2012年9月12日水曜日

232職業の女性率・非正規率

 職業とは,人間のアイデンティティの拠り所となるものですが,現在の日本には,どれくらいの数の職業が存在するのでしょう。2010年の総務省『国勢調査』の職業小分類では,232の職業カテゴリーが設けられ,各々に従事している者の数が計上されています。また,それぞれの職業従事者のうち,女性が何人,非正規形態の就業者が何人ということも分かります。

 学校の教員や医師・法曹等について,女性比率と非正規就業者率を計算してみました。非正規就業者とは,「労働者派遣授業所の派遣社員」と「パート・アルバイト・その他」という就業形態カテゴリーを足し合わせたものです。下記サイトの表7-1から数字を採集し,統計をつくりました。抽出速報結果であるため,粗い数字になっていることに注意ください。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001032402&cycode=0


 小学校教員は40万8千人。幼稚園から大学までの教員数を合算すると,128万1千人。結構な数ですね。全国民を1億2千万人とすると,国民94人につき1人がこれらの学校の教員ということになります。一方,裁判官や弁護士のような法曹はわずか2万6千人。国民4,598人に1人です。

 女性比率をみると,教員では,下の段階の学校ほど値が高くなっています。保育士や幼稚園教員は,9割以上が女性です。小学校が6割,中学校が4割,高校が3割,大学では4人に1人というところです。

 下段の3つの職業では,女性比率はさらに低くなっています。現在,「ゴーストママ捜査線」という,女性警官(ユーレイ)が主人公のドラマが放映されていますが,警察官の女性比率は低いのですね。性犯罪やDV被害等,女性警官の対応が望まれるケースも多いとあって,現在,女性警官を増員する方針が打ち出されています。目標値は「1割(10%)」とのこと。
http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20120724-OYT8T00785.htm

 次に,右欄の非正規率に注目すると,保育士の4割が非正規就業者です。幼稚園教員は18.4%,次に高いのは大学教員で17.9%が非正規教員です。かくいう私は大学非常勤教員ですから,上表の29,600人の中に含まれることになります。法曹や警察官では,さすがに非正規雇用は皆無のようです。

 以上は,10の職業のデータですが,232の職業の全てについて,女性比率と非正規率を出してみました。結果を,視覚的な統計図でお見せします。横軸に女性比率,縦軸に非正規率をとった座標上に,232の職業をプロットしてみました。縦長の図になっていますが,これは,職業名をできるだけ多く記載するスペースをとるためのもので,他意はないことを申し添えます。点線は,就業者全体でみた女性率と非正規率を示唆します。


 赤のドットは,上表でみた保育士ならびに各学校の教員です。緑色は,医師,法曹,および警察官・海上保安官です。全職業の中での,学校教員の位置を読み取っていただきたいと思います。

 しかし,司書・学芸員の非正規率は高いのですねえ。また,介護関係職の非正規率の高さも目につきます。訪問介護職の非正規率は73.5%です。少子高齢化,生涯学習社会化が進行する中,これらの職への需要が高まっていますが,(安上がりの)非正規雇用の増加で対処されていることがうかがわれます。

 あなたの職業の位置はどこでしょう。興味ある方は,上記サイトの表7-1から,ご自身の職業の女性率,非正規率を出し,上図のドットのどれに当たるかを突き止めてみてください。10分ほどの作業です。

 なお,職業別の労働時間と給与については,昨年の9月21日の記事で明らかにしています。ソースは,2010年の厚労省『賃金構造基本統計調査』です。関心ある方は,ご覧ください。