2012年3月10日土曜日

教員のパフォーマンス指数(研修)

教員のパフォーマンス指数に戻りましょう。今回は,研修の実施頻度という観点から,各県の教員のパフォーマンスを眺めてみようと思います。

 専門職としての教員は,絶えず研修に励むことが求められます。教員採用試験の教職教養を勉強されている方はお分かりと思いますが,このことは法規の上でも規定されています。条文を引いてみましょう。

 法律に定める学校の教員は,自己の崇高な使命を深く自覚し,絶えず研究と修養に励み,その職責の遂行に努めなければならない。(教育基本法第9条第1項)
 教育公務員は,その職責を遂行するために,絶えず研究と修養に努めなければならない。(教育公務員特例法第21条第1項)

 最初の条文の「崇高な使命」という文言から,子どもを教え導く存在としての教員の職務がいかに重要あるかがうかがわれます。このことを自覚し,絶えず向上心を持っていただきたい,ということです。上記の条文は,教職教養の試験でもよく出題されます。繰り返し音読しておきましょう。「崇高」という字を漢字で書けるようにしましょう。

 文科省の『全国学力・学習状況調査』では,調査対象の小・中学校に対し,研修の実施状況について尋ねています。以下の3つの設問が含まれています。
http://www.nier.go.jp/09chousakekkahoukoku/index.htm

①:模擬授業や事例研修など,実践的な研究を行っていますか。
②:教員が,他校や外部の研修期間などの学校外での研修に積極的に参加できるようにしていますか。
③:教職員は,校内外の研修や研究会に参加し,その成果を教育活動に積極的に反映させていますか。

 これらの問いに対し「よくしている」と答えた学校の比率は,東京都の公立小・中学校の場合,順に,53.8%,49.3%,25.0%,です(2009年度調査)。実践的な研修は,半分以上の学校が「よくしている」と答えています。他の県についても同じ比率を計算しました。下表に,全国値と47都道府県の両端の値を示します。


 「よくしている」と答えた学校の比率(以下,実施率)は,県によってかなり異なっています。各県の学校の自己評価の結果ですが,この3つの指標を使って,研修面での教員のパフォーマンス指数を構成してみます。

 やり方は,前々回と同じです。各県の実施率を,47都道府県中の順位に基づいて点数化します。1~5位=10点,6~10位=9点,11~15位=8点,16~20位=7点,21~25位=6点,26~30位=5点,31~35位=4点,36~40位=3点,41~45位=2点,46~47位=1点,と換算します。

 3指標の点数の平均値をもって,研修面での教員のパフォーマンス指数とみなします。下表は,その一覧です。


 指数の最大値には黄色,最小値には青色のマークをしました。7.00以上の指数は赤色にしました。言わずもがなですが,この指数値が高いほど,研修という側面での教員のパフォーマンスが比較的良好であると評されます。

 47都道府県で指数が最も高いのは,山梨と広島です。最も低いのは滋賀です。滋賀では,それぞれの学校が自校の状況をシビアに評価した,ということも考えられます。

 ところで気になるのは,指数が最も高い山梨は,教員の離職率が最も高い県であることです(昨年の7月28日の記事を参照)。ここで出した指数は,教員への管理や過労という問題を表現するものという見方もできますが,ひとまずそれは置いておきましょう。

 最後に,上表の指数に依拠して全県を塗り分けた地図を掲げておきます。指数が4以下は黒色,4台は赤色,5台は黄色,6台は水色,7以上は白色で塗っています。


 授業面や連携・協力面の指数のマップとは,また違った模様になっていることがお分かりかと存じます。次回は,これまで明らかにしてきた3つの側面の指数を合成した,総合的なパフォーマンス指数をつくってみます。また,それが各県の子どもの学力水準とどう相関しているかも分析してみようと思います。