8月も末日,暦の上では夏も終わりです。
今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は49件です。夏休み中にもかかわらず,数が多くなっています。先月と同じく,暑さでネジが飛んでしまったのでしょうか。
赤字は注目事案。校外学習で水分を取らせなかった小学校教諭,灼熱下を長時間ラニングさせた中学校教諭。私の頃は,こういうことは結構ありましたが,夏の気温が上がっている今はアウトです。子どもの命に関わります。
スポーツ庁は,部活動の在り方に関する総合ガイドラインを出しています。この中で,熱中症対策について触れられています。NGな指導の事例が紹介されています。保体の教員採用試験で頻出ですので,志望者はよく見ておきましょう。
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/toushin/1402678.htm
また,虚偽ツイートの拡散させたという大阪の講師。ツイッター等をやっている先生も多いと思いますが,発信する内容にはくれぐれもご注意を。自分の教育実践の成果等を世に知らしめる便利なツールですが,身を亡ぼすきっかけにもなり得る,両刃の剣です。
大阪市は,採用予定の人に,SNSで変なことを発信しないよう,注意を呼び掛けています。こういう時代になったのですね。
明日から9月,初秋です。ありがたいことに,気温は平年並みに落ち着くとのこと。背景を,夕暮れの海辺に変えます。9月は,半ばにも背景変えする予定です。気分転換になっていいです。
<2018年8月の教員不祥事報道>
・酒飲み生徒に暴行 高校教諭を懲戒免職
(8/1,ABCテレビ,和歌山,高,男,35)
・家庭訪問で外出中にコンビニで万引 容疑の中学講師逮捕
(8/1,サンスポ,京都,中,女,25)
・女児にわいせつな行為、容疑の34歳小学校教諭逮捕
(8/1,産経,千葉,小,男,34)
・答案用紙を紛失 女性教諭を戒告(長崎県)(8/2,日テレ,長崎,高,女,27)
・川崎市教委、2教諭を減給処分 体罰・他人の自転車で帰宅
(8/3,神奈川新聞,神奈川,体罰:中男32,横領:小男43)
・わいせつ2教諭を懲戒免職 都教委
(8/3,産経,東京,わいせつ:小男26,盗撮:中男26)
・飲酒運転の中学校教諭が懲戒免職(8/4,NHK,広島,中,男,60代)
・高速バスでわいせつ容疑…中学教諭を逮捕
(8/5,サンスポ,北海道,中,男,45)
・酒気帯び運転の教諭を停職6か月(8/6,NHK,鹿児島,男,46)
・都立高の副校長を逮捕 酔った女性に準強制わいせつ容疑
(8/6,朝日,東京,高,男,59)
・生徒に暴行疑い、市立中学の男性教諭を書類送検
(8/7,神戸新聞,兵庫,中,男,30代)
・女児に強制わいせつで教諭再逮捕(8/7,NHK,静岡,小,男,56)
・盗撮・淫行と酒気帯び運転の教諭3人免職
(8/7,日刊スポーツ,熊本,盗撮:小男44,淫行:高男33,酒気帯び運転:中男31)
・部活費処理で中学教諭減給 不適正と栃木県教委処分
(8/8,下野新聞,栃木,中,男,38)
・置き忘れの財布盗む 26歳の中学講師を逮捕 (8/9,産経,奈良,中,男,26)
・バスケ部女子十数人に「ゴキブリ」などの暴言 57歳教諭を戒告
(8/9,産経,大阪,中,男,57)
・免許取り消し後もバイク通勤の女性教諭、停職6か月処分
(8/9,MBS,大阪,小,女,36)
・部下の教員の体罰を報告せず 児童の腹蹴る(8/10,産経,大阪,小,男,50)
・「エアコン使うな、教委通達」講師の虚偽ツイートが拡散
(8/10,朝日,大阪,中,男,23)
・酒気帯びで事故、支援学校の女性講師を懲戒免職
(8/10,朝日,愛知,特,女,30)
・靴にスマホ隠し小さな穴から盗撮 女子中生のスカート内
(8/10,産経,長崎,小,男,38)
・部活指導の名目で 三重の高校教諭、生徒にわいせつ行為
(8/16,朝日,三重,高,男,55)
・クレーム続出の小学教諭、児童に水取らせず
(8/17,TOKYO.MX,東京,小,男,20代)
・教諭「大学行けなくなる」 漢字テスト不合格の児童、2週間登校せず
(8/17,産経,青森,小,男)
・性的暴行:容疑で51歳中学講師を逮捕(8/19,毎日,福岡,中,男,51)
・女子高校生に淫行容疑で小学校教諭逮捕 札幌
(8/20,サンスポ,北海道,小,男,24)
・女性の下着を盗んだ疑いで神戸市立中学の教諭を逮捕
(8/20,日刊スポーツ,兵庫,中,男,53)
・裸の小学校教師を逮捕「別の女性用下着に着替えようと」と供述
(8/21,テレ朝,北海道,小,男,56)
・女子高生に淫行疑いで中学教諭を逮捕 熊本
(8/21,日刊スポーツ,熊本,中,男,31)
・高校教諭 覚醒剤使用疑い…逮捕・起訴(8/21,読売,岩手,高,男,32)
・体罰:丸亀の小学教師、処分検討 県教委
(8/21,毎日,香川,小,男,30代)
・山梨でまた教員による個人情報紛失 生徒45人分の成績など
(8/22,産経,山梨,高,女,40代)
・小学校教諭酒気帯び運転で逮捕(愛媛県)
(8/23,日テレ,愛媛,小,男,58)
・女性教諭、教え子だった少年に淫行疑い
(8/23,サンスポ,北海道,中,女,40代)
・コンビニでいなりずし盗み懲戒処分 京都の中学女性講師
(8/23,京都新聞,京都,中,女,25)
・職務放棄し神社の倉庫で発見…京都の教諭を停職6カ月処分
(8/24,産経,京都,小,男,56)
・痴漢:容疑で逮捕の講師を懲戒免職 静岡市教委
(8/24,毎日,静岡,中,男,28)
・女児の着替え盗撮疑い 小学校教諭を逮捕(8/24,産経,大阪,小,男,44)
・バルセロナで派遣校長がセクハラ 福島県が処分(8/24,産経,福島,男,54)
・長野 生徒3人乗せて速度超過 男性教諭を戒告処分
(8/24,産経,長野,高,男,57)
・中2熱中症、校舎80周走は「体罰」教諭処分へ
(8/25,読売,滋賀,中,男,31)
・勤務先で盗撮 県立高の男性教諭を懲戒免職
(8/27,tvkニュース,神奈川,高,男,30)
・女子生徒にわいせつ行為 剣道部顧問の中学教諭逮捕
(8/27,産経,滋賀,中,男,31)
・埼玉小学校教諭「欲求が勝った」少女わいせつで免職
(8/29,日刊スポーツ,埼玉,小,男,22)
・ 「誰か分からない」教諭が少女に裸画像送信させ逮捕
(8/29,日刊スポーツ,石川,小,男,39)
・男性教諭が女子児童にキス=指導担当、懲戒免職処分
(8/30,時事通信,山口,小,男,40代)
・盗撮の小学教諭ら2人免職、北海道教委
(8/30,産経,北海道,盗撮:小男37,わいせつ:高男32)
・覚醒剤巡る容疑 中学元教諭 逮捕(8/31,朝日,岩手,中,男,48)
・学習塾で女子高生の体触った疑い 高校非常勤講師を逮捕
(8/31,朝日,愛知,高,男,63)
2018年8月31日金曜日
2018年8月29日水曜日
東京への流入の増加
東京圏から地方への移住者に対し,最大300万円の補助をする制度を検討するのだそうです。どういう条件が付されるかは分かりませんが,人口の偏りを何とか是正しようと,政府も必死のようです。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34630700X20C18A8EA1000/
現在,人口の1割が東京,3割が首都圏(1都3県)に居住しています。地方では過疎,東京では過密の問題起きています。殺人的な満員電車の遠距離通勤などは,後者の典型です。
