10月も今日で終わりです。恒例の教員不祥事報道の整理をします。今月,私がネット上で把握した不祥事報道は39件でした。毎晩寝る前に,「教諭/講師/校長/教頭 and 処分/逮捕」(24時間以内指定)でググって記事を探しています。ヒマ人です。
わいせつや体罰が多いのはいつものことですが,今月は窃盗や詐欺などの財産犯が目立つような気がします。学校の先生は収入が安定していそうですが,それゆえに融資などが一発で通り,ついつい借りすぎちゃうのでしょうか。
また8月21日の講演の後で聞いた話によると,教員はストレスのあまり,パチンコにハマる人が多いとのこと。なるほど,教員の財産非行を説明する要素は結構ありそうです。
明日から11月。ブログの背景を紅葉景色にいたします。
<2015年10月の教員不祥事報道>
・女子高生にわいせつ、市民に暴行…(10/1,産経,兵庫,中,男,29)
・集団強姦容疑で32歳小学教諭を書類送検(10/2,産経,大阪,小,男,32)
・いす投げ、生徒けが 大阪市立中教諭に停職処分(10/2,産経,大阪,中,男,33)
・酒気帯び事故で高校教諭逮捕(10/3,NHK,埼玉,高,男,32)
・泥酔者のバッグを盗んだ疑い、小学校臨時教諭の男逮捕(10/6,TBS,千葉,小,男,29)
・中学講師 わいせつ容疑で逮捕 (10/6,NHK,奈良,中,男,38)
・洛南高校附属小の教諭を逮捕(10/7,NHK,滋賀,小,男38,男53)
・無免許運転で高校校長摘発 「飲酒で免許取り消し」と説明
(10/8,産経,北海道,高,男,57)
・また教師!!女子高生のスカート内を盗撮で現行犯逮捕(10/8,産経,京都,高,男,24)
・盗撮の疑いで小学教諭逮捕(10/9,日経,千葉,小,男,42)
・中学教諭を盗撮容疑で逮捕(10/13,NHK,新潟,中,男,45)
・北九州市教育委員会 体罰などで教諭2人を懲戒処分
(10/13,テレビ西日本,福岡,中男2名)
・家出中の少女を自宅に泊め、みだらな行為 常勤講師を懲戒免職
(10/13,産経,愛媛,中,男,24)
・元交際女性にストーカー、都立高校の女教諭逮捕(10/14,産経,東京,高,女,53)
・側頭部を繰り返し打ち、生徒にけが(10/15,読売,鹿児島,中,男,29)
・県立高教諭、体罰で減給処分(10/15,毎日,石川,高,男,60)
・男性教諭が生徒に暴言「ぶっ殺すぞ」学校内で飲酒も
(10/16,日刊スポーツ,秋田,高,男,40代)
・知人の教諭夫婦を辞めさせようとする文書を、教育機関などに送り続けた
(10/16,中京テレビ,山梨,小,女)
・自転車かごのかばんを盗む…大阪府教委の非常勤講師を逮捕
(10/18,産経,大阪,高,男,66)
・生徒にキス、「娘のようにハグ」…教諭2人を懲戒
(10/19,産経,東京,ハグ:中男29,わいせつ:高男59)
・SNS通じ高1少女を買春の疑い 千葉県立高教諭を逮捕(10/20,朝日,千葉,高,男,30)
・酒気帯び容疑の教頭を停職処分 速度違反の教諭は減給
(10/20,朝日,愛知,酒気帯び:小男57,スピード違反:中男30)
・懲戒免職:窃盗容疑逮捕の講師を 千葉市教委(10/20,毎日,千葉,小,男,29)
・他校の教諭のかばんから財布盗む 高校教諭懲戒処分
(10/20,神戸新聞,兵庫,高,男,35)
・盗撮容疑の小学校長、懲戒免職処分に(10/21,毎日,千葉,小,男,53)
・売春クラブ主催の都立中教諭逮捕 女子高生あっせん容疑
(10/21,朝日,東京,都立中,男,27)
・児童に暴行した罪で小学教諭に略式命令(10/21,河北新報,岩手,小,男,42)
・教え子に学校内でみだらな行為 愛知県警、中学教諭逮捕
(10/23,中日新聞,愛知,中,男,30)
・顔が近づき…女子高生にキス、抱き付き 男性教諭を処分
(10/24,埼玉新聞,埼玉,高,男,34)
・「遅刻しそう」高速147キロ、女性教諭を戒告(10/24,読売,香川,小,女,24)
・中学校長らが隠れたばこ、校舎ぼやで教員が消火(10/24,読売,福岡,中男58)
・18歳未満にわいせつ 男性教諭を懲戒免職(10/27,産経,茨城,中,男,32)
・保険金詐取で和歌山市立小の女性講師を懲戒免職
(10/27,和歌山放送,和歌山,小,女,29)
・小学校担任、テスト実施や採点サボる 講師減給、依願退職
(10/27,産経,大分,小,男,24)
・2人の関係ばらす」LINEで脅迫、知人女性に性的関係迫る
(10/29,産経,宮崎,高,男,27)
・授業中誤ってわいせつ画像映す 50代小学校教頭を処分へ
(10/30,産経,山口,小,男,50代)
・養護学校教諭 窃盗疑いで逮捕 (10/31,NHK,兵庫,男,56)
・中学教諭 酒気帯び運転容疑(10/31,NHK,鹿児島,中,男,32)
・定期試験の問題がLINEで拡散、男性講師が漏らしたと解雇
(10/31,産経,大阪,高,男)
2015年10月31日土曜日
2015年10月29日木曜日
1961年生まれ世代の男性の生涯賃金推定
生涯賃金。字のごとく,一生のうちに得られる賃金がナンボかです。1億とか2億とか,いろいろな数字が飛び交っていますが,統計で分かる相場値はどれくらいなのでしょう。厚労省の『賃金構造基本統計』の原資料にあたって,自分の手で計算してみました。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
