2018年4月11日水曜日

どれほどの労働量で社会を回しているか

 堀江貴文・落合陽一『10年後の仕事図鑑』(SBクリエイティブ)を読んでいます。AIの台頭により無くなる職業,新たに生まれる職業など,未来展望が示されていて面白い。イラストもたくさんなので,自分の将来を考えている高校生にもおススメの本です。
http://www.sbcr.jp/products/4797394573.html

 AIによって雇用が奪われるとか悲観的な見通しが多いのですが,人間が労働から解放され,己の好きなことをして過ごせるのなら,素晴らしいことではありませんか。

 しかし現状は,そういうユートピアからは程遠く,社会を回すには人々が働かないといけないのですが,その量は時代や国によって違います。ここでは労働量ということにしましょう。

 労働量は,働いている人の数(a)と労働時間(b)の掛け算で決まります。これを人口(c)で除せば,どれほどの労働量で社会を回しているかの指標になるでしょう。タイトルの問いへの答えです。

 各国の就業者数と週の平均就業時間は,ILOの統計から知ることができます。人口は,国連の人口推計サイトに出ています。これらの資料から上記の3要素(a~c)を拾って,数値を計算してみました。下表は,2015年の主要国のデータです。


 日本は就業者が約6500万人で,週の平均就業時間は39時間です。就業時間が短い印象を受けるでしょうが,これは女性や高齢者も含めた全就業者のものだからです。

 両者の積の労働量(a×b)で,1億2800万人ほどの人口(c)を養っているわけです。人口当たりの労働量は,19.68となります。均して言うと,日本は,国民1人が週19.68時間働くことで,社会を回していることになります。

他国をみると,韓国は22.59時間で日本より多くなっています。しかし欧米諸国は日本より少ない労働量で社会を動かしているようで,フランスは15.15時間です。休みなしで一週間営業したパン屋さんが罰せられるような国ですので,長時間働こうにも働けないのでしょうね。しかるに,それでも社会は回る。

 上記の国際統計資料から,79か国について,a~cの3要素を揃えることができます。同じやり方で人口あたりの労働量を計算し,高い順に配列したランキングにすると,以下の表のようになります。


 トップは中東のカタールで,マカオ,シンガポール,タイ,ベトナムといったアジア諸国が続きます。社会を動かすのに,(相対的に)多くの労働を充てている国です。

 対極の右下は,人口当たりの労働量が少ない社会で,発展途上国が多くなっています。南アフリカなど,失業率がべらぼうに高い国がほとんどで,働こうにも仕事がないのでしょう。

 人口あたりの労働量は,少なければいいというものではありません。右下の国々の多くは,物質的に貧しい暮らしを強いられています。ギリシャのように,財政破たんしている国もあります。

 そこで,豊かさという点も加味した二次元での評価をしてみましょう。一国の豊かさの代表指標は,国民1人あたりのGDP額です。2015年のGDP(米ドル)を同年の人口で除して出しました。GDPの出所は,国連の下記リンク先資料です。
https://unstats.un.org/unsd/snaama/Introduction.asp

 「労働量×豊かさ」のマトリクスでみると,それぞれの社会の性格が見えてきます。少ない労働で豊かさを享受している社会,たくさん働いているのに貧しい社会…。下図は,横軸に人口当たりの労働量(上表),縦軸に国民1人あたりのGDP額をとった座標上に,79の国を配置したものです。点線は,79か国の平均値をさします。


 左下は「少労働・貧しい」社会で,発展途上国が大半です。お隣の右下は,「多労働で貧しい」,ちょっと残念なタイプ。タイやベトナムが該当。

 右上は「多労働・豊かな」社会,言うなれば人海戦術で豊かさを得ているタイプでしょうか。日本を含むアジア諸国が多くなっています。

 最後の左上は,少労働で豊かという,ベストなタイプです。予想通りといいますか,北欧の諸国が多くなっています。社会のICT化進んでおり,人間と機械の分業が進んでいるためでしょう。デンマークは,ICT教育の最先進国です。

 時代の流れとともに,右下(多労働・貧困)から左上(少労働・豊か)に移行する社会がほとんどで,日本もこのような軌跡を歩んでいます。しかし現時点では,20世紀型の人海戦術依存を脱し切れておらず,少子高齢化が相まって,労働力不足という問題に直面しています。

 そんな中,冒頭で紹介した『10年後の仕事図鑑』は,希望を与えてくれるものです。人間と機械の分業(共存)が進み,人間が過重労働から解放され,好きなことをして生きていけるユートピアの到来可能性にわくわくします。多くの人が,古代ローマでいう有閑階級になれるわけです。

 今朝のNHKニュースで,米国では,客が商品を持って出るだけで代金がクレジットカード払いされる「無人スーパー」が導入されている,という話がありました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180410/k10011396841000.html

 私は近くのドラッグスーパーで買い物をするのですが,未精算の商品を持ち出したらブザーが鳴る防犯ゲートがついているのに,何でセルフレジにしないのだろう,という疑問をいつも持っています。夕方,ウォーキングのついでに寄ると,有人の3つのレジはいつも長蛇の列です。

 宅配だって,玄関置きで十分。私の場合,ネットで取り寄せる荷物の9割は玄関置きでよい代物です。格安の「玄関置き便」をぜひ設けてほしいです。

 どれほどの労働量で社会を回しているか,豊かさと絡めるとどうか? データでラフな見当をつけてみると,日本はまだ,その移行の途上であることが知られます。

1 件のコメント:

  1. AIが「解放」でなく「失業=絶望」として見られるのは、労働に対する給与以外のリソース分配が認められていないせいでしょうね。BIがAIに並行する事を望みたいところです。

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