2010年12月30日木曜日

未婚化

 一昨日の「孤族化」の記事との関連で,今回は,「未婚化」についての統計を出してみたいと思います。いずれも,社会の私事化傾向の表れですが,未婚化は,少子高齢化の最大の原因として注目されているものです。

 なぜ未婚化が進行するかについては,女性の社会進出の増加であるとか,いろいろなことがいわれますけれども,ユニークな見解として,親元(自宅)で優雅な生活を謳歌する独身男女,いわゆるパラサイト・シングルの増殖が大きい,とするものがあります(山田昌弘教授)。

 親元にいれば,家賃など,生活の基礎経費は浮くのですから,給与のほとんどを自分の嗜好に費やせるわけです。そうした心地よい生活を捨ててまで離家して結婚するからには,相手は,それなりの経済力のある人でなければならないでしょう(とくに女性にとっては)。しかし,昨今の不況下では,そのような相手を見つけるのは至難の業です。たとえば女性にとって,親元でのパラサイト生活と同水準の生活を保障してくれる男性をゲットするのは,そうできることではありません。

 昔,たとえば高度経済成長期はどうであったかというと,親元での生活は,兄弟数が多い,ないしは世間体などの理由により,あまり心地よいものではなく,かつ,右上がりの経済成長のなか,結婚することで生活水準の上昇を大いに見込めたわけです。ですが,今日では,そうした好条件は完全になくなっています。そういうわけで,若者の親元志向がどんどん集積し,結果として,社会全体での未婚化が進行する,というわけです。

 こうした傾向が加速すれば,やがては,若者のみならず,中年層,高齢層にも未婚者が増えてくることでしょう。例の社会地図で,その様相をみてみましょう。計算するのは,未婚率です。2005年の総務省『国勢調査』によると,私と同年齢層(30代前半)の未婚者数は約232万人です。同年の当該年齢人口で除して,未婚率は47.1%と算出されます。およそ半分に迫る勢いです。


 上図は,男性の年齢層別の未婚率を俯瞰したものです。2010年以降は,国立社会保障・人口問題研究所の『日本の世帯数の将来推計(2008年3月推計)』に依拠しています。なお,凡例の最高区分は「60~70%」となっていますが,上限はなく,「60%以上」と読み替えてください。

 1975年頃までは,加齢とともに未婚率がきれいに減少していくパターンでした。しかし,それ以降,離婚率の高率ゾーンが徐々に下へと垂れてきます。20年後の2030年では,50代の2~3割,60代や70代でも1割ないしは2割が未婚者という社会になることが予想されます。

 先の山田教授は,著書『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書(1999年)において,親同居税を課して,若者の自立を促すべきであると主張されていますが,このような強硬手段をとらねばならないような時代がきているのかもしれません。もっとも,未婚化の原因が,もっぱらパラサイト・シングルの増殖にある,という仮定においてですが。