2019年11月17日日曜日

夫の稼ぎ割合の国際比較

 前回の続きです。前回は,アラフォー世帯の夫の稼ぎ割合を明らかにしました。40代有配偶男性の所得中央値を,40代の核家族世帯のそれで割ることによってです。その結果は76.1%で,夫と妻の稼ぎ割合は「76:24」であることが知られます。

 地域差もありますので,興味ある方は前回の記事をご覧くださいませ。最高は大阪の95.8%,最低は山形の64.4%でした。

 まあしかし,国内の地域比較なんて「どんぐりの背比べ」です。今回は世界に目を向け,国際比較をやってみようと思います。

 ISSPが毎年実施する国際意識調査では,対象者に自分の収入と世帯の収入を訊いています。25~54歳の有配偶男性の回答から両者の中央値を出し,割り算をすれば,世帯全体の収入に占める夫の寄与分が出てきます。
http://www.issp.org/data-download/by-year/

 最新の2017年調査の個票データを使って,各国の値を計算してみました。大国のアメリカを例に,計算の方法を説明します。下表は,同国の25~54歳の有配偶男性(事実婚含む)に,自分の年収と世帯の年収を尋ねた結果です。無回答,無効回答は除きます。


 ISSPの方で階級を任意に設定し,それぞれの中間の階級値が示されています。これによると,本人年収の中央値は5.5万ドル,世帯年収の中央値は10万ドルの階級に含まれることが分かります(黄色マーク)。1ドル=110円とすると,550万円,1000万円ですか。

 階級の幅が分かれば,按分比例で精度の高い中央値を出せるのですが,原資料には階級値しか出てませんので,階級の幅が分かりません。仕方がないので,中央値が属する階級の階級値を,中央値とみなすことにしましょう。

 これによると,本人年収の中央値は5.5万ドル,世帯年収の中央値は10万ドルですので,アメリカの夫の稼ぎ割合は,前者を後者で割って55.0%ということになります。この国では3世代同居はほぼ皆無でしょうから,残りの45%を妻の稼ぎとみなし,夫婦の稼ぎ割合は「55:45」という結果になります。

 同じやり方で日本の結果を出すと,「73:27」となります。前回の国内統計の結果と近似しています。アメリカと日本,だいぶ違いますね。夫婦二馬力,女性が稼げる環境の実現度合いは,社会によって異なるようです。

 日米の結果は以上ですが,他国の試算結果も見ていただきましょう。有配偶男性の本人収入中央値を,世帯収入中央値で割った値です。年収ではなく月収を問うている国もあるので,グラフの注釈では「収入」という言い回しにしています。


 トップはスイスで84.1%です。夫の稼ぎが大半のようですが,女性の社会進出がこんなに進んでなかったか。その次はスリナムで,日本の73.3%は3位となっています。

 下をみると,夫の稼ぎが半分をいかない国もあるようです。南アフリカは45.7%,インドは22.9%です。これらの国は大家族が多いので,残りが妻の稼ぎとは限らないでしょう。インドは,夫の稼ぎ寄与分は5分の1ですか。この国の旅行記を読むと,男性が怠け者で,女性があくせく働くという記述をよく見ますが。

 主要先進国をみると,アメリカは55.0%,イギリスは64.6%,ドイツは62.5%,フランスは50.0%,スウェーデンは58.1%,となっています。3世代同居は嫌われる国々なんで,残りは妻の稼ぎとみていいでしょう。フランスは夫婦半々なんですね。

 わが国には「大黒柱」という言葉がありますが,夫依存の家計が普遍的でも何でもないことが,国際比較から知られます。

 日本は夫の稼ぎ割合が高い代わりに,夫は家事をしません。しかしフランスは夫婦半々の稼ぎなんで,夫の家事をそこそこするのでしょうか。OECDの「Gender data portal 2019 Time use across the world」という資料に,1日あたりの成人男女の家事時間が出ています。男性の家事分担率を出し,上記の稼ぎ割合と絡めてみましょうか。

 下の図は,両方のデータが得られた19か国の布置図です。点線は19か国の平均値を指します。


 インドと南アフリカを除けば,概ね右下がりの傾向ですね。夫の稼ぎ割合が高い国ほど,夫は家事をしない。ある意味,道理です。フランスは夫婦の稼ぎ割合が半々で,夫は家事の4割をする社会です。日本はその対極です。価値判断を加えるなら,前者に軍配が上がるでしょう。

 しかしインドは酷いですね。夫の稼ぎ割合は低く,家事もしない…。右上は,夫が稼いで家事も頑張る社会です。北欧諸国が多し。

 夫婦の稼ぎ分担について,前回は国内の地域差,今回は国際差をみてきました。国際差はかなりラフなやり方で出した試算値ですが,日本の状況を相対視できたでしょうか。日本の「夫大黒柱型」は,21世紀の男女共同参画社会にふさわしくなく,リスクも大きい。夫が倒れたらおしまいで,妻にすれば離婚すると貧困に一直線です。

 日本のドットも,左上の方にシフトすることが望まれます。