2019年9月13日金曜日

ツリーマップでみる人口

 ツリーマップグラフというのをご存知でしょうか。階層化されたデータを,四角形の中の陣取りで表現する図法です。

 日本の国土は大きく8つの地方に分けられ,さらに47都道府県に細分されます。2017年の県別人口は以下のようになっています。地方ごとに色をつけています。単位は千人です。


 最も多いのは,東京都で1372万人です。東京都だけで総人口の1割,関東の7都県だけで3割が占められます。

 各地方・県の人口のシェアを,四角形の中の陣取りで表せるのは,ツリーマップグラフです。エクセルで作ってみると,以下のようになります。


 8つの地方の色分けは,上記の元データの表と揃えています。関東地方,東京都のシェアは大きいですね。東北地方6県の合算は,東京都に及びません。

 ご自分の県はいかがでしょうか。単純な棒グラフでは,全体の中での比重は分かりませんが,こういう陣取りグラフだと,それ見て取りやすくなります。私が住んでいる神奈川県は,思ったより広いんだな。最近は大阪府を抜いて,人口が2位ですので。

 赤枠は,人口上位5位です。これら5都府県の人口だけで,総人口の36.7%が占められます。人口の集中は凄まじい。しかしこれら5都府県は,面積の上ではわずかなんですよね。47都道府県の面積を,同じやり方で表現してみましょう。


 トップはダントツで北海道です。東北6県の合算よりも,北海道のほうが大きいのですね。小学校4年生の社会科の授業で,「岩手県は四国4県より大きいんだぞ」と担任に聞かされた記憶がありますが,どうやらそれは間違いのようです。郷里の鹿児島は,九州では一番広いのだな…。こうやって,陣取りにしてみると分かりやすい。

 赤枠は人口上位5位の都府県ですが,狭いエリアに人口が密集しているのですね。これら5都府県の面積は,国土全体の4.2%でしかありません。こんな狭い土地に,総人口の4割近くが住んでいると。通勤電車がぎゅうぎゅうになるはずです。東京は狭い土地を活用すべく,どんどん「空に伸びる」と言われ,タワマンが林立しています。

 以上は日本の8地方・47都道府県のツリーマップグラフの見本ですが,世界に視野を拡張してみましょうか。

 世界は大きく6つの地域に分かれ,その中に200を超える国ならびに小地域(島)が含まれます。総務省の『世界の統計2019』という資料に,231の国・小地域の人口が出ています。2017年の推計値です。これをツリーマップにしてみます。


 データの数は231と膨大ですが,人口がネグリジブルスモールの国・地域は,可視的な四角形として表れません(グラフのサイズをうんとデカくすれば別ですが)。

 大雑把な地域別にみると,アジアのシェアが大きいですね。大国の中国とインドを擁しているからです。日本もシェアが結構ありますね。2017年の世界人口ランクは11位なり。

 これは2017年の勢力図ですが,2050年には中国とインドだけで世界人口の3分の1が占められます。3人に1人が「ニーハオ」か「ナマステ」になるわけです。これら2国の言語や文化を学ぼうという機運が強まるかもしれません。

 それと,水色のアフリカの比重もどんどん増してきます。日本と対照的に,アフリカ諸国では今後も人口が直線的に増えていく見込みですので。2050年のデータをみると,インド・中国に次ぐ人口大国は,北アフリカのナイジェリアとなる予測です。

 未来の国別人口のツリーマップグラフは,『2100年の世界地図・アフラネシアの時代』(岩波新書)に載っています。昨日,横浜の紀伊国屋で立ち読みしましたが,上記の現時点の図とは,模様がかなり変わっています。
https://honto.jp/netstore/pd-book_29760291.html

 最後に,富の国別占有度を可視化してみましょうか。自由競争の社会では,人口の上でわずかの富裕層が,一国の富の大半をせしめるのが常なんですが,ワールドワイドでも同じことがいえます。

 78か国の国内総生産(GDP)の内訳を,ツリーマップグラフで表してみます。国の数は少ないですが,これら以外の小国のGDPはネグリジブルスモールですので,影響はあまりないとみていいでしょう。


 トップはアメリカ,2位は中国,3位は日本です。よく言われるように,GDPの上では,日本は世界に名だたる経済大国なり。

 赤枠の上位5位のGDPだけで,78か国の総額の55.7%が占有されています。世界の富の大半を,少数の先進国が寡占していることの表現です。人口では結構いるアフリカ諸国のGDPの割合は2.4%でしかありません。

 今後はアフリカの人口爆発が続きますので,富の分布も変わってくるのでしょうね。

 四角形の陣取りで表現するツリーマップグラフは面白いです。今回は人口やGDPのデータを使いましたが,1日の生活行動の分布を表すなんてのはどうでしょう。大きくは1次,2次,3次行動に分かたれますが,日本の生産年齢男性でみると,2次行動(仕事!)で大半が占められちゃうでしょうね。『社会生活基本調査』の平均時間のデータを使えば,この点を抉り出せます。

 中学校の総合的な学習の時間で,こういうグラフを作らせる作業をさせたらどうでしょう。社会科と数学科の内容をドッキングした総合学習です。

 中高の先生方がこのブログを見てくださっているようで,授業の教材としてデータを使わせてほしい,という依頼がたまにきます。度数分布を教えるなら,労働者の所得分布が一番。ジェンダー差や正規・非正規差に生徒も仰天し,大いに関心を寄せることでしょう。架空のテストの点数分布なんてナンセンスです。

 授業には,生徒が関心を持ちそうな題材を使う。これは揺るぎない鉄則です。