前回は,児童相談所に寄せられた相談のうち,養護相談の件数の統計を分析しました。今回は,不登校といじめに関連する相談の件数に注目しようと思います。統計の出所は,厚労省の『社会福祉行政業務報告』の各年次版です。
まずは,これらの事由に関する相談の件数が,どう推移してきたのかをみてみましょう。当局の統計に,「不登校」や「いじめ」という言葉が出てきたのは,1990年代以降のことです。
左欄は,件数の実数の推移をとったものです。予想に反してといいますか,双方の事由とも,相談件数が減少の一途をたどっています。20歳未満の子ども人口で除した比率でみても然りです。まあ,文科省の統計から分かる,不登校の児童・生徒の数や,いじめの認知件数も最近は減ってきていますので,殊更におかしい,ということはありません。
近年,これらの問題行動への対応に本腰が入れられるようになっています。不登校については,学校外の教育施設で指導を受けた日数を,学校の指導要録上の出席日数としてカウントするなど,柔軟な対応がとられるようになっています。いじめについては,2006年10月の文科省通知にて,加害者に対して毅然とした対応をとるなどの方針が明示されています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06102402/001.htm
上記の統計は,これらの政策的努力の賜物である,という見方もできるでしょう。
これらの事由に関する相談は,どの年齢の子どもで多いのでしょうか。2009年度の不登校でみると,最も多いのは,13歳の子どもに関する相談で1,475件となっています。当該年度の不登校相談件数(6,878件)の21.5%を占めます。不登校相談の5件に1件は,13歳の子どもに関するものであることになります。
この年の13歳人口は約118万人です。よって,ベース人口1万人あたりの相談件数に換算すると,12.5件となります。子どもの人口全体でみた比率(3.0件)の4倍以上です。13歳といえば,中学校に上がる年です。「中1ギャップ」という言葉がありますが,学校不適応の問題は,この年齢の子どもで起きる確率が高いようです。
こうした年齢別のデータを,上表の各年次について算出し,例の社会地図で表現してみます。不登校といじめの図を立て続けに展示いたします。
どの年でみても,13~14歳あたりの相談率が高くなっています。不登校の図をみると,緑色以上のゾーンが川のように横切っています。人生の関門といいますか,この(危険な)川を,全ての子どもが渡らなければならないことになります。ここでつまずかせないためにも,中学校入学当初では,適応上の支援などが要請されるところです。このことは,中学校学習指導要領にも記載されています。
ところで,いじめの相談率は,10歳未満の低年齢の段階では低いようです。しかるに,11月18日の記事でみたように,潜在的ないじめ被害者は,低年齢の児童ほど大きいと推測されます。にもかかわらず,相談の件数が少ないということは,当人のSOSを保護者や教師が把握し得ていない可能性が示唆されます。低年齢の児童は,言語能力に乏しいだけに,とりわけ綿密な配慮が求められるでしょう。
今回は,不登校やいじめといった問題行動の相談件数をみましたが,他にも,性格行動や適性に関する相談件数など,面白い統計があります。展示したい社会地図はまだまだあるのですが,次回は,主題を変えることにしましょう。