大型連休の最中ですが,みなさま,いかがお過ごしでしょうか。明日から2日間は,暦の上では平日となっています。私が学生の頃は,連休の谷間に授業をする大学教員は滅多にいませんでしたが,今はどうなのでしょう。
私は,2日の水曜は授業をすることになっています(6限!)。半期15回の授業をきっちりやるようにとのお達しが出ているからです。私はヒマだからいいのですが,学生さんからはブーイングが出るだろうなと思っていました。ところがさにあらず。
「来週は連休の谷間ですが,授業はやりますよ」と言ったところ,嫌そうな顔をする者は一人もおらず,皆,「それが当然」という顔をしています。私の頃だったら,教員が吊るし上げを食らっているところです。私と彼らの年齢差は10歳ちょっとですが,今の学生さんは違うなと,戸惑いにも似た感想を抱いています。「学士力」の育成を掲げる,当局の締めつけの故でしょうか。
私は,今の大学生の生活実態を知りたくなりました。具体的にいうと,彼らが1日をどのように過ごしているかです。総務省の『社会生活基本調査』では,1日のそれぞれの時間帯における調査対象者の行動分布が細かく調べられています。下記サイトの表10では,在学者の結果がまとめられています。最新の2006年調査の結果です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001008022&cycode=0
私はこの表のデータを使って,平日の各時間帯における大学生・大学院生の生活行動がどのようなものかを明らかにしました。大学生と大学院生は分かちたいところですが,原資料にて両者が一括されているので,この点は致し方ありません。
下図は,15分刻みの時間帯ごとに,調査対象となった学生(1,951人)の行動分布を図示したものです。各時間帯において,**をしていた者が何%,というように読んでください。たとえば深夜の3時では,ほとんど(約9割)の者が眠っています。
学生ですから,起床の時間は一様ではないようです。朝6時で90%,7時で64%,8時で38%,9時になっても23%の者が布団の中にいます。
日中は,学生の本分である学業に励む者が最多です。ここでいう学業には,授業のほか,授業に関連した予習・復習・課題遂行などが含まれますが,日中の学業のほとんどは授業でしょう。夕方になると,スポーツ(部活,サークル)をする者,帰途につく者が多くなります。そして夜の早い時間はバイト。夜の7時から9時では,対象者の15%割ほどがバイトしています。
その後は,テレビ,休養,趣味など。一方,やはり学生ですので,この時間帯でも,授業関連の課題をしたり,授業とは無関係の学習・研究に打ち込んだりする者もいます。夜の10時でいうと,この手の勉学クンの者の比率はおよそ1割。
しかし,就寝は遅いようです。深夜の0時になっても,床に就いた者は4分の1ほどです。この時間になっても,テレビを観たり趣味を楽しんだりしている輩が2割ほどいます。ここでいう趣味・娯楽には,ネットゲームのようなものも含まれていることでしょう。就寝率が8割を超えるのは,深夜の2時になってからです。
いかがでしょう。まあ,学生の生活なんてこんなもんだろう,と思われただけかもしれません。やはり,あるデータの特徴を検出するには,比較という作業が欠かせません。
総務省『社会生活基本調査』は5年おきに実施されているのですが,2006年調査の2回前の1996年調査の数字と比べてみましょう。1日あたりの学業の平均時間が何分,睡眠の平均時間が何分というような,統計量の比較を試みます。1996年(平成8年)といったら,私が学部2年生だった頃です。どういう変化がみられることやら。
下表は,20の生活行動の1日あたりの平均時間を,両年次で比べたものです。この表の数字は,土日も含めた週全体のものであることに注意してください。1996年のデータは,週全体のものしか公表されていませんので,2006年のデータもそれに揃えています。
この10年間で,学業の平均時間が増しています。177分から210分へと,33分の増です。その分,睡眠,テレビ,および交際といった行動の時間が減じています。うーん,当局の締めつけもあってか,今の学生さんは以前と比べて勉強するようになっています。冒頭で書いた私の印象は,数字でも裏づけられるのだなあ。
ほか,この期間中に増加が顕著なのは,休養(+11分)や趣味(+12分)です。・・・交際やスポーツの時間が減っていることを考え合わせると,大学生の「内向化」が進んでいるようにも思えます。口が悪い人は,学業時間の増加も加味して,大学生の「ガリ勉化・内向化」が進んでいると形容することでしょう。
昨年,2011年の『社会生活基本調査』が実施されたところです。2006年から5年を経た2011年では,どういう大学生のすがたが観察されるでしょうか。この期間中,リーマン・ショックをはじめとした,いろいろなことがありました。自己防衛の気風が高まり,上表にみられるような変化がますます進行しているのでしょうか。それだけというのは,ちょっと寂しい思いがします。
しばらく先になるでしょうが,2011年調査の結果が公表されるのを心待ちにしています。
2012年4月30日月曜日
2012年4月29日日曜日
学歴別にみた30代男性の状態
日本は学歴社会であるといわれます。学歴社会とは,地位や富の配分に際して,学歴がモノをいう度合いが高い社会のことです。今回は,私が属する30代男性の生活状態が,学歴によってどう異なるかをみてみようと思います。
ロスジェネといわれる30代ですが,彼らのおかれた状態は一様ではありますまい。正規就業が何%,派遣・バイトのような不安定就業が何%,ニートが何%・・・といった統計数字は,学歴によってかなり異なるものと思われます。このほど公表された,2010年の『国勢調査』の産業等基本集計のデータを使って,この点を明らかにしてみます。
まずは,30代男性の学歴構成はどうかという,基本的な情報から確かめてみましょう。2010年の『国勢調査』によると,30代男性は約917万人ですが,学歴別の内訳を整理すると下表のようになります。統計の出所は,下記サイトの表10-2です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038689&cycode=0
非学卒者や状態不詳という者が若干いますが,ひとまず,学卒者の部分に注目しましょう。30代の男性の最終学歴で最も多いのは高卒です。全体の35.6%を占めています。次に多いのは大卒で,全体の29.9%に相当します。義務教育を終えて直ちに社会に出た者(中卒)は5.5%しかいません。
大卒が最も多いだろうと思っていましたが,私の世代ではまだ,高卒がマジョリティーのようです。20代でみたら,大卒が最も多いことでしょう。周知の通り,大学進学率は50%を超えていますし。
