2014年2月16日日曜日

職業別の平均年収

 最近,総務省『就業構造基本調査』の分析にのめり込んでいますが,この調査のスゴイところは,有業者の年収分布が仔細に明らかにされていることです。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 本調査でいう年収とは,「賃金,給料,手間賃,諸手当,ボーナスなど過去1年間に得た税込みの給与総額」とされています(用語解説)。自営業主の場合は,「過去1年間に事業から得た収益」です。

 これまで,年収の男女差,年齢差,正規・非正規差,地域差などをみてきたのですが,今回は,職業別の平均年収を出してみようと思います。週刊誌でよくみかけるテーマですが,ネットアンケートなどではなく,官庁統計から割り出した場合,どういう結果になるでしょうか。

 パートや派遣等の非正規を除いた正規職員に対象を絞りたいところですが,正規職員だけの年収分布を職業別に知ることはできません。ただ,年間就業日数別の集計はされているようですので,年間200日以上就業者を取り出すことにしましょう。フルタイム,ないしはそれに準じる働き方をしている人たちです。

 私は,年間200日以上就業者の年収分布を職業別に明らかにしました。手始めに,男性の医師,教員,および介護サービス職員の年収分布をみていただきましょう。


 ほう,医師はスゴイですねえ。全体の半分近くが年収1500万以上です。教員も全体よりは高くなっています。しかし介護職は明らかに低い層に多く分布しており,年収200万円台の者が最多で,5人に1人が200万未満のワープアです。

 この分布をもとに,それぞれの職業の平均年収(average)を計算してみましょう。度数分布から平均を出すやり方はご存知ですね。各階級に含まれる者の年収を,一律に中間の値とみなします。たとえば300万円台の階級の場合,一律に年収350万円と仮定するわけです。上限のない「1500万以上」の階級は,一律2000万円としましょう。

 こうした階級値の考え方に依拠すると,医師の平均年収は,次のようにして求められます。

 {(25万×0.3人)+(75万×0.1人)+・・・(2000万×46.8人)}/100.0人 ≒ 1464.2万円

 男性医師の平均年収は1464万円と算出されました(スゴイ)。男性教員は649万円,男性介護サービス職員は277万円です。ちなみに,男性の全職業の平均年収は470万円なり。

 このやり方で,男女のフルタイム有業者の平均年収を職業別に出してみました。以下に掲げるのは,その一覧表です。船舶・航空機運転従事者の女性は該当者がいないので,「**」としています。


 いかがでしょうか。年収が高い職業は,上のほうの管理職や専門職層で多いようです。男性の上位3位は,①医師(1464万円),②法人・団体役員(837万円),③管理的公務員(791万円)です,女性の上位3位は,①医師(986万円),②管理的公務員(765万円),③法務従事者(615万円)なり。

 この表は資料としてみていただくこととし,68職業の平均年収の布置図をつくってみましょう。横軸に男性,縦軸に女性の平均年収をとった座標上に,それぞれの職業を散りばめてみました。点線は,全体の平均年収を意味します。


 医師の外れっぷりのスゴイこと。あなたが就いておられる職業はどの辺りに位置しますか。プロットしてみてください。

 なお,2月9日の記事では,同じく『就業構造基本調査』のデータをもとに,職業別の生涯未婚率を出しています。今回明らかにした平均年収との相関係数を出すと,男性では-0.498という値です。年収が低い職業ほど,生涯未婚率が高い傾向が有意に認められます。女性の場合は,このような関連はみられません(+0.165)。やっぱねえ・・・。

 興味ある方は,先の記事の生涯未婚率一覧表と突き合わせて,相関図を描いてみては。学生さんにやらせてみようかな。私の授業では,学生さんに興味を持ってもらえる素材を使うことにしています。