日本は人口減少の局面に入っており,これからどんどん萎んできます。1年間の人口減少は50万人ほどで,あともうちょっとしたら1年で100万人減る時代になります。毎年,千葉市くらいの政令市がごっそり消えるのです。
その一方で,人を入れるハコ(住宅)は増え続けています。私は夕刻,ウォーキングをするのですが,建設中の住宅をちらほら見かけます。海沿いに3軒並んで一戸建てを建てているのですが,津波が来たら一発じゃないですかね…。
日本人の新築嗜好は強し。数か月前,あるファミリー(父母,子3人)が,マイホームを建てて,隣のアパートを出ていきました。先日,ママさんと会って立ち話をしたのですが,「アパーの家賃の3倍のローン(12万円)を毎月払わねばならず,死ぬ思いです」と言ってました。
見た所,結構大きな家なんで3000万円くらいでしょうか。月12万返済だと,20年かかる計算ですね。お金の面でがんじがらめにされるだけではなく,転居も制約されます。私のように気が移ろいやすく,かつ色々トラブルを起こす人間には,家を建てるというのはマイナスでしかありません。そもそもお金もないですけど。
人口減少の時代だというのに,新しい住宅が雨後の筍のように建つ。その様をデータで可視化すると,以下のようになります。住宅数は『住宅土地統計』でしか分かりませんので,この調査の実施年(5年おき)のデータを拾っています。
戦後初期の1953年からの推移です。人口は増え続けますが,2008年をピークにもう減少の局面に入っています。
住宅数はというと,戦後にかけて人口を上回る速度で増加しています。戦争で多数の家が焼かれてしまいましたので,「住」の供給は政府にとって至上命題でしたからね。しかし,人口が減り始めた最近でも増え続けています。2008年は5759万,2013年は6063万,2018年は6241万と,過去最高です。
2008年から2018年の10年間で,人口は1.3%減りましたが,住宅は8.4%増加です(右欄の指数)。今後,この乖離はますます大きくなるでしょう。
なぜこうなっているか。新築嗜好は昔も同じだったはずで,人口減少時代での住宅増加を上手く説明できません。考えられる要因は一つ,そう賃貸住宅(アパート,マンション)の増加です。家族サイズの縮小(単身化)もあり,1ルームのような狭小物件への需要が増していますし,土地の相続税対策としてアパートを建てる地主も増えていると聞きます。
しかし,そもそも借り手となる人間の数が減ってますので,賃貸経営も楽ではない。この辺のアパートも空き部屋が多く,何とか埋めようと家賃を下げまくっています。部屋2つ,風呂・トイレセパレートで5万未満の物件がゴロゴロあります。交通の便が悪いのが原因ですが,私のような自宅仕事の自営業にはありがたい限りです。とはいえ勤め人にはキツイのか,なかなか借り手がつかない。
賃貸アパートやマンションの空き部屋率,どれくらいなのでしょう。そこらの不動産屋がやった調査データは色々あるんでしょうが,官庁統計でカッシリした数値を出したい。
『住宅土地統計』の時系列統計(上記リンク先)に,共同住宅の借家数(a)と,賃貸用共同住宅の空き家数(b)が出ています。aは,居住世帯がある共同住宅借家です。両者の合算が賃貸の共同住宅の数で,これに占めるbの割合が,賃貸の共同住宅(アパート・マンション)の空き部屋率になります。
以下の表は,双方のデータがとれる1998年からの推移です。