに,40代前半男性の5つの所得分布値を出してみました。以下に,一覧表を掲げます。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。
地域によって全然違いますね。所得600万円のアラフォー男子は,沖縄ではスターですが,東京では真ん中よりちょっと上という所です。沖縄で真ん中の人(290万円)は,東京ではプアの部類です。
「私は全国の基準では**だが,今住んでいるX県では**だな」という読み方をすると,面白いでしょう。以下のようなグラフにして,自分の所得のヨコ線を引いてみるといいと思います。
自分が属する,40代前半男性の所得水準の診断表を作ってみました。資料として使っていただければと存じます。
大学の統計学の授業で,皆でコラボして,この手の作品を作るのもいいと思います。私は経験上知ってますが。カネの話となると,学生は目の色を変えて熱心に取り組むものです。
按分比例は中高生でも理解できる概念ですので,学校の総合的な学習の時間の題材としてどうでしょうか。
取り上げる題材というのは大事です。中学校の数学で,初歩的な度数分布の単元の際,面白くもない架空のテストの点数分布なんて出しても,生徒の目は引けません。自分の将来に直に関わる職業別の年収分布などを出すといいでしょう。そのデータは,官庁統計から簡単に引き出せます。教師たる者,政府統計サイト「e-stat」の使い方はマスターしておきたいものですね。
https://www.e-stat.go.jp/
今日も酷暑です。熱中症にはお気を付けください。
中央値(Median)というのは,値を高い順に並べたとき,ちょうど真ん中にくる値のことです。これより上なら半分より上,下なら半分より下,ということになります。2017年の40代前半男性の所得中央値は472万円ですが,私の所得はこれを下回っています。
「自分の所得は半分より下」。これは分かり切ったことですので,さして驚きませんが,さすがに下位10%にも満たないとなると,気心も変わってきます。逆に中央値を上回っている人は,上位25%や10%のラインを超えているかしら,という関心があるでしょう。
今回は,中央値とは別の分布値も出してみようと思います。そうですねえ。全体を6つのゾーンに分かつ,下位10%値,下位25%値,中央値,上位25%値,上位10%値を出してみましょうか。これにより,自分の所得が全体のどの辺かを知れる,やや詳細な診断表を作れます。
中央値と同じく,他の4つの値も按分比例を使って計算できます。2017年の『就業構造基本調査』から,40代前半男性有業者(439万人)の所得分布を採取し,相対度数・累積相対度数の形に整理すると,以下のようになります。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html
真ん中の相対度数(%)をみると,中ほどが厚いきれいなノーマル分布です。最も多いのは,所得400万円台となっています。一昔前の人からすれば「こんなに少ないの?」という印象でしょうが,今の当事者のわれわれからすれば何の違和感もありません。
右端の累積相対度数から,下位10%値(累積相対度数=10)は200万円台前半,下位25%値(25)は300万円台,中央値(50)は400万円台,上位25%値(75)は600万円台,上位10%値(90)は800万円台の階級に含まれることが知られます。
では按分比例を使って,目的の値を割り出しましょう。
下位10%値:
按分比=(10.0-7.9)/(14.4-7.9)=0.324
下位10%値=200万円+(50万円×0.324)=216.2万円
下位25%値:
按分比=(25.0-20.9)/(37.4-20.9)=0.250
下位25%値=300万円+(100万円×0.250)=325.0万円
中央値:
按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.717
中央値=400万円+(100万円×0.717)=471.7万円
上位25%値:
按分比=(75.0-70.0)/(80.7-70.0)=0.466
上位25%値=600万円+(100万円×0.466)=646.6万円
上位10%値:
按分比=(90.0-88.1)/(92.5-88.1)=0.439
上位10%値=800万円+(100万円×0.439)=843.9万円
こんな感じです。私の所得は中央値より低いのは前回の記事で分かりましたが,ここにて,さらに2つのライン(下位10%値,下位25%値)を得ることができました。うーん,自分の相対位置がより詳しく分かりました。
これは全国の分布値ですが,言わずもがな,地域によって大きく違います。鹿児島で上位10%に入っていても,東京では中央値よりちょっと上という所ではないでしょうか。私は双方の生活を知っていますので,この温度差はよく分かります。
同じやり方を適用し,47都道府県ごとに,40代前半男性の5つの所得分布値を出してみました。以下に,一覧表を掲げます。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。
地域によって全然違いますね。所得600万円のアラフォー男子は,沖縄ではスターですが,東京では真ん中よりちょっと上という所です。沖縄で真ん中の人(290万円)は,東京ではプアの部類です。
「私は全国の基準では**だが,今住んでいるX県では**だな」という読み方をすると,面白いでしょう。以下のようなグラフにして,自分の所得のヨコ線を引いてみるといいと思います。
自分が属する,40代前半男性の所得水準の診断表を作ってみました。資料として使っていただければと存じます。
大学の統計学の授業で,皆でコラボして,この手の作品を作るのもいいと思います。私は経験上知ってますが。カネの話となると,学生は目の色を変えて熱心に取り組むものです。
按分比例は中高生でも理解できる概念ですので,学校の総合的な学習の時間の題材としてどうでしょうか。
取り上げる題材というのは大事です。中学校の数学で,初歩的な度数分布の単元の際,面白くもない架空のテストの点数分布なんて出しても,生徒の目は引けません。自分の将来に直に関わる職業別の年収分布などを出すといいでしょう。そのデータは,官庁統計から簡単に引き出せます。教師たる者,政府統計サイト「e-stat」の使い方はマスターしておきたいものですね。
https://www.e-stat.go.jp/
今日も酷暑です。熱中症にはお気を付けください。
2018年7月14日土曜日
40代前半男性の所得中央値
2017年の『就業構造基本調査』の結果が公表されました。昨日の14:30でしたが,私は10分ほど前からパソコンの前にへばりついて,今か今かと待っていました。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html
このブログでは幾多の官庁統計を分析していますが,『就業構造基本調査』は最も活用しているものの一つです。この調査の目玉は有業者の所得を調査していることで,所得をキーにしたクロス集計表も多数アップされています。性別・年齢層別の所得分布,所得階層別の未婚率など,いろいろなことを明らかにできます。