生涯賃金を出すには,特定の世代の稼ぎを追跡する必要があります。早い人は中学校を出てすぐ働き始めますから,スタートは15歳,ゴールは定年前の59歳がよいでしょう。この現役期間を通じて,稼ぎの総決算がナンボだったかをみるわけです。
上記の厚労省資料には,標準労働者の所定内月収と年間賞与額が1歳刻みで出ています。そういう細かい統計は,1976年版の資料からとられているようです。観察のスタートは15歳ですが,この年に15歳であったのは,1961(昭和36)年生まれ世代です。この世代の男性を観察対象としましょう。
やり方は簡単です。1976年の15歳の年収,77年の16歳,78年の17歳・・・というように,当該世代の各年齢時の年収の合算するだけです。年収は,所定内月収を12倍した値に年間賞与額を足して推し量ります。
ちなみに,本資料に載っている1歳刻みの月収・年間賞与額は,標準労働者のものです。学校卒業後直ちに就職し,調査時点も同じ会社に勤めている者です。雇用の流動化が進んでいる現在にあっては,必ずしも「標準」とはいえまんせんが,この世代が就職したのは,70年代後半から80年代初頭ですので,まあ標準とみてもよいでしょう。
なお,厚労省の『賃金構造基本統計』は2014年版までしか出ていません。よって,1961年世代の場合,53歳時点までしか追跡できませんが,それ以降の54~59歳までは,最新の2014年版に載っている数値を使います。よって,この部分は仮定値であることに留意ください。
では,結果をみていただきましょう。計算のイメージを持っていただくため,各年齢時点の年収をもれなく掲げます。言い忘れましたが,原資料の数値は学歴別に出ていますので,学歴ごとに追跡しています。
どの学歴群も,加齢とともに年収が高くなりますが,学歴差も大きくなります。25歳時をみると,中卒が269万円,高卒が279万円,大卒が290万円だったのが,53歳時では順に622万円,724万円,978万円と,中卒と大卒では350万円以上の開きが出ます。学歴社会ニッポンの可視的な表現です。
ここでの関心は現役期間の稼ぎの総決算ですが,右欄の年収累積をみるとそれが分かります。低学歴者のほうが早く働き始めるので,若い頃は,「中卒>高卒>大卒」となっています。
大学生のみなさん,ごらんなさい。あなた方が大学で勉強している間,中卒者は985万円(15~21歳),高卒者は654万円(18~21歳)稼いでいるのですよ。みなさんは,こういう稼ぎ分を放棄して,大学で学んでいるわけです。授業料とは別個に,こういう費用(機会費用)も払っていることになります。それを取り戻せるよう,しっかり勉強しましょうね。
まあ現実には,スタートの遅れ分を大卒者は取り戻せるようで,37歳の時点で中卒と高卒を追い越し,その後ぐんぐん差をつけていきます。
定年直前の59歳時点の累積総額はどうなっているか。これが現役時の生涯賃金です。右欄の一番下をみると,中卒が1.91億円,高卒が2.19億円,大卒が2.61億円となっています。退職金を含みませんが,これが現役期間の稼ぎの総額と見積もられます。巷でよくいわれる額と近似しており,違和感はありません。しかし,高卒と大卒の段差が大きいですね。
15~59歳までの稼ぎの累積変化をグラフにしておきましょう。下図のように,きれいな曲線になります。
さて,年収を規定する要素としては,性別や学歴に加えて,あと一つ大きなものがあります。企業規模,大企業か中小企業かです。厚労省の資料でもこの点が認識されており,企業規模別に集計表が分かれています。大企業(1000人以上),中企業(100~999人),小企業(10~99人)という分類です。
私は同じやり方で,これら3群ごとに,学歴別の生涯賃金を出してみました。下表は,計算の結果です。
どの学歴グループでも,現役時の生涯賃金は大企業ほど高くなっています。同じ大卒男性でも,大企業勤務者の生涯賃金(2.898億円)は小企業の1.4倍です。
むろん学歴差もありますが,「大卒/中卒」と「大企業/小企業」の倍率を比べると,微差ではありますが,後者のほうが高いようです。学歴か企業規模かと問うならば,後者の効果が大きいとみられます。
ある方が,「ジョブ型雇用ではなくメンバーシップ型雇用」の証左だと言っておられましたが,言いえて妙だと思います。
労働者が自分のスキルを売りにして複数の会社を渡り歩く欧米では,こうはならないでしょうね。こういうところにも,日本の特性が出ているような気がします。
今回分かった注目の数字は,2.61億円。大卒男性の現役時代の生涯賃金です。私のような無精者は,逆立ちしても,こんな大金は稼げそうにありません。これは1961年生まれ世代男性の試算値ですが,最近の世代は,稼ぎは減っていることと思います。
世代を下って,私の世代(1976年生まれ)の試算もしたいのですが,私らはまだ39年しか生きていませんので,まだまだ待たないといけません。
10月もそろそろ終わりです。朝晩は冷え込んできました。体調を崩されませぬよう。
2015年10月27日火曜日
大学院博士課程修了者の大学教員採用率
昨日,表記タイトルのデータをツイッターでアップしたところ,見てくださる方が多いようなので,ブログにも載せておきます。博士課程修了者数と新規学卒の大学本務教員採用者数を,照合して算出したものです。ここでいう大学には,短大は含みません。
