現在,朝日新聞にて,「孤族の国」という特集が組まれています。簡単にいえば,地縁,社縁はおろか,頼れる血縁者をも持たない,一人ぼっちの人間が増加する社会です。こうした傾向は,今後,生活保護者や無縁仏の増加など,多くの問題を引き起こすでしょう。社会の近代化に伴う私事化傾向は,ある意味,必然のものですが,最近のそれは,度が過ぎているように思えます。
今回は,一般世帯に占める,単独世帯の比率でもって,社会の各層に広がりつつある,孤族化の傾向を可視的に表現してみようと思います。資料は,総務省の『国勢調査』です。2005年の同調査によると,一般世帯のうち,単独世帯はおよそ1,445万世帯です。一般世帯全体に占める比率は,29.5%となります。30年前の1975年の19.4%よりも,10ポイント以上の増です。
変化の様相を,年齢層別にみてみましょう。上記の社会地図によると,若年者ほど単独世帯が多くなっています。現在,世帯主が20代の世帯では,半分以上が単独世帯です。しかし注目すべきは,単独世帯率20%台のゾーン(緑色)が,40代の部分にまで垂れてきており,一方,高齢層の部分にも浸食してきていることです。世帯の単独化(孤族化)が,上下から押し寄せています。2010年の『国勢調査』の結果を加味すると,どういう図になるでしょうか。
以前,介護は家族が担ってきましたが,現在では,社会全体でそれを担おうという考え方に変化しています。それに象徴されるように,社会制度は,社会の変化に応じて修正されねばなりません。近代以降のわが国は,2度の大変化(明治維新,敗戦後の民主化)を経験しましたが,孤族化社会の到来というのも,それに劣らぬ大変化だと思います。今,わが国は,大きな転機を迎えている,といってよいでしょう。