人は都市に集まる。どの社会にも当てはまる普遍則だと思いますが,東京への人口流入は,どう変化してきたのでしょう。人口移動の基本統計として,総務省の『住民基本台帳による人口移動報告』があります。年間の転入者数(a),転出者数(b),転入超過数(a-b)が,都道府県別に分かります。
転入の量の指標としては,最後の転入超過数が使われます。転入が多くても転出がそれを上回れば,結果としてマイナスになりますので。
首都圏の転入超過数は,どう推移してきたか。長期統計表をもとに,1都3県の推移をグラフにしてみました。1955~2017年の長期トレンドです。
埼玉・千葉・神奈川は,ほぼ全ての年でプラスですが,東京は浮動が大きくなっています。1950年代前半から60年代前半の高度経済成長期では,地方から若年労働者がガンガン入ってきたので(集団就職),転入超過数は大幅にプラスになっています。
しかし60年代後半になり,公害の発生など成長に陰りが見え始めると,住みにくい都心部から郊外に人口が流れるようになります。60年代後半から70年代前半は,東京から周囲の3県に人が移動した「郊外の時代」でした。当時の首都圏の人口増加率マップを描くと,都心が真っ白で郊外に行くにつれ色が濃くなる「ドーナツ化現象」が浮かび上がります。
90年代半ばまでこの状態が続きますが,それ以降,東京の転入超過数は再びプラスに転じます。2007年に9.5万人のピークになった後,リーマンショックの影響か減少し,2011年以降はまた増えています。昨年(2017年)は7.5万人で,周囲の3県を引き離しています。
昔ほどではありませんが,東京への人口流入(集中)が増しつつあります。はて,どの年齢層で増加が顕著なのでしょう。最近のボトムだった2010年と2017年の転入超過数を年齢別に出し,折れ線のグラフにしました。最近の公表資料は充実しており,細かい1歳刻みのデータが分かります。
2010年は,18歳と22歳に山がある二コブでした。大学進学と就職の流入です。しかし2017年では,22歳が突き出ています。転入超過数の増加が飛び抜けて多いのもこの年齢で,2010年の1.3万人から2017年の2.1万人に増えています。少子化で,国内の22歳人口が減っているにもかかわらずです。
22歳の若者(大卒者)が,就職の地として東京を選ぶ傾向が強まっているのでしょうか。その一方で,私の郷里・鹿児島のような地方県では,就職期の若者の流出が増しているのか。
全県の比較をやってみましょう。人口サイズが県ごとに異なるので,転入超過数の実数を比べることはできません。そこで,転入超過率という指標を出してみます。年間の転入超過数を,年始(1月1日)の人口で割った値です。
2017年の東京でいうと,20代前半の転入超過数は5万3312人で,1月1日時点の同年齢人口は67万8698人です。よって20代前半の転入超過率は,前者を後者で割って7.86%となります。人口の社会移動によって,20代前半人口が年間で7.86%増えた,ということです。わが郷里の鹿児島では,この値はマイナスになっています。
私はこのやり方で,2010年と2017年の転入超過率を都道府県別に計算しました。ベタな一覧表でなく,全県の分布を視覚的に示したグラフを見ていただきましょう。
最高から最低の幅(レインヂ)を見ると,2010年から2017年にかけて,若者の転入超過率の地域差が広がっています。東京は5.0%から7.9%にアップしていますが,秋田は-3.8%から-5.8%にダウンです。
若者を呼び寄せる都市と,若者が出ていく地方の格差が拡大しつつあります。また1位と2位の差が開いていることから,東京の「一人勝ち」が進んでいることにも注目です。
若者を吸い寄せる磁力は,働き口がどれほどあるかです。厚労省の『一般職業紹介状況』という資料によると,2010年の全国の有効求人倍率(年平均,パート含む)は0.52倍でした。リーマンショックの余波があった頃ですが,最近は人手不足もあり1.50倍まで伸びています。「求人<求職」の時代です。
しかし東京は,0.65倍から2.08倍と伸び幅が大きくなっています。2013年以降,47都道府県で首位の状態が続き,2位の福井との差もじりじり開いています。
オリンピック特需による一過性のものかもしれませんが,若者の働き口の地域格差(首都集中)が進行しているのかもしれません。「地方では仕事がない,よって都会(東京)に出る」という声もよく聞きますし。22歳の学卒人口の東京流入が増している(2番目のグラフ)は,その証左です。
エンリコ・モレッティの名著『年収は住むところで決まる-雇用とイノベーションの都市経済学』に,イノベーション都市と衰退する地方の分化が拡大するであろう,という予言がありますが,それが的中しそうで怖いです。
冒頭に戻りますが,「300万円出すよ」と言って,人々の地方移住を促すという,政府の意向(焦り)も分かります。しかし,移住先に仕事,食い扶持を稼ぐ術がないとなれば,どうしようもありません。
ネットの普及で,以前に比したら場所を選ばず働ける度合いは増していますが,全ての人がそうというわけにはいきません。人の移住を促すのもいいですが,並行して,企業の移転も後押しするべきでしょう。地方に本社を移転したら大幅減税とかね。政府のテコ入れが求められる時代です。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34630700X20C18A8EA1000/
現在,人口の1割が東京,3割が首都圏(1都3県)に居住しています。地方では過疎,東京では過密の問題起きています。殺人的な満員電車の遠距離通勤などは,後者の典型です。
人は都市に集まる。どの社会にも当てはまる普遍則だと思いますが,東京への人口流入は,どう変化してきたのでしょう。人口移動の基本統計として,総務省の『住民基本台帳による人口移動報告』があります。年間の転入者数(a),転出者数(b),転入超過数(a-b)が,都道府県別に分かります。
転入の量の指標としては,最後の転入超過数が使われます。転入が多くても転出がそれを上回れば,結果としてマイナスになりますので。
首都圏の転入超過数は,どう推移してきたか。長期統計表をもとに,1都3県の推移をグラフにしてみました。1955~2017年の長期トレンドです。
埼玉・千葉・神奈川は,ほぼ全ての年でプラスですが,東京は浮動が大きくなっています。1950年代前半から60年代前半の高度経済成長期では,地方から若年労働者がガンガン入ってきたので(集団就職),転入超過数は大幅にプラスになっています。
しかし60年代後半になり,公害の発生など成長に陰りが見え始めると,住みにくい都心部から郊外に人口が流れるようになります。60年代後半から70年代前半は,東京から周囲の3県に人が移動した「郊外の時代」でした。当時の首都圏の人口増加率マップを描くと,都心が真っ白で郊外に行くにつれ色が濃くなる「ドーナツ化現象」が浮かび上がります。
90年代半ばまでこの状態が続きますが,それ以降,東京の転入超過数は再びプラスに転じます。2007年に9.5万人のピークになった後,リーマンショックの影響か減少し,2011年以降はまた増えています。昨年(2017年)は7.5万人で,周囲の3県を引き離しています。
昔ほどではありませんが,東京への人口流入(集中)が増しつつあります。はて,どの年齢層で増加が顕著なのでしょう。最近のボトムだった2010年と2017年の転入超過数を年齢別に出し,折れ線のグラフにしました。最近の公表資料は充実しており,細かい1歳刻みのデータが分かります。
2010年は,18歳と22歳に山がある二コブでした。大学進学と就職の流入です。しかし2017年では,22歳が突き出ています。転入超過数の増加が飛び抜けて多いのもこの年齢で,2010年の1.3万人から2017年の2.1万人に増えています。少子化で,国内の22歳人口が減っているにもかかわらずです。