新規学校卒の大学教員採用者は,多くが博士課程修了者とみてよいでしょう。よって,上記の後者を前者で除せば,博士課程修了者の大学教員採用率の近似値が出せます。分子は文科省『学校教員統計』,分母は同省『学校基本調査』で拾うことができます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
私は,大学院重点化政策がしかれる前の1989年度と,2013年度の統計を比べてみました。専攻によって様相は異なると考えられるので,専攻別の数値も出しました。下の表は,結果の一覧です。
1989年度の博士課程修了者は5576人,新卒の大学本務教員採用者は1626人。よって,この年の大学教員採用率は29.2%となります。およそ3割。
しかし四半世紀を経た2013年度では,この値は6.1%まで下がっています。それもそのはず。分母(a)が増えているのに対し,分子(b)は減っているのですから。前者は90年代以降の大学院重点化政策,後者は少子化により採用ポストが減っているため。新卒時の断面ですが,近年の大学教員市場の閉塞化が,はっきりと可視化されています。
これは全体の傾向ですが,専攻別にみても同じです。家政系の率が高いのは,学部卒や修士卒の採用も多いためでしょう。人文・社会系は減少幅が大きく,人文科学は28.4%から4.9%,社会科学系は41.4%から7.3%への下落です。大学院重点化政策前は,社会系ドクターの4割は,修了と同時に専任ポストをゲットできていたのですね。最近では,14人に1人。変わったものです。
社会科学専攻の変化の様相を,視覚化しておきます。分子・分母の量を,正方形の面積で表した図です。
先ほども書きましたが,上記の表は,修了時点の断面を観察したものです。近頃は,非常勤講師やポスドクなど非正規からキャリアをスタートし,数年後に専任職を得るパターンが一般化していますので,その影響もあるかと思います。
また,大学教員以外の職に就く者が増えていることも考えられます。そもそも,90年代以降の大学院重点化政策は,それを想定してなされたものでした。産業界から,高度な人材に対する需要が高まるであろうと。
それは,『学校基本調査』の進路統計からも分かります。博士課程修了の就職者のうち,科学研究者,大学・短大教員以外の職に就いた者の割合を計算してみました。『学校基本調査』の進路統計の就職者には,非正規就職者も含まれます。
全体や理系ではさほど変わってませんが,人文社会系や教育系では増えているではありませんか。社会科学では,17.5%から41.8%へと,倍以上にアップしています。『学校基本調査』の原統計をみると,「その他専門・技術職」というカテゴリーの比重が増えているのですが,具体的にどういう職かは分かりません。大学教員を諦めて予備校講師になる,という院生も増えているのかも。
大学院は研究者養成を主たる機能としていますが,これから先は,そればかりを強調していては,己の存在意義を分かってもらえそうにありません。機能の拡張・多角化が求められます。研究職以外の高度専門職養成機能,リカレント学生の受け入れなど,生涯学習社会のセンターとしての機能・・・。いろいろ想起されますよね。
この点については,雑誌『教育』2014年12月号に書きました。拙稿「データでみる大学院のいま」。興味ある方は,ご覧いただけますと幸いです。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020481256
新規学校卒の大学教員採用者は,多くが博士課程修了者とみてよいでしょう。よって,上記の後者を前者で除せば,博士課程修了者の大学教員採用率の近似値が出せます。分子は文科省『学校教員統計』,分母は同省『学校基本調査』で拾うことができます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
私は,大学院重点化政策がしかれる前の1989年度と,2013年度の統計を比べてみました。専攻によって様相は異なると考えられるので,専攻別の数値も出しました。下の表は,結果の一覧です。
1989年度の博士課程修了者は5576人,新卒の大学本務教員採用者は1626人。よって,この年の大学教員採用率は29.2%となります。およそ3割。
しかし四半世紀を経た2013年度では,この値は6.1%まで下がっています。それもそのはず。分母(a)が増えているのに対し,分子(b)は減っているのですから。前者は90年代以降の大学院重点化政策,後者は少子化により採用ポストが減っているため。新卒時の断面ですが,近年の大学教員市場の閉塞化が,はっきりと可視化されています。
これは全体の傾向ですが,専攻別にみても同じです。家政系の率が高いのは,学部卒や修士卒の採用も多いためでしょう。人文・社会系は減少幅が大きく,人文科学は28.4%から4.9%,社会科学系は41.4%から7.3%への下落です。大学院重点化政策前は,社会系ドクターの4割は,修了と同時に専任ポストをゲットできていたのですね。最近では,14人に1人。変わったものです。
社会科学専攻の変化の様相を,視覚化しておきます。分子・分母の量を,正方形の面積で表した図です。
先ほども書きましたが,上記の表は,修了時点の断面を観察したものです。近頃は,非常勤講師やポスドクなど非正規からキャリアをスタートし,数年後に専任職を得るパターンが一般化していますので,その影響もあるかと思います。
また,大学教員以外の職に就く者が増えていることも考えられます。そもそも,90年代以降の大学院重点化政策は,それを想定してなされたものでした。産業界から,高度な人材に対する需要が高まるであろうと。
