昨日(5/5)は子どもの日でしたが,この日は毎年,子ども人口の統計について報じられます。昨日の新聞をみると,子ども数は過去最少で,東京都を除くすべての県で減少しているそうです。
国連の人口推計統計にて,今年(2015年)の日本の年齢構成を出すと,15歳未満の年少人口は12.9%,65歳以上の高齢人口は26.4%となります。子どもよりも老人が多い社会です。この値を,国際的な布置図の中に位置づけるとどうなるか。主要国だけでなく,発展途上国を含めた200の社会の比較図をつくってみました。
http://esa.un.org/unpd/wpp/unpp/panel_indicators.htm
左上にあるのは,子どもが少なく老人が多い,つまり少子高齢化が進んだ社会ですが,日本はその極地に位置しています。双六の比喩でいうと,もう「アガリ」の社会って感じです。対極の右下には,アフリカ諸国などの発展途上国が多くあります。二ジュールでは,人口の半分が15歳未満の子どもです。
点の斜線は均等線であり,この線よりも上にあるのは,子どもよりも老人が多い社会です。その数は29であり,200か国全体の14.5%に相当します。日本をはじめ,ドイツ,スウェーデン,フランス,イギリスはこのラインを超えています。
Ⅰ~Ⅲはグループごとの位置変化ですが,社会が発展するにつれて右下から左上,すなわち少子高齢化の方向にシフトします。社会の産業構造の変化(1次→2次→3次)と同様,人口の年齢構成変化も一定の方向(法則)を持っているようですが,日本の場合,その速度が速いことが特徴。赤矢印は,わが国の65年間の位置変化ですが,矢印がかなり長くなっています。この期間で,他の先進国をごぼう抜きです。こうした急激な社会変動に,制度の整備が追い付いていないことが,諸々の問題が生じることの条件となっています。
あと一つ,高齢従属係数の国際比較もしてみましょう。現役世代の負担度を表す指標としてよく使われるものであり,生産人口(15~64歳)1人につき,高齢人口が何人かです。ここでは話を分かりやすくするため,高齢者1人を何人の生産人口が支えるか,という視点でみてみます。
たとえば2015年の日本でいうと,生産人口が60.7%,高齢人口が26.4%ですから,高齢者1人を2.3人の生産人口が支えていることになります。では,他国はどうでしょう。先ほどと同じく,200の社会の大量観察をしてみます。
数的にいうと,生産人口10~20人で高齢者1人を支えている社会が最多ですが,主要国は上のほうにあり,日本はその中でも最上です。ちなみに3人のラインを切っている社会があと一つありますが,南欧のイタリアです。よく知られているように,この国も少子高齢化が加速度的に進んでいる社会なり。
割り算ではじき出される統計指標は,分子と分母の2要素によって値の水準が決まります。高齢従属係数が高いという事態は,分子が大きいケースと,分母が小さいケースの2通りを含みます。上記の図法は,これらの要素がどうであるかも観察するのに適しています。
計算に使った,元の原数値の情報もできるだけ伝えるべき。師匠の松本良夫先生が,よくおっしゃっていました。上記の図も,松本先生がよく使われていたものです。
子どもの日(昨日)ということで,人口構成の国際比較をしてみました。主要国だけではない,世界のあらゆる社会を含んだ大量観察であるのがミソです。2葉の図を資料として展示しておきたいと思います。