2011年10月15日土曜日

非行少年の年齢構成

 警察庁の『犯罪統計書-平成22年の犯罪-』が公刊されました。犯罪者や非行少年の数が掲載された,最も公的な資料です。この資料によると,2010年の間に刑法犯で検挙・補導された10代少年の数は102,061人です(交通業過は除く)。10歳未満で,警察のお世話になる輩はそうはいないでしょうから,この年の非行少年の数とみなしてよいでしょう。
http://www.npa.go.jp/toukei/keiki/hanzai_h22/h22hanzaitoukei.htm

 この102,061人の年齢別の内訳をみると,最も多いのは15歳で20,166人となっています。比率にすると,19.8%です。非行少年のおよそ5人に1人は15歳ということになります。うーん,15歳。思春期の危機というやつでしょうか。

 ところで,一口に非行といっても,いろいろな罪種があります。コソ泥もあれば,殺人のようなシリアスなものもあります。当然,罪種によって,検挙(補導)された少年の年齢構成は大きくことなるでしょう。

 私は,12の罪種について,非行少年の年齢構成(%)を明らかにし,それをもとに折れ線グラフを描いてみました。まずは,殺人,強盗,放火,強姦,暴行,および傷害で検挙・補導された少年の年齢構成をご覧ください。罪名の横のカッコ内の数字は,検挙・補導人員の実数です。2010年の間に殺人で御用となった少年は44人ですが,このうちの29.5%が18歳であることが,図から読み取れます。


 罪種によって,折れ線の型が違っています。殺人,強盗,および強姦のような凶悪犯は,年長少年の比重が高くなっています。殺人と強盗のピークは18歳,強姦のそれは19歳です。ですが,同じ凶悪犯でも「年少型」というのがあるらしく,放火のピークは13歳にあります。

 暴行と傷害といった粗暴犯は,14歳を頂点とした山型です。2月25日の記事で明らかにしたところによると,校内暴力の加害生徒の出現率が高いのも,この年齢でした。子どもと大人の狭間にある,難しいお年頃です。親や教師のいうことに反発する,第二次反抗期もこの時期に位置しています。

 でも,14歳を過ぎると,台風が過ぎ去るがごとく,暴力犯罪の頻度が減じていきます。「14歳は暴力の季節」という表現を,何かの本で目にした記憶があります。「季節」である以上,いつかは過ぎ去ります。この時期の子どもを相手にする大人は,悠長な気構えを持ちたいものです。

 次に,残りの6罪種(脅迫,恐喝,窃盗,詐欺,わいせつ,占有離脱物横領)の折れ線をみていただきましょう。最後の「占有離脱物横領」とは,他人の占有を離れた物品を,わが物にすることです。少年による占有離脱物横領のほとんどは,放置自転車ドロボーと思われます。


 詐欺は「年長型」,わいせつは「年少型」,その他は「中間型」といえましょうか。詐欺で捕まる年長少年の中には,「オレオレ詐欺」などの片棒を担がされた者も少なくないことでしょう。

 私にとって発見であるのが,わいせつが「年少型」であることです。わいせつには,強制わいせつと公然わいせつがありますが,ほとんどが前者です。13歳の少年の強制わいせつとは,具体的にどういうものなのかしらん。電車の中で痴漢などをやらかすのでしょうか。

 窃盗や占有離脱物横領は,非行の多くを占めます。よって,全体の傾向とほぼ同じです。ピークは15歳です。

 以上,12の罪種について,非行少年の年齢構成の折れ線をご覧いただきました。この種の年齢別データは,その他の問題行動(いじめ,不登校・・・)についても得ることができます。また,各種の疾病(肥満,近視・・・)についても然りです。こうしたデータをつなぎ合わせれば,「問題行動の年齢別プロフィール図」のようなものができるかも。トライしてみようと思います。