それは,『学校基本調査』の進路統計からも分かります。博士課程修了の就職者のうち,科学研究者,大学・短大教員以外の職に就いた者の割合を計算してみました。『学校基本調査』の進路統計の就職者には,非正規就職者も含まれます。
全体や理系ではさほど変わってませんが,人文社会系や教育系では増えているではありませんか。社会科学では,17.5%から41.8%へと,倍以上にアップしています。『学校基本調査』の原統計をみると,「その他専門・技術職」というカテゴリーの比重が増えているのですが,具体的にどういう職かは分かりません。大学教員を諦めて予備校講師になる,という院生も増えているのかも。
大学院は研究者養成を主たる機能としていますが,これから先は,そればかりを強調していては,己の存在意義を分かってもらえそうにありません。機能の拡張・多角化が求められます。研究職以外の高度専門職養成機能,リカレント学生の受け入れなど,生涯学習社会のセンターとしての機能・・・。いろいろ想起されますよね。
この点については,雑誌『教育』2014年12月号に書きました。拙稿「データでみる大学院のいま」。興味ある方は,ご覧いただけますと幸いです。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020481256
2015年10月24日土曜日
年齢層別の貧困率の国際比較
貧困率。いわずとも知れた指標です。国内の年収の中央値の半分に満たない世帯で暮らす人間が,全体の何%いるかです。
年収の中央値の半分ですが,最近の日本でいうと,おおよそ200万円ちょっとというところです。このライン(貧困線)に満たない年収の世帯に属する人間は,貧困者と判定されます。この相対的貧困者が全国民に占める割合(相対的貧困率)は,だいたい15%,6~7人に1人といわれています。
これは国民全体の数値ですが,この意味の貧困率は,年齢層によって違います。子ども,青年,壮年,中年,そして高齢者。こういう年代別の数値は,あまり見かけません。国別データとなると,なおさら。
しかし,有効な貧困対策を打ち立てるには,こういう細かいデータの観察も必要でしょう。希少な資源をどこに重点的に振り当てるかを考えるにあたっても,ぜひとも見ておきたいデータです。
OECDの「Income Distribution Database(IDD)」というサイトにて,それを知ることができます。データベースをちょっと操作することで,各国の年齢層別の貧困率を呼び出すことができます。
http://www.oecd.org/social/income-distribution-database.htm
私は,2009年のデータを採集しました。やや古いですが,日本の最新の数値が2009年となっていますので,他国もこれに合わせました。オーストラリア,メキシコ,ロシアの3国は2009年の数値がないので,翌年の2010年のデータを拾っています。
下に掲げるのは,35か国の年齢層別の貧困率です。繰り返しますが,年収が中央値の半分に満たない世帯で暮らす者が全体の何%かです。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしました。赤字は上位5位です。
日本の貧困率は,76歳以上の高齢層が最も高くなっています。22.8%で,35か国の中で5位です。その次の要注意層は,18~25歳の青年層です(18.7%)。近年の青年層の貧困化を思うと,さもありなんですね。
しかし青年層の貧困率がもっと高い国があり,トップはノルウェーです。スウェーデンやデンマークも上位に入っています。高福祉社会ですが,若者にかかる税金が重いのでしょうか(今回の国際統計は,税引き後の年収に依拠して算出されています)。
チリ,イスラエル,スペイン,トルコ,ロシアなどでは,0~17歳の子どもの貧困率が最も高くなっています。子どものいる世帯に,資源の再配分の重きを置くべき社会です。
イスラエルとメキシコは赤字がたくさんで,国民の貧困化が激しいようです。その逆は,北欧のデンマーク。
子どもの貧困率ですが,全体でみたら日本は15.7%,およそ6人に1人ですが,一人親世帯に限ると50%を超えます。2人に1人で,これは世界トップです。わが国では,両親のいる標準家庭を前提に諸々の制度設計がされているので,一人親世帯は困難に直面するのでしょう。一人親世帯の貧困化が最も進んだ社会。この点は,押さえておくべきかと思います。詳細は,4月8日の日経デュアル記事にて書きました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=4972
お隣の韓国ですが,高齢層の貧困率がメチャ高です。この国は,66歳以上というようにカテゴリーがまるまっていますが,45.5%で飛びぬけています。高齢者の2人に1人が貧困と判定されるわけです。
この儒教社会では,子が親の面倒をみる伝統があったので,高齢者は収入がなくともやっていけました。しかし最近,それが急速に崩れているといいます。しからば国による社会保障はというと,それはほぼ未整備。よって,生活苦にさらされる高齢者が増えているのでしょう。下記ツイートの図にみるように,韓国の高齢者の自殺率は激高です。
https://twitter.com/tmaita77/status/657529734771769345
