私が,非常勤講師として大学で教え始めたのは,2005年です。当時,私は大学院を出たばかりの28歳であり,学生さんと年はあまり違いませんでした。しかし,それから6年を経て,私も34歳になり,学生さんとの年の差,少しキザにいうとGeneraiton Gapなるものを意識するようになりました。
Generationとは,世代と訳されます。同じ時期に生まれ,育ってきた社会状況を等しく共有する集団のことです。私は1976年生まれであり,1986年に10歳になり,1992年に高校に入り,1995年に上京して大学に入り,それから10年間学生をやって,2005年に大学院を終えたという具合です。
私は,青少年問題を研究テーマの一つにしており,今の子どもはああだこうだと(偉そうに)に言う機会があるのですが,「自分の頃も,結構ワルがいたよなあ…」と内心思うことがしばしばあります。私は,自分を少し客観視してみたいと思い,自分の世代が10代の間にどれほどワルをしてきたかを調べることにしました。
私の世代は,1986年に10歳となりますが,この年に警察に補導された10歳少年は2,022人です。翌年は11歳になりますが,この年に補導された11歳少年は2,627人です。以後,年を重ね,1995年に19歳となりますが,この年に警察に検挙された19歳少年は9,294人です。こうしたデータをつなぎ合わせて,自分の世代の非行歴を整理してみました。統計の出所は,警察庁の『犯罪統計書』です。
上記の表から,われわれの世代が10代の間に,どれほど非行をしでかしてきたかを知ることができます。10歳から19歳の合計は178,100人です。延べ数ですが,17万8千人もの非行者を輩出し,世間にご迷惑をかけたことになります。
何歳で最もワルが多かったかというと,実数でみても人口あたりの比率でみても15歳であったようです。思春期の只中の難しいお年頃ですが,まあ,最近では,どの世代でもそうでしょう。
では,他の世代ではどうなのでしょうか。私は,1972年から2009年までの各年について,年齢別の非行者出現率を計算し,例の社会地図形式で表現してみました。その上に,自分の世代の軌跡を引き,特徴を検出してみることにしました。
1980年代前半の14~15歳あたりが黒く染まっています。この非行超多発ゾーンを通過するのは,1960年代後半から70年代初頭生まれの世代です。私の世代は,こういう超多発ゾーンとは離れた位置にあります。10歳下の1986年生まれ世代は,15~16歳の時,非行率20‰以上の準多発ゾーンを経てきています。私の世代は,青色ないしは黒色のゾーンを通っていないことに,少し安堵します。
みなさんも,自分の世代の軌跡を上図に書き込んでみてはいかがでしょう。「最近の若いモンは…」と愚痴る前に,自分の世代の軌跡を冷静に振り返るというのも,また一興だと思います。
2011年3月9日水曜日
2011年3月8日火曜日
就職失敗による自殺
文科省と厚労省は,大学生等の就職内定状況を調査しています。それによると,2010年10月の時点で,就職を希望する大学生のうち,内定を得ている者の比率は57.6%だそうです。秋風が吹くこの時期になっても,希望者の約4割がまだ決まっていないとのこと。短大生に至っては,22.5%という大変厳しい数字が出ています。
私が大学4年生だった1998年10月時点の内定率は67.5%でした。ロスト・ジェネレーションといわれる私の世代よりも,今の学生さんは辛い状況に置かれているようです。
こういう状況の中,深く思い詰めてしまう学生さんがいるのでしょうか。最近,就職失敗を理由に自殺する大学生の数が増えています。警察庁が毎年公表する『自殺の概要資料』では,2007年版より,原因を細かく分類した表を載せています。就職失敗は,「経済・生活問題」という原因大分類の中に含まれています。
就職失敗を苦に自殺した大学生は,2007年では13人でした。それが,2008年では22人,2009年では23人になり,2010年では46人へと倍増しています。この統計は,3月3日の毎日新聞・東京夕刊でも報じられており,「『超氷河期』と言われる厳しい就職環境を反映したとみられる」と指摘されています。
2010年の自殺者の総数は31,690人であり,前年の32,845人を下回りました。しかし,これは全体の数字です。この裏では,「就職失敗」という,社会の側の責任ともとれる理由で,自らを殺める若者が増えているのです。46人というのは,自殺者全体の0.14%しか占めない存在ですが,この部分に,現代日本の病理が濃縮されているように思います。