それはさておき,最終学歴が判明している763万人について,調査時点の生活状態を学歴別に明らかにしてみましょう。生活状態をみる観点はいろいろありますが,30代の男性といったらバリバリの働き盛りです。ここでは,就労状態という視点を据えてみることとします。
下表は,上記サイトの表11と表12のデータをもとに作成したものです。就業者の就業形態の内訳は,表12にて調べました。
いかがでしょう。まず正規雇用という形で就業している者の比率は,学歴が上がるほど高くなります。大卒以上の30代男性では,82.6%が正規雇用者です。一方,高卒ではこの比率は7割を切り,中卒になると半分もいません。
その分,低学歴層では,派遣やバイトのような不安定就労者の比重が相対的に高くなっています。派遣+バイトの比率は,中卒が12.9%,高卒が9.0%,短大・高専卒が7.2%,大卒が5.1%,です。若者の非正規雇用化が問題になっていますが,その程度は学歴によって違うようです。女性でみたら,非正規雇用者率はもっと高いことでしょう。中卒や高卒の女性では,派遣・バイト率が半分を超えるのではないかしらん。
なお,非就業者の比率も学歴によって相当異なっています。非就業者とは,就労意欲はあるが職に就けていない失業者と,就労意欲がない非労働力人口からなります。30代男性の場合,後者のほとんどはニートでしょう。
両者を合算した失業・ニート率は,大卒では4.8%ですが,高卒では10.2%と1割を超えます。中卒では22.3%です。5人に1人が,失業ないしはニートの状態であることが知られます。
30代男性の生活状態が,学歴によってかなり異なることを明らかにしました。まあ,言わずとも知られたことですが,実証的な数量データをあまり目にしないので,それを出してみた次第です。機会をみつけて,女性のデータも計算してみようと思います。女性の場合,男性にもまして学歴差が大きいのではないかなあ。
ロスジェネといわれる30代ですが,彼らのおかれた状態は一様ではありますまい。正規就業が何%,派遣・バイトのような不安定就業が何%,ニートが何%・・・といった統計数字は,学歴によってかなり異なるものと思われます。このほど公表された,2010年の『国勢調査』の産業等基本集計のデータを使って,この点を明らかにしてみます。
まずは,30代男性の学歴構成はどうかという,基本的な情報から確かめてみましょう。2010年の『国勢調査』によると,30代男性は約917万人ですが,学歴別の内訳を整理すると下表のようになります。統計の出所は,下記サイトの表10-2です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038689&cycode=0
非学卒者や状態不詳という者が若干いますが,ひとまず,学卒者の部分に注目しましょう。30代の男性の最終学歴で最も多いのは高卒です。全体の35.6%を占めています。次に多いのは大卒で,全体の29.9%に相当します。義務教育を終えて直ちに社会に出た者(中卒)は5.5%しかいません。
大卒が最も多いだろうと思っていましたが,私の世代ではまだ,高卒がマジョリティーのようです。20代でみたら,大卒が最も多いことでしょう。周知の通り,大学進学率は50%を超えていますし。
それはさておき,最終学歴が判明している763万人について,調査時点の生活状態を学歴別に明らかにしてみましょう。生活状態をみる観点はいろいろありますが,30代の男性といったらバリバリの働き盛りです。ここでは,就労状態という視点を据えてみることとします。
下表は,上記サイトの表11と表12のデータをもとに作成したものです。就業者の就業形態の内訳は,表12にて調べました。
いかがでしょう。まず正規雇用という形で就業している者の比率は,学歴が上がるほど高くなります。大卒以上の30代男性では,82.6%が正規雇用者です。一方,高卒ではこの比率は7割を切り,中卒になると半分もいません。
その分,低学歴層では,派遣やバイトのような不安定就労者の比重が相対的に高くなっています。派遣+バイトの比率は,中卒が12.9%,高卒が9.0%,短大・高専卒が7.2%,大卒が5.1%,です。若者の非正規雇用化が問題になっていますが,その程度は学歴によって違うようです。女性でみたら,非正規雇用者率はもっと高いことでしょう。中卒や高卒の女性では,派遣・バイト率が半分を超えるのではないかしらん。
なお,非就業者の比率も学歴によって相当異なっています。非就業者とは,就労意欲はあるが職に就けていない失業者と,就労意欲がない非労働力人口からなります。30代男性の場合,後者のほとんどはニートでしょう。
両者を合算した失業・ニート率は,大卒では4.8%ですが,高卒では10.2%と1割を超えます。中卒では22.3%です。5人に1人が,失業ないしはニートの状態であることが知られます。
30代男性の生活状態が,学歴によってかなり異なることを明らかにしました。まあ,言わずとも知られたことですが,実証的な数量データをあまり目にしないので,それを出してみた次第です。機会をみつけて,女性のデータも計算してみようと思います。女性の場合,男性にもまして学歴差が大きいのではないかなあ。
2012年4月28日土曜日
鹿児島県の小学校教員の離職率(性別・年齢層別)
前々回の記事では,2009年度間の小学校教員の離職率を都道府県別に明らかにしました。その結果,離職率は,最高の38.1‰(鹿児島)から最低の3.3‰(沖縄)まで,大きな開きがあることが分かりました。
離職率が最も高い鹿児島は,私の郷里です。この県で何が起きているのか気になります。県教委の関係者に取材をするのも一つの手ですが,マクロな統計から引き出せる知見はもっとあります。もう少し詰めてみましょう。
私は,鹿児島県の小学校教員の離職率を属性別に出してみました。離職率が高いのは男性か女性か,若年層か高齢層か・・・。医学にたとえると,病巣を突き止める作業です。社会病理学の立場から,鹿児島県の教員「社会」の病状を診断してみようと思います。*言葉が悪くてすみません。
前々回のおさらいですが,ここでいう離職率という指標について説明しておきます。分子の離職者数は,2009年度間の数値で,出所は文科省『学校教員統計調査』(2010年版)です。この資料では,理由別の離職者数が計上されています。設けられている理由カテゴリーは,①定年,②病気,③死亡,④転職,⑤大学等入学,⑥家庭の事情,⑦職務上の問題,⑧その他,です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
私が分子に充てたのは,これらのうち②,⑥,⑦,⑧の理由による離職者数です。これらの合算値は,各種の危機や困難(不適応)によって教壇を去った教員の量の近似値と考えられます。この数を,2009年5月1日時点の本務教員数で除して,千人あたりの離職率を計算しました。分母の本務教員数の出所は,2009年版の文科省『学校基本調査』です。
