2021年5月16日日曜日

政令市格差

  前に何かの記事で,「ヨコハマ格差」という言葉を目にしたことがあります。横浜市内の区別の平均年収を提示してです。

 横浜市は国内最大の政令市で,面積も三浦半島全体より広し。この大都市を一括りにして論じるのは,いかにもおかしい。横浜市内には18の区がありますが,世帯の年収を区ごとに出してみるとかなりの差があります。

 県よりも下った細かい地域レベルの世帯年収は,総務省の『住宅土地統計』で知れます。★コチラの統計表では,9区分による世帯年収分布が明らかにできます(2018年)。私は横浜市内の普通世帯(主世帯)の年収分布中央値を区別に計算し,昨日,ツイッターで発信しました。

 大都市内部の格差は興味深いということで,多くの方が見てくださり,「他に見てみたい政令市はあるか?」と問うたところ,名古屋市,仙台市,大阪市など,多くのリクエストが寄せられました。この記事にて,まとめてお答えいたしましょう。

 私は国内の21の政令市について,普通世帯の年収分布の中央値を区別に計算しました。元の資料は,上記リンク先の統計表です。度数分布から中央値を出すやり方については,本ブログで何度も説明していますので,ここでは触れません。

 まずは,全体の構造を俯瞰できる図をご覧いただきましょう。各政令市の区別の世帯年収中央値を,縦軸の目盛りに沿って位置付けたグラフです。


 最も高いのは,横浜市の都筑区で622万円となっています。都内のマックスの千代田区をも上回るのですね。横浜市の区別の世帯年収中央値は,最高の622万円から最低の374万円までの開きがあります。これぞ「ヨコハマ格差」,この大都市の住民を一概に論じられそうにはありません。

 では,具体的な数値を見ていただきましょう。まずは札幌市から浜松市までです。各政令市の区別の中央値を,高い順に並べています


 札幌市は,中央区の年収が高いかと思いましたが,単身学生とかが多いため,全世帯でみると中ほどなのでしょうか。今回の分析では,世帯主の年齢まで統制できないのがネックです。

 東京23区はさもありなんですね。川崎市は,麻生区が2位ですか。私は多摩市に住んでいた頃,この区を通る小田急多摩線を使っていましたが,車窓をみると,小奇麗な家が碁盤の目のように並んでいました。

 次に,名古屋市から熊本市までです。


 どうでしょう。各区の経済力は,住民の健康指標や子どもの学力などと強く相関していると思われます。前にやったところ,大阪市内24区の経済力と寿命なんかは,とても強く相関していましたね。
https://tmaita77.blogspot.com/2018/04/2015.html

 今回のデータは,世帯の年齢層を統制できていない,ラフな全世帯の年収中央値ですが,経済力を媒介にした不平等の可視化に,いくぶんかは使えるかもしれません。あまり明らかにされていない政令市内部の格差として,データをみていただければと思います。