自殺の統計については,これまでいろいろと分析してきたつもりでしたが,こういう原因の小分類の統計に注目することで,新たな発見もあるのだな,と思いました。今回の話に関連する情報を提供してくれたのは,私が今年度担当した卒論ゼミの学生さんです。武蔵野大学現代社会学部4年の佐藤喜則くんです。記して,感謝の意を表します。
私が大学4年生だった1998年10月時点の内定率は67.5%でした。ロスト・ジェネレーションといわれる私の世代よりも,今の学生さんは辛い状況に置かれているようです。
こういう状況の中,深く思い詰めてしまう学生さんがいるのでしょうか。最近,就職失敗を理由に自殺する大学生の数が増えています。警察庁が毎年公表する『自殺の概要資料』では,2007年版より,原因を細かく分類した表を載せています。就職失敗は,「経済・生活問題」という原因大分類の中に含まれています。
就職失敗を苦に自殺した大学生は,2007年では13人でした。それが,2008年では22人,2009年では23人になり,2010年では46人へと倍増しています。この統計は,3月3日の毎日新聞・東京夕刊でも報じられており,「『超氷河期』と言われる厳しい就職環境を反映したとみられる」と指摘されています。
2010年の自殺者の総数は31,690人であり,前年の32,845人を下回りました。しかし,これは全体の数字です。この裏では,「就職失敗」という,社会の側の責任ともとれる理由で,自らを殺める若者が増えているのです。46人というのは,自殺者全体の0.14%しか占めない存在ですが,この部分に,現代日本の病理が濃縮されているように思います。
自殺の統計については,これまでいろいろと分析してきたつもりでしたが,こういう原因の小分類の統計に注目することで,新たな発見もあるのだな,と思いました。今回の話に関連する情報を提供してくれたのは,私が今年度担当した卒論ゼミの学生さんです。武蔵野大学現代社会学部4年の佐藤喜則くんです。記して,感謝の意を表します。
2011年3月7日月曜日
大学教員の女性比
内閣府の『平成22年版・男女共同参画白書』によると,わが国の研究者に占める女性の比率は,国際的にみてかなり低いようです。白書には,2005年前後の36ヵ国の統計が載っていますが,日本はわずか13%で,堂々の最下位です。白書の該当図表のURLは以下です。
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/html/zuhyo/zuhyo103.html
他の先進国をみると,ロシアが42%,アメリカが34%,フランスが28%,イギリスが26%,ドイツが25%であり,大きく水を開けられています。ちなみに,36ヵ国の1位はリトアニアの49%です。この国では,研究者がちょうど男女半々の構成になっていることを意味します。
このことを危惧してか,研究者の女性比を少しでも高めようという動きが出ています。女性教員の比率の目標値20%を掲げ,教員公募の文面に「業績が同等と認められる場合は女性を採用します」と明言する大学も多くなりました。お上も,女性教員を雇い入れた大学には,給与の補助を行うという厚遇ぶりです。
その甲斐あってか,大学教員に占める女性の割合は,1983年では8%でしたが,2010年では20%にまで高まっています。女性教員の実数も,この期間中に,約9千人から3万5千人にまで増えています(文科省『学校基本調査』)。ところで,大学教員といっても,いろいろな年齢の人がいます。女性比が高まっているのは若年層だと思いますが,年齢別の動向もみてみましょう。資料は,文科省の『学校教員統計調査』です。本調査は,3年おきに実施されています。
上記の図によると,最近の2007年の20代では,女性の比率が3割を超えています。まあ,20代の教員はごくわずかですが,30代でも25%,つまり4分の1を超えています。男女共同参画政策が敷かれた今世紀以降,高率ゾーンが徐々に垂れてきており,2007年では,50代前半までが,女性比15%以上となっています。
「為せば成る」とはよく言ったものですが,やはり,社会というのは,政策によって変わるのだな,と実感させられます。どの社会でもいえることですが,成員の組成があまりに画一的になるのは,望ましいことではありません。
昨年の12月17日に,第3次男女共同参画基本計画が策定されたところです。その中に,「2020年までの間に,指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という目標が掲げられています。このような可視的かつ検証可能な目標を少しずつ達成していくことで,真の男女共同参画社会が実現されることを欲します。