なお,年齢層別の離職率を出す際に分母として使った本務教員数は,2010年の『学校教員統計調査』に掲載されている,2010年10月1日時点のものです。年齢層別の教員数は,『学校教員統計調査』の実施年のものしか分かりませんので,このような措置を取ったことをお許しください。
では,性別・年齢層別の離職率の計算結果をお見せします。鹿児島県の特徴を検出するため,全国統計との比較も行います。下表をご覧ください。
性別でみると,鹿児島の場合,男女の差が大きくなっています。男性は17.4‰,女性は56.3‰です。56.3‰を百分比にすると5.6%ですから,当県では,女性教員の18人に1人が,定年や転職といったメジャーな理由とは別の理由で職を辞したことになります。
それ故,全国水準との差は女性で大きくなっています。鹿児島の女性教員の離職率は,全国のそれの4倍以上です。
次に,年齢層別の離職率をみてみましょう。どの年齢層も,鹿児島の離職率は全国を上回っているのですが,とりわけ20代の離職率が格段に高くなっています。169.1‰ということは16.9%,すなわち6人に1人が,定年や転職とは異なる理由で教壇を去ったことになります。本当かと思い,何度も原資料を見直しましたが,分子の離職者数は137人となります。年次がズレますが,分母の本務教員数は810人です。よって離職率は,137/810≒169.1‰(16.9%)となる次第です。
2009年度に限って,何か突発的な事情でもあったのでしょうか。この年度において,当県で大量の懲戒・分限免職者が出たという記録はありません。(文科省の「平成21年度・教育職員に係る懲戒処分の状況について」)。私立小学校における大量リストラでしょうか。しかるに,2009年から2010年にかけて,当県の私立小学校の教員数に大きな変化はありません。そもそも,鹿児島では私立小学校はごくわずかです(3校)。
最近では,教員を民間企業や福祉施設などに派遣する,「長期社会体験研修」を実施している自治体もあるようですが,それでしょうか。長期にわたる研修のため,いったん籍を外して(辞めさせて)派遣する??。これも考えにくいですねえ。
あと一つ考えられるのは,産休代替講師などの講師の離職です。文科省の統計では,正規の教員と同じ勤務をする常勤講師は,本務教員としてカウントされています。ですが,鹿児島県において,2009年度間に離職した20代の講師は皆無です。
考えられ得る可能性を潰してきましたが,20代の教員の6人に1人が辞める状況って一体・・・。
鹿児島の小学校教員の離職率を高らしめている層は,女性,若年層であることが分かりました。既存統計で詰めることができるのはここまでです。この結果を携えて,県教委の関係者の方に取材を申し込んでみようかと。おそらく歓迎はされないでしょうが・・・。
離職率が最も高い鹿児島は,私の郷里です。この県で何が起きているのか気になります。県教委の関係者に取材をするのも一つの手ですが,マクロな統計から引き出せる知見はもっとあります。もう少し詰めてみましょう。
私は,鹿児島県の小学校教員の離職率を属性別に出してみました。離職率が高いのは男性か女性か,若年層か高齢層か・・・。医学にたとえると,病巣を突き止める作業です。社会病理学の立場から,鹿児島県の教員「社会」の病状を診断してみようと思います。*言葉が悪くてすみません。
前々回のおさらいですが,ここでいう離職率という指標について説明しておきます。分子の離職者数は,2009年度間の数値で,出所は文科省『学校教員統計調査』(2010年版)です。この資料では,理由別の離職者数が計上されています。設けられている理由カテゴリーは,①定年,②病気,③死亡,④転職,⑤大学等入学,⑥家庭の事情,⑦職務上の問題,⑧その他,です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
私が分子に充てたのは,これらのうち②,⑥,⑦,⑧の理由による離職者数です。これらの合算値は,各種の危機や困難(不適応)によって教壇を去った教員の量の近似値と考えられます。この数を,2009年5月1日時点の本務教員数で除して,千人あたりの離職率を計算しました。分母の本務教員数の出所は,2009年版の文科省『学校基本調査』です。
なお,年齢層別の離職率を出す際に分母として使った本務教員数は,2010年の『学校教員統計調査』に掲載されている,2010年10月1日時点のものです。年齢層別の教員数は,『学校教員統計調査』の実施年のものしか分かりませんので,このような措置を取ったことをお許しください。
では,性別・年齢層別の離職率の計算結果をお見せします。鹿児島県の特徴を検出するため,全国統計との比較も行います。下表をご覧ください。
性別でみると,鹿児島の場合,男女の差が大きくなっています。男性は17.4‰,女性は56.3‰です。56.3‰を百分比にすると5.6%ですから,当県では,女性教員の18人に1人が,定年や転職といったメジャーな理由とは別の理由で職を辞したことになります。
それ故,全国水準との差は女性で大きくなっています。鹿児島の女性教員の離職率は,全国のそれの4倍以上です。
次に,年齢層別の離職率をみてみましょう。どの年齢層も,鹿児島の離職率は全国を上回っているのですが,とりわけ20代の離職率が格段に高くなっています。169.1‰ということは16.9%,すなわち6人に1人が,定年や転職とは異なる理由で教壇を去ったことになります。本当かと思い,何度も原資料を見直しましたが,分子の離職者数は137人となります。年次がズレますが,分母の本務教員数は810人です。よって離職率は,137/810≒169.1‰(16.9%)となる次第です。
2009年度に限って,何か突発的な事情でもあったのでしょうか。この年度において,当県で大量の懲戒・分限免職者が出たという記録はありません。(文科省の「平成21年度・教育職員に係る懲戒処分の状況について」)。私立小学校における大量リストラでしょうか。しかるに,2009年から2010年にかけて,当県の私立小学校の教員数に大きな変化はありません。そもそも,鹿児島では私立小学校はごくわずかです(3校)。
最近では,教員を民間企業や福祉施設などに派遣する,「長期社会体験研修」を実施している自治体もあるようですが,それでしょうか。長期にわたる研修のため,いったん籍を外して(辞めさせて)派遣する??。これも考えにくいですねえ。
あと一つ考えられるのは,産休代替講師などの講師の離職です。文科省の統計では,正規の教員と同じ勤務をする常勤講師は,本務教員としてカウントされています。ですが,鹿児島県において,2009年度間に離職した20代の講師は皆無です。
考えられ得る可能性を潰してきましたが,20代の教員の6人に1人が辞める状況って一体・・・。
鹿児島の小学校教員の離職率を高らしめている層は,女性,若年層であることが分かりました。既存統計で詰めることができるのはここまでです。この結果を携えて,県教委の関係者の方に取材を申し込んでみようかと。おそらく歓迎はされないでしょうが・・・。