本調査でいう所得とは,「賃金,給料,手間賃,諸手当,ボーナスなど過去1年間に得た税込みの給与総額」をいいます(用語解説)。税引き後の年収とは区別される概念です。
私は,2017年のデータが公表されたら,今の自分の世代の所得がどうなっているかをまず明らかにしたいと考えていました。私の世代は,2017年では40代前半になっています。原資料の度数分布表に当たって,40代前半男性の所得分布を整理してみました。今の特徴を浮き彫りにすべく,過去との比較もします。そうですねえ。バブル末期の1992年と比べましょうか。
所得が分かる40代前半男性有業者は,1992年では521万人,2017年では439万人ほどです。この人たちの年間所得分布を整理すると,以下のようになります。カテゴリーがちょっと粗いですが,1992年の原統計の区分に依拠しています。
バリバリの働き盛りの男性ですが,この四半世紀で所得分布に変化が見られます。500万超の層が減り,代わって低所得層が増えています。所得200万未満には灰色をつけましたが,この層の割合は,1992年では4.8%でしたが,2017年では7.9%となっています。ワーキング・プアが微増しています。
この分布から,フツーのアラフォー男性の所得がナンボかを,一つの代表値で可視化しましょう。高い順に並べた時,ちょうど真ん中にくる人の所得がいくらかという,中央値がベストです。右端の累積相対度数から,1992年は500~600万円台,2017年は400万円台の階層に含まれることが分かります。
按分比例を用いて,累積相対度数が50ジャストの値を推し量りましょう。
1992年:
按分比=(50.0-46.3)/(77.0-46.3)=0.120
中央値=500万円+(200万円×0.120)=524.1万円
2017年:
按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.717
中央値=400万円+(100万円×0.717)=471.7万円
はじき出された所得中央値は,1992年が524万円,2017年が472万円です。この四半世紀で,40代前半男性の所得中央値は50万円以上減ったことが知られます。蛇足ですが,私の所得は2017年のメディアンに遠く及びませんね。
これは全国値ですが,労働者の所得は地域によって大きく違います。47都道府県別にみると,この四半世紀でどの県も所得が減っていますが,全県の動きを上から俯瞰(ふかん)すると,列島貧困化と呼ぶべき現象が浮かび上がります。上記と同じやり方で全県の40代前半男性の所得中央値を出し,高い順に配列すると,以下のようになります。
1992年では20県の所得中央値が500万円を超えていましたが,2017年ではそういう県はわずか5県です。最近では,西の大都市の大阪もこのラインを超えていません。
その代わり低所得の県が増えており,最近ではアラフォー男子の所得中央値が400万円にも満たない県が11県あります。これはキツイ。子育てどころではありません。これは税引き前の所得ですので,税引き後の年収でみたらもっと悲惨な事態になっています。
上記の表で濃い色を付けた県を地図上で可視化しましょう。昨日,ツイッターでも発信したマップです。再掲します。
アベノミクスの効果だ,ロスジェネに対する無策の結果だ,政府はロスジェネに慰謝料を払うべきだ,というリプが付いていますが,当事者の一人として,こうも言いたくなります。
2017年の40代前半といえば,私の世代,世紀の変わり目の超氷河期に大学を出たロスト・ジェネレーションです。今回のデータは,この世代が40代前半のステージに達したことの影響が大きいでしょう。新卒時に正規就職が叶わず,ずっと非正規に滞留したままの人,キャリアや昇給が順調に行っていない人が多いのですから。
この点については繰り返し書いてきましたが,少し上の団塊ジュニアと同様,この世代も人数的に多いのですので,管理職のポストが足りず,昇進が頭打ちになっていることもあるでしょうね。一昔前のアラフォーは,課長や部長の役職につく人も少なくなかったと思いますが,最近はそうではないと。
また,長らく続いてきた年功賃金が崩壊していることもあるでしょう。ざっと考えて,世代の要因,企業の人事管理の変化の要因,という2つに大別できるかと思います。
現実がこんなですので,今までと同じく,子育て・教育の費用を家計任せにするというのは無理というものです。政府もやっとこれに気づき,幼児教育・高等教育の費用の無償化が図られることになりましたが,対象を大きく絞った制度設計で十分といえるかどうか…。
今回みたのは男性個人の所得ですが,世帯年収の変化でみたら,様相は違うかもしれません。共働きが増えていますしね。同年代の世帯所得も出して,男性個人の所得と対比させたら,妻の稼ぎ寄与度が出てくるかも。以前に比して,増えていることは間違いないでしょう。男性の腕一本で妻子を養える時代など終わっていることは,今回のデータからよく分かります。
毎度,同じようなデータを出していますが,自分の世代的な恨みの可視化と同時に,時代は変わっていることを,「これでもか」というくらいしつこく訴えたいからです。それに,やり過ぎはないと考えています。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/index.html
このブログでは幾多の官庁統計を分析していますが,『就業構造基本調査』は最も活用しているものの一つです。この調査の目玉は有業者の所得を調査していることで,所得をキーにしたクロス集計表も多数アップされています。性別・年齢層別の所得分布,所得階層別の未婚率など,いろいろなことを明らかにできます。
本調査でいう所得とは,「賃金,給料,手間賃,諸手当,ボーナスなど過去1年間に得た税込みの給与総額」をいいます(用語解説)。税引き後の年収とは区別される概念です。
私は,2017年のデータが公表されたら,今の自分の世代の所得がどうなっているかをまず明らかにしたいと考えていました。私の世代は,2017年では40代前半になっています。原資料の度数分布表に当たって,40代前半男性の所得分布を整理してみました。今の特徴を浮き彫りにすべく,過去との比較もします。そうですねえ。バブル末期の1992年と比べましょうか。
所得が分かる40代前半男性有業者は,1992年では521万人,2017年では439万人ほどです。この人たちの年間所得分布を整理すると,以下のようになります。カテゴリーがちょっと粗いですが,1992年の原統計の区分に依拠しています。
バリバリの働き盛りの男性ですが,この四半世紀で所得分布に変化が見られます。500万超の層が減り,代わって低所得層が増えています。所得200万未満には灰色をつけましたが,この層の割合は,1992年では4.8%でしたが,2017年では7.9%となっています。ワーキング・プアが微増しています。
この分布から,フツーのアラフォー男性の所得がナンボかを,一つの代表値で可視化しましょう。高い順に並べた時,ちょうど真ん中にくる人の所得がいくらかという,中央値がベストです。右端の累積相対度数から,1992年は500~600万円台,2017年は400万円台の階層に含まれることが分かります。
