高齢者による運転事故が多発している印象を受けます。幼い子どもが被害者となる,痛まし事件も起きています。
被害に遭った人からすれば,認知能力が衰えた高齢者の免許は強制返納させるべし,と言いたいところでしょうが,免許を持っている高齢者は数でみてどれくらいいるのでしょう。
警察庁の『運転免許統計』という資料にて,運転免許保有者の数を年齢層別に知ることができます。数種類の免許を持っている場合,上位の免許保有者に計上されますので,何らかの運転免許を持っている人間の実数(頭数)です。
https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm
免許保有者の数の年齢曲線を描くと下図のようになります。最新の2015年と10年前の2005年のカーブです。いずれも年末時点の数値です。
左側をみると,若者では免許保有者が減っています。20代でみると,この10年間で1384万人から1056万人に減っています。よく言われる,若者の「クルマ離れ」も寄与しているのでしょうか。
しかし右側をみると,高齢層の免許保有者は増えています。75歳以上の後期高齢者でみると,237万人から478万人へと倍増です。これは高齢人口が増えたことにもよるでしょうが,当該年齢人口当たりの出現率でみても,20.4%から29.6%へと増加しています。最近では,後期高齢者の3割が何らかの運転免許を持っていると。
この出現率は,都道府県別に出すことも可能です。2015年末の75歳以上の免許保有者数を,同年10月時点の当該年齢人口で除して,後期高齢者の免許保有率を都道府県別に計算してみました。分母は,総務省『国勢調査』の数値です。
最高の長野の41.1%から,最低の東京の17.79%までの幅があります。長野では5人に2人ですが,東京では6人に1人というところです。
やはり,交通網の発達した都市部では,高齢者の免許保有率は低い。まあ,他の年齢層でも同じでしょうけど。
上位は地方県ばかりですが,これらの県の郡部とかでは,クルマがないと生活に支障が出るためと思われます。こういう地域で個人タクシーとかやったらかなり儲かるような気がしますが,こういうビジネスってあるのかしら。
この問題へのアプローチは2つあり,一つは高齢者の足を確保すること。今言った個人タクシー,カー・シェアリング,高齢者向けの電動自転車などが挙げられるでしょう。3番目のものは,私の隣の部屋のお爺さんが使っています。健康にもいいそうです。
あと一つは,高齢者への物資の配達サービスの充実。最近はこの手の業者が増えており,私の卒論ゼミの教え子にも,この業界で働いている子がいます。とてもやりがいのある仕事だそうです。今後は,空を使ったドローンによる宅配も出てくるのでしょうね。
高齢者の皆さんは,これまでの運転実績を過信せず,認知能力の衰えの可能性があることをしっかり自覚して,安全運転を心がけてほしいと思います。