韓国の高齢人口比率(65歳以上人口率)は11%ほどですが,もっと高齢化が進めば,社会の根幹が揺らぐ事態になるでしょう。しかし,高齢化レベルの点でいうと,日本のほうがはるかに進んでいます。それでいて,高齢者の貧困率が2割を超えているのですから,問題が深刻なのは,わが国も同じです。
上表の高齢者の貧困率を,高齢化レベル(高齢人口率)と関連付けて表現してみましょう。各国の高齢人口率は,国連の人口推計サイトより得ました。2010年の推計値です。これを横軸に据えます。
http://esa.un.org/unpd/wpp/
縦軸に据える高齢者の貧困率は,66歳以上の貧困率です。韓国が66歳以上にまるまっていますので,他国もそれに合わせます。2010年の65~74歳と75歳以上人口の比重を勘案して,66歳以上の貧困率に計算し直しました。
こういう布置図になります。高齢者の貧困率が高い韓国やオーストラリアも大変ですが,高齢層の量を勘案すると,右上の社会,とりわけ日本も事態が厳しいのは同じです。右下のヨーロッパ型への移行が求められます。右側へのシフト(高齢化)は不可避ですが,タテにどう動くかは,国の政策にかかっています。
今回の国際統計から,貧困対策の重点層が,社会によって異なっていることが知られます。社会は,様々な層からなります。全体観察の後に必要なのは,こうした部分観察です。
年収の中央値の半分ですが,最近の日本でいうと,おおよそ200万円ちょっとというところです。このライン(貧困線)に満たない年収の世帯に属する人間は,貧困者と判定されます。この相対的貧困者が全国民に占める割合(相対的貧困率)は,だいたい15%,6~7人に1人といわれています。
これは国民全体の数値ですが,この意味の貧困率は,年齢層によって違います。子ども,青年,壮年,中年,そして高齢者。こういう年代別の数値は,あまり見かけません。国別データとなると,なおさら。
しかし,有効な貧困対策を打ち立てるには,こういう細かいデータの観察も必要でしょう。希少な資源をどこに重点的に振り当てるかを考えるにあたっても,ぜひとも見ておきたいデータです。
OECDの「Income Distribution Database(IDD)」というサイトにて,それを知ることができます。データベースをちょっと操作することで,各国の年齢層別の貧困率を呼び出すことができます。
http://www.oecd.org/social/income-distribution-database.htm
私は,2009年のデータを採集しました。やや古いですが,日本の最新の数値が2009年となっていますので,他国もこれに合わせました。オーストラリア,メキシコ,ロシアの3国は2009年の数値がないので,翌年の2010年のデータを拾っています。
下に掲げるのは,35か国の年齢層別の貧困率です。繰り返しますが,年収が中央値の半分に満たない世帯で暮らす者が全体の何%かです。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしました。赤字は上位5位です。
日本の貧困率は,76歳以上の高齢層が最も高くなっています。22.8%で,35か国の中で5位です。その次の要注意層は,18~25歳の青年層です(18.7%)。近年の青年層の貧困化を思うと,さもありなんですね。
しかし青年層の貧困率がもっと高い国があり,トップはノルウェーです。スウェーデンやデンマークも上位に入っています。高福祉社会ですが,若者にかかる税金が重いのでしょうか(今回の国際統計は,税引き後の年収に依拠して算出されています)。
チリ,イスラエル,スペイン,トルコ,ロシアなどでは,0~17歳の子どもの貧困率が最も高くなっています。子どものいる世帯に,資源の再配分の重きを置くべき社会です。
イスラエルとメキシコは赤字がたくさんで,国民の貧困化が激しいようです。その逆は,北欧のデンマーク。
子どもの貧困率ですが,全体でみたら日本は15.7%,およそ6人に1人ですが,一人親世帯に限ると50%を超えます。2人に1人で,これは世界トップです。わが国では,両親のいる標準家庭を前提に諸々の制度設計がされているので,一人親世帯は困難に直面するのでしょう。一人親世帯の貧困化が最も進んだ社会。この点は,押さえておくべきかと思います。詳細は,4月8日の日経デュアル記事にて書きました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=4972
お隣の韓国ですが,高齢層の貧困率がメチャ高です。この国は,66歳以上というようにカテゴリーがまるまっていますが,45.5%で飛びぬけています。高齢者の2人に1人が貧困と判定されるわけです。
この儒教社会では,子が親の面倒をみる伝統があったので,高齢者は収入がなくともやっていけました。しかし最近,それが急速に崩れているといいます。しからば国による社会保障はというと,それはほぼ未整備。よって,生活苦にさらされる高齢者が増えているのでしょう。下記ツイートの図にみるように,韓国の高齢者の自殺率は激高です。
https://twitter.com/tmaita77/status/657529734771769345
韓国の高齢人口比率(65歳以上人口率)は11%ほどですが,もっと高齢化が進めば,社会の根幹が揺らぐ事態になるでしょう。しかし,高齢化レベルの点でいうと,日本のほうがはるかに進んでいます。それでいて,高齢者の貧困率が2割を超えているのですから,問題が深刻なのは,わが国も同じです。