按分比例を用いて,累積相対度数が50ジャストの値を推し量りましょう。
1992年:
按分比=(50.0-46.3)/(77.0-46.3)=0.120
中央値=500万円+(200万円×0.120)=524.1万円
2017年:
按分比=(50.0-37.4)/(55.0-37.4)=0.717
中央値=400万円+(100万円×0.717)=471.7万円
はじき出された所得中央値は,1992年が524万円,2017年が472万円です。この四半世紀で,40代前半男性の所得中央値は50万円以上減ったことが知られます。蛇足ですが,私の所得は2017年のメディアンに遠く及びませんね。
これは全国値ですが,労働者の所得は地域によって大きく違います。47都道府県別にみると,この四半世紀でどの県も所得が減っていますが,全県の動きを上から俯瞰(ふかん)すると,列島貧困化と呼ぶべき現象が浮かび上がります。上記と同じやり方で全県の40代前半男性の所得中央値を出し,高い順に配列すると,以下のようになります。
1992年では20県の所得中央値が500万円を超えていましたが,2017年ではそういう県はわずか5県です。最近では,西の大都市の大阪もこのラインを超えていません。
その代わり低所得の県が増えており,最近ではアラフォー男子の所得中央値が400万円にも満たない県が11県あります。これはキツイ。子育てどころではありません。これは税引き前の所得ですので,税引き後の年収でみたらもっと悲惨な事態になっています。
上記の表で濃い色を付けた県を地図上で可視化しましょう。昨日,ツイッターでも発信したマップです。再掲します。
アベノミクスの効果だ,ロスジェネに対する無策の結果だ,政府はロスジェネに慰謝料を払うべきだ,というリプが付いていますが,当事者の一人として,こうも言いたくなります。
2017年の40代前半といえば,私の世代,世紀の変わり目の超氷河期に大学を出たロスト・ジェネレーションです。今回のデータは,この世代が40代前半のステージに達したことの影響が大きいでしょう。新卒時に正規就職が叶わず,ずっと非正規に滞留したままの人,キャリアや昇給が順調に行っていない人が多いのですから。
この点については繰り返し書いてきましたが,少し上の団塊ジュニアと同様,この世代も人数的に多いのですので,管理職のポストが足りず,昇進が頭打ちになっていることもあるでしょうね。一昔前のアラフォーは,課長や部長の役職につく人も少なくなかったと思いますが,最近はそうではないと。
また,長らく続いてきた年功賃金が崩壊していることもあるでしょう。ざっと考えて,世代の要因,企業の人事管理の変化の要因,という2つに大別できるかと思います。
現実がこんなですので,今までと同じく,子育て・教育の費用を家計任せにするというのは無理というものです。政府もやっとこれに気づき,幼児教育・高等教育の費用の無償化が図られることになりましたが,対象を大きく絞った制度設計で十分といえるかどうか…。
今回みたのは男性個人の所得ですが,世帯年収の変化でみたら,様相は違うかもしれません。共働きが増えていますしね。同年代の世帯所得も出して,男性個人の所得と対比させたら,妻の稼ぎ寄与度が出てくるかも。以前に比して,増えていることは間違いないでしょう。男性の腕一本で妻子を養える時代など終わっていることは,今回のデータからよく分かります。
毎度,同じようなデータを出していますが,自分の世代的な恨みの可視化と同時に,時代は変わっていることを,「これでもか」というくらいしつこく訴えたいからです。それに,やり過ぎはないと考えています。
2018年7月9日月曜日
アラフィフの睡眠時間の中央値
睡眠は欠かせないものですが,皆さんはどれくらい寝てますか。分刻みでスケジュールをこなす堀江貴文さんは,1日6時間しっかり寝て,クリアーな頭で仕事に臨むのだそうです(『多動力』幻冬舎)。
私は6時間でも足りないですねえ。大よそ11時前に寝て,7時前に起きる「8時間」睡眠です。寝付けなかったり,朝早く目が覚めたりした場合は,昼寝をして補充します。
日本人の睡眠時間のデータとして,総務省『社会生活基本調査』の平均睡眠時間がよく引き合いに出されます。男女の年齢曲線を描くと,40~50代の女性が一番寝ていないことが知られます。2016年の40代女性の平均睡眠時間は432分です(1日あたり)。
「みんな7時間も寝てるの?信じられない」という感想を持たれるでしょう。一部の際立って高い値に全体が釣り上げられてしまう。平均の罠です。願わくは,平均という代表値に丸める前の分布から観察したいものです。
2016年の『国民生活基礎調査』に,それを叶えてくれるデータが載っています。カテゴリーがやや粗いですが,性別・年齢層別の度数分布が出てますので,それを面グラフにすると以下のようになります。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html
私は8時間寝てますが,40代前半男性では,こういう人は1割もいません。働き盛りですからねえ。ちょっと申し訳ない気分になってきます…。
色をつけたのは睡眠時間が6時間に満たない人たちですが,男女とも40代後半から50代前半に山があります。当該年齢層の女性では,こうした寝不足の人が半分以上を占めます。高校生の子の弁当づくりなど,早起きを強いられるのでしょう。老親の介護も始まり,育児+介護のダブルケアを課される年代でもありますが,その負荷は男性より女性で大きいと。
上記のグラフから,アラフィフ女性の睡眠時間の中央値は6時間に満たないことが分かります。平均値とは違い,リアリティがあります。統計資料に載っている計算済の平均値ではなく,ちゃんと分布を観察してみるものですね。
上記の分布をもとに,アラフィフ女性の睡眠時間の中央値を計算してみましょう。以下の表は,原資料から作成した8328人の度数分布表です。
右端の累積相対度数から,中央値は300~359分(5時間台)の階級に含まれることが分かります。はて,中央値(=累積相対度数50ジャスト)に該当するのは何分か。按分比例を使って推し量りましょう。以下の2ステップです。
①:按分比=(50.0-13.3)/(52.8-13.3)= 0.929
②:中央値={ 300分+(0.929 × 60分)}= 355.8分
アラフィフ女性の睡眠時間の中央値は,356分(5時間56分)と見積もられます。全員を高い順に並べたとき,ちょうど真ん中にくる人の睡眠時間です。普通のアラフィフ女性の睡眠時間は5時間56分。平均値よりはるかに頷ける数値です。
ちなみに同年齢の男性の睡眠時間中央値は,366分(6時間6分)となっています。女性より10分長し。
これは全国値ですが,地域差も大きくなっています。通勤時間が長い都市部では睡眠時間が短いであろうことは,想像がつくでしょう。私は同じやり方で,45~54歳男女の睡眠時間の中央値を都道府県別に計算してみました。男女の数値と性差の一覧をご覧ください。
黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。男性は355~386分,女性は347~370分の分布幅になっています。男性の最低は神奈川,女性は奈良です。通勤・通学時間が長い都市部は,短時間睡眠の傾向があります。
