2010年春の大学入学者は619,119人です(文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』)。そのうち,同年3月の高校卒業者(現役生)は517,866人です。よって,この年の大学入学者に占める現役生の比率は83.6%となります。逆にいうと,残りの16.4%は浪人生です。なお,2007年3月以前の卒業生(3浪以上=多浪生)の比率は1.4%となっています。
1月7日の記事で明らかにしたように,大学入学者に占める浪人生の比率はかなり減ってきています。18歳人口の減少により,大学に入りやすくなったためでしょう。
しかし,現在においても,入学者に占める浪人生のシェアが未だに大きい学部もあることと思います。今回は,大学入学者に占める浪人生の比率を学部別に明らかにしてみようと思います。
私は,入学者の数が千人を超える86の学部について,2010年春の入学者の組成を調べました。下図は,浪人生の比率を横軸,多浪生(3浪以上)の比率を縦軸にとった座標上に,86の学部をプロットしたものです。点線は,大学入学者全体のものです。冒頭で述べたように,X=16.4,Y=1.4です。
右上に位置するのは,浪人生,多浪生ともに多い学部です。医学部と歯学部が位置しています。医学部では,入学者のうち浪人生が42.3%,多浪生が14.1%を占めています。全体の水準(16.4%,1.4%)との差が明白です。
医療系の学部に加えて,美術学部や造形学部といった芸術系の学部も,入試の難易度が高いことが知られます。そういえば,高校の時の同級生で,3浪して東京芸術大学に入ったという人がいたなあ。チョー難関だそうです。
反対に,図の最も左下にあるのは人間生活学部です。この学部では,入学生のうち浪人生は3.6%,多浪生は0.5%しかいません。ほとんどが現役生です。
ちなみに,赤色のドットは教育学部です。浪人生の比率は15.3%,多浪生の比率は0.7%です。双方とも,平均的な水準よりも低くなっています。私としては,医学部や歯学部と同様,図の右上のほうに位置づくと思っていたのですが,思ったより入りやすいのですねえ。教員という専門職を養成する学部なのですが。7月17日の記事で,教員免許状は,理容師や調理師の免許よりも出回っているというお話をしましたが,さもありなん,という感じです。
それはさておき,学部によっては,入試地獄はまだまだ健在のようです。