上表の高齢者の貧困率を,高齢化レベル(高齢人口率)と関連付けて表現してみましょう。各国の高齢人口率は,国連の人口推計サイトより得ました。2010年の推計値です。これを横軸に据えます。
http://esa.un.org/unpd/wpp/
縦軸に据える高齢者の貧困率は,66歳以上の貧困率です。韓国が66歳以上にまるまっていますので,他国もそれに合わせます。2010年の65~74歳と75歳以上人口の比重を勘案して,66歳以上の貧困率に計算し直しました。
こういう布置図になります。高齢者の貧困率が高い韓国やオーストラリアも大変ですが,高齢層の量を勘案すると,右上の社会,とりわけ日本も事態が厳しいのは同じです。右下のヨーロッパ型への移行が求められます。右側へのシフト(高齢化)は不可避ですが,タテにどう動くかは,国の政策にかかっています。
今回の国際統計から,貧困対策の重点層が,社会によって異なっていることが知られます。社会は,様々な層からなります。全体観察の後に必要なのは,こうした部分観察です。
2015年10月22日木曜日
夫の家事・家族ケア分担率の国際比較
今年初めの日経デュアル記事にて,共働き夫婦の夫の家事分担率の都道府県比較をしたのですが,国際比較ができないものかと,前々から思っていました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=4493
ISSP(国際社会調査プログラム)の「家族とジェンダーに関する調査・第4回」(2012年)にて,対象者に自分とパートナーの家事時間を聞いているではありませんか。ローデータがありますので,個人単位の分布と平均値を出すことができます。後述のようにサンプルが多くとれないのですが,試算結果としてご報告します。
http://www.issp.org/index.php
この調査では,週当たりの家事時間と家族ケア時間を対象者に尋ねると同時に(Q16a,16b),パートナーのそれも問うています(Q17a,17b)。私は,自分もパートナーも有業である,25~54歳の夫の回答に注目しました。生産年齢の,共働き夫婦の夫に対象を絞った次第です。
日本の場合,上記の問い(Q16a~17b)の全てに有効回答を寄せた夫は,58人です。条件を細かく設定したのでサンプルが少なくなりましたが,この58人について,家事・家族ケア分担率を計算してみました。当人の時間とパートナーの時間の合算に占める,当人の時間の比重です。
他の主要国(米・英・西独・仏・瑞典)についても,同じ条件の夫を取り出し,家事・家族ケア分担率の分布をとってみました。サンプル数は,米が67,英が57,西独が107,仏が149,瑞典が98です。お隣の韓国は,サンプル数が50を割りましたので,分析から除いています。
少ないケース数ではありますが,共働き夫婦の夫の家事・家族ケア分担率(以下,家事分担率)の分布は,下図のようになっています。
他国に比して,日本は家事分担率が低い人が多いようです。最も多いのは,10%台となっています(赤色)。
しかし他国はそうではなく,米は40%台,英独は30%台,仏瑞は50%以上,つまり半分以上自分がしている旦那さんが最多です。
以上は分布ですが平均値(average)を出すと,日本の58人は24.3%です。アメリカは40.4%,イギリスは41.1%,西ドイツは34.9%,フランスは42.5%,スウェーデンは43.5%となります。DUAL夫婦の夫の家事分担率は,日本では2割ちょいですが,欧米では4割ほどが普通のようです。違うものですねえ。
これら6か国以外の平均値も出してみました。下図は,値が高い順に並べたランキング図です。分析対象のサンプル数が50を超える国に限っていることを申し添えます。
わが国の24.3%は,ダントツの最下位です。夫の分担率が4割という国が多く,最高の中国では48.8%とほぼ半分です。この大国では,夫婦とも同じくらいの割合で家事・家族ケアを分担するのが普通のようです。
中国が北欧を凌駕しているというのは,初めて知りました。女性のフルタイム就業率が高いので,夫婦で公平に分担しようということなのでしょう。中国では,基本的に料理は夫がするのだそうです。
http://www.news-postseven.com/archives/20131101_222679.html
今回の統計は,妻の就業形態の差を反映しているともいえます。しかし,パート就業の妻が多いことを差し引いても,日本の共働き夫婦の夫の分担率は,低いと言わざるをえません。
なぜ日本の夫は家事をしないかについては諸説がありますが,私は,男女の家事スキル格差という点に関心を持ちます。夫に手伝う意思があっても,スキルが低く戦力にならず,妻が一手に担うことになる。これは,学校における家庭科教育にかかわる問題でもあります。
中高における家庭科の男女共修実施前の世代と後の世代でどう違うか。夫の年齢別の分析もしたいところですが,サンプルがとれないので,それは叶いません。国内の『社会生活基本調査』でも,そこまではできないようです。問題意識のメモとして記しておくこととします。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=4493
ISSP(国際社会調査プログラム)の「家族とジェンダーに関する調査・第4回」(2012年)にて,対象者に自分とパートナーの家事時間を聞いているではありませんか。ローデータがありますので,個人単位の分布と平均値を出すことができます。後述のようにサンプルが多くとれないのですが,試算結果としてご報告します。