2012年4月27日金曜日
東京の学歴地図
話題変更。4月24日に,2010年の『国勢調査』の産業等基本集計の結果が全県分公表されました。本集計では,対象者の学歴や労働力状態などが明らかにされています。この部分のデータは,社会学の学術研究において使われる頻度が高いものです。
産業等基本集計の結果が公表され次第,やってみようと思っていたことがあります。東京都内の地域別に,住民に占める高学歴保有者の比率を明らかにすることです。そして,数値に基づいて各地域を塗り分けた「学歴地図」を作成することです。
大都市の東京は,社会階層による住民の棲み分けが比較的明確です。私はこれまで,東京都内の地域別の統計を使って,さまざまな教育事象の社会的規定性を探求してきました。*子どもの学力の社会的規定性を扱ったものとして,「地域の社会経済特性による子どもの学力の推計」『教育社会学研究』第82集,2008年。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006793455
東京のこうした地域性に注目し,今後も,この種の実証研究を行っていこうと思う次第です。そのための第一歩として,高学歴人口率のような文化指標の値が,都内の地域間でどれほど異なるかをみてみます。
『国勢調査』は5年おきに実施されますが,対象者の学歴が調査されるのは,10年に一度です。前回,学歴が調査されたのは2000年です。それから10年が経ちましたが,この期間中,いろいろなことがありました。リーマン・ショックという「100年に一度」と形容される大不況によって,人々の富の開きが拡大した,という面もあるでしょう。
大都市・東京の内部における,社会経済指標の地域格差はどういうものでしょうか。今回は,所得のような経済面とは異なる,文化的な側面に注視することになります。
2010年の『国勢調査』の産業等基本集計では,15歳以上の住民の最終学歴が明らかにされています。私は,大学・大学院卒の学歴を持つ者が,学校卒業人口全体に占める比率を計算しました。ベースには,在学者や未就学者を除いた,学校卒業人口を充てることとします。
日本全国でいうと,大学・大学院学歴保有者は1,772万人,学卒人口は1億245万人です。よって,高学歴人口率はおよそ17.3%と算出されます。東京の場合,この値は25.1%です。大都市ゆえか,値が高くなっています。東京では,15歳以上の学卒人口の4人に1人が大卒以上です。
それでは,東京都内の地域別にこの指標を出してみましょう。島嶼部を除く,53の市区町の数字を計算しました。計算に使った分子,分母の数字は,下記サイトの表10-2から得ました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038676&cycode=0
下図は,結果を地図の形で表現したものです。
おおよそ,中央部ほど色が濃く,周辺部に行くほど色が薄くなる構造になっています。東部の下町地域や西部の郡部は,高学歴人口率が低くなっています。白色は,20%に満たないことを意味します。
黒色は,高学歴人口率が3割を超える地域です。上位5位は,武蔵野市(38.1%),千代田区(36.7%),杉並区(36.2%),中央区(35.8%),小金井市(35.8%),です。武蔵野市では,15歳以上の学卒人口の4割近くが大卒者です。
地図の中央をみると,黒色のゾーンが左に伸びていますが,JR中央線の沿線地域に相当します。都心で勤務するホワイトカラー層のベッドタウンとなっている地域でしょう。上位5位に入っている,武蔵野市や小金井市もこの中に含まれます。
予想はしていましたが,大都市・東京の内部では,高学歴人口率にかなりの差があります。高率地域や低率地域が固まっていることも注目されます。中央部から周辺部にいくにしたがって色が薄くなる傾向は,シカゴ学派の同心円理論を想起させます。都内における「棲み分け」構造は健在です。
このような基底的な構造は,各地域の子どものすがたとも関連していることでしょう。2月1日の記事では,2011年3月の公立小学校卒業生のうち,国立・私立中学校に進学した者がどれほどいるかを地域別に計算しました。中学受験現象の量を測る指標ですが,この指標を,上記の高学歴人口率を関連づけてみましょう。
両者の間には,明瞭な正の相関関係があります。相関係数は0.7009であり,1%水準で有意です。高学歴人口率が高い地域ほど,中学受験をする子どもが多い傾向が明らかです。
中学受験は,将来の地位達成のための手段としての側面を持っていますが,この戦略を行使するかしないかは,地域環境にかなり規定されていることが知られます。
上図のデータが示唆しているのは,高学歴の親を持つ子どもほど中学受験をする頻度が高いという,個人的な行動傾向だけではありません。地域に高学歴者が多いことで醸成される,文化的な雰囲気(クライメイト)のようなものが重要であることをも物語っています。
今回明らかにした高学歴人口率は,子どもの学力指標や,肥満児出現率のような健康指標とも相関しているのではないでしょうか。大都市・東京の経験データを使って,子どもの発達の社会的規定性の諸相を解明する作業を手掛けていきたいと思っております。
産業等基本集計の結果が公表され次第,やってみようと思っていたことがあります。東京都内の地域別に,住民に占める高学歴保有者の比率を明らかにすることです。そして,数値に基づいて各地域を塗り分けた「学歴地図」を作成することです。
大都市の東京は,社会階層による住民の棲み分けが比較的明確です。私はこれまで,東京都内の地域別の統計を使って,さまざまな教育事象の社会的規定性を探求してきました。*子どもの学力の社会的規定性を扱ったものとして,「地域の社会経済特性による子どもの学力の推計」『教育社会学研究』第82集,2008年。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006793455
東京のこうした地域性に注目し,今後も,この種の実証研究を行っていこうと思う次第です。そのための第一歩として,高学歴人口率のような文化指標の値が,都内の地域間でどれほど異なるかをみてみます。
『国勢調査』は5年おきに実施されますが,対象者の学歴が調査されるのは,10年に一度です。前回,学歴が調査されたのは2000年です。それから10年が経ちましたが,この期間中,いろいろなことがありました。リーマン・ショックという「100年に一度」と形容される大不況によって,人々の富の開きが拡大した,という面もあるでしょう。
大都市・東京の内部における,社会経済指標の地域格差はどういうものでしょうか。今回は,所得のような経済面とは異なる,文化的な側面に注視することになります。
