2013年2月28日木曜日

2013年2月の教員不祥事報道

 ツイッター上にて,教員の不祥事報道を収集しています。私が把握し得た今月の報道数は85件でした。先月(40件)の倍以上です。大阪の事件を受けて,ちょっとした体罰もガンガン摘発されるようになっているためです。

 しかるに,窃盗,痴漢,盗撮,テスト問題漏洩,無断バイト,さらにはナンパ指南本作成など,教員のしでかすワルにはバラエティがあります。

 記事名,日付,媒体名に加えて,お咎めを受けた教員の基本的な属性を記録しました。件の詳細を知りたい方は,記事名をヤフーにでもコピペして検索すれば引っかかると思います。

 先月分と合わせて早くも125のサンプル?が集まりました。今後もこの作業を継続し,教員非行のデータベースを作り上げたいと思っております。

<2013年2月の教員不祥事報道>
・汎愛高柔道部顧問が女子生徒に平手打ち(2/1,産経,大阪,高,男,50代)
・野球部監督暴行か 県東部の県立高校(2/1,北日本,富山,高,男)
・小3年の失敗に「下手くそ、ばかたれ」教諭暴言(2/2,読売,栃木,小,男,46)
・中学バレー監督、部員4人の頬を平手でたたく (2/2,読売,栃木,中,男,47)
・「ばかたれ」暴言の小学教諭、児童2人に体罰も(2/2,読売,栃木,小,男,46)
・中学教諭、男子生徒16人の頬を平手打ち(2/2,読売,神奈川,中,男,50代)
・「あいさつできないのか」教諭、他校部員に体罰 (2/3,読売,愛媛,中,男,40代)
・山梨の小学校長、盗撮容疑で現行犯逮捕(2/3,朝日,山梨,小,男,57)
・県大会準優勝の野球部監督、部員4人を平手打ち(2/4,読売,千葉,高,男,37)
・静岡県立高で体罰 部活中に男子生徒蹴る(2/4,産経,静岡,高,男)
・鹿児島県の私立高校女子バレー部監督、部員殴る体罰(2/4,FNN,鹿児島,高,男,31)
・ボール顔にぶつけ、脚蹴り…女子バレー部で体罰(2/5,産経,長野,中,男,50代)
・支援学級男児、担任が暴行(2/5,読売,山梨,小,男)
・入浴剤を万引き、小学校教諭を停職54日(2/5,朝日,愛知,小,男,39)
・野球部顧問、複数の部員ら殴る(2/5,朝日,兵庫,中,男,40代)
・2教諭、運動部員らに体罰 顔をたたく(2/5,神戸,兵庫,中,男,45・39)
・生徒に平手打ち、男性教諭を略式起訴 東京の私立高(2/5,朝日,東京,高,男,40代)
・喫煙:県立高教師、禁煙学校敷地内で 厳重注意処分(2/5,毎日,徳島,高,男,40代)
・露天風呂で女性ビデオ盗撮の中学教諭、懲戒免職(2/6,読売,三重,中,男,55)
・教諭、男子生徒の腹蹴る 名古屋市立中、体育の授業中(2/6,朝日,愛知,中,男,33)
・学校で「ナンパ指南」作成、3万円で売った教諭(2/6,読売,埼玉,高,男,31)
・サッカー部顧問が部員16人に体罰(2/6,日経,東京,中,男,27)
・奈良・御所市の中学で体罰 サッカー部、鼓膜のけが (2/6,産経,奈良,中,男,26)
・青森の小学教諭、体罰で戒告処分 9回平手打ち(2/7,日経,青森,小,男,39)
・女性教諭が複数の児童の頬つねる(2/7,産経,富山,小,女)
・眉毛剃った…生徒を二十数回平手打ちした教諭(2/7,読売,熊本,高,男)
・小学校助教諭と校長を交通事故で(2/7,毎日,徳島,小,男,27・55)
・沖縄の民謡など教える 副業の男性教諭を減給(2/8,産経,神奈川,特,男,53)
・茨城と埼玉の2教諭ら、覚醒剤使用の疑いで逮捕・起訴
 (2/8,朝日,茨城・埼玉,特・小,男,43・45)
・体罰:南砺でも判明 小学校女性教諭(2/8,毎日,富山,小,女)
・20代女性のスカート内盗撮 26歳小学教諭を懲戒免職処分
 (2/8,産経,神奈川,小,男,26)
・バレー部の顧問が16人蹴るなど体罰(2/8,産経,滋賀,中,男,47)
・都立高2校、部活で体罰 甲子園出場の監督も(2/8,東京新聞,東京,高,男,46・27)
・男児に「サル」、本の角で頭たたいた教諭(2/9,読売,富山,小,男)
・実績低迷バスケ部顧問、3人を日常的に平手打ち(2/9,読売,岡山,高,男,44)
・進学校野球部の高2自殺、直前に監督叱責(2/13,読売,岡山,高,男)
・妻に暴力、中学校長を減給処分=家庭内トラブルで(2/13,時事通信,大分,中,男,55)
・学力テスト、試験前に出題内容教える (2/14,朝日,神奈川,小,4人)
・小学校教頭が痴漢「間違いありません」と供述(2/14,読売,新潟,小,男,52)
・同志社香里中・サッカー部顧問、部員を平手打ち(2/14,読売,大阪,中,男,40)
・市立高の女子柔道部員に平手打ち(2/14,東京新聞,鹿児島,高,男,36)