22歳の若者(大卒者)が,就職の地として東京を選ぶ傾向が強まっているのでしょうか。その一方で,私の郷里・鹿児島のような地方県では,就職期の若者の流出が増しているのか。
全県の比較をやってみましょう。人口サイズが県ごとに異なるので,転入超過数の実数を比べることはできません。そこで,転入超過率という指標を出してみます。年間の転入超過数を,年始(1月1日)の人口で割った値です。
2017年の東京でいうと,20代前半の転入超過数は5万3312人で,1月1日時点の同年齢人口は67万8698人です。よって20代前半の転入超過率は,前者を後者で割って7.86%となります。人口の社会移動によって,20代前半人口が年間で7.86%増えた,ということです。わが郷里の鹿児島では,この値はマイナスになっています。
私はこのやり方で,2010年と2017年の転入超過率を都道府県別に計算しました。ベタな一覧表でなく,全県の分布を視覚的に示したグラフを見ていただきましょう。
最高から最低の幅(レインヂ)を見ると,2010年から2017年にかけて,若者の転入超過率の地域差が広がっています。東京は5.0%から7.9%にアップしていますが,秋田は-3.8%から-5.8%にダウンです。
若者を呼び寄せる都市と,若者が出ていく地方の格差が拡大しつつあります。また1位と2位の差が開いていることから,東京の「一人勝ち」が進んでいることにも注目です。
若者を吸い寄せる磁力は,働き口がどれほどあるかです。厚労省の『一般職業紹介状況』という資料によると,2010年の全国の有効求人倍率(年平均,パート含む)は0.52倍でした。リーマンショックの余波があった頃ですが,最近は人手不足もあり1.50倍まで伸びています。「求人<求職」の時代です。
しかし東京は,0.65倍から2.08倍と伸び幅が大きくなっています。2013年以降,47都道府県で首位の状態が続き,2位の福井との差もじりじり開いています。
オリンピック特需による一過性のものかもしれませんが,若者の働き口の地域格差(首都集中)が進行しているのかもしれません。「地方では仕事がない,よって都会(東京)に出る」という声もよく聞きますし。22歳の学卒人口の東京流入が増している(2番目のグラフ)は,その証左です。
エンリコ・モレッティの名著『年収は住むところで決まる-雇用とイノベーションの都市経済学』に,イノベーション都市と衰退する地方の分化が拡大するであろう,という予言がありますが,それが的中しそうで怖いです。
冒頭に戻りますが,「300万円出すよ」と言って,人々の地方移住を促すという,政府の意向(焦り)も分かります。しかし,移住先に仕事,食い扶持を稼ぐ術がないとなれば,どうしようもありません。
ネットの普及で,以前に比したら場所を選ばず働ける度合いは増していますが,全ての人がそうというわけにはいきません。人の移住を促すのもいいですが,並行して,企業の移転も後押しするべきでしょう。地方に本社を移転したら大幅減税とかね。政府のテコ入れが求められる時代です。
2018年8月28日火曜日
『教職教養らくらくマスター』2020年度版
ブログタイトル下の告知板にも記してますが,拙著『教職教養らくらくマスター』(2020年度版)が実務教育出版より刊行されました。書店にも並んでいることと思います。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b370749.html
教育政策は目まぐるしく動き,法律もコロコロ変わりますので,毎年内容を更新し,今くらいの時期に刊行しています。この夏に出た2020年度試験用より,カバーデザインも刷新しました。前より,落ち着きのある体裁になったかと思います。
教職教養は,校種・教科を問わず全受験生に課されます。内容は大きく,教育原理,教育史,教育法規,教育心理,の4領域に分かれます。
大学の教職課程のテキストをちゃんと復習すればいいのですが,大学の先生が書く概論書と,教員採用試験の教職教養の間には,いささか距離があります。たとえば教育社会学は試験では出題されませんし,逆に最新の教育時事などは大学の授業で習うことはありません。試験対策に特化した本を使う必要があります。
本書は,そういう要請に応えるための本です。文章をびっちり詰めた「読む本」ではなく,どちらかといえば「見る本」に近いです。教職教養の広範な内容を「らくらくマスター」していただくため,内容の盛り方に工夫を凝らしています。
上記は学習指導の方法のテーマですが,押さえるべきキーワードを赤字で強調し,概念を原則2行以内で簡潔に説明するスタイルをとっています。附属のフィルムで赤字を隠せますので,暗記学習も可能です。
また視覚人間である私のポリシーを前面に出し,図や表を多用しています。以下は,出題頻度が高い西洋教育思想(近代)のテーマです。
過去問を見れば分かりますが,教育史は,著名な思想家の文章の正誤判定問題や,人物名と著作・業績を結び付けさせる問題に尽きます。よって,各人物の主著や思想のキーワードを知っておけば十分です。ルソーであれば,主著は『エミール』,キーワードは「子どもの発見」「消極教育」というように。
こうした学習の便に資するよう,重要人物の情報を表組で整理しています。ある人物の名前が提示されたら,即座に主著やキーワードが浮かぶようになるまで,赤字を隠したドリル学習を反復してください。
お堅い教育法規にしても,ただ条文を機械的に載せるのではなく,現場でどういうことが問題になっているか,どういう点を汲み取ってほしいかを,私の言葉で書いています。読者さんから,「フレンドリーで,暗記学習の暗さを感じさせない」という声をいただいています。
他にもアピールしたい点はありますが,これくらいにしましょう。あとは,現物を手に取ってからのお楽しみ。
今の学生は,短文に入り浸ったSNS世代ですので,長い文章を読むのが億劫という子が多いと思います。そういうことを考え,本書は「読む本」ではなく「見る本」としての性格を出しています。
こうした読みが当たったのか,本書は2007年の刊行以来,「見やすい」「分かりやすい」と好評をいただき,教職教養の売れ筋本として通っています。紀伊国屋の教員採用試験のコーナーでは,いつも最前列に平積みされてます。ありがたや。
https://twitter.com/tmaita77/status/1003819191495942144
来年の夏,教員採用試験を受験予定の学生さん,本書をぜひ手にとってください。他の会社から,分厚い電話帳みたいな参考書も出てますが,学習のスタートには,重要ポイントを精選した薄手の要点整理集がいいと思います。まずは,教職教養全体(原理,歴史,法規,心理)を大雑把に押さえることからです。
『教職教養らくらくマスター』は毎年刊行されていますが,今年はカバーデザインが変わった節目の年ですので,アナウンスさせてただきました。
現在,教員採用試験の競争率は下がっていますが,オリンピック後はまた不況になるという予測もあります。そしたら競争率は跳ね上がるでしょう。今がチャンス。受験生の皆さんの健闘を祈ります。
https://jitsumu.hondana.jp/book/b370749.html
教育政策は目まぐるしく動き,法律もコロコロ変わりますので,毎年内容を更新し,今くらいの時期に刊行しています。この夏に出た2020年度試験用より,カバーデザインも刷新しました。前より,落ち着きのある体裁になったかと思います。
教職教養は,校種・教科を問わず全受験生に課されます。内容は大きく,教育原理,教育史,教育法規,教育心理,の4領域に分かれます。
