2018年7月1日日曜日

『わが子に公務員をすすめたい親の本』

 実務教育出版より,『わが子に公務員をすすめたい親の本』『自分で考えて動ける子になる モンテッソーリの育て方』の2冊をお送りいただきました。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b359797.html
https://jitsumu.hondana.jp/book/b361230.html


 実務教育出版は,公務員受験関連の本を出している老舗出版社で,私も長くお付き合いさせていただいています。最初の本は,この会社の性格が前面に出ています。子どもを公務員にしたい親御さん向けの本です。

 筆者の寺本康之さんは,公務員受験の予備校講師をされている方ですが,「元ギャル男かつ元ニート」で,「鳴かず飛ばずの役者」を続け,大学院を教授とケンカして中退したという,なかなか面白い人です(2ページ)。

 本書の想定読者は,公務員を志望する学生ではなく,わが子に公務員をすすめたい親御さんのようです。受験では親はいろいろ口出ししますが,就職活動になると「もう大人だから,親の出る幕ではない」と,関わりをしなくなる。私もこれに近い考えで,進路なんて当人が決めるもんだ,と思っています。

 しかし筆者はこれに異を唱え,親のアドバイスの重要性を指摘します。本人任せにして道を誤らせ,後悔する親御さんもいますしね。それに,「わが子に公務員になってほしい」という明確なビジョンがあるのなら,親の側から意図的に働きかけて,子どもをゴールに仕向けることも必要なのかもしれません。

 本書は,5つの章立てになっています。

 1章 公務員はこんなにいい職業だ!
 2章 成功する親,失敗する親の違い
 3章 知っておきたい公務員試験のウソ・ホント
 4章 親が知っておくべき筆記試験のポイントと戦略
 5章 親子でできる人物試験対策

 1章では,公務員のメリットについて説かれています。「絶対的な安定」「ずっと働きたい女性にオススメ」という節が立てられていますが,そうでしょうね。お給料は民間の大企業並みとのこと。

 2012年の『就業構造基本調査』の年収分布表から,就業者全体と公務員の平均年収を都道府県別に計算すると,以下のようになります。公務員は産業分類が「公務」の者で,教員や警察官等は含みません。多くが役所の職員とみてよいでしょう。


 どの県でも,公務員の年収は民間をかなり上回っています。黄色は1.4倍超ですが,女性ではほとんどの県で色がついています。佐賀県では,女性正社員全体が268万円であるのに対し,女性正規公務員は469万円と,200万円もの開きがあります。

 また公務員では,年収のジェンダー差が小さいのも注目です。

 本書では,自分の時間が持てることの利点にも触れられています。生活が仕事一色にならず,自分のやりたいことをする時間が持てるのもいいですよね。「いい仕事をするためには趣味を持て」という,石原前都知事の言葉が紹介されていますが,複数の顔を持つことは,発想を豊かにしてくれます。「仕事の辞め時は,趣味の継続が難しくなった時」という名言がありますが,公務員はそれと最も隔たっているといえましょう。
https://twitter.com/makkuro_ankoku/status/999977177855635456

 2章は,親の関わり方ですが,私がウルっときたのは,「子どもと離れて暮らしているとき」の関わり方です。子を遠方に下宿させている家庭も多いでしょうが,20年前の私の頃とは違い,今ではSNSで手軽に連絡を取り合えます。電話よりもずっと安上がりです。

 しかるに,手書きの手紙の効能も侮れないとのこと。筆者が,母上からいただいたという直筆の手紙が掲載されていますが(118~119ページ),こういう心のこもった手紙が届くと,「がんばろう」という気になりますよね。

 3章は,公務員試験について飛び交っている通説の吟味です。「国家公務員よりも地方公務員が人気」「公務員をめざす子の親は公務員が多い」…などなど。私は,教員養成大学の老舗の東京学芸大学を出ましたが,親が教員という学生が多く,「やっぱり(親から子への)再生産の傾向があるのかな」と踏んでいましたが,多くの公務員志望者と接した筆者の感覚では,必ずしもそうではないとのこと。

 公務員試験の勉強法として,「予備校」「学内講座」「独学」の3つが挙げられ,それぞれのメリット・デメリットが説明されていますが,私は独学かな…。それとアルバイトは,面接の話題ネタになるのでやっておいたほうがいい,とのことです。とくに接客系がいいとのこと。役所のサービスの時代ですが,クレームへの対処法などについて,思う所を聞かれることがあるそうな。これは初耳。

 4章は,筆記試験対策について。問題作成者が無精をしているのか,前例から大きく逸脱してはいけないという決まりでもあるのか,公務員試験では類似の問題が形を変えて繰り返し出題されます。よって過去問演習が不可欠。と同時に,知識のインプットも欠かせません。この2つの要請を同時に満たす本として,実務教育出版から出されている『スーパー過去問ゼミ』シリーズが挙げられています(略してスー過去)。教育学の本は,私が書いています。
http://tmaita77.blogspot.com/2017/11/blog-post_23.html

 5章は,筆記試験の後に待ち構えている面接試験対策。いわゆる人物確認ですが,近年ではこちらの比重が増していると聞きます。考えてみれば,受験生の親は面接官と同世代。格好の練習相手になります。親子での模擬面接など,いろいろできることはあるそうです。

 以上,5分ほどパラパラめくってみて「おお」と思ったことの走り書きです。じっくり読めば,教えられることはもっと大でしょう。わが子に公務員をすすめたい親御さんの場合は,なおのことです。願いを成就させるためのバイブルとして,お手にとっていただきたい本です。