・中学教諭、女子生徒の頭たたく 授業中に携帯電話触り(2/14,産経,三重,中,男)
・京都・洛南高校陸上部が体罰 平手打ち、鼓膜破る(2/15,東京新聞,京都,高,男,40代)
・県立高の運動部顧問、部員に平手打ち(2/15,読売,福島,高,男,50代)
・懲戒免職:福島県立いわき海星高教諭 窃盗容疑(2/15,毎日,福島,高,48)
・万引き:女性教諭、6カ月停職処分(2/15,毎日,新潟,中,女,40代)
・県教委:体罰の教諭、減給処分 検定試験偽装の助手も
 (2/15,毎日,高知,中・高,男,50代・40代)
・窃盗:小学校教諭が財布を 容疑で逮捕(2/15,毎日,新潟,小,男,34)
・中学バレー部顧問、女子生徒の太もも蹴る(2/16,読売,岩手,中,男,40代)
・体罰と疑われる指導 バレー部顧問外す(2/16,読売,長野,中,男)
・下半身露出、警官に頭突きの教諭を停職3か月(2/16,読売,山口,中,男,37)
・バドミントン部顧問を戒告 水島工業高、部員に体罰(2/16,産経,岡山,高,男,34)
・「あかんやないか」…中3女子の頭たたいた教諭 (2/17,読売,三重,中,男,46)
・女児盗撮容疑で自称教諭逮捕=スマートフォンで(2/18,時事通信,大阪,特,男,55)
・器物損壊:容疑で小学校教諭逮捕(2/18,毎日,宮崎,小,男,44)
・ソフトテニス強豪高の顧問、複数部員に体罰(2/18,読売,奈良,高,男)
・強豪・近江高柔道部顧問、部員4人を平手打ち(2/19,読売,滋賀,高,男,52)
・けが:小学校の教諭が児童の顔に--鹿沼(2/20,毎日,栃木,小,男,40代)
・体罰:市立中教諭ら、生徒16人に うち1人軽いけが(2/20,毎日,兵庫,中,男,40・27)
・ナイフ所持の支援学校教諭逮捕 銃刀法違反容疑(2/21,山陽,岡山,特,男,53)
・教諭が記録媒体紛失、教頭「発見」とうそ  (2/21,読売,大阪,中,女・男,30代・50代)
・県教委:体罰でけが/生徒下腹部触る「生徒指導中に左頬を平手打ちし」
 (2/21,毎日,千葉,高,男,56)
・同上「アルバイト就業」(2/21,毎日,千葉,高,男,57)
・担任、小5に体罰十数回…耳引っ張る・頬つねる (2/21,読売,富山,小,男,50代)
・幼稚園のプールで男児溺死 元幼稚園長ら書類送検(2/21,産経,神奈川,幼,女,65・22)
・奈良の私立小男性教諭、覚醒剤使用で再逮捕(2/21,読売,奈良,小,男,24)
・「性欲を抑えることできず…」女子中学生2人にわいせつ(2/21,産経,神奈川,中,男,34)
・県教委:教員3人を懲戒処分「生徒引率を同僚教諭に肩代わりさせた」
 (2/21,毎日,鹿児島,高,男,46)
・同上「速度違反をした」(2/21,毎日,鹿児島,小,女,39)
・淫行の疑いで高校教諭逮捕 滋賀・草津署 (2/22,産経,滋賀,高,男,25)
・中学校臨時教諭を逮捕=元教え子にわいせつ容疑(2/22,時事通信,中,男,34)
・小学校の女子トイレ侵入で教諭逮捕 盗撮か(2/23,NNN,兵庫,小,男,30)
・小5男児に体罰 スティックのりで殴り裂傷(2/23,スポーツ報知,富山,小,男)
・昨年生徒に体罰、教諭が認め謝罪 藤岡市内の高校(2/23,産経,群馬,高,男)
・中学校の男女バスケ部で体罰、数年前から昨年5月(2/23,産経,大阪,中,男,42・53)
・ボール当たったことに…体罰の顧問もみ消し図る(2/24,読売,山形,中,男,30代)
・教諭がテスト成績一覧落とし、拾った生徒が回覧(2/26,読売,岐阜,中,男,20代)
・教え子男児の下半身触り、撮影…男性教諭懲戒免(2/26,読売,東京,小,男,40代)
・教諭が入試問題漏えい 同志社女子中保護者から200万円 20年前
 (2/26,産経,京都,中,男,70代)
・いじめ問題の監督責任問い、校長を減給処分 依願退職(2/26,産経,滋賀,中,男,59)
・盲学校児童、裸にし尻たたく=女性教諭、体罰で停職処分
 (2/27,時事通信,北海道,特,女,48)
・剣道部顧問が竹刀で体罰 傷害容疑で捜査(2/28,産経,佐賀,中,男,40代)
・校長困らせようと…教頭、4教員の財布抜き取る(2/28,読売,大阪,小,男,57)
・懲戒処分:飲酒運転の教諭停職 免職を適用せず(2/28,毎日,秋田,小,男,20代)
・県立高教諭を体罰で処分…秋田県教委 (2/28,読売,秋田,高,男,50代)

2013年2月27日水曜日

女性の社会進出の国際比較

 男女共同参画社会に向けての取組が開始されて久しいですが,わが国の女性の社会進出はどれほど進んでいるのか。ごく簡単な問いのようですが,これに対し,実証的に答えてくれるデータというのは,あまり見かけません。

