師走ですが,いかがお過ごしでしょうか。年末になると,大掃除やら正月の準備やらで慌ただしくなりますが,お子さんがいる家庭では,相応の役割を担わせたいものです。いわゆる,お手伝いです。
お手伝いの効用については,いろいろ言われています。家事スキルのアップはもちろん,家族と協働して事を成し遂げることで協調性が育まれる,他者への共感(思いやり)を持つことができるようになるなど。
人間は社会的動物で,他者との協働なしには生きられません。人格形成の途上にある子どもにとって,家族という小社会を協働して支える経験を持たせることは,とても重要だと思います。
データにて,お手伝いの効用の一端を垣間見てみましょう。国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2014年度)では,小・中・高校生に対し,家でどれくらい手伝いをするか尋ねています。9つの行動を提示し,それぞれの頻度を答えてもらう形式です。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/
これらの実施頻度を合成して,お手伝いの実施度を測る尺度を作成しましょう。「1」という回答には4点,「2」には3点,「3」には2点,「4」には1点のスコアを与えます。
この場合,対象者のお手伝い実施度は,9点から36点までのスコアで計測されます。全部「1」を選んだバリバリのお手伝いっ子は36点で,どれも全くしてない子は9点となる次第です。いずれかの項目に無回答がある者は,スコアの算定ができませんので,分析対象から外します。
本調査の対象は,小4~6の児童,中2と高2の生徒ですが,発達段階の影響を除くため,小4の児童に対象を限定します。年齢でいうと,おおむね10歳です。さらに,家庭環境の影響が入るのを防ぐため,年収400万以上600万未満の家庭の児童に絞ります。小4児童でみた場合,ボリュームゾーンの年収階層です。
この層に分析対象を限った場合,上記のお手伝いスコアの分布は,以下のようになります。スコアを算出できた647人の分布データです。
真ん中あたりにピークがあるノーマル分布です。これをもとに対象の児童を,お手伝い実施度「低群」,「中群」,「高群」に分けようと思いますが,どこで区切ったらいいものか。
20点以下を「低群」,21~28点を「中群」,29点以上を「高群」とするのがベストかと思います。これだと,低群が19.8%,中群が60.4%,高群が19.8%というように,両裾がちょっと薄い,ほどいい分布になります。サンプルサイズは順に128人,391人,128人であり,分析に耐え得る数です。
お手伝いの実施度で分けたこの3つのグループで,生活態度や意識がどう違うか。「お手伝いをする子どもほど,道徳意識が高い」というレポートを見たことがありますが,この点を吟味してみましょう。
「困っている人がいたら助ける」という行為の実施頻度とのクロスをとると,下図のようになります。サンプルサイズが上記と異なるのは,無回答を除いているためです。
ほう。実にクリアーな関連ですね。お手伝いをよくしている群ほど,困っている人を見かけたら助けると。
これは,家庭の経済力が普通の小4児童のデータです。家庭環境や発達段階の影響は,極力除かれています。お手伝いによる,他者への共感性の涵養というような,因果経路があることを想定してもよいのではないでしょうか。
先日のプレジデント・オンラインの家事で,都道府県別の道徳意識の定量化したのですが,トップは秋田でした。秋田は,通塾率が全国最低なのですが,その分,家庭でのお手伝い実施度が高い。地域データでも,お手伝いの効用を支持する結果が出ています。
http://president.jp/articles/-/20705
想像がつくでしょうが,他の面の道徳意識や自己イメージとも,強く関連しています。多面的な分析は,次回の『日経デュアル』記事でやることにいたしましょう。読者層は,子育て中の親御さんですしね。お楽しみに。