奈良のアラフィフ女性の睡眠時間は5時間47分。夫や子どもの遠距離通勤・通学のゆえ,遅寝・早起きを強いられるのでしょうか。
右端の性差をみると,どの県も男性より女性の睡眠時間が短くなっています。赤字はその差が15分超。ゴチ赤字は20分超ですが,中国と九州はイタイですね。男女の睡眠時間格差が大きい。「男尊女卑」という,陳腐なレッテル貼りが復活しそうです。
さて,超多忙のホリエモンでも1日6時間は寝るそうですが(冒頭),表をみると360分を下回る数値が結構あることに気づきます。アラフィフの睡眠時間中央値が6時間に満たない県に色を付けた地図にすると,身震いする模様になっています。
寝不足県の可視化です。男性は6県ですが,女性だと32県にも達します。スゴイですねえ。流行りの言葉を借りると,睡眠負債大国といえましょう。これが積もりに積もたら,健康が害されることは必至です。
あいにく時系列比較はできませんが,過去に比して色が濃くなっていると思われます。『社会生活基本調査』に出ている,睡眠時間の平均値は下がっていますので。今後,人手不足の進行と,晩婚化によるダブルケアの増加により,色付きの県は増えていくかもしれません。一国の総寝不足化です。
寝不足のクラクラした頭で仕事する…。労働生産性の向上が至上命題になっていますが,これでは逆向してしまうでしょう。労働者の休息時間を確保するための「勤務間インターバル制」の導入が推奨されていますが,南欧流の昼寝(シエスタ)の慣行も考えたらいかがでしょう。
従業員が寝不足で事故を起こした場合,過失責任が企業に課される判決も出ています。企業も,睡眠負債の解消に本腰を入れて取り組まないといけない時期にきています。
国際比較をできないのが残念ですが,国の半分以上が「寝不足色」で染まるような国は多くないでしょう。
私は6時間でも足りないですねえ。大よそ11時前に寝て,7時前に起きる「8時間」睡眠です。寝付けなかったり,朝早く目が覚めたりした場合は,昼寝をして補充します。
日本人の睡眠時間のデータとして,総務省『社会生活基本調査』の平均睡眠時間がよく引き合いに出されます。男女の年齢曲線を描くと,40~50代の女性が一番寝ていないことが知られます。2016年の40代女性の平均睡眠時間は432分です(1日あたり)。
「みんな7時間も寝てるの?信じられない」という感想を持たれるでしょう。一部の際立って高い値に全体が釣り上げられてしまう。平均の罠です。願わくは,平均という代表値に丸める前の分布から観察したいものです。
2016年の『国民生活基礎調査』に,それを叶えてくれるデータが載っています。カテゴリーがやや粗いですが,性別・年齢層別の度数分布が出てますので,それを面グラフにすると以下のようになります。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html
私は8時間寝てますが,40代前半男性では,こういう人は1割もいません。働き盛りですからねえ。ちょっと申し訳ない気分になってきます…。
色をつけたのは睡眠時間が6時間に満たない人たちですが,男女とも40代後半から50代前半に山があります。当該年齢層の女性では,こうした寝不足の人が半分以上を占めます。高校生の子の弁当づくりなど,早起きを強いられるのでしょう。老親の介護も始まり,育児+介護のダブルケアを課される年代でもありますが,その負荷は男性より女性で大きいと。
上記のグラフから,アラフィフ女性の睡眠時間の中央値は6時間に満たないことが分かります。平均値とは違い,リアリティがあります。統計資料に載っている計算済の平均値ではなく,ちゃんと分布を観察してみるものですね。
上記の分布をもとに,アラフィフ女性の睡眠時間の中央値を計算してみましょう。以下の表は,原資料から作成した8328人の度数分布表です。
右端の累積相対度数から,中央値は300~359分(5時間台)の階級に含まれることが分かります。はて,中央値(=累積相対度数50ジャスト)に該当するのは何分か。按分比例を使って推し量りましょう。以下の2ステップです。
①:按分比=(50.0-13.3)/(52.8-13.3)= 0.929
②:中央値={ 300分+(0.929 × 60分)}= 355.8分
アラフィフ女性の睡眠時間の中央値は,356分(5時間56分)と見積もられます。全員を高い順に並べたとき,ちょうど真ん中にくる人の睡眠時間です。普通のアラフィフ女性の睡眠時間は5時間56分。平均値よりはるかに頷ける数値です。
ちなみに同年齢の男性の睡眠時間中央値は,366分(6時間6分)となっています。女性より10分長し。
これは全国値ですが,地域差も大きくなっています。通勤時間が長い都市部では睡眠時間が短いであろうことは,想像がつくでしょう。私は同じやり方で,45~54歳男女の睡眠時間の中央値を都道府県別に計算してみました。男女の数値と性差の一覧をご覧ください。
黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。男性は355~386分,女性は347~370分の分布幅になっています。男性の最低は神奈川,女性は奈良です。通勤・通学時間が長い都市部は,短時間睡眠の傾向があります。
奈良のアラフィフ女性の睡眠時間は5時間47分。夫や子どもの遠距離通勤・通学のゆえ,遅寝・早起きを強いられるのでしょうか。
右端の性差をみると,どの県も男性より女性の睡眠時間が短くなっています。赤字はその差が15分超。ゴチ赤字は20分超ですが,中国と九州はイタイですね。男女の睡眠時間格差が大きい。「男尊女卑」という,陳腐なレッテル貼りが復活しそうです。
さて,超多忙のホリエモンでも1日6時間は寝るそうですが(冒頭),表をみると360分を下回る数値が結構あることに気づきます。アラフィフの睡眠時間中央値が6時間に満たない県に色を付けた地図にすると,身震いする模様になっています。
寝不足県の可視化です。男性は6県ですが,女性だと32県にも達します。スゴイですねえ。流行りの言葉を借りると,睡眠負債大国といえましょう。これが積もりに積もたら,健康が害されることは必至です。
あいにく時系列比較はできませんが,過去に比して色が濃くなっていると思われます。『社会生活基本調査』に出ている,睡眠時間の平均値は下がっていますので。今後,人手不足の進行と,晩婚化によるダブルケアの増加により,色付きの県は増えていくかもしれません。一国の総寝不足化です。
寝不足のクラクラした頭で仕事する…。労働生産性の向上が至上命題になっていますが,これでは逆向してしまうでしょう。労働者の休息時間を確保するための「勤務間インターバル制」の導入が推奨されていますが,南欧流の昼寝(シエスタ)の慣行も考えたらいかがでしょう。
従業員が寝不足で事故を起こした場合,過失責任が企業に課される判決も出ています。企業も,睡眠負債の解消に本腰を入れて取り組まないといけない時期にきています。
国際比較をできないのが残念ですが,国の半分以上が「寝不足色」で染まるような国は多くないでしょう。
2018年7月6日金曜日
授業で教科書や電卓を使うか?