2010年の『国勢調査』の産業等基本集計では,15歳以上の住民の最終学歴が明らかにされています。私は,大学・大学院卒の学歴を持つ者が,学校卒業人口全体に占める比率を計算しました。ベースには,在学者や未就学者を除いた,学校卒業人口を充てることとします。
日本全国でいうと,大学・大学院学歴保有者は1,772万人,学卒人口は1億245万人です。よって,高学歴人口率はおよそ17.3%と算出されます。東京の場合,この値は25.1%です。大都市ゆえか,値が高くなっています。東京では,15歳以上の学卒人口の4人に1人が大卒以上です。
それでは,東京都内の地域別にこの指標を出してみましょう。島嶼部を除く,53の市区町の数字を計算しました。計算に使った分子,分母の数字は,下記サイトの表10-2から得ました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038676&cycode=0
下図は,結果を地図の形で表現したものです。
おおよそ,中央部ほど色が濃く,周辺部に行くほど色が薄くなる構造になっています。東部の下町地域や西部の郡部は,高学歴人口率が低くなっています。白色は,20%に満たないことを意味します。
黒色は,高学歴人口率が3割を超える地域です。上位5位は,武蔵野市(38.1%),千代田区(36.7%),杉並区(36.2%),中央区(35.8%),小金井市(35.8%),です。武蔵野市では,15歳以上の学卒人口の4割近くが大卒者です。
地図の中央をみると,黒色のゾーンが左に伸びていますが,JR中央線の沿線地域に相当します。都心で勤務するホワイトカラー層のベッドタウンとなっている地域でしょう。上位5位に入っている,武蔵野市や小金井市もこの中に含まれます。
予想はしていましたが,大都市・東京の内部では,高学歴人口率にかなりの差があります。高率地域や低率地域が固まっていることも注目されます。中央部から周辺部にいくにしたがって色が薄くなる傾向は,シカゴ学派の同心円理論を想起させます。都内における「棲み分け」構造は健在です。
このような基底的な構造は,各地域の子どものすがたとも関連していることでしょう。2月1日の記事では,2011年3月の公立小学校卒業生のうち,国立・私立中学校に進学した者がどれほどいるかを地域別に計算しました。中学受験現象の量を測る指標ですが,この指標を,上記の高学歴人口率を関連づけてみましょう。
両者の間には,明瞭な正の相関関係があります。相関係数は0.7009であり,1%水準で有意です。高学歴人口率が高い地域ほど,中学受験をする子どもが多い傾向が明らかです。
中学受験は,将来の地位達成のための手段としての側面を持っていますが,この戦略を行使するかしないかは,地域環境にかなり規定されていることが知られます。
上図のデータが示唆しているのは,高学歴の親を持つ子どもほど中学受験をする頻度が高いという,個人的な行動傾向だけではありません。地域に高学歴者が多いことで醸成される,文化的な雰囲気(クライメイト)のようなものが重要であることをも物語っています。
今回明らかにした高学歴人口率は,子どもの学力指標や,肥満児出現率のような健康指標とも相関しているのではないでしょうか。大都市・東京の経験データを使って,子どもの発達の社会的規定性の諸相を解明する作業を手掛けていきたいと思っております。
2012年4月26日木曜日
都道府県別の小学校教員の離職率(2009年度)
昨年の7月28日の記事では,教員の離職率を県別に明らかにしたのですが,この記事を見てくださる方が多いようです。本記事の離職率は2006年度間のものですが,もっと新しいデータはないか,という要望もあるかと存じます。
お待たせしました。先月の末に公表された,2010年の文科省『学校教員統計調査』のデータを使って,2009年度の県別離職率を出してみました。同調査の教員異動調査では,調査年の前年度間に離職した教員の数が計上されています。最新の2010年調査では,2009年度間に離職した教員の数が明らかにされているわけです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
ここでの関心は,各種の危機や困難によって教壇を去った教員の量を測ることです。よって,定年や大学等入学による離職は除きます。また,死亡という理由も,偶発的な要素が濃いので除外します。あと一つ,転職による離職ですが,文科省に問い合わせたところ,現場から指導主事として教育委員会に出向くようなケースも転職とみなされるそうなので,この理由の離職者数も計算に含めないこととします。
残りの離職理由は,①「病気」,②「家庭の事情」,③「職務上の問題」,および④「その他」というものです。私は,これらの理由による離職者数が,教員全体に占める比率を計算しました。「家庭の事情」を含めることに違和感を持たれる方がいるかと思いますが,この理由カテゴリーは曖昧な要素を持っています。不適応で辞める場合であっても,形式上,このような理由が表明されることが結構あると聞きます。
なお,2006年度までの離職統計では,上記の②~④は「その他」として一括されていました。過去の離職率との比較も行う関係上,②と③も分子に含めることとした次第です。
あと一点,申しておくべきことがあります。教員といってもいくつかの学校種がありますが,今回は,小学校教員の県別離職率を計算します。このことの理由についてです。
県別の理由別の離職者数は,国公私をひっくるめた全体のものしか得られません。中高では私立校のシェアが大きくなりますが,私立校の場合,経営不振に伴うリストラによる離職者が,④の「その他」のカテゴリーに多く含まれると思われます。このような弊を最小限に抑えるため,ほとんどが公立校である小学校段階の離職率を計算することとしました。
前置きが長くなりました。では,作業に入りましょう。下表のbは,2009年度間の離職者数です。aは,同年5月1日時点の本務教員数です。bの総和をaで除すことで,諸々の危機による,小学校教員の離職率を算出することができます。単位は‰です。千人あたり何人か,という意味です。
全国値は11.5‰,つまり100人に1人ほどですが,県別にみると,かなりの差異が見受けられます。最も高いのは鹿児島です。私の郷里です・・・。当県の離職率は38.1‰(≒3.8%),およそ26人に1人が,何らかの危機や不適応によって職を辞したと推測されます。
ほか,離職率が高い県はどこでしょう。20‰(2%)以上の数値は赤色にしましたが,千葉,京都,鳥取,および徳島がこの水準を超えています。
小学校教員の離職率が最も低いのは沖縄です。たったの3.3‰です。2月19日の記事でみたところによると,精神疾患による休職率はこの県が最高なのですが,離職率は真逆になっています。民間に比した教員の給与水準が高い沖縄では,教員の職を手放すのが惜しく,休職という形で職に留まる者が多い,ということでしょうか。