大学の教職課程のテキストをちゃんと復習すればいいのですが,大学の先生が書く概論書と,教員採用試験の教職教養の間には,いささか距離があります。たとえば教育社会学は試験では出題されませんし,逆に最新の教育時事などは大学の授業で習うことはありません。試験対策に特化した本を使う必要があります。
本書は,そういう要請に応えるための本です。文章をびっちり詰めた「読む本」ではなく,どちらかといえば「見る本」に近いです。教職教養の広範な内容を「らくらくマスター」していただくため,内容の盛り方に工夫を凝らしています。
上記は学習指導の方法のテーマですが,押さえるべきキーワードを赤字で強調し,概念を原則2行以内で簡潔に説明するスタイルをとっています。附属のフィルムで赤字を隠せますので,暗記学習も可能です。
また視覚人間である私のポリシーを前面に出し,図や表を多用しています。以下は,出題頻度が高い西洋教育思想(近代)のテーマです。
過去問を見れば分かりますが,教育史は,著名な思想家の文章の正誤判定問題や,人物名と著作・業績を結び付けさせる問題に尽きます。よって,各人物の主著や思想のキーワードを知っておけば十分です。ルソーであれば,主著は『エミール』,キーワードは「子どもの発見」「消極教育」というように。
こうした学習の便に資するよう,重要人物の情報を表組で整理しています。ある人物の名前が提示されたら,即座に主著やキーワードが浮かぶようになるまで,赤字を隠したドリル学習を反復してください。
お堅い教育法規にしても,ただ条文を機械的に載せるのではなく,現場でどういうことが問題になっているか,どういう点を汲み取ってほしいかを,私の言葉で書いています。読者さんから,「フレンドリーで,暗記学習の暗さを感じさせない」という声をいただいています。
他にもアピールしたい点はありますが,これくらいにしましょう。あとは,現物を手に取ってからのお楽しみ。
今の学生は,短文に入り浸ったSNS世代ですので,長い文章を読むのが億劫という子が多いと思います。そういうことを考え,本書は「読む本」ではなく「見る本」としての性格を出しています。
こうした読みが当たったのか,本書は2007年の刊行以来,「見やすい」「分かりやすい」と好評をいただき,教職教養の売れ筋本として通っています。紀伊国屋の教員採用試験のコーナーでは,いつも最前列に平積みされてます。ありがたや。
https://twitter.com/tmaita77/status/1003819191495942144
来年の夏,教員採用試験を受験予定の学生さん,本書をぜひ手にとってください。他の会社から,分厚い電話帳みたいな参考書も出てますが,学習のスタートには,重要ポイントを精選した薄手の要点整理集がいいと思います。まずは,教職教養全体(原理,歴史,法規,心理)を大雑把に押さえることからです。
『教職教養らくらくマスター』は毎年刊行されていますが,今年はカバーデザインが変わった節目の年ですので,アナウンスさせてただきました。
現在,教員採用試験の競争率は下がっていますが,オリンピック後はまた不況になるという予測もあります。そしたら競争率は跳ね上がるでしょう。今がチャンス。受験生の皆さんの健闘を祈ります。
2018年8月26日日曜日
母子家庭・父子家庭からの非行少年出現率
子育て年代の離婚率の増加もあって,最近では,18歳未満の子どもの7人に1人が,一人親世帯の子です。
日本は,一人親世帯に困難が凝縮する社会で,子どもの貧困率は,子ども全体では6人に1人ですが,一人親世帯に限ると半分を超えます。一人親世帯の子どもの貧困率は,世界でトップです。子どもの貧困率の増加は,一人親世帯が増えていることにもよります。
経済的に苦しい状況に置かれるわけですが,そういう生活条件が,子どもの育ちに影を落とすこともあります。問題行動の頻度とも関連しており,非行との相関については,データではっきりと可視化できます。
家庭環境と非行というのは,犯罪社会学の古典的テーマで,この分野の入門書を開くと必ず,「家庭環境」というチャプターが設けられているはずです。その関連の仕方というのは,親子関係の有様ののような,情緒的・内面的な部分に注視されがちですが,もっと基底的な家庭の形態面(構造面)に焦点を当てることも必要です。たとえば,親がいるかどうかです。
昔は,両親がそろってない家庭を欠損家庭といい,一般家庭と比して非行少年の出現率が高いことが,白書等でよく示されていました。現在では「欠損家庭」などという言い方はNGで,このような分析はあまり見かけなくなりましたが,警察庁の原統計では,非行少年の数が親の状態別に集計されています。「両親あり」「父あり母なし」「母あり父なし」「両親なし」,というカテゴリー区分です。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/year.html
2015年の『犯罪統計書』によると,同年中に刑法犯(交通業過除く)で検挙・補導された10代少年は4万7173人です。うち母子世帯の子は1万4851人,父子世帯の子は3030人となっています。非行少年の4割近くが,一人親世帯から出ていることになります。
同年の『国勢調査』によると,一般世帯の10代少年は1141万3988人で,うち母子世帯の子は140万301人,父子世帯の子は16万6566人です。
これで分子・分母がそろいましたので,少年全体,母子世帯,父子世帯という3グループについて,非行少年の出現率を計算できます。以下に掲げるのは,割り算の結果です。出現率の単位は‰(千人あたり)であることに注意してください。
10代少年全体では,非行少年の出現率は4.1‰ですが,母子世帯では10.6‰,父子世帯では18.2‰となっています。母子世帯は全体の2倍,父子世帯は4倍以上です。
分子の非行者数は,繰り返し捕まった少年を重複してカウントした延べ数であることに要注意ですが,父子家庭からは55人に1人の割合で非行者が出ていることになります。
これは10代全体のデータですが,上表の分母・分子(a,b)は,細かい1歳ごとに得ることもできます。10~19歳の年齢別に,3つの群の非行少年出現率(b/a)を出し,折れ線のグラフにすると以下のようになります。
最近の非行率の年齢カーブが,10代半ばに山がある型になっています。戦後初期の頃は18~19歳の年長少年で高かったのですが,時代とともに低年齢化してきています。
15歳といえば人生初の進路分化が起きる時期で,高校入試による重圧(選り分け)の影響があるのかもしれません。発達面でみても,心が大きく揺れ動く時期です。このダブルの要因の影響は大きい。
3群のカーブですが,どの年齢でも一定の開きをもって「総数<母子<父子」となっています。父子世帯の15歳少年から非行少年が出る率は29.2‰,34人に1人です。
一人親世帯の子の非行率が少年全体よりも高いのは想像していましたが,母子世帯と父子世帯の段差がここまで大きいのは驚きです。「総数-母子世帯」と「母子世帯-父子世帯」の落差が同じくらいとは…。
はて,これはどういう事情によるのか。母子世帯と父子世帯の非行の違いについてどう言われているのか,手元の犯罪学関連の文献に当たりましたが,詳細に言及しているものはありませんでした。
まあ常識的にいって,離婚で生活が荒れる度合いは,母親より父親のほうが大きいでしょう。壮年男性の自殺率を有配偶者と離別者で比べると,後者のほうが格段に高くなっています(女性は差が小さい)。そうした荒みが,子どもにも伝播するのかもしれません。
また父親の場合,仕事中心になりがちで,子どもとの接触時間もとれない。家事や育児も妻に任せきりで,妻に去られた一人になると,子どものケアもままならない。それは,年少の子どもにとって痛手になるでしょう。企業も「育児は母親がするもの」という思い込みが強いので,シングルファザーのワーク・ライフ・バランスも阻害されがちです。