国が違えば,慣習や文化が大きく違います。国際比較の面白みは,自国で常識と信じて疑われないことを,相対化できることです。
学校での授業スタイルにも違いが見受けられます。IEAの国際学力調査「TIMSS」に興味深い設問がありますので,国ごとの単純集計のグラフをご紹介しましょう。元データは,下記サイトのリモート集計で簡単に作れます。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/
まずは,授業で教科書を使うかです。日本は,国の検定教科書の使用が義務付けられており,全国のどの学校でも教科書をメインにした授業がなされていますが,他国はどうなのか。
中学校2年生の数学担当教員に尋ねた結果をみてみましょう。選択肢は,「授業の基礎として使う」,「授業の補足として使う」,「使わない」の3つです。無回答・無効回答は除いた,これら3つの構成比をビジュアル化します。
「授業の基礎として使う」というオーソドックスな回答比率が少ない順に,回答のあった42か国を並べました。
教科書ベースの授業が支配的な国が多くなっています。日本では,83%の数学教員がこういう授業をしている,と答えています。
しかし上のほうを見ると,「授業の補足として使う」ないしは「使わない」という回答のほうが多い国もあります。イギリスやアメリカはそうです。カバンもさぞ軽いのでしょうね。日本みたいに,「重すぎるランドセル」で腰痛になる子どもなんて皆無でしょう。
日本では,教育内容は学習指導要領できっちり決められており,これに盛られた内容は必ず教えないといけません。ただ,それらを消化した後で,プラスアルファの内容を追加することは許されます。私立では,そういう授業をする学校も多いでしょうね。
グラフをみると,日本でも「教科書は補足」「使わない」という回答が2割弱いますが,多くが私立学校の教員ではないかと思われます。公私の比較をしたいのですが,「TIMSS」では,学校の設置主体を訊いてないので,それは叶いません。
教科書を使う授業は普遍的にあらず。この点を押さえました。次に,数学の授業で生徒に電卓を使わせるかです。3桁や4桁の四則演算を紙と鉛筆でガリガリとやる日本の子どもをみて,海外の人は目を丸くするそうですが,データをみると,日本の常識は世界の非常識です。
先ほどと同じく,中学校2年生の数学担当教員の回答をみてみましょう。生徒は電卓を「自由に使える」,「制限つきで使える」,「使えない」の3択です。最初の回答比率が高い順に,回答のあった37か国を配列しました。
電卓を自由に使わせている国が結構あります。シンガポールや香港では,8~9割の教員が「自由に使わせている」と答えています。対して,日本は6%だけ。お隣の韓国は3%です。
シンガポール,香港,日本,韓国,台北。これらは「TIMSS 2015」の中2の数学平均点の上位5位ですが,前2者と後3者では,正答率が高い問題に違いがあるような気がしますね。
まあ日本でも,「制限付きでOK」という回答は結構ありますので,機械的な答え合わせや,思考を要する難題を解くに際しては,電卓を使わせているのかもしれません。小学校のうちは,基礎的な計算能力も鍛えないといけませんが,発達段階を上がるにつれ,考えることのほうに重点を移したいものです。電卓は,思考に集中するためのツールです。
国ごとの電卓使用と数学学力の間には,一部の国を除くと,プラスの相関関係が見受けられます。
https://twitter.com/tmaita77/status/1014857979336650752
21世紀の今では,電卓を叩いて結果を紙に転記するというのも,いささかナンセンスです。家計簿や費用管理などは,エクセル等の表計算ソフトでする時代。その初歩を,学校の授業で取り上げるべきかと思います。
ただ,初心(原理)を分からせるうえでは,手作業は有益です。私は調査法の授業で,クロス集計を昔ながらのカードでさせていました。そのあとで,エクセルのような飛び道具を使わせると。「苦労・手間=いいこと,尊いこと」という思い込みはいけませんが,それを完全に捨て去ることは間違いだと思います。
学校での授業スタイルにも違いが見受けられます。IEAの国際学力調査「TIMSS」に興味深い設問がありますので,国ごとの単純集計のグラフをご紹介しましょう。元データは,下記サイトのリモート集計で簡単に作れます。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/
まずは,授業で教科書を使うかです。日本は,国の検定教科書の使用が義務付けられており,全国のどの学校でも教科書をメインにした授業がなされていますが,他国はどうなのか。
中学校2年生の数学担当教員に尋ねた結果をみてみましょう。選択肢は,「授業の基礎として使う」,「授業の補足として使う」,「使わない」の3つです。無回答・無効回答は除いた,これら3つの構成比をビジュアル化します。
「授業の基礎として使う」というオーソドックスな回答比率が少ない順に,回答のあった42か国を並べました。
教科書ベースの授業が支配的な国が多くなっています。日本では,83%の数学教員がこういう授業をしている,と答えています。
しかし上のほうを見ると,「授業の補足として使う」ないしは「使わない」という回答のほうが多い国もあります。イギリスやアメリカはそうです。カバンもさぞ軽いのでしょうね。日本みたいに,「重すぎるランドセル」で腰痛になる子どもなんて皆無でしょう。
日本では,教育内容は学習指導要領できっちり決められており,これに盛られた内容は必ず教えないといけません。ただ,それらを消化した後で,プラスアルファの内容を追加することは許されます。私立では,そういう授業をする学校も多いでしょうね。
グラフをみると,日本でも「教科書は補足」「使わない」という回答が2割弱いますが,多くが私立学校の教員ではないかと思われます。公私の比較をしたいのですが,「TIMSS」では,学校の設置主体を訊いてないので,それは叶いません。
教科書を使う授業は普遍的にあらず。この点を押さえました。次に,数学の授業で生徒に電卓を使わせるかです。3桁や4桁の四則演算を紙と鉛筆でガリガリとやる日本の子どもをみて,海外の人は目を丸くするそうですが,データをみると,日本の常識は世界の非常識です。
先ほどと同じく,中学校2年生の数学担当教員の回答をみてみましょう。生徒は電卓を「自由に使える」,「制限つきで使える」,「使えない」の3択です。最初の回答比率が高い順に,回答のあった37か国を配列しました。
電卓を自由に使わせている国が結構あります。シンガポールや香港では,8~9割の教員が「自由に使わせている」と答えています。対して,日本は6%だけ。お隣の韓国は3%です。