離職率が最も高い鹿児島ですが,分子の4つの理由による離職者数は295人です。このうち,20代が137人と,46.4%をも占めています。当県では,危機や不適応によると推測される離職者のほぼ半分が20代の若年教員です。全国の同じ値(28.4%)を大きく上回っています。
鹿児島では,若年教員の離職率の高さが,全体の離職率の高さとなって表れているものと思われます。年齢層別の離職率を県別に出すのも面白い作業ですが,それは回を改めることとしましょう。
次にみてみたいのは,2006年度から2009年度にかけて,各県の小学校教員の離職率がどう変わったかです。3月30日の記事では,この期間中にかけて,公立小学校教員の離職率が大幅に伸びていることを知りました。東京都がモンスター・ペアレントに関する実態調査の結果を公表したのは2008年9月ですが,現場の困難度がいっそう高まった時期と解されます。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr080918j.htm#bessi
はて,この3年間にかけて,各県の小学校教員の離職率はどう動いたのでしょう。2006年度と2009年度の離職率を比較してみます。県別の一覧を掲げるだけというのは芸がないので,結果を視覚的に表現してみましょう。
横軸に2006年度,縦軸に2009年度の離職率をとった座標上に,47の都道府県を位置づけてみました。Y=Xは均等線です。この線よりも上に位置する場合,この期間中に離職率が高まったことを意味します。下にある場合は,その逆です。Y=2Xよりも上にある場合,この3年間で離職率が2倍以上になったことを示唆します。
この期間中,離職率が下がったのは8県です。減少幅が最も大きいのは山梨で,16.2‰から6.9‰へと9.3ポイントも減じています。次に減少幅が大きいのは石川で,4.8ポイントの減です。
これらは事態が好転している県ですが,悲しいかな,残りの大半の県はその逆です。とくに,図中のY=2Xよりも上方に位置する11の県が気がかりです。これらの県では,わずか3年間で離職率が倍増しています。県名が気になる方もいると思うので,掲げておきましょう。宮城,秋田,山形,福島,茨城,福井,滋賀,京都,島根,長崎,鹿児島,です。
図の位置からお分かりかと思いますが,増加倍率が最高なのは鹿児島です。8.6‰から38.1‰と,4.4倍になっています。故郷だからでもありますが,この県で何が起きているのか気になるなあ。
回を改めて,当県の性別・年齢層別の離職率を出し,どの層において,全国水準との開きが大きいのかを探ってみることにします。言葉がよくないですが,病巣を突き止める作業です。社会病理学徒の端くれである私に課せられる仕事というのは,こういうことなのかもしれません。
お待たせしました。先月の末に公表された,2010年の文科省『学校教員統計調査』のデータを使って,2009年度の県別離職率を出してみました。同調査の教員異動調査では,調査年の前年度間に離職した教員の数が計上されています。最新の2010年調査では,2009年度間に離職した教員の数が明らかにされているわけです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
ここでの関心は,各種の危機や困難によって教壇を去った教員の量を測ることです。よって,定年や大学等入学による離職は除きます。また,死亡という理由も,偶発的な要素が濃いので除外します。あと一つ,転職による離職ですが,文科省に問い合わせたところ,現場から指導主事として教育委員会に出向くようなケースも転職とみなされるそうなので,この理由の離職者数も計算に含めないこととします。
残りの離職理由は,①「病気」,②「家庭の事情」,③「職務上の問題」,および④「その他」というものです。私は,これらの理由による離職者数が,教員全体に占める比率を計算しました。「家庭の事情」を含めることに違和感を持たれる方がいるかと思いますが,この理由カテゴリーは曖昧な要素を持っています。不適応で辞める場合であっても,形式上,このような理由が表明されることが結構あると聞きます。
なお,2006年度までの離職統計では,上記の②~④は「その他」として一括されていました。過去の離職率との比較も行う関係上,②と③も分子に含めることとした次第です。
あと一点,申しておくべきことがあります。教員といってもいくつかの学校種がありますが,今回は,小学校教員の県別離職率を計算します。このことの理由についてです。
県別の理由別の離職者数は,国公私をひっくるめた全体のものしか得られません。中高では私立校のシェアが大きくなりますが,私立校の場合,経営不振に伴うリストラによる離職者が,④の「その他」のカテゴリーに多く含まれると思われます。このような弊を最小限に抑えるため,ほとんどが公立校である小学校段階の離職率を計算することとしました。
前置きが長くなりました。では,作業に入りましょう。下表のbは,2009年度間の離職者数です。aは,同年5月1日時点の本務教員数です。bの総和をaで除すことで,諸々の危機による,小学校教員の離職率を算出することができます。単位は‰です。千人あたり何人か,という意味です。
全国値は11.5‰,つまり100人に1人ほどですが,県別にみると,かなりの差異が見受けられます。最も高いのは鹿児島です。私の郷里です・・・。当県の離職率は38.1‰(≒3.8%),およそ26人に1人が,何らかの危機や不適応によって職を辞したと推測されます。
ほか,離職率が高い県はどこでしょう。20‰(2%)以上の数値は赤色にしましたが,千葉,京都,鳥取,および徳島がこの水準を超えています。
小学校教員の離職率が最も低いのは沖縄です。たったの3.3‰です。2月19日の記事でみたところによると,精神疾患による休職率はこの県が最高なのですが,離職率は真逆になっています。民間に比した教員の給与水準が高い沖縄では,教員の職を手放すのが惜しく,休職という形で職に留まる者が多い,ということでしょうか。
離職率が最も高い鹿児島ですが,分子の4つの理由による離職者数は295人です。このうち,20代が137人と,46.4%をも占めています。当県では,危機や不適応によると推測される離職者のほぼ半分が20代の若年教員です。全国の同じ値(28.4%)を大きく上回っています。
鹿児島では,若年教員の離職率の高さが,全体の離職率の高さとなって表れているものと思われます。年齢層別の離職率を県別に出すのも面白い作業ですが,それは回を改めることとしましょう。
次にみてみたいのは,2006年度から2009年度にかけて,各県の小学校教員の離職率がどう変わったかです。3月30日の記事では,この期間中にかけて,公立小学校教員の離職率が大幅に伸びていることを知りました。東京都がモンスター・ペアレントに関する実態調査の結果を公表したのは2008年9月ですが,現場の困難度がいっそう高まった時期と解されます。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr080918j.htm#bessi