http://www.issp.org/index.php
この調査では,週当たりの家事時間と家族ケア時間を対象者に尋ねると同時に(Q16a,16b),パートナーのそれも問うています(Q17a,17b)。私は,自分もパートナーも有業である,25~54歳の夫の回答に注目しました。生産年齢の,共働き夫婦の夫に対象を絞った次第です。
日本の場合,上記の問い(Q16a~17b)の全てに有効回答を寄せた夫は,58人です。条件を細かく設定したのでサンプルが少なくなりましたが,この58人について,家事・家族ケア分担率を計算してみました。当人の時間とパートナーの時間の合算に占める,当人の時間の比重です。
他の主要国(米・英・西独・仏・瑞典)についても,同じ条件の夫を取り出し,家事・家族ケア分担率の分布をとってみました。サンプル数は,米が67,英が57,西独が107,仏が149,瑞典が98です。お隣の韓国は,サンプル数が50を割りましたので,分析から除いています。
少ないケース数ではありますが,共働き夫婦の夫の家事・家族ケア分担率(以下,家事分担率)の分布は,下図のようになっています。
他国に比して,日本は家事分担率が低い人が多いようです。最も多いのは,10%台となっています(赤色)。
しかし他国はそうではなく,米は40%台,英独は30%台,仏瑞は50%以上,つまり半分以上自分がしている旦那さんが最多です。
以上は分布ですが平均値(average)を出すと,日本の58人は24.3%です。アメリカは40.4%,イギリスは41.1%,西ドイツは34.9%,フランスは42.5%,スウェーデンは43.5%となります。DUAL夫婦の夫の家事分担率は,日本では2割ちょいですが,欧米では4割ほどが普通のようです。違うものですねえ。
これら6か国以外の平均値も出してみました。下図は,値が高い順に並べたランキング図です。分析対象のサンプル数が50を超える国に限っていることを申し添えます。
わが国の24.3%は,ダントツの最下位です。夫の分担率が4割という国が多く,最高の中国では48.8%とほぼ半分です。この大国では,夫婦とも同じくらいの割合で家事・家族ケアを分担するのが普通のようです。
中国が北欧を凌駕しているというのは,初めて知りました。女性のフルタイム就業率が高いので,夫婦で公平に分担しようということなのでしょう。中国では,基本的に料理は夫がするのだそうです。
http://www.news-postseven.com/archives/20131101_222679.html
今回の統計は,妻の就業形態の差を反映しているともいえます。しかし,パート就業の妻が多いことを差し引いても,日本の共働き夫婦の夫の分担率は,低いと言わざるをえません。
なぜ日本の夫は家事をしないかについては諸説がありますが,私は,男女の家事スキル格差という点に関心を持ちます。夫に手伝う意思があっても,スキルが低く戦力にならず,妻が一手に担うことになる。これは,学校における家庭科教育にかかわる問題でもあります。
中高における家庭科の男女共修実施前の世代と後の世代でどう違うか。夫の年齢別の分析もしたいところですが,サンプルがとれないので,それは叶いません。国内の『社会生活基本調査』でも,そこまではできないようです。問題意識のメモとして記しておくこととします。
2015年10月20日火曜日
食の生態学
所違えば天気が異なるのと同様,食べるものも違います。それを体系的に観察すると,「食の生態学」なんていう学問もできるのではないでしょうか。
生態学とは,生物と環境の関連を扱う学問ですが,社会学の一部問として人間生態学というのがあります。「人間と制度の空間的・時間的な分布の過程ないしは構造を,体系として捉える」ことを目指す領域です(『社会学小辞典』有斐閣,1997年,484ページ)。下位分野として都市生態学や犯罪生態学などがありますが,食の生態学というのも成り立つのではないか,と思います。
それだけ,食には地域的なバラエティーがあるのです。今回は国内の47都道府県のデータを使って,その一端を描いてみようと思います。
総務省『家計調査年報』には,主な品目別に,1世帯あたりの年間支出額が掲載されています。各県の県庁所在地のデータも分かります。私は,原表(下記サイトの表11)から6品目の数値を採集しました。下表はその一覧です。47都道府県中の最高値には黄色,最低値には青色のマークを付しています。
この表のデータを使って,3つの図表をつくってみました。順にご覧に入れましょう。まずは,納豆の年間支出額の都道府県地図です。4つの階級を設け,それぞれの県を濃淡で塗り分けてみました。
東高西低の図柄ができています。いろいろな食材の地図をつくってみましたが,地域性が最もクリアーなのは,まぎれもなく納豆です。
冬は雪で閉ざされる北国において,保存食として納豆が重宝されてきたのは,よく知られていること。近畿は真っ白ですが,あっさり嗜好の関西人は,どうもあの「ネバネバ」に抵抗があるみたいです。
次に,魚か肉かという,大雑把なタイプ分類をしてみましょう。年間支出額が「魚>肉」の県を魚派,その逆を肉派とします。上記の表によると,東京は魚より肉の支出額が多いので,肉派となります。私の郷里の鹿児島もそうです。
魚派を青,肉派をピンクで塗った地図にすると,下図のようになります。