シンガポール,香港,日本,韓国,台北。これらは「TIMSS 2015」の中2の数学平均点の上位5位ですが,前2者と後3者では,正答率が高い問題に違いがあるような気がしますね。
まあ日本でも,「制限付きでOK」という回答は結構ありますので,機械的な答え合わせや,思考を要する難題を解くに際しては,電卓を使わせているのかもしれません。小学校のうちは,基礎的な計算能力も鍛えないといけませんが,発達段階を上がるにつれ,考えることのほうに重点を移したいものです。電卓は,思考に集中するためのツールです。
国ごとの電卓使用と数学学力の間には,一部の国を除くと,プラスの相関関係が見受けられます。
https://twitter.com/tmaita77/status/1014857979336650752
21世紀の今では,電卓を叩いて結果を紙に転記するというのも,いささかナンセンスです。家計簿や費用管理などは,エクセル等の表計算ソフトでする時代。その初歩を,学校の授業で取り上げるべきかと思います。
ただ,初心(原理)を分からせるうえでは,手作業は有益です。私は調査法の授業で,クロス集計を昔ながらのカードでさせていました。そのあとで,エクセルのような飛び道具を使わせると。「苦労・手間=いいこと,尊いこと」という思い込みはいけませんが,それを完全に捨て去ることは間違いだと思います。
2018年7月3日火曜日
都道府県別の平均歩数
今日は,先月に受けた健康診断の結果を聞いてきました。年に一回受けるよう促される,横須賀市の特定健診です。
結果は異状なし。去年は胸部健診で引っ掛かり,悪玉コレステロール値も高すぎという判定だったのですが,今年の診断シートは異常値(赤字)なしでした。腹囲も5センチ縮まってうれしい。まあ,まだ出っ腹であることに変わりはなく,お腹を凹ませるよう指導されましたが…。
去年の秋に保健指導を受けてから,毎日の夕刻,1時間半ほどウォーキングをしているのですが,その成果かなと思います。海あり坂ありの横須賀は,ウォーキング(ジョギング)コースがたくさんあります。海風に吹かれながら歩くのは心地いい。
自宅仕事の自営業は「座りっぱなし」になりがちですが,それだと体力は低下する一方です。毎日一定時間は運動しないといけません。
https://twitter.com/hifumix_0123/status/977476063801393153
それが仕事にいい影響をもたらすこともしばしばで,ウォーキング中にデータ分析のアイディアがふっと浮かぶことがよくあります。先日取り寄せたスポーツ用のウエストポーチに,財布,スマホ,メモ帳,ペンを入れて出かけます。
歩くのも立派な運動です。政府も国民がどれほど歩いているかに関心があるようで,厚労省の『国民健康栄養調査』では,成人男女の1日あたりの平均歩数が算出されています。年によっては,都道府県別の集計表も出ています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
ツイッターでは2012年の都道府県地図を発信しましたが,ここでは最新の2016年データを見てみましょう。20~64歳男女の1日の平均歩数です。原資料に年齢調整済の数値が出ています。*熊本は震災のため,データがありません。
一番下の全国値をみると,男性が7779歩,女性が6776歩となっています。男性のほうが外に出る機会が多いためでしょう。
地域差も大きく,男性は5647~8762歩,女性は5840~7795歩という分布です。男性のマックスは大阪,女性は神奈川なり。赤字は8000歩超ですが,首都圏,中京圏,近畿圏と,見事に大都市圏で歩数は多くなっています。
3つの階級を設けて,各県の男性の平均歩数を地図に落とすと,以下のようになります。太平洋ベルトが濃い,きれいな模様です。
「都会は歩く」。ツイッターで書きましたが,こういう傾向があるようです。公共交通網が発達しているので,移動は電車やバスが主流ですが,乗り換えやら広い駅構内やら,意識には上がらずとも結構歩いているものです。
対して地方はクルマ社会で,遠方のみならず,100メートルほどの距離しかないコンビニに行くのにも車を使ってしまう。私は,鹿児島と東京の生活を知っていますので,このコントラストはよく分かります。私の叔父(故)は,上京してくるといつも,「東京は歩かされるなあ」と苦笑していました。
上記の表には,1000世帯あたりの自動車保有台数も載せましたが,この指標と成人男女の平均歩数の間には,有意な負の相関関係が観察されます。車の普及度が高い県ほど,平均歩数が少ないと。
あまり車に依存し過ぎるのは考え物でしょう。加齢に伴い,やがては運転できなくなります。家族の意向で強制的に免許を返納させられ,鬱になってしまう高齢者がいるそうですが,こういうケースは地方に多いのではないでしょうか。車がサンダル(下駄)のような感覚になっていると,こういうことが起きる。車の用途を見つめ直し,近場に行くときは歩きたいものです。
クルマ依存というのも,スマホ依存に劣らず恐ろしい兆候です。
結果は異状なし。去年は胸部健診で引っ掛かり,悪玉コレステロール値も高すぎという判定だったのですが,今年の診断シートは異常値(赤字)なしでした。腹囲も5センチ縮まってうれしい。まあ,まだ出っ腹であることに変わりはなく,お腹を凹ませるよう指導されましたが…。
去年の秋に保健指導を受けてから,毎日の夕刻,1時間半ほどウォーキングをしているのですが,その成果かなと思います。海あり坂ありの横須賀は,ウォーキング(ジョギング)コースがたくさんあります。海風に吹かれながら歩くのは心地いい。
自宅仕事の自営業は「座りっぱなし」になりがちですが,それだと体力は低下する一方です。毎日一定時間は運動しないといけません。
https://twitter.com/hifumix_0123/status/977476063801393153
それが仕事にいい影響をもたらすこともしばしばで,ウォーキング中にデータ分析のアイディアがふっと浮かぶことがよくあります。先日取り寄せたスポーツ用のウエストポーチに,財布,スマホ,メモ帳,ペンを入れて出かけます。
歩くのも立派な運動です。政府も国民がどれほど歩いているかに関心があるようで,厚労省の『国民健康栄養調査』では,成人男女の1日あたりの平均歩数が算出されています。年によっては,都道府県別の集計表も出ています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
ツイッターでは2012年の都道府県地図を発信しましたが,ここでは最新の2016年データを見てみましょう。20~64歳男女の1日の平均歩数です。原資料に年齢調整済の数値が出ています。*熊本は震災のため,データがありません。
