先の「中学受験」の最後で,有力大学合格者が私立校出身者に寡占される傾向にあるのは,公正の観点からしていかがなものか,という問題提起をしました。ここでは,関連する統計をお見せしたいと思います。
サンデー毎日特別増刊号『完全版・高校の実力』(2010年6月12日)から,2010年春における,全国3,987高校の東大・京大合格者数を知ることができます(この書物のデータは,教育社会学の研究者もたびたび利用しているものであり,信憑性あるものといえます)。それを総計すると,5,928人となりました。この5,928人の出身高校ですが,本当に私立校が多いのでしょうか。
上記の図によると,東大・京大合格者5,928人の48.9%が私立校出身者です。国立出身者を合わせると,54.7%,半分以上が公立校以外の出身者ということになります。文科省『学校基本調査』から分かる,同年春の高校卒業生全体では,国・私立生は30.4%しか占めていません。こうみると,母集団に比して,東大・京大合格者は,国・私立校出身者に偏しているといえます。
なお,このような傾向は以前に比して強まっているようです。苅谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ』中公新書(1995年)の63頁の資料によりますと,1975年では,東大合格者に占める私立校出身者の割合は26%です。また,東大合格者数ベスト20位の高校には,公立校も多く含まれていました。しかし,最近では上図の通りで,合格者数の上位校は,国・私立校に寡占されています。一時,こうした寡占傾向を人為的に抑制すべきだという提案がなされたほどですが,さもありなんという感じです。今後,どうなっていくのでしょうか。
当然予想されることですが,地域間でもかなりの偏りがみられます。数字は,後ほど提示いたします。