 社会進出とは,字のごとく社会に出ていくことですから,その程度を測るには,成人女性のうちフルタイム就業が何%,専業主婦が何%というような,就業状態に注目するのがよいと思います。

 この点は『国勢調査』のデータから分かりますが,それだけでは「ふーん」でおしまいです。「わが国の女性の社会進出はどれほど進んでいるのか」を見極めるには,他の社会との比較が必要です。

 まあ,米英独仏のような主要国との比較は,当局の白書等でなされているのでしょうが,より多くの社会を見据えた広い布置構造の中で,わが国はどこあたりに位置づくのか。過去からどう動いてきたか。こういうことを知りたく思うのです。

 『世界価値観調査』(WVS)では,各国の調査対象者の就業状態を調べています。用意されている回答カテゴリーは,①フルタイム(週30時間以上),②パートタイム,③自営・自由業,④定年退職・年金,⑤主婦専業(働いていない),⑥学生,⑦失業,⑧その他,です。

 私は,最新の第5回調査(2005~08年)の結果データを分析して,54か国の30~49歳女性の回答分布を明らかにしました。それぞれの社会について,「性×年齢層×就業形態」の3重クロス表を作成したわけです。WVSサイトのオンライン分析の箇所にて,自分の関心に沿った集計表を独自につくれることは,前回申した通りです(ただし3重クロスまで)。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp

 最初に,日本と北欧のスウェーデンとで,当該年齢の女性のすがたがどう違うかをみてみましょう。下表いは,D.KとN.Aを除く有効回答の分布を示したものです。日本は2005年,スウェーデンは2006年の調査結果です。


 日本では,フルタイム,パートタイム,および専業主婦がほぼ拮抗して多くなっています。最も多いのは専業主婦(Housewife)で,3分の1がこのカテゴリーに含まれています。まあ,日常感覚に照らしてみても,こんなところだろう,という感じです。

 しかるに比較対象のスウェーデンでは,同年齢の女性の7割近くがフルタイム就業です。日本で多くを占める専業主婦という人種はほんのわずかしかいません。

 同じ中年期の女性であっても,日本とスウェーデンでは,そのすがたが大きく異なっています。子育て期の最中の年齢というのは,両国とも同じです。後者の社会では,子育て期の女性がフルタイム就業できる条件が整っているほか,そもそも育児の負担は夫婦均等に分かつべきという考え方が浸透していると聞きます。なるほど,さもありなんです。

 それでは,比較の対象を全世界の54か国に広げましょう。私は,各国の回答分布表を一通り眺めた上で,「フルタイム就業」と「専業主婦」の比重に注目するのがよい,と考えました。この2カテゴリーの量を明らかにすることで,女性の社会進出の程度をざっくりと把握できると思います。

 私は,有効回答中のフルタイム就業率と専業主婦率のマトリクス上に,54の社会を散りばめてみました。統計の年次は国によって違いますが,2005~07年のいずれかであることを申し添えます。

 なお,日本,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランス,およびスウェーデンの6つの社会については,1980年代初頭からの位置変化も分かるようにしました。矢印のしっぽは1981(82)年,先端は2005(06)年の位置を表します。


 図の左上にあるのは,中年女性のフルタイム就業率が高く,専業主婦率が低い社会であり,女性の社会進出が進んでいると評されます。右下に位置する社会は,その反対です。

 最も左上にあるのは,フランスとスペインの間の小国アンドラです。30~40代女性の83.2%がフルタイム就業です。専業主婦はたったの3.4%しかいません。この小社会では,性役割観念(男は仕事,女は家庭)というものがほとんどないのではなかしらん。

 大国ロシア,先ほどみたスウェーデンも,このゾーンに位置しています。水色の線の中にあるのは,この3国のほか,ノルウェー,ブルガリア,スロベニア,およびフィンランドです。女性の社会進出がトップレベルの国には,北欧国が多いですね。

 左下にあるのは,フルタイム就業,専業主婦とも少ない社会ですが,ガーナやルワンダのような農業社会では,自営業が多くなっています。アジアのベトナムでは,なぜか「その他」というカテゴリーが多くを占めていました。

 図の右下には,イラク,イラン,トルコ,およびエジプトといったイスラーム諸国が位置しています。フルタイム就業率が低く,専業主婦率が高い社会です。イスラーム国家では,女性はあまり外に出ないといいますが,こういう文化的な要因も大きいことでしょう。

 次に,わが国を含む主要国の傾向ですが,6つの社会とも,右下から左上に動いています。これは専業主婦が減り,フルタイム就業が増えたという変化であり,女性の社会進出が進んだことを表します。1980年代初頭以降,女性差別撤廃条約の発効(日本は85年に締結)を皮切りに,最近では男女共同参画に向けた実践も各国で行われています。こういう状況変化の所産であると思われます。

 しかるに,変化の幅は国によって違うようです。米独仏は,この4半世紀にかけて,専業主婦よりもフルタイム就業のほうが多い社会に様変わりしました(斜線で均等線であり,この線よりも上にある場合,専業主婦率<フルタイム就業率であることを意味します)。