一人親家庭というと脊髄反射的に母子世帯が想起され,シングルファザーの困難は陰に隠れがちです。それは低所得といった経済的事情とは異なる,生活や育児の実相に関係することです。
今回のデータは,父子世帯への支援の必要性を示唆するもので,「子どもが非行化しやすい」など偏見の文脈で読まないでいただきたいと思います。
日本は,一人親世帯に困難が凝縮する社会で,子どもの貧困率は,子ども全体では6人に1人ですが,一人親世帯に限ると半分を超えます。一人親世帯の子どもの貧困率は,世界でトップです。子どもの貧困率の増加は,一人親世帯が増えていることにもよります。
経済的に苦しい状況に置かれるわけですが,そういう生活条件が,子どもの育ちに影を落とすこともあります。問題行動の頻度とも関連しており,非行との相関については,データではっきりと可視化できます。
家庭環境と非行というのは,犯罪社会学の古典的テーマで,この分野の入門書を開くと必ず,「家庭環境」というチャプターが設けられているはずです。その関連の仕方というのは,親子関係の有様ののような,情緒的・内面的な部分に注視されがちですが,もっと基底的な家庭の形態面(構造面)に焦点を当てることも必要です。たとえば,親がいるかどうかです。
昔は,両親がそろってない家庭を欠損家庭といい,一般家庭と比して非行少年の出現率が高いことが,白書等でよく示されていました。現在では「欠損家庭」などという言い方はNGで,このような分析はあまり見かけなくなりましたが,警察庁の原統計では,非行少年の数が親の状態別に集計されています。「両親あり」「父あり母なし」「母あり父なし」「両親なし」,というカテゴリー区分です。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/year.html
2015年の『犯罪統計書』によると,同年中に刑法犯(交通業過除く)で検挙・補導された10代少年は4万7173人です。うち母子世帯の子は1万4851人,父子世帯の子は3030人となっています。非行少年の4割近くが,一人親世帯から出ていることになります。
同年の『国勢調査』によると,一般世帯の10代少年は1141万3988人で,うち母子世帯の子は140万301人,父子世帯の子は16万6566人です。
これで分子・分母がそろいましたので,少年全体,母子世帯,父子世帯という3グループについて,非行少年の出現率を計算できます。以下に掲げるのは,割り算の結果です。出現率の単位は‰(千人あたり)であることに注意してください。
10代少年全体では,非行少年の出現率は4.1‰ですが,母子世帯では10.6‰,父子世帯では18.2‰となっています。母子世帯は全体の2倍,父子世帯は4倍以上です。
分子の非行者数は,繰り返し捕まった少年を重複してカウントした延べ数であることに要注意ですが,父子家庭からは55人に1人の割合で非行者が出ていることになります。
これは10代全体のデータですが,上表の分母・分子(a,b)は,細かい1歳ごとに得ることもできます。10~19歳の年齢別に,3つの群の非行少年出現率(b/a)を出し,折れ線のグラフにすると以下のようになります。
最近の非行率の年齢カーブが,10代半ばに山がある型になっています。戦後初期の頃は18~19歳の年長少年で高かったのですが,時代とともに低年齢化してきています。
15歳といえば人生初の進路分化が起きる時期で,高校入試による重圧(選り分け)の影響があるのかもしれません。発達面でみても,心が大きく揺れ動く時期です。このダブルの要因の影響は大きい。
3群のカーブですが,どの年齢でも一定の開きをもって「総数<母子<父子」となっています。父子世帯の15歳少年から非行少年が出る率は29.2‰,34人に1人です。
一人親世帯の子の非行率が少年全体よりも高いのは想像していましたが,母子世帯と父子世帯の段差がここまで大きいのは驚きです。「総数-母子世帯」と「母子世帯-父子世帯」の落差が同じくらいとは…。
はて,これはどういう事情によるのか。母子世帯と父子世帯の非行の違いについてどう言われているのか,手元の犯罪学関連の文献に当たりましたが,詳細に言及しているものはありませんでした。
まあ常識的にいって,離婚で生活が荒れる度合いは,母親より父親のほうが大きいでしょう。壮年男性の自殺率を有配偶者と離別者で比べると,後者のほうが格段に高くなっています(女性は差が小さい)。そうした荒みが,子どもにも伝播するのかもしれません。
また父親の場合,仕事中心になりがちで,子どもとの接触時間もとれない。家事や育児も妻に任せきりで,妻に去られた一人になると,子どものケアもままならない。それは,年少の子どもにとって痛手になるでしょう。企業も「育児は母親がするもの」という思い込みが強いので,シングルファザーのワーク・ライフ・バランスも阻害されがちです。
一人親家庭というと脊髄反射的に母子世帯が想起され,シングルファザーの困難は陰に隠れがちです。それは低所得といった経済的事情とは異なる,生活や育児の実相に関係することです。
今回のデータは,父子世帯への支援の必要性を示唆するもので,「子どもが非行化しやすい」など偏見の文脈で読まないでいただきたいと思います。
2018年8月23日木曜日
大学院博士課程入学者の変化
週が明けたとおもったら,もう明日は金曜です。早いですね。自宅仕事の私がこう感じるのですから,勤め人の人は,時の流れがもっと早く感じるのではないでしょうか。
昨日の毎日新聞に,主要国の中で,日本だけ修士・博士号学位取得者が減っている,という記事が出ています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180822-00000074-mai-life
人しか資源のない日本にとってこれはイタイ,研究力の低下だ。こういうトーンですが,背景要因として,学位取得後も不安定な非正規雇用(非常勤講師,研究員…)しかなく,大学院が敬遠されているからではないか,と結ばれています。
まさにその通りです。統計でみても,大学院博士課程入学者は,2003年をピークに減少の傾向です。2003年では1万8232人でしたが,2018年春は1万4904人です。修士課程入学者も,同じ期間にかけて7万5698人から7万4096人に減っています。
2007年に水月昭道さんの『高学歴ワーキングプア-フリーター生産工場としての大学院』(光文社新書)が出たこともあり,大学院修了者,とりわけ博士号取得者の悲惨な末路が知れ渡ってきたためでしょうか。
しかし,大学院入学者は20代前半の若き学徒だけではありません。年輩の社会人もいますし,最近は留学生も増えています。
文科省統計では,大学院入学者を,伝統的学生,社会人,留学生という3つの群に分けて拾えます。伝統的学生とは,学部から修士,修士から博士へとストレートに進学する人たちです。入学者の合計から,社会人と入学者を差し引いて出せます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001011528
この3つの群に分けて,入学者の変化を観察すると,下表のようになります。
この15年間で,修士入学者は2.1%,博士入学者は18.3%も減りました。しかるに,大きく減っているのはストレートの伝統的進学群です。博士課程では,修士からのストレート進学組は,ほぼ半減しました。
その一方で,修士では留学生,博士では社会人がうんと増えています。社会人の博士課程入学者は,3952人から6374人に増え,今年春では伝統的学生よりも多くなっています。今となっては,博士入学者のマジョリティは社会人です。