一番下の全国値をみると,男性が7779歩,女性が6776歩となっています。男性のほうが外に出る機会が多いためでしょう。
地域差も大きく,男性は5647~8762歩,女性は5840~7795歩という分布です。男性のマックスは大阪,女性は神奈川なり。赤字は8000歩超ですが,首都圏,中京圏,近畿圏と,見事に大都市圏で歩数は多くなっています。
3つの階級を設けて,各県の男性の平均歩数を地図に落とすと,以下のようになります。太平洋ベルトが濃い,きれいな模様です。
「都会は歩く」。ツイッターで書きましたが,こういう傾向があるようです。公共交通網が発達しているので,移動は電車やバスが主流ですが,乗り換えやら広い駅構内やら,意識には上がらずとも結構歩いているものです。
対して地方はクルマ社会で,遠方のみならず,100メートルほどの距離しかないコンビニに行くのにも車を使ってしまう。私は,鹿児島と東京の生活を知っていますので,このコントラストはよく分かります。私の叔父(故)は,上京してくるといつも,「東京は歩かされるなあ」と苦笑していました。
上記の表には,1000世帯あたりの自動車保有台数も載せましたが,この指標と成人男女の平均歩数の間には,有意な負の相関関係が観察されます。車の普及度が高い県ほど,平均歩数が少ないと。
あまり車に依存し過ぎるのは考え物でしょう。加齢に伴い,やがては運転できなくなります。家族の意向で強制的に免許を返納させられ,鬱になってしまう高齢者がいるそうですが,こういうケースは地方に多いのではないでしょうか。車がサンダル(下駄)のような感覚になっていると,こういうことが起きる。車の用途を見つめ直し,近場に行くときは歩きたいものです。
クルマ依存というのも,スマホ依存に劣らず恐ろしい兆候です。
2018年7月1日日曜日
『わが子に公務員をすすめたい親の本』
実務教育出版より,『わが子に公務員をすすめたい親の本』『自分で考えて動ける子になる モンテッソーリの育て方』の2冊をお送りいただきました。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b359797.html
https://jitsumu.hondana.jp/book/b361230.html
実務教育出版は,公務員受験関連の本を出している老舗出版社で,私も長くお付き合いさせていただいています。最初の本は,この会社の性格が前面に出ています。子どもを公務員にしたい親御さん向けの本です。
筆者の寺本康之さんは,公務員受験の予備校講師をされている方ですが,「元ギャル男かつ元ニート」で,「鳴かず飛ばずの役者」を続け,大学院を教授とケンカして中退したという,なかなか面白い人です(2ページ)。
本書の想定読者は,公務員を志望する学生ではなく,わが子に公務員をすすめたい親御さんのようです。受験では親はいろいろ口出ししますが,就職活動になると「もう大人だから,親の出る幕ではない」と,関わりをしなくなる。私もこれに近い考えで,進路なんて当人が決めるもんだ,と思っています。
しかし筆者はこれに異を唱え,親のアドバイスの重要性を指摘します。本人任せにして道を誤らせ,後悔する親御さんもいますしね。それに,「わが子に公務員になってほしい」という明確なビジョンがあるのなら,親の側から意図的に働きかけて,子どもをゴールに仕向けることも必要なのかもしれません。
本書は,5つの章立てになっています。
1章 公務員はこんなにいい職業だ!
2章 成功する親,失敗する親の違い
3章 知っておきたい公務員試験のウソ・ホント
4章 親が知っておくべき筆記試験のポイントと戦略
5章 親子でできる人物試験対策
1章では,公務員のメリットについて説かれています。「絶対的な安定」「ずっと働きたい女性にオススメ」という節が立てられていますが,そうでしょうね。お給料は民間の大企業並みとのこと。
2012年の『就業構造基本調査』の年収分布表から,就業者全体と公務員の平均年収を都道府県別に計算すると,以下のようになります。公務員は産業分類が「公務」の者で,教員や警察官等は含みません。多くが役所の職員とみてよいでしょう。
どの県でも,公務員の年収は民間をかなり上回っています。黄色は1.4倍超ですが,女性ではほとんどの県で色がついています。佐賀県では,女性正社員全体が268万円であるのに対し,女性正規公務員は469万円と,200万円もの開きがあります。
また公務員では,年収のジェンダー差が小さいのも注目です。
本書では,自分の時間が持てることの利点にも触れられています。生活が仕事一色にならず,自分のやりたいことをする時間が持てるのもいいですよね。「いい仕事をするためには趣味を持て」という,石原前都知事の言葉が紹介されていますが,複数の顔を持つことは,発想を豊かにしてくれます。「仕事の辞め時は,趣味の継続が難しくなった時」という名言がありますが,公務員はそれと最も隔たっているといえましょう。
https://twitter.com/makkuro_ankoku/status/999977177855635456
2章は,親の関わり方ですが,私がウルっときたのは,「子どもと離れて暮らしているとき」の関わり方です。子を遠方に下宿させている家庭も多いでしょうが,20年前の私の頃とは違い,今ではSNSで手軽に連絡を取り合えます。電話よりもずっと安上がりです。
しかるに,手書きの手紙の効能も侮れないとのこと。筆者が,母上からいただいたという直筆の手紙が掲載されていますが(118~119ページ),こういう心のこもった手紙が届くと,「がんばろう」という気になりますよね。
3章は,公務員試験について飛び交っている通説の吟味です。「国家公務員よりも地方公務員が人気」「公務員をめざす子の親は公務員が多い」…などなど。私は,教員養成大学の老舗の東京学芸大学を出ましたが,親が教員という学生が多く,「やっぱり(親から子への)再生産の傾向があるのかな」と踏んでいましたが,多くの公務員志望者と接した筆者の感覚では,必ずしもそうではないとのこと。
公務員試験の勉強法として,「予備校」「学内講座」「独学」の3つが挙げられ,それぞれのメリット・デメリットが説明されていますが,私は独学かな…。それとアルバイトは,面接の話題ネタになるのでやっておいたほうがいい,とのことです。とくに接客系がいいとのこと。役所のサービスの時代ですが,クレームへの対処法などについて,思う所を聞かれることがあるそうな。これは初耳。