 北欧のスウェーデンは,80年代初頭にして,今のドイツあたりの位置でしたが,それ以降にかけて,女性の社会進出がさらに進行しました。

 さて東洋の日本はというと,この期間中に左上に動いたのは確かですが,変動幅は相対的に小さく,まだ斜線を越えてもいません。つまり,まだ専業主婦が幅を利かせている社会です。広い国際的な布置構造でいうと,今の日本の女性の社会進出度は,ちょうど真ん中あたりというところでしょうか。

 現在,第6回WVS(2010年)が実施中とのことですが,より近況でみた日本の位置はどうなっていることか。この点についてですが,最新の『男女共同参画社会に関する世論調査』によると,最近,伝統的性役割観の支持率が高まっているそうです。こうした傾向は,とりわけ20代の若年層で顕著であるとか。昨今の就職難も手伝って,もしかしたら右下に逆戻りしていたりして・・・。
http://www.asahi.com/national/update/1215/TKY201212150110.html?ref=reca

 私は,専業主婦が悪いなどと主張するのではありません。ただ,職域をはじめとした家庭外のさまざまな場においても,男女双方の視点が必要であるという考えを持っています。世の中には男女が半々ずついますが,わが国の職域,とりわけ指導的地位にある人間の集団が,未だに男性だらけであることはよく知られています。こういう状態はよろしくありません。その意味で,上図における日本の位置がもっと左上にシフトすることを願うものです。

 そういえば,2010年の末に策定された『男女共同参画基本計画(第3次)』では,2030年時点で女性のフルタイム就業率が何%というような,政策目標値が提示されていたな。それを上図に位置づけたらどの辺だろう。こういう展望をしてみるのもまた一興です。広い布置構造でみたら現在の位置と大して変わらず,数値訂正の必要性が露わになるかもしれませんね。

2013年2月26日火曜日

パラサイトシングル率の国際比較

 パラサイトシングル。学校を卒業し,自立を期待される年齢になっても親と同居し,基礎的な生活条件を依存し続ける若年未婚者。山田昌弘教授は,日本社会でこういう人種が増えており,そのことが,わが国の未婚化,さらには少子化をもたらしていると指摘しました。

 最近では,この見方が広く共有されるようになっており,国の基幹統計である『国勢調査』においても,親との同居・非同居が分かるような集計がなされるようになっています。

 今の日本にパラサイトシングルがどれほどいるかは,昨年の8月22日の記事で明らかにしたのですが,国際比較ができないものかと前から思っていました。欧米では,子は成人したら親元を離れるのが当然と聞きますが,パラサイトシングル現象は,わが国に固有のものなのでしょうか。

 ネット上でざっと調べたところ,この疑問に答えてくれる情報(データ)は見当たりませんでした。しかるに,前回使った『世界価値観調査』(WVS)のデータを分析することで,各国の若者の親同居未婚者数を割り出せることに気づきました。今回は,その結果をご報告しようと思います。

 前回の記事で申しましたが,WVSサイトのオンライン分析の箇所において,自分の関心に則した集計表を独自につくることができます。複数の変数を掛け合わせたクロス集計も,3重クロスまでなら可能です。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp

 私は,「年齢×婚姻状態×親との同居状況」の3重クロス表を国ごとに作成し,25~34歳の親同居未婚者の数を明らかにしました。前後しますが,分析したのは最新の第5回(2005~08年)のWVSデータです。

 日本でいうと,25~34歳の調査対象者181人のうち,未婚者(事実婚は含まず)は82人。この82人のうち,親と同居している者は68人です。よって,当該年齢の若者のうち,親と同居している未婚者の比率は37.6%ということになります。2.7人に1人がパラサイトシングルです。この数値は,2005年の『国勢調査』から分かる,同年齢層のパラシン率とさして変わらないことを申し添えます。

 52の社会について,この比率を算出することができました。資料的意味合いを込めて,ベタな一覧表を提示します。比率が高い順に,各国を配列しました。


 日本が一番高いかと思いきや,そうではありません。同じアジアの台湾とホンコンのほか,南欧のイタリア,北アフリカのモロッコがより上に位置しています。これら4つの社会では,若者のパラシン率が40%を超えています。

 イタリアは,わが国と同程度,いやそれ以上に少子化が進んでいるといいますが,この国では若者の5人に2人がパラシンなのだなあ。知らんかった。

 主要国の位置をみると,お隣の韓国(30.3%)は日本のちょい下,ドイツ(14.1%)は中の下,アメリカ(6.7%)は下というところです。英仏は,親との同居・非同居を尋ねていないためデータを出せませんが,ドイツと同じくらいではないでしょうか。

 ところで表の一番下をみると,北欧の3か国は,揃いも揃ってパラシン率が低くなっています。この3つの社会では,親と同居している未婚の若者はごくわずかです。離家しても若者が安心して生活できる社会条件が整っているのでしょうか。

 さて,上表に掲げられている52の社会のパラシン率は,未婚化の進行具合とも相関していると思われます。私は同じデータを使って,同年齢層の未婚者率を出し,上表のパラシン率との相関をとってみました。日本の場合,未婚者率は82/181=45.3%です。


 上の相関図より,パラサイトシングルが蔓延っている社会ほど,未婚化が進んでいることが知られます。2つの指標の相関係数は+0.667であり,1%水準で有意です。山田教授がいわれているように,パラサイトシングル現象は未婚化,さらには少子化の引き金になっていることがうかがわれます。