大学院博士課程も,社会人のリカレント教育の場になりつつあるようですね。結構なことです。ところで,大学院は設置主体で国立,公立,私立に分かれますが,上記と同じデータをこの3群に分けて出すと,興味深い事実が分かります。
社会人が大きく増えている博士課程に注目しましょう。今年の速報データでは,設置主体別のデータはまだとれませんので,昨年春の入学者数をみてみます。
伝統的学生が減り,社会人が増えているのは国公私立共通ですが,その傾向は公立で顕著です。修士からのストレートの伝統群は6割も減り,代わって社会人入学者が186人から589人と,3倍以上に増えています。
その結果,入学者の内訳も様変わりしています。下図は,3つのグループの構成変化を帯グラフで表したものです。
変化が最もドラスティックなのは公立大学の博士課程で,社会人の割合は2003年では16.3%でしたが,昨年春では6割も占めるに至っています。国私立でも,社会人の比重が増していることに注目です。
地域と密着している公立大学は,住民のニーズを反映する度合いが高い,ということだと思われます。リカレント教育の先端を行っているのは,公立大学なんですね。何となくそうだろうなと思ってましたが,データで浮き彫りにできました。
『学校基本調査』では今年から,大学学部入学者の年齢も集計しています。ツイッターで発信しましたが,77%は18歳で,25歳以上は0.58%,30歳以上となると0.18%しかいません。
https://twitter.com/tmaita77/status/1032530831783260161
ただ,公立大学に限ると違うかもしれませんね。速報集計では,国公私別のデータは見れませんが,12月に公表される確報集計結果を楽しみに待ちましょう。
現在は,生涯学習社会。ニューズウィークの記事で,大学入学者の将来予測を出しましたが,やせ細る18歳人口を奪い合うことに躍起になる大学は,淘汰されるしかありません。少子高齢化という人口変動と同時に,社会変化の加速化という要因も,リカレント教育の普及を強く求めています。子ども期に学校で習ったことなど,すぐに陳腐化しちゃうのですから。
文科省統計で,大学院だけでなく,大学学部入学者の年齢も集計されるようになったことは,「未来形」のすがたに変身することを大学に促す姿勢の表れととれ,うれしく思います。
今から10年後,社会人,高齢者,外国人など,多様な学生でキャンパスが溢れかえっているといいなと思います。
昨日の毎日新聞に,主要国の中で,日本だけ修士・博士号学位取得者が減っている,という記事が出ています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180822-00000074-mai-life
人しか資源のない日本にとってこれはイタイ,研究力の低下だ。こういうトーンですが,背景要因として,学位取得後も不安定な非正規雇用(非常勤講師,研究員…)しかなく,大学院が敬遠されているからではないか,と結ばれています。
まさにその通りです。統計でみても,大学院博士課程入学者は,2003年をピークに減少の傾向です。2003年では1万8232人でしたが,2018年春は1万4904人です。修士課程入学者も,同じ期間にかけて7万5698人から7万4096人に減っています。
2007年に水月昭道さんの『高学歴ワーキングプア-フリーター生産工場としての大学院』(光文社新書)が出たこともあり,大学院修了者,とりわけ博士号取得者の悲惨な末路が知れ渡ってきたためでしょうか。
しかし,大学院入学者は20代前半の若き学徒だけではありません。年輩の社会人もいますし,最近は留学生も増えています。
文科省統計では,大学院入学者を,伝統的学生,社会人,留学生という3つの群に分けて拾えます。伝統的学生とは,学部から修士,修士から博士へとストレートに進学する人たちです。入学者の合計から,社会人と入学者を差し引いて出せます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tstat=000001011528
この3つの群に分けて,入学者の変化を観察すると,下表のようになります。
この15年間で,修士入学者は2.1%,博士入学者は18.3%も減りました。しかるに,大きく減っているのはストレートの伝統的進学群です。博士課程では,修士からのストレート進学組は,ほぼ半減しました。
その一方で,修士では留学生,博士では社会人がうんと増えています。社会人の博士課程入学者は,3952人から6374人に増え,今年春では伝統的学生よりも多くなっています。今となっては,博士入学者のマジョリティは社会人です。
大学院博士課程も,社会人のリカレント教育の場になりつつあるようですね。結構なことです。ところで,大学院は設置主体で国立,公立,私立に分かれますが,上記と同じデータをこの3群に分けて出すと,興味深い事実が分かります。
社会人が大きく増えている博士課程に注目しましょう。今年の速報データでは,設置主体別のデータはまだとれませんので,昨年春の入学者数をみてみます。
伝統的学生が減り,社会人が増えているのは国公私立共通ですが,その傾向は公立で顕著です。修士からのストレートの伝統群は6割も減り,代わって社会人入学者が186人から589人と,3倍以上に増えています。
その結果,入学者の内訳も様変わりしています。下図は,3つのグループの構成変化を帯グラフで表したものです。
変化が最もドラスティックなのは公立大学の博士課程で,社会人の割合は2003年では16.3%でしたが,昨年春では6割も占めるに至っています。国私立でも,社会人の比重が増していることに注目です。
地域と密着している公立大学は,住民のニーズを反映する度合いが高い,ということだと思われます。リカレント教育の先端を行っているのは,公立大学なんですね。何となくそうだろうなと思ってましたが,データで浮き彫りにできました。
『学校基本調査』では今年から,大学学部入学者の年齢も集計しています。ツイッターで発信しましたが,77%は18歳で,25歳以上は0.58%,30歳以上となると0.18%しかいません。
https://twitter.com/tmaita77/status/1032530831783260161
ただ,公立大学に限ると違うかもしれませんね。速報集計では,国公私別のデータは見れませんが,12月に公表される確報集計結果を楽しみに待ちましょう。
現在は,生涯学習社会。ニューズウィークの記事で,大学入学者の将来予測を出しましたが,やせ細る18歳人口を奪い合うことに躍起になる大学は,淘汰されるしかありません。少子高齢化という人口変動と同時に,社会変化の加速化という要因も,リカレント教育の普及を強く求めています。子ども期に学校で習ったことなど,すぐに陳腐化しちゃうのですから。
文科省統計で,大学院だけでなく,大学学部入学者の年齢も集計されるようになったことは,「未来形」のすがたに変身することを大学に促す姿勢の表れととれ,うれしく思います。
今から10年後,社会人,高齢者,外国人など,多様な学生でキャンパスが溢れかえっているといいなと思います。
2018年8月20日月曜日
女性の自殺率の国際比較
日本女性学習財団の機関紙『ウィラーン』で連載を持たせていただいています。「学びのスイッチ・データをジェンダーの視点で読み解く」というものです。
http://www.jawe2011.jp/welearn
一般販売のほか,省庁や男女共同参画の実践に取り組む団体等に配布される情報誌です。幅広い読者層ゆえか。私が書いた記事について,個別に問い合わせが来ることがあります。先月の上旬に次のようなメールがきました。
日本の女性は,大変な思いをしていると思う。女性の「生きづらさ」を可視化するデータはないか?