東北は魚,西南は肉というように,おおむねきれいに分かれています。地理的ロケーションによって,こうも明瞭に分かれるのですねえ。
ただ例外もあり,若者の多い首都圏は肉派が多くなっています。西でも島根,山口,高知,佐賀は魚派です。高知が魚派というのは,よくわかる。九州では唯一,佐賀県民が魚を好んでいます。
最後に,食費全体に占める,外食費・調理品費のウェイトを計算してみましょう。単身化もあって,食の外部化・簡素化・省力化が進んでいますが,数値でみて,その比重はどれほどなのでしょう。上表の外食費と調理品費の合算を,食費全体で除して,外食・調理品依存率を県ごとに出してみました。下表は,そのランキング表です。
全国値でみると33.1%,ちょうど3分の1となっています。食全体の3分の1が,外食ないしは調理品(弁当やレトルトなど)で賄われていると。
しかし県別にみると,千葉の40.7%から青森の25.0%までのレインヂがみられます。上位5はいずれも都市県ですが,単身の若者が多いためでしょう。ちなみに私などは,この外食・調理品依存率がおそらく60%は超えると思います。今日は出勤日ですが,晩は駅前の中華料理屋で食べてくるつもりです。
『家計調査年報』の原表から,各地域の「食」の特色がいろんな角度から分かります。ここでお見せしたのは,ほんの一部です。「本県が一番!」の食材のリストを作ることもできます。精緻につくれば,食べ物の商売をしようという方の参考資料にもなるでしょう。
何度もいいますが,政府統計は国民の共有財産です。存分に活用しましょう。
2015年10月17日土曜日
若者の政府不信の国際比較
選挙年齢が20歳から18歳に引き下げられましたが,その意図は,若者の声をもっと政治に反映させよう,ということでしょう。
少子高齢化でただでさえ若者が少ないのに,彼らの投票率は低いものですから,投票所に足を運ぶ人間の年齢構成は完全な「逆ピラミッド」型になっています。高齢者によって選ばれた政治家が,高齢者のための政治をする。こんな感じでしょうか。
若者の投票率が低い原因としては,「行くのが面倒,かったるい」ということもあるでしょうが,政府に対する不信も大きいでしょう。
ISSPの2010年の環境意識調査では,「たいてい,政府の人間のすることは正しいと信じられる」という項目に対する反応を調べています(Q5a)。各国の20代の若者のうち,「そう思わない」ないしは「全くそう思わない」と答えた者の比率を出し,ランキングにすると下図のようになります。
*ISSP調査では,ドイツは東西に分けて回答が集計されています。フランドルとは,ベルギー内の地域です。イスラエルは,ユダヤ人とアラブ人に対象が分けられています。
日本の若者の政府不信率は86.0%,世界でトップです。他の先進国を大きく引き離しています。東欧も不信率が高いようですが,四半世紀前に社会がひっくり返ったことに対する不信(懐疑)が尾を引いているのでしょうか。不信率が最も低いのは,直接民主制をしいているスイスです。
ちなみに日本は,政府不信率の世代差が大きいことも特徴です。若者と高齢者の断絶の大きさは,こういう所にも出ています。それを「見える化」してみましょう。横軸に60歳以上の高齢者,縦軸に20代の若者の不信率をとった座標上に,34の社会をプロットしてみました。
実斜線は均等線ですが,多くの国がこれよりも上にあり,高齢者より若者の政治不信が強いことが知られます。しかし,アメリカやイスラエル(ユダヤ人)のように,どの逆の社会もあります。
「高齢者<若者」の世代差ですが,その程度は国によって違っています。実斜線からの垂直方向の距離で測られますが,日本はそれがマックスです。高齢者の不信率が55.5%であるのに対し,若者は86.0%,政府に対する不信の世代差が最も大きい社会です。
高齢者によって選ばれた為政者による,高齢者のための政治。こういう構図が続いてきたことに対する,「いじけ」の表れといえましょうか。
ところで,有意差ではありませんが,主要国の20代のデータを細かく分析すると,次のような傾向が出てきます。日本では,政府に不信を持っている群の選挙投票率が,そうでない群よりも低くなっています(直近の選挙に投票したか,という設問への回答による)。しかしながら,欧米諸国ではその反対なのです。政府に不信を抱いている若者のほうが,そうでない者のよりも選挙に行く率が高くなっています。
日本では「今の政府はダメ,もう放っておこう」ですが,海外では「今の政府はいかん,変えねば」となる。虐げられた現状の打開を求めるにあたって,内を向くか,外を向くかの違いです。前に,殺人率と自殺率の関連を手掛かりに,日本人の国民性は「内向型」と性格づけたことがありますが,それと通じているように思えます。
「籠る」ではなく「変える」。こういう方向転換がないと,事態はいつまでたっても同じまま。選挙年齢が18歳に下がったことに伴い,高校での政治教育により重点が置かれるそうですが,動けば変わるということを,具体的な先人の事例をもって,エネルギーにあふれた若人に教える必要があるのではないかと思います。
わが国に特徴的な病理は,若者の政府不信率がべらぼうに高いことに加えて,それが「内こもり」とつながってしまっていることです。諸外国では,政府不信の炎(怒り)が改革志向に向かうことと対照的。20代の86%という不信の剣を,社会変革の方向に仕向けたいものです。
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