 といっても,事はそう単純でなく,スイスやノルウェーのように,パラシンがほとんどいなくても未婚率が高い社会も存在します。スイスでは,未婚者63人のうち,親と同居している者(パラシン)は6人しかいません。未婚者の大半は離家しています。この国では,未婚化の要因は,パラシンとは別のところに求めねばなりますまい。

 しかるに日本は違います。日本の場合,未婚者82人のうち68人(82.9%)がパラシンです。東洋のこの国では,未婚化対策=パラサイトシングル対策という性格が強いとみられます。

 パラシンと未婚化・少子化の関連のロジックについては,冒頭でリンクを張った記事をみていただくとして,のうのうと暮している若者を親元から引き離す上でも,山田教授が提案されているような「親同居税」の導入を 検討すべきであるかもしれません。
 
 いやー,WVSのデータはスゴイ。第1~4回の結果もつなぎ合わせることで,時系列的な変化も明らかにできます。SPSSやSASのような高価なソフトがいるというのではありません。ここで提示したような国際統計は,オンライン分析によって,誰もが簡単に作成することができます。

 若者の意識について卒論を書きたいと思っている学生のみなさん,自前で調査をしようなどと考える前に,こういう既存の調査資料を十分に活用しようではありませんか。調査関係の授業では,私はいつも,学生さんにこのようなことをいっています。

2013年2月25日月曜日

収入配分に対する青年層の意見

 各国の研究者が連携して,「世界価値観調査」なるものが定期的に実施されています。英語表記でいうとWorld Value Survey,略してWVSです。

 主な結果をまとめた調査報告書も刊行されていますが,WVSサイトのオンライン分析の箇所にて,設問ごとの回答分布を自分で明らかにすることができます。クロス集計も,3重クロスまでなら可能。これはスゴイ!
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp

 調査項目をみると,あるわあるわ,興味深いものが満載です。どこから手をつけたものか迷うくらいですが,政治・社会の領域において,収入配分の在り方についての意見を尋ねた設問があります。

 「収入はもっと平等(不平等)に配分されるべきだ」という意見の程度を,10段階で答えてもらうものです。私は,各国の15~29歳の青年層が,この問いに対しどういう回答を寄せているかに関心を持ちました。

 インセンティブの上でも,収入は個々人の頑張り度に応じて傾斜がつけられるべきですが,その程度があまりに激しくなると,社会の存続を脅かす要因にもなり得ます。これからの社会を担う青年層が,こうしたビミョーな要素を含む富の配分の在り方に対し,どのような意見を持っているのか。わが国の国際的な位置はどうか。興味が持たれるところです。

 私は,最新の第5回調査(5wave)のデータを分析して,世界56か国の青年層の回答分布を明らかにしました(D.K,N.A等の無効回答除く)。「国×年齢層×収入平等」という,3つの変数を掛け合わせた3重クロス表をつくったのです。

 手始めに,日本,フィンランド,そしてインドネシアという3つの社会の回答分布をグラフでみていただきましょう。日本とフィンランドは2005年,インドネシアは2006年の調査データです。カッコ内の数値は,各国のサンプル数です。


 日本は,真ん中あたりの層が多い,ノーマルカーブに近い型になっています。最も多いのは「6」であり,3人に1人がこのレベルを選択しています。

 あとの2つの社会はどうかというと,これがまた対照的な傾向を呈しています。フィンランドでは平等志向の者が多く,インドネシアでは逆に不平等志向の者が多いのです。後者では,10という回答が最多です。この東南アジアの国では,青年層の4人に1人が,収入は極力不平等になるのが望ましいと考えています。昨今,著しい経済発展を遂げているインドネシアですが,その原動力は,富の不平等配分による労働者のインセンティヴであったりして・・・。

 しかるに世界は広し。もっと特徴的な社会があるかもしれません。他の53の社会の回答もみてみましょう。といっても,上図と同じような折れ線を56本も描くことはできません。傾向を端的にみてとれる統計図をつくってみます。

 1~3の回答をした者を「平等志向群」,8~10の回答をした者を「不平等志向群」と括りましょう。上図の日本の場合,前者は9.0%,後者は25.5%います。フィンランドは順に34.9%,13.9%,インドネシアは5.8%,52.1%なり。

 横軸に平等志向群,縦軸に不平等志向群の比率をとった座標上に,56の社会を位置づけてみました。日,韓,米,英,独,仏の6か国については,1990年(第3回調査時点)からの位置変化も分かるようにしました。矢印のしっぽは1990年,終点は2005(2006)年の位置を表します。

 あと一点。斜線は均等線であり,この線よりも上にある場合,平等志向群よりも不平等志向群が多い社会であることを示唆します。下にある場合は,その逆です。


 いかがでしょう。左上にあるのは,平等志向群が少なく,不平等志向群が多い国です。先ほどみたインドネシアのほか,ガーナ,ペルー,マリといった南米やアフリカの社会が位置しています。西アフリカのガーナでは,青年層の68.9%が,8~10に丸をつけた不平等志向群です。

 個々人の労力の成果が見えやすい発展途上国では,その差に応じて収入にも傾斜がつけられるべきと考える青年が多い,ということでしょうか。これらの国はまだ,1次産業や2次産業が主体の社会です。

 対極の右下にあるのは平等志向の高い社会ですが,ヨーロッパやアジアの国が多く位置しています。今回観察した56の社会の中で,青年層の平等志向が最も強いのはスイスです。この国では,青年の6割近くが平等志向群であり,不平等志向群は1割もいません。永世中立国だから?関係ないか。