うーん,直球できましたね。生きづらさの指標というなら,世論調査等で分かる生活不満率や不幸率とかを思いつきますが,そういう口先の表明よりも,実際の行動の指標のほうがいいでしょう。ズバリ,自殺率です。「生きづらい」という思いを極限の行動に移した者の出現率です。
自殺率は何回も取り上げてきましたが,ジェンダーの分析は手薄だったように思います。日本の女性の生きづらさの可視化,というリクエストですので,国際比較という視点を据えましょう。
自殺率(suicide rate)とは,ある年の自殺者数が,国民10万人あたりでみて何人か,という指標です。便利になったもので,OECDの統計ポータルサイトにて,国別の計算済みの数値を呼び出すことができます。
https://stats.oecd.org/
言わずもがな,自殺率は国民の年齢構成の影響を受けます。自殺率は高齢者で高いので,粗自殺率だと,日本のように高齢化が進んだ国で自殺率は高く出ちゃいます。これはフェアではないということで,年齢調整済の自殺率(standardised rates)も得ることができます。こちらを使いましょう。以下,単に自殺率といいます。
41か国(OECD加盟36,非加盟5)のデータが出ていますが,最近の年ではデータ欠落の国が多いので,全ての国のデータが得られる2013年のデータを使います。男女の自殺率を高い順に並べたランキング表を見ていただきましょう。主要7国には色をつけました。
日本の自殺率は,男性が27.2,女性が10.6です。どの社会もそうですが,女性の自殺率は男性よりも低くなっています。
41国の中での順位はというと,男性は9位なのに対し女性は3位です。色付きの7国でみると,男女の相対順位のギャップは,スウェーデンに次いで大きくなっています。国民全体の自殺率が注目されがちですが,女性の自殺率に限ると日本は上位なんですね。先の質問者が言うように,他国に比して日本の女性は「生きづらい」のかもしれません。
それは,男性の自殺率との対比からも知られます。ある方がツイッターで,男性の自殺率を1.0としたとき女性の自殺率はいくらか,という数値を計算されてました。「女性/男性」の割り算です。それによると,日本は主要国では高いほうです。
https://twitter.com/nekoacademy0/status/1030826249910771712
上記の表から,この対男性比を計算すると,10.6/27.2=0.390となります。日本の女性の自殺率は,男性の約4割。海を隔てた大国アメリカは,5.7/21.1=0.270。日本のほうが高くなっています。
この2つをとった座標上に,上表の41か国を配置したグラフにしてみました。女性の自殺率の水準,および対男性比という,2つの基準からした評価です。
日本は右上にあり,横軸・縦軸とも,平均値(点線)を上回っています。この布置図で見る限り,日本は,女性が生きづらい社会の部類といえそうです。
右下には南米や中東の国々がありますが,これらの国の女性が安泰というのでは決してありません。客観的にみれば,女性は抑圧され,性犯罪の発生率もべらぼうに高いのですが,文化的・宗教的要因により,それを空気のように受け入れさせられている面があります。
自殺率のジェンダーの国際比較をやってみましたが,日本の「よろしくない」現状が露わになってしまいました。
日本は,女性が生きづらい社会。肌感覚でも頷けます。女性の睡眠時間,男性の家事・育児分担率はワーストで,女性に重い負担がかかっています。また,医科大学の入試で女子の点数操作がのうのうとやってのけられる国です。先ほど性犯罪の話が出ましたが,伊藤詩織さんの事件を引くまでもなく,性犯罪の隠蔽(暗数)も非常に多いと思われます。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7673.php
女性の「生きづらさ」を傍証する材料は,数多くあります。フィーリングでそれらを列挙するのは容易いですが,自殺率の国際比較というデータを添えると,説得力が増しますね。
ここでは女性全体の自殺率を観察しましたが,期待される役割は年齢によって違います。育児・介護の負担がのしかかる壮年層でみたら,日本が首位だったりして。年齢別の自殺率はWHOのデータベースから出せます。面白い知見が出ましたら,報告します。
http://www.jawe2011.jp/welearn
一般販売のほか,省庁や男女共同参画の実践に取り組む団体等に配布される情報誌です。幅広い読者層ゆえか。私が書いた記事について,個別に問い合わせが来ることがあります。先月の上旬に次のようなメールがきました。
日本の女性は,大変な思いをしていると思う。女性の「生きづらさ」を可視化するデータはないか?
うーん,直球できましたね。生きづらさの指標というなら,世論調査等で分かる生活不満率や不幸率とかを思いつきますが,そういう口先の表明よりも,実際の行動の指標のほうがいいでしょう。ズバリ,自殺率です。「生きづらい」という思いを極限の行動に移した者の出現率です。
自殺率は何回も取り上げてきましたが,ジェンダーの分析は手薄だったように思います。日本の女性の生きづらさの可視化,というリクエストですので,国際比較という視点を据えましょう。
自殺率(suicide rate)とは,ある年の自殺者数が,国民10万人あたりでみて何人か,という指標です。便利になったもので,OECDの統計ポータルサイトにて,国別の計算済みの数値を呼び出すことができます。
https://stats.oecd.org/
言わずもがな,自殺率は国民の年齢構成の影響を受けます。自殺率は高齢者で高いので,粗自殺率だと,日本のように高齢化が進んだ国で自殺率は高く出ちゃいます。これはフェアではないということで,年齢調整済の自殺率(standardised rates)も得ることができます。こちらを使いましょう。以下,単に自殺率といいます。
41か国(OECD加盟36,非加盟5)のデータが出ていますが,最近の年ではデータ欠落の国が多いので,全ての国のデータが得られる2013年のデータを使います。男女の自殺率を高い順に並べたランキング表を見ていただきましょう。主要7国には色をつけました。
日本の自殺率は,男性が27.2,女性が10.6です。どの社会もそうですが,女性の自殺率は男性よりも低くなっています。
41国の中での順位はというと,男性は9位なのに対し女性は3位です。色付きの7国でみると,男女の相対順位のギャップは,スウェーデンに次いで大きくなっています。国民全体の自殺率が注目されがちですが,女性の自殺率に限ると日本は上位なんですね。先の質問者が言うように,他国に比して日本の女性は「生きづらい」のかもしれません。
それは,男性の自殺率との対比からも知られます。ある方がツイッターで,男性の自殺率を1.0としたとき女性の自殺率はいくらか,という数値を計算されてました。「女性/男性」の割り算です。それによると,日本は主要国では高いほうです。
https://twitter.com/nekoacademy0/status/1030826249910771712
上記の表から,この対男性比を計算すると,10.6/27.2=0.390となります。日本の女性の自殺率は,男性の約4割。海を隔てた大国アメリカは,5.7/21.1=0.270。日本のほうが高くなっています。
この2つをとった座標上に,上表の41か国を配置したグラフにしてみました。女性の自殺率の水準,および対男性比という,2つの基準からした評価です。
日本は右上にあり,横軸・縦軸とも,平均値(点線)を上回っています。この布置図で見る限り,日本は,女性が生きづらい社会の部類といえそうです。
右下には南米や中東の国々がありますが,これらの国の女性が安泰というのでは決してありません。客観的にみれば,女性は抑圧され,性犯罪の発生率もべらぼうに高いのですが,文化的・宗教的要因により,それを空気のように受け入れさせられている面があります。
自殺率のジェンダーの国際比較をやってみましたが,日本の「よろしくない」現状が露わになってしまいました。
日本は,女性が生きづらい社会。肌感覚でも頷けます。女性の睡眠時間,男性の家事・育児分担率はワーストで,女性に重い負担がかかっています。また,医科大学の入試で女子の点数操作がのうのうとやってのけられる国です。先ほど性犯罪の話が出ましたが,伊藤詩織さんの事件を引くまでもなく,性犯罪の隠蔽(暗数)も非常に多いと思われます。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7673.php
