2013年1月3日木曜日

自殺統計の2つの見方

 晴天の正月ですが,いかがお過ごしでしょうか。私は箱根駅伝に見入っていますが,タスキをかけて疾走する青年の姿って,いいですね。仕向け方次第で,青年は「輝く」存在なんだと思います。

 さて,本ブログも始動といきましょう。年明け早々物騒ですが,自殺統計のお話です。厚労省の『人口動態統計』から,毎年の自殺者数を知ることができます。この数を人口で除した値が,いわゆる自殺率です。自殺者が出る確率を表すものであり,人々の「生きづらさ」の量を測る代表的な指標として使われます。

 ところで,もう一つの見方を立てることができます。全死因の中で自殺がどれほどを占めるかです。人が命を落とす原因がさまざまですが,そうした要因群の中で,自殺がどれほど幅を利かせているか,ということです。

 自殺率が絶対量なら,こちらは相対量ということができましょう。このような観点を据えることで,通説とは違った側面が明らかになるかもしれません。

 言葉だけではピンとこないでしょうから,具体的なデータを交えてお話しましょう。下表をみてください。人口は,2010年の『国勢調査』から分かる,同年10月1日時点のものです。bとcは2010年間の死亡者数と自殺者数であり,ソースは厚労省『人口動態統計』です。


 自殺者数を人口で除した自殺率,すなわち自殺者が出る確率は,高齢者のほうが高くなっています。55歳のお父さん世代では,リストラを苦にした自殺も少なくないことでしょう。しかし,全死亡者に占める自殺者数,つまり死因全体中の自殺比という点でいうと,こちらは若者が圧倒的に高いのです。22歳では,全死因の54.9%が自殺で占められています。

 この2つの測度を他の年齢についても出し,線でつないだグラフをつくりました。下図がそれです。


 自殺率は中高年層や高齢層で高くなっています。この点はよく知られているところです。リストラ等の勤務問題,老後の生きがい喪失・虚脱感などによるものでしょう。

 しかるに,死因中の自殺比という点でいうと,こちらは明らかに若年層で高い傾向です。ピークは,先ほど出した22歳の54.9%です。

 22歳といえば,ちょうど大学を卒業する年齢です。近年,就職失敗による大学生の自殺が社会問題化していますが,死因中の自殺比のピークがこの年齢にあるというのは,何とも象徴的である感じがします。

 若者の死因の半分が自殺。こういう社会は,日本だけなのではないでしょうか。新卒採用至上主義という,奇妙な慣行もはびこっていますし・・・。

 今後は,当局の白書にてこの指標にも注意を払っていただき,世間一般の人々の状況認識に与していただきたいと思います。なお,最近の22歳の危機については,昨年の5月21日の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。