 1990年代以降の変化も分かるようにした,日本を含む6か国はどうでしょう。日本と韓国は左上に動いています。平等志向群が減り,不平等志向群が増えた,ということです。つまり,青年層の収入格差容認志向が強まっていることになります。しかし,お隣の韓国の様変わりぶりはすごいですね。このたび就任した,韓国の新大統領にぜひともみていただきたい。

 一方,英独仏は,これとは対照的に右下にシフトしています。このヨーロッパの3国は,この15年にかけて,青年層の平等志向が高まった社会です。ドイツの変化がすごいこと。東西ドイツが統合されて間もない1990年の状況が特異だったのかもしれませんが。

 大国アメリカは,左下にシフトしています。いずれの群の比重も低下し,間の中間群の量が増えた,ということです。しかるに,8~10の不平等志向群の比重が44%から22%へと半減していることは注目されます。

 先にもいいましたが,富の配分の在り方というのはビミョーな問題を含んでいて,上図のどこにあるのがよい(悪い)という価値判断は,一概にできないと思います。高度経済成長期の頃の日本は,もしかすると上図の左上に位置していたかもしれません。

 しかるに,収入格差を是認する志向といっても,社会が未成熟な段階のものと,社会が成熟化を遂げた段階のものとは性質が違うようにも思えます。前者は,社会の発展の原動力となり得るものですが,後者は,閉塞感や社会不安の高まりの要因としての側面が大きいのではないか,という感じがします。

 その意味で,上図に描かれた日本と韓国の傾向に,私は若干の懸念を抱きます。近年よくいわれる,格差社会化の様相の可視的な表現ともとれるでしょう。現在,第6回の『世界価値観調査』(2010年)が実施中とのことですが,この年の日本の位置はどうなっていることか・・・。

 WVSの国別・年齢層別データから,各国の青年層のすがたを多様な側面から明らかにすることができます。収入分布のようなデータもありますので,青年層に限定したジニ係数も出すことが可能です。

 ここでみたのは,意識の上での格差是認志向ですが,現実の収入格差はどうなっているのか。日本の国際的な位置はどうか。この点についても,データを出してみようと思っています。

2013年2月23日土曜日

青年期の状態変化の国際比較

 内閣府の『第8回世界青年意識調査』では,Q11において,5か国(日,韓,米,英,仏)の18~24歳の青年に対し,現在の仕事(状態)を尋ねています。調査実施時期は,日韓米が2007年11~12月,英仏が2008年9~10月です。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/worldyouth8/html/mokuji.html

 各国について,年齢によって回答構成がどう変わるかが分かる図をつくってみました。パネルデータではないので,厳密な意味での加齢変化ではないですが,まあ青年期にかけての状態変化の大局をみてとることはできるでしょう。


 目についた点を箇条書きします。

 ①:何だかんだいって,青年期も終盤になれば,日本の青年の多くは働いています。24歳時点での就労率(パート含む)は,日本が81.7%でトップです。青年期の課題達成(労働という名の役割獲得)が最も円滑になされている社会。
 ②:お隣の韓国は,結構長く学生をやる者が多いですね。24歳になっても,42.2%が学生です(日本は6.7%)。受験競争が激しいので,浪人組が多いのでしょうか。それとも就職が決まらない学生が多いのか。あっ兵役もあるか。
 ③:アメリカは,学生の構成が特徴的。パート(バイト)を通り越して,フルタイムの仕事を掛け持ちしている学生も結構います。学費がバカ高&親が援助する風潮があまりないので,自分で学費を稼ぐ者が多いためでしょうか。
 ④:イギリスは,専業主婦(夫)と失業者が多し。前々回の記事でみたように,この国の女子青年は,伝統的性役割観(夫は仕事,妻は家庭)への賛成度が高いのだよな。
 ⑤:フランスは,専業主婦(夫)や職探し中とは別の理由の無職者(≒ニート)が比較的多し。

 こんなところでしょうか。人によって注目ポイントは違うでしょう。こういう図はあまり見かけないので,この場に展示することとした次第です。

2013年2月22日金曜日

シューカツ洗脳?

 前期の授業の受講生(3年生)で,「今,シューカツがんばってます」というメールをくれた人がいます。そういえば,シーズンですね。都心では,黒いリクスーに身を包んだ青年男女が足繁く行き交っていることでしょう。
 
 こうした「シューカツ」に,一定の教育効果を見出す見方もあります。大手の関連サイトをみると,「就職活動は自分を見つめ直し,社会人としての常識を身につけるよい機会です」などと書かれています。

 確かにそういう面もあるでしょう。私が前に担当したゼミの学生さんで,3年生の終わりから卒業までの間に見違えるほど礼儀正しくなり,送ってくるメールの文面もガラリと変わった子がいました。「変わったね」というと,「シューカツで鍛えられましたから」という答え。ふうむ。

 しかるに,ちょっとばかし大人しくなっちゃったな,という印象も持ちました。3年時のゼミでは,質問も含めていろいろと喰ってかかってくる子だったのですが,4年の後期になると,そういう(我の強い)姿はどこへやら・・・。「目上の人のいうことは粛々と聞き入れるべし」とでも叩きこまれたのか。これもシューカツ効果ってやつでしょうか。