4章は,筆記試験対策について。問題作成者が無精をしているのか,前例から大きく逸脱してはいけないという決まりでもあるのか,公務員試験では類似の問題が形を変えて繰り返し出題されます。よって過去問演習が不可欠。と同時に,知識のインプットも欠かせません。この2つの要請を同時に満たす本として,実務教育出版から出されている『スーパー過去問ゼミ』シリーズが挙げられています(略してスー過去)。教育学の本は,私が書いています。
http://tmaita77.blogspot.com/2017/11/blog-post_23.html
5章は,筆記試験の後に待ち構えている面接試験対策。いわゆる人物確認ですが,近年ではこちらの比重が増していると聞きます。考えてみれば,受験生の親は面接官と同世代。格好の練習相手になります。親子での模擬面接など,いろいろできることはあるそうです。
以上,5分ほどパラパラめくってみて「おお」と思ったことの走り書きです。じっくり読めば,教えられることはもっと大でしょう。わが子に公務員をすすめたい親御さんの場合は,なおのことです。願いを成就させるためのバイブルとして,お手にとっていただきたい本です。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b359797.html
https://jitsumu.hondana.jp/book/b361230.html
実務教育出版は,公務員受験関連の本を出している老舗出版社で,私も長くお付き合いさせていただいています。最初の本は,この会社の性格が前面に出ています。子どもを公務員にしたい親御さん向けの本です。
筆者の寺本康之さんは,公務員受験の予備校講師をされている方ですが,「元ギャル男かつ元ニート」で,「鳴かず飛ばずの役者」を続け,大学院を教授とケンカして中退したという,なかなか面白い人です(2ページ)。
本書の想定読者は,公務員を志望する学生ではなく,わが子に公務員をすすめたい親御さんのようです。受験では親はいろいろ口出ししますが,就職活動になると「もう大人だから,親の出る幕ではない」と,関わりをしなくなる。私もこれに近い考えで,進路なんて当人が決めるもんだ,と思っています。
しかし筆者はこれに異を唱え,親のアドバイスの重要性を指摘します。本人任せにして道を誤らせ,後悔する親御さんもいますしね。それに,「わが子に公務員になってほしい」という明確なビジョンがあるのなら,親の側から意図的に働きかけて,子どもをゴールに仕向けることも必要なのかもしれません。
本書は,5つの章立てになっています。
1章 公務員はこんなにいい職業だ!
2章 成功する親,失敗する親の違い
3章 知っておきたい公務員試験のウソ・ホント
4章 親が知っておくべき筆記試験のポイントと戦略
5章 親子でできる人物試験対策
1章では,公務員のメリットについて説かれています。「絶対的な安定」「ずっと働きたい女性にオススメ」という節が立てられていますが,そうでしょうね。お給料は民間の大企業並みとのこと。
2012年の『就業構造基本調査』の年収分布表から,就業者全体と公務員の平均年収を都道府県別に計算すると,以下のようになります。公務員は産業分類が「公務」の者で,教員や警察官等は含みません。多くが役所の職員とみてよいでしょう。
どの県でも,公務員の年収は民間をかなり上回っています。黄色は1.4倍超ですが,女性ではほとんどの県で色がついています。佐賀県では,女性正社員全体が268万円であるのに対し,女性正規公務員は469万円と,200万円もの開きがあります。
また公務員では,年収のジェンダー差が小さいのも注目です。
本書では,自分の時間が持てることの利点にも触れられています。生活が仕事一色にならず,自分のやりたいことをする時間が持てるのもいいですよね。「いい仕事をするためには趣味を持て」という,石原前都知事の言葉が紹介されていますが,複数の顔を持つことは,発想を豊かにしてくれます。「仕事の辞め時は,趣味の継続が難しくなった時」という名言がありますが,公務員はそれと最も隔たっているといえましょう。
https://twitter.com/makkuro_ankoku/status/999977177855635456
2章は,親の関わり方ですが,私がウルっときたのは,「子どもと離れて暮らしているとき」の関わり方です。子を遠方に下宿させている家庭も多いでしょうが,20年前の私の頃とは違い,今ではSNSで手軽に連絡を取り合えます。電話よりもずっと安上がりです。
しかるに,手書きの手紙の効能も侮れないとのこと。筆者が,母上からいただいたという直筆の手紙が掲載されていますが(118~119ページ),こういう心のこもった手紙が届くと,「がんばろう」という気になりますよね。
3章は,公務員試験について飛び交っている通説の吟味です。「国家公務員よりも地方公務員が人気」「公務員をめざす子の親は公務員が多い」…などなど。私は,教員養成大学の老舗の東京学芸大学を出ましたが,親が教員という学生が多く,「やっぱり(親から子への)再生産の傾向があるのかな」と踏んでいましたが,多くの公務員志望者と接した筆者の感覚では,必ずしもそうではないとのこと。
公務員試験の勉強法として,「予備校」「学内講座」「独学」の3つが挙げられ,それぞれのメリット・デメリットが説明されていますが,私は独学かな…。それとアルバイトは,面接の話題ネタになるのでやっておいたほうがいい,とのことです。とくに接客系がいいとのこと。役所のサービスの時代ですが,クレームへの対処法などについて,思う所を聞かれることがあるそうな。これは初耳。
4章は,筆記試験対策について。問題作成者が無精をしているのか,前例から大きく逸脱してはいけないという決まりでもあるのか,公務員試験では類似の問題が形を変えて繰り返し出題されます。よって過去問演習が不可欠。と同時に,知識のインプットも欠かせません。この2つの要請を同時に満たす本として,実務教育出版から出されている『スーパー過去問ゼミ』シリーズが挙げられています(略してスー過去)。教育学の本は,私が書いています。
http://tmaita77.blogspot.com/2017/11/blog-post_23.html
5章は,筆記試験の後に待ち構えている面接試験対策。いわゆる人物確認ですが,近年ではこちらの比重が増していると聞きます。考えてみれば,受験生の親は面接官と同世代。格好の練習相手になります。親子での模擬面接など,いろいろできることはあるそうです。
以上,5分ほどパラパラめくってみて「おお」と思ったことの走り書きです。じっくり読めば,教えられることはもっと大でしょう。わが子に公務員をすすめたい親御さんの場合は,なおのことです。願いを成就させるためのバイブルとして,お手にとっていただきたい本です。
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