はて,この3年間にかけて,各県の小学校教員の離職率はどう動いたのでしょう。2006年度と2009年度の離職率を比較してみます。県別の一覧を掲げるだけというのは芸がないので,結果を視覚的に表現してみましょう。
横軸に2006年度,縦軸に2009年度の離職率をとった座標上に,47の都道府県を位置づけてみました。Y=Xは均等線です。この線よりも上に位置する場合,この期間中に離職率が高まったことを意味します。下にある場合は,その逆です。Y=2Xよりも上にある場合,この3年間で離職率が2倍以上になったことを示唆します。
この期間中,離職率が下がったのは8県です。減少幅が最も大きいのは山梨で,16.2‰から6.9‰へと9.3ポイントも減じています。次に減少幅が大きいのは石川で,4.8ポイントの減です。
これらは事態が好転している県ですが,悲しいかな,残りの大半の県はその逆です。とくに,図中のY=2Xよりも上方に位置する11の県が気がかりです。これらの県では,わずか3年間で離職率が倍増しています。県名が気になる方もいると思うので,掲げておきましょう。宮城,秋田,山形,福島,茨城,福井,滋賀,京都,島根,長崎,鹿児島,です。
図の位置からお分かりかと思いますが,増加倍率が最高なのは鹿児島です。8.6‰から38.1‰と,4.4倍になっています。故郷だからでもありますが,この県で何が起きているのか気になるなあ。
回を改めて,当県の性別・年齢層別の離職率を出し,どの層において,全国水準との開きが大きいのかを探ってみることにします。言葉がよくないですが,病巣を突き止める作業です。社会病理学徒の端くれである私に課せられる仕事というのは,こういうことなのかもしれません。
2012年4月23日月曜日
新規採用教諭の採用前の状況
4月3日の記事で明らかにしたところによると,最近では,公立学校の新規採用教諭の3割ほどが30歳以上です。教員採用試験が難関化してきているためでしょうが,民間経験者のような多様な人材が歓迎される傾向が強まっていることも寄与していると思われます。
新規採用教員のうち,新卒が何%,社会人経験者が何%というような情報はないでしょうか。文科省の『学校教員統計調査』の教員異動調査から,新規採用教員の職名別に,採用前の状況がどうであったかを知ることができます。今回は,この統計を分析してみましょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
2010年の同調査によると,前年度(2009年度)間に採用された公立小学校の教諭は12,527人です。ヒラの教諭ですから,当該年度の教員採用試験の合格者と考えてよいでしょう。この12,527人の採用前の状況を整理しました。近年の特徴を見出すため,1997年度のデータとの比較もしてみます。
この期間にかけて,採用教諭の数は5,520人から12,527人に増えています。団塊世代教員の大量退職のためです。
採用前の状況をみると,1997年度では新卒が49.1%で最も多かったのですが,2009年度では非常勤,塾講師等が最多です。臨時講師などをしながら試験に数回トライした浪人組であると思われます。このカテゴリーの比重は,39.3%から47.7%へと増加しています。近年の採用試験の難関化を示唆しています。
さて,注目される社会人経験者の比重はというと,2009年度の採用教諭では,官公庁勤務が3.3%,民間企業勤務が2.4%,自営業が0.2%,です。合算すると5.9%です。1997年度の11.4%よりも減じています。
現場に多様な人材を,ということで,「教職経験者や社会人(民間企業等での勤務経験を有する者)経験者など,特定の資格や経歴等を持つ者を対象とした特別選考」を実施している自治体が多いようですが,フタを開けてみると,採用者中の社会人経験者率は意外と少ないのですね。近年の減少傾向も予想外でした。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1300238.htm
次に,公立中学校と公立高校の統計もみてみましょう。結果を帯グラフで表しました。煩雑になるので,上表の②~④は「社会人」として一括しています。
中高も小学校と同じ傾向が観察されます。新卒の減少,浪人組の増加です。社会人経験者の比率は,2009年度でみると,小学校が5.8%,中学校が8.2%,高校が12.2%です。上級学校ほど,率が高くなっています。しかるに,1997年度に比して率が減少傾向にあるのは全校種共通です。
4月3日の記事でみた,新規採用教諭の高齢化傾向は,採用試験の難関化に伴う浪人組の増加による部分が大きいようです。社会人経験者の増加によるものではありません。
まあ,上図の緑色のカテゴリー(非常勤,塾講師等)には,多様な人種が含まれているのですから,教員集団の成員の多様化が進んでいる,という見方もできます。でも,もう少し赤色の領分が増えてもいいのではないか,という気がします。
社会人枠何%,障害者枠何%,というようなテコ入れも必要になってくるのかなあ。ついでに,博士号取得者枠というのも・・・。これは,水月昭道さんが提案されているようですが。ちなみに,2009年度の公立中学校の採用教諭に,前職がポスドクという者が1人含まれています。女性です。お会いして,採用に至るまでの経緯がどういうものであったかをうかがいたいものです。
回を改めて,大学の新規採用教員の前職(採用前の状況)についても明らかにしてみようと思います。こちらは,大学外の社会人経験者の比率が高まっていることと思います。
新規採用教員のうち,新卒が何%,社会人経験者が何%というような情報はないでしょうか。文科省の『学校教員統計調査』の教員異動調査から,新規採用教員の職名別に,採用前の状況がどうであったかを知ることができます。今回は,この統計を分析してみましょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
2010年の同調査によると,前年度(2009年度)間に採用された公立小学校の教諭は12,527人です。ヒラの教諭ですから,当該年度の教員採用試験の合格者と考えてよいでしょう。この12,527人の採用前の状況を整理しました。近年の特徴を見出すため,1997年度のデータとの比較もしてみます。
この期間にかけて,採用教諭の数は5,520人から12,527人に増えています。団塊世代教員の大量退職のためです。
採用前の状況をみると,1997年度では新卒が49.1%で最も多かったのですが,2009年度では非常勤,塾講師等が最多です。臨時講師などをしながら試験に数回トライした浪人組であると思われます。このカテゴリーの比重は,39.3%から47.7%へと増加しています。近年の採用試験の難関化を示唆しています。