 この点に関連して,今野晴貴さんの『ブラック企業』文春新書(2012年)では,面白いことがいわれています。以下の文章は,本書の191頁からの引用です。

 「現在の就職活動の恐ろしいところは,就職活動を通じて若者がある種の『洗脳』を受けさせられることだ。就職活動を通じて『どんなに違法なことでも耐えるのが当たり前』という心情を植えつけられる」。
 
 洗脳という言葉が穏やかでないですが,こうした過程があることをうかがわせるデータも提示されています。今野さんが,大学3年生と4年生に「絶対に就職先としない企業」の条件を尋ねたところ,「ワークバランスが良くなさそう」,「離職率が高い」,「定期昇給が無い」,「ボーナスが無い」,「環境に配慮していない」という項目の選択率は,3年生よりも4年生で軒並み低いとのことです(192頁)。

 まあ,高すぎる要求水準を現実的なレベルに修正した,という見方もできますが,「何もいわずに社畜のごとく働くべし」という観念を植えつけられる,洗脳の過程ととれないこともありません。しかし,「環境への配慮」というような社会的な視野までもが奪われるのは,何とも悲しいことです。いや問題です。

 このような「シューカツ洗脳」とでもいい得る過程は,公的な大規模データでも見受けられるのか。そうだとしたら,それはわが国に固有のものなのか。こういう関心を持って,前回用いた内閣府『第8回世界青年意識調査』の結果表を眺めたところ,使える統計が載っていることに気づきました。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/worldyouth8/html/mokuji.html

 本調査のQ20では,5か国(日,韓,米,英,仏)の18~24歳男女に対し,「仕事を選ぶ際に,どのようなことを重視するか」と問うています。複数回答方式です。私は,「収入」と「労働時間」を選んだ者の比率が,年齢を上がるにつれてどう変化するかを国ごとに観察してみました。いつの時代でもどの社会でも重視される,最も基本的な選職条件であると思われます。

 下表は,性別・年齢層別の選択率を整理したものです。S1は18~19歳,S2は20~22歳,S3は23~24歳を意味します。SはStage(段階)の頭文字です。


 日本でみると,男女とも,年齢を上がるにつれて選択率が低下していきます。男性の場合,労働時間の選択率がS1の51.0%からS3の39.3%まで,10ポイント以上も落ちています。つまり,長時間労働も厭わない者が増える,ということです。

 日本では,4ケース(男女×2項目)とも,S1からS3にかけて率が減じる「減少型」ですが,表を全体的にみると,その逆の「増加型」のほうが数的には多いように思えます。口でクダクダ言うのは止めにして,傾向が視覚的にみてとれるよう,上表のデータをグラフ化しましょう。

 方式は,前回と同様です。横軸に労働時間,縦軸に収入の選択率をとった座標上に,3時点の選択率を位置づけて線でつないでみました。2本の矢印をたどることで,S1→S2→S3の位置変化をみてとることができます。太線の矢印は男性,細線の矢印は女性のものです。


 ほほう。純粋な減少型は,日本だけです。アメリカの男性は,それとは対照的な純増加型です。この国の男性の場合,年齢を上がるほど,選職にあたって収入も労働時間も重視する者が増えるのです。日本の男性とのコントラストがはっきりしていますね。

 英仏の女性も,このような純増型です。日本の女性とは真逆の傾向になっています。他の矢印はジグザグしていますが。きれいな左下がりの矢印になっているのは,日本の男女だけです。基本的な労働条件について一切文句を言わないように仕向けられる「シューカツ洗脳」の産物でしょうか。

 なお,日本の女性でみると,S2からS3にかけての位置変動が大きくなっています。S3は23~24歳であり,新卒時に就職が決まらなかった「既卒者」も結構含まれるでしょう。大いに焦り,昇給も定時もないブラック企業でも構わないという者が増える,ということではないでしょうか。

 ところで本調査の対象は,学生や就職未決定者だけでなく,就業者も含めた青年男女です。他国の純増型ないしは増加型は,既に働いている者が「やはり収入や労働時間で選べばよかった」と後悔していることによるのかもしれません。

 しかるに,わが国ではご覧のように純減型。入職した後においても,収入や労働時間について不満をいうべきでないと,研修などで叩き込まれるのでしょうか。

 日本の青年が,就業に際して薄給や長時間労働も厭わないように仕向けられる過程が,上図には描かれています。今野さんが危惧しているような洗脳の過程,私の造語でいうと「シューカツ洗脳」なるものの存在を匂わせます。

 先に紹介した私のゼミの学生さんも,こういう経路をたどったのか,いやたどっているのか。今,どうされているかな。連絡をして聞いてみましょう。「仕事を選ぶ際に,どのようなことを重視するか」と。

2013年2月21日木曜日

青年期におけるジェンダー的社会化

 世の中には男性と女性がいますが,この2つの性は,まず身体の違いということで区別されます。しかるに両性を分かつものとして,「男は泣かない,女は控え目に」というような,社会的な通念もあります。いうなれば社会的につくられる性であり,これを専門用語でジェンダー(gender)といいます。

 わが国はジェンダー規範が比較的強い社会だと思いますが,これに囚われるのはよくないということで,近年では,この垣根を軒並み取っ払う方向に社会が動いています。このことは,男女共同参画社会が具現するための最も基本的な条件であるといえましょう。