女性の「生きづらさ」を傍証する材料は,数多くあります。フィーリングでそれらを列挙するのは容易いですが,自殺率の国際比較というデータを添えると,説得力が増しますね。
ここでは女性全体の自殺率を観察しましたが,期待される役割は年齢によって違います。育児・介護の負担がのしかかる壮年層でみたら,日本が首位だったりして。年齢別の自殺率はWHOのデータベースから出せます。面白い知見が出ましたら,報告します。
2018年8月17日金曜日
熱中症の死亡者数
先月末から酷暑が続きましたが,ちょっとだけ和らいできました。今日はカラッとして,幾分かは過ごしやすいです。
残念なことに,今年も熱中症による死者が続出しました。大阪では,幼い小1男児が命を落としました。灼熱下の校外学習で,乏しい語彙で体の異変を必死に訴えたそうですが,適切な対応がとられませんでした。
熱中症の死者数が連日ニュースで報じられますが,それは消防庁のものです。しかるに,死亡統計の本元は厚労省の『人口動態統計』なり。性別・年齢層別,さらには地域別といった属性別の数値も得られます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
はて,『人口動態統計』で熱中症の死亡者数を拾う場合,どの死因カテゴリーに注目すればいいのか。前から疑問に思っていたのですが,いろいろ探査した結果,「自然の過度の高温への曝露」という死因に該当するようです。細かい死因小分類のコードは「X30」です。
ネットでは,1999~2016年までのバックナンバーを閲覧できます。両端の年の「自然の過度の高温への曝露」による死亡者数を拾うと,1999年が206人,2016年が621人です。今世紀以降の日本では,熱中症による死者が3倍以上に増えています。
7月半ばから9月半ばの60日間で割ると,1日あたり10人が熱中症で命を落としている計算になります。
これは国民全体の死者数ですが,本家の厚労省統計のウリは,細かい属性別の数が分かることです。原資料では,性別・年齢層別(5歳刻み)の統計表が出ています。1999年と2016年の死者数の年齢カーブは,以下のようです。
高齢層の熱中症死亡者が増えています。ピークは両年とも80代後半ですが,1999年が34人だったのに対し,2016年は112人です。
0~4歳の乳幼児は,1999年の方が多いのですが,確かこの年,パチンコにのめり込んだ保護者が,クルマに放置した子どもを死なせる事件が続発したんじゃなかったでしたっけ。
それはさておき,熱中症の死者が大幅に増えているのは事実で,増分の多くは高齢者です。しかし人口の高齢化が進んでいるので,高齢の死者が増えているのは当然ではないか,という疑問もあるでしょう。
では,ベース人口で割った死亡率を出してみましょうか。65歳以上の熱中症死亡者は,1999年が123人,2016年が492人です。これを同年の65歳以上人口(10月時点,日本人)で割ると,以下のようになります。10万人あたりの死者数です。
1999年: 123人/2112万人=0.58人
2016年: 492人/3445万人=1.43人
人口変化を考慮した死亡率でも,高齢者の熱中症死亡率は上がっています。2.5倍の増です。リスクは高まっているとみてよいでしょう。
一昔前と今では,夏の暑さが違う。このことは,気象庁の温度データでも実証されています。先ほど1999年のデータに触れましたが,私はこの年,エアコンなしのアパートに住んでいました。扇風機をガンガン回してしのぎましたが,今なら絶対耐えられないでしょう。
「生活保護世帯にエアコン代を支給する謂れはない」などと言っている場合ではありません。この夏,電気代滞納で冷房を使えなかった,保護受給中の60代女性が熱中症で死亡する事故が起きています(札幌)。
お隣の韓国では,「冷房は基本的な福祉」という考え方のもと,電気代を値下げする決断を大統領がしたそうですが,それに追随したいものです。
http://news.livedoor.com/article/detail/15126434/
今年の夏の暑さはピークを越えたようですが,これからどんどんレベルアップしていくのかと思うと,気が滅入ります。憲法が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」の中身は,時代によって変わるのです。時代変化と制度変化の間に一定のラグが出るのは不可避ですが,猶予を許さない問題もあります。酷暑という気象条件は,人間の生命にも関わるのですから。
残念なことに,今年も熱中症による死者が続出しました。大阪では,幼い小1男児が命を落としました。灼熱下の校外学習で,乏しい語彙で体の異変を必死に訴えたそうですが,適切な対応がとられませんでした。
熱中症の死者数が連日ニュースで報じられますが,それは消防庁のものです。しかるに,死亡統計の本元は厚労省の『人口動態統計』なり。性別・年齢層別,さらには地域別といった属性別の数値も得られます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
はて,『人口動態統計』で熱中症の死亡者数を拾う場合,どの死因カテゴリーに注目すればいいのか。前から疑問に思っていたのですが,いろいろ探査した結果,「自然の過度の高温への曝露」という死因に該当するようです。細かい死因小分類のコードは「X30」です。
ネットでは,1999~2016年までのバックナンバーを閲覧できます。両端の年の「自然の過度の高温への曝露」による死亡者数を拾うと,1999年が206人,2016年が621人です。今世紀以降の日本では,熱中症による死者が3倍以上に増えています。
7月半ばから9月半ばの60日間で割ると,1日あたり10人が熱中症で命を落としている計算になります。
これは国民全体の死者数ですが,本家の厚労省統計のウリは,細かい属性別の数が分かることです。原資料では,性別・年齢層別(5歳刻み)の統計表が出ています。1999年と2016年の死者数の年齢カーブは,以下のようです。
高齢層の熱中症死亡者が増えています。ピークは両年とも80代後半ですが,1999年が34人だったのに対し,2016年は112人です。
0~4歳の乳幼児は,1999年の方が多いのですが,確かこの年,パチンコにのめり込んだ保護者が,クルマに放置した子どもを死なせる事件が続発したんじゃなかったでしたっけ。
それはさておき,熱中症の死者が大幅に増えているのは事実で,増分の多くは高齢者です。しかし人口の高齢化が進んでいるので,高齢の死者が増えているのは当然ではないか,という疑問もあるでしょう。
では,ベース人口で割った死亡率を出してみましょうか。65歳以上の熱中症死亡者は,1999年が123人,2016年が492人です。これを同年の65歳以上人口(10月時点,日本人)で割ると,以下のようになります。10万人あたりの死者数です。
1999年: 123人/2112万人=0.58人
2016年: 492人/3445万人=1.43人
人口変化を考慮した死亡率でも,高齢者の熱中症死亡率は上がっています。2.5倍の増です。リスクは高まっているとみてよいでしょう。
一昔前と今では,夏の暑さが違う。このことは,気象庁の温度データでも実証されています。先ほど1999年のデータに触れましたが,私はこの年,エアコンなしのアパートに住んでいました。扇風機をガンガン回してしのぎましたが,今なら絶対耐えられないでしょう。
「生活保護世帯にエアコン代を支給する謂れはない」などと言っている場合ではありません。この夏,電気代滞納で冷房を使えなかった,保護受給中の60代女性が熱中症で死亡する事故が起きています(札幌)。
お隣の韓国では,「冷房は基本的な福祉」という考え方のもと,電気代を値下げする決断を大統領がしたそうですが,それに追随したいものです。
http://news.livedoor.com/article/detail/15126434/
今年の夏の暑さはピークを越えたようですが,これからどんどんレベルアップしていくのかと思うと,気が滅入ります。憲法が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」の中身は,時代によって変わるのです。時代変化と制度変化の間に一定のラグが出るのは不可避ですが,猶予を許さない問題もあります。酷暑という気象条件は,人間の生命にも関わるのですから。
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