さて,注目される社会人経験者の比重はというと,2009年度の採用教諭では,官公庁勤務が3.3%,民間企業勤務が2.4%,自営業が0.2%,です。合算すると5.9%です。1997年度の11.4%よりも減じています。
現場に多様な人材を,ということで,「教職経験者や社会人(民間企業等での勤務経験を有する者)経験者など,特定の資格や経歴等を持つ者を対象とした特別選考」を実施している自治体が多いようですが,フタを開けてみると,採用者中の社会人経験者率は意外と少ないのですね。近年の減少傾向も予想外でした。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1300238.htm
次に,公立中学校と公立高校の統計もみてみましょう。結果を帯グラフで表しました。煩雑になるので,上表の②~④は「社会人」として一括しています。
中高も小学校と同じ傾向が観察されます。新卒の減少,浪人組の増加です。社会人経験者の比率は,2009年度でみると,小学校が5.8%,中学校が8.2%,高校が12.2%です。上級学校ほど,率が高くなっています。しかるに,1997年度に比して率が減少傾向にあるのは全校種共通です。
4月3日の記事でみた,新規採用教諭の高齢化傾向は,採用試験の難関化に伴う浪人組の増加による部分が大きいようです。社会人経験者の増加によるものではありません。
まあ,上図の緑色のカテゴリー(非常勤,塾講師等)には,多様な人種が含まれているのですから,教員集団の成員の多様化が進んでいる,という見方もできます。でも,もう少し赤色の領分が増えてもいいのではないか,という気がします。
社会人枠何%,障害者枠何%,というようなテコ入れも必要になってくるのかなあ。ついでに,博士号取得者枠というのも・・・。これは,水月昭道さんが提案されているようですが。ちなみに,2009年度の公立中学校の採用教諭に,前職がポスドクという者が1人含まれています。女性です。お会いして,採用に至るまでの経緯がどういうものであったかをうかがいたいものです。
回を改めて,大学の新規採用教員の前職(採用前の状況)についても明らかにしてみようと思います。こちらは,大学外の社会人経験者の比率が高まっていることと思います。
2012年4月22日日曜日
明治時代の狂師
いつの時代にも問題教師はいるものですが,明治時代の教育社会には,以下のようなタイプの「狂師」がいたようです。1890年(明治23年)1月26日の読売新聞によります。学海指針社の雑誌『教育』第31号からの転載だそうです。
①重箱狂師・・・生徒の重箱や持参品(贈物)の多寡によって教授を差別する。賄賂を要求。
②幇間(たいこもち)狂師・・・宴会などで来客の機嫌をとる。
③官員狂師・・・威張り散らし,官吏を気取る。官吏の子分になろうという思想を養成する。
④放蕩(ほうとう)狂師・・・自由気まま,好き勝手。
⑤高利貸狂師・・・金儲けに目がない。自分だけ富めばよい。義理人情など河童の屁。
⑥奴隷狂師・・・官吏や町村吏の言いなり。柔弱卑怯の性質を育成する。
⑦貧乏狂師・・・貯蓄は**(災い?解読不能)のもと。宜しく赤貧に安ずべし。貧乏の先導者。最も多い。
⑧虚言狂師・・・生徒との約束を守らない。
⑨横着狂師・・・校務の整理票簿の整頓をしない,捨てる。窓が壊れ,障子が破けていても気にとめない。
⑩不潔狂師・・・醤油のついたシャツ,フケだらけの髪 etc…不潔を厭わない者の見本。
いかがでしょう。②と⑥は,官吏などの有力者に頭が上がらなかった,教員の弱い立場を反映しています。当時は,地域の有力者の恣意によって教員の任免がなされていました。
⑦と⑩は,当時の教員の待遇の悪さに由来しているように思います。1890年といえば,1886年の諸学校令によって近代学校体系が打ち立てられてから間もない頃です。小学校への就学児童の急増に教員の供給が追いつかず,正規の資格を持たない准教員や代用教員も少なくありませんでした。給与が低い彼らは,貧乏狂師や不潔狂師として世間の目に映じたことでしょう。
私などは,④と⑦と⑨に該当しそうだなあ。いや,もしかしたら⑩にも当てはまるかも。いろいろな見方があるでしょうが,現代の教師の姿に通じるところもあるかと存じます。
教職危機の歴史研究,資料を収集中。半マジ,半道楽です。今,『日本之小学教師』という雑誌(1899年;明治32年創刊)の目次集成にあたっているのですが,面白そうな記事がわんさとあります。たくさんあるので,記事タイトルと掲載号をノートに記録するのも疲れます。
近く,国会図書館に行って,目ぼしい記事のコピーを取ってくる予定です。武蔵野大学の有明キャンパスに出講する曜日にしようかな。そしたら交通費も浮くし。
①重箱狂師・・・生徒の重箱や持参品(贈物)の多寡によって教授を差別する。賄賂を要求。
②幇間(たいこもち)狂師・・・宴会などで来客の機嫌をとる。
③官員狂師・・・威張り散らし,官吏を気取る。官吏の子分になろうという思想を養成する。
④放蕩(ほうとう)狂師・・・自由気まま,好き勝手。
⑤高利貸狂師・・・金儲けに目がない。自分だけ富めばよい。義理人情など河童の屁。
⑥奴隷狂師・・・官吏や町村吏の言いなり。柔弱卑怯の性質を育成する。
⑦貧乏狂師・・・貯蓄は**(災い?解読不能)のもと。宜しく赤貧に安ずべし。貧乏の先導者。最も多い。
⑧虚言狂師・・・生徒との約束を守らない。
⑨横着狂師・・・校務の整理票簿の整頓をしない,捨てる。窓が壊れ,障子が破けていても気にとめない。
⑩不潔狂師・・・醤油のついたシャツ,フケだらけの髪 etc…不潔を厭わない者の見本。
いかがでしょう。②と⑥は,官吏などの有力者に頭が上がらなかった,教員の弱い立場を反映しています。当時は,地域の有力者の恣意によって教員の任免がなされていました。
⑦と⑩は,当時の教員の待遇の悪さに由来しているように思います。1890年といえば,1886年の諸学校令によって近代学校体系が打ち立てられてから間もない頃です。小学校への就学児童の急増に教員の供給が追いつかず,正規の資格を持たない准教員や代用教員も少なくありませんでした。給与が低い彼らは,貧乏狂師や不潔狂師として世間の目に映じたことでしょう。
私などは,④と⑦と⑨に該当しそうだなあ。いや,もしかしたら⑩にも当てはまるかも。いろいろな見方があるでしょうが,現代の教師の姿に通じるところもあるかと存じます。
教職危機の歴史研究,資料を収集中。半マジ,半道楽です。今,『日本之小学教師』という雑誌(1899年;明治32年創刊)の目次集成にあたっているのですが,面白そうな記事がわんさとあります。たくさんあるので,記事タイトルと掲載号をノートに記録するのも疲れます。
近く,国会図書館に行って,目ぼしい記事のコピーを取ってくる予定です。武蔵野大学の有明キャンパスに出講する曜日にしようかな。そしたら交通費も浮くし。
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