 ジェンダーに囚われない人間の育成は,学校教育でも志向されているところであり,最近の学校では,「ジェンダー・フリー教育」に重きが置かれています。家庭や地域社会等にも,各種の啓発が進んでいると聞きます。

 こういう状況のなか,成長に伴いジェンダー観念は弱まりこそすれ,強まることはあまりないと思うのですが,現実はどうなのでしょう。私は,就職や結婚といったイベントを間近に控えた青年期において,どういう意識変化がみられるかを観察してみました。

 内閣府は定期的に『世界青年意識調査』を実施しています。対象は,5か国(日,韓,米,英,仏)の18~24歳の青年男女です。最新の第8回調査(2007~2008年実施)では,ジェンダーに関わる以下の項目に対する賛否を尋ねています。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/worldyouth8/html/mokuji.html

 問51 「男は外で働き,女は家庭を守るべきだ」
 問52 「子どもが小さいときは,子どもの世話をするのは,母親でなければならない」

 回答の選択肢は,賛成,反対,分からない,の3つです。それぞれに対して「賛成」と答えた者の比率(賛成率)を,18~19歳と23~24歳とで比較してみましょう。同一の集団を追跡したものではないので,加齢変化とはいえませんが,まあ,その近似的なすがたを取り出すことはできるでしょう。

 下表は,5か国の性別ごとに,賛成率の数値を整理したものです。


 日本でみると,いずれの項目への賛成率も,年長者のほうが高くなっています。男女問わずです。青年期にかけてジェンダー規範が強まることがうかがわれるのですが,数値の伸び幅でみる限り,その程度は女性で大きいようです。

 他の社会でもおおむね似たような傾向ですが,イギリスの男性だけは例外で,この期間にかけて,2つの項目への賛成率が大幅に減じています。「男は外,女は家」という伝統的性役割観への賛成率は,25.6%から13.8%へと,10ポイント以上も低下します。

 しかし,数値を並べただけの表では,傾向が読み取りにくいですねえ。どの国のどの性で伸び幅が大きいのか,どちらの項目への賛成度の伸びが大きいのか。こういうことを分かりやすくするには,グラフ化が一番です。

 みなさんでしたら,上記の表のデータをどういうグラフにしますか。10個(5か国×2項目)の棒グラフでもつくりますか。でも,それはちと煩雑です。私なら,2次元のマトリクスをフル活用した,以下のようなグラフを描きます。

 横軸に「小さい子の世話は母親がすべし」,縦軸に「男は外,女は家」への賛成率をとった座標上に,5か国の性別・年齢層別のデータを位置づけ,線でつなぐのです。矢印のしっぽは18~19歳,先端は23~24歳の位置を表します。

 これによると,各国の両性について,青年期の間における変化を視覚的にみてとることが可能です。実線は男性,点線は女性のものであることを申し添えます。


 お分かりかと思いますが,図の右上にいくほどジェンダー規範が強くなることを意味します。ほう。多くの矢印が右上の方向を向いていますね。ここでの統計でみる限り,青年期にかけてジェンダー観念が強まる傾向は,ある程度普遍的なもののようです。

 お隣の韓国は,両性の矢印とも,ほぼ45度の傾斜になっています。2つの項目への賛成率とも,バランスよく?伸びている,ということです。青年期におけるジェンダー観念の強まりが,きれいに具現されています。

 アメリカはといえば,男性と女性の差が顕著ですね。2つの時点の変動幅は矢印の長さで測られますが,この国では女性の矢印が長いのです。タテ方向の伸びであることからして,伝統的性役割観への賛成度の高まりが大きいことになります。

 フランスは,「小さい子の世話は母親がすべし」への賛成率が下がるので,矢印の向きがちょっと違っていますが,「男は外,女は家」への賛成度が高まる傾向は,他の社会と一緒です。

 さて,図を全体的にみて例外的な傾向を呈しているのが,イギリスの男性です。この島国では,青年期にかけて,男性のジェンダー観念が大きく下がります。これが加齢によるものか,あるいは世代の差によるのか分かりませんが,注目されてよいでしょう。高等教育機関にて,ジェントルマン教育でもされているのかしらん。この国では,矢印の向きが男女で真逆なのも興味深し。

 ジェンダー・フリーの風潮が高まっているのは,今回観察した5つの社会とも同じでしょう。こういう社会では,ジェンダー観念に囚われない人間が育っているのかと思いきや,18~24歳の青年期に焦点を当てた限りでは,それとは反対の様相がみられました。青年期におけるジェンダー的社会化とでもいえましょうか。

 この5か国では,該当年齢の多くが大学に通っていると思いますが,大学でジェンダー論の授業とか受けないのかなあ。上のグラフを,私が知るジェンダー専攻の教授にお見せしたら,どういう反応が返ってくるか・・・。

 23~24歳といえば,ちょうど就職する時期ですが,企業社会に未だに蔓延るジェンダー的慣行に遭遇し,現実を思い知らされる,ということでしょうか。そういえば,なかなか就職が決まらない学生(女子)で,「もう専業主婦になりたいです」とかこぼしていた子がいたなあ。こう考えると,上図において,男性よりも女性で矢印が長いのも説明つくかも。

 今回使った『第8回・世界青年意識調査』では,この他にも,多様な事項への賛否を尋ねています。18~24歳の青年期社会化の様相を,より多面的に明らかにするのも面白い課題でしょう。必要なデータは,上記URLにて収集できます。興味ある方は挑戦されたし。