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/html/zuhyo/zuhyo103.html
他の先進国をみると,ロシアが42%,アメリカが34%,フランスが28%,イギリスが26%,ドイツが25%であり,大きく水を開けられています。ちなみに,36ヵ国の1位はリトアニアの49%です。この国では,研究者がちょうど男女半々の構成になっていることを意味します。
このことを危惧してか,研究者の女性比を少しでも高めようという動きが出ています。女性教員の比率の目標値20%を掲げ,教員公募の文面に「業績が同等と認められる場合は女性を採用します」と明言する大学も多くなりました。お上も,女性教員を雇い入れた大学には,給与の補助を行うという厚遇ぶりです。
その甲斐あってか,大学教員に占める女性の割合は,1983年では8%でしたが,2010年では20%にまで高まっています。女性教員の実数も,この期間中に,約9千人から3万5千人にまで増えています(文科省『学校基本調査』)。ところで,大学教員といっても,いろいろな年齢の人がいます。女性比が高まっているのは若年層だと思いますが,年齢別の動向もみてみましょう。資料は,文科省の『学校教員統計調査』です。本調査は,3年おきに実施されています。
上記の図によると,最近の2007年の20代では,女性の比率が3割を超えています。まあ,20代の教員はごくわずかですが,30代でも25%,つまり4分の1を超えています。男女共同参画政策が敷かれた今世紀以降,高率ゾーンが徐々に垂れてきており,2007年では,50代前半までが,女性比15%以上となっています。
「為せば成る」とはよく言ったものですが,やはり,社会というのは,政策によって変わるのだな,と実感させられます。どの社会でもいえることですが,成員の組成があまりに画一的になるのは,望ましいことではありません。
昨年の12月17日に,第3次男女共同参画基本計画が策定されたところです。その中に,「2020年までの間に,指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という目標が掲げられています。このような可視的かつ検証可能な目標を少しずつ達成していくことで,真の男女共同参画社会が実現されることを欲します。
2011年3月5日土曜日
学歴による職業閉鎖性
前回の記事では,大学卒のグレーカラー化が進んでいるというお話をしました。大卒者のうち,高度な知識や技術を必ずしも要しないと思われる販売職やサービス職に就く者が増えている,ということです。
このことは,どの職業でも大卒がマジョリティーになり,高卒や中卒がごく一部のマイノリティーに追いやられていることを示唆します。言葉を換えると,どの職業においても,大卒によって高卒や中卒が締め出しを食う,ということです。このことに関する統計をお見せしたいと思います。
私は,それぞれの職業に就いた新規学卒者(男子)の学歴構成が,時代と共にどう変わったのかを調べました。下図は,半世紀前の1960年の状況を示したものです。資料は,文部省『日本の教育統計-新教育の歩み-』(1966年)です。
学歴の区分は,大雑把に,大卒,高卒,そして中卒の3区分で捉えることとします。図をみると,当時にあっては,新規学卒入職者の学歴構成は多様だったようです。専門技術職では38%,事務職では68%,販売職では90%,サービス職では94%が高卒以下です。後2者では,中卒もかなりの比重を占めていることが注目されます。
ところが,50年の時を経た2010年現在では,状況が激変します。資料源は,文科省の『学校基本調査(高等教育機関編)』ですが,現在では,中卒就職者があまりに少ないためか,中卒の職業別就職者の数は計上されていません。よって,大卒と高卒の2区分でみることになります。
図をみると,大卒者のシェアの増加が一目瞭然です。販売職にあっても,あらたに入職してくる新卒者のほぼ9割が大卒です。サービス職になって,ようやく大卒と高卒が折半するという具合です。
このことは,高卒者や中卒者の就職機会が狭められていることを意味します。勉強が嫌いという理由や,経済的理由などで大学に行かない人間もいることでしょう。しかし,就職しようとすると,大卒学歴を暗に求められる。専門の知識や技術を要さないような職業であっても…こういう時代になっているものと思われます。
企業がなぜ大卒を好んで採るかというと,大卒の専門的な職業スキルに期待してのことではなく,大卒ならば間違いはないだろう(少ないだろう)という,曖昧な理由であることがほとんどです。要するに,人材選抜のための手ごろなシグナルとして学歴を使っている,というだけのことです。
企業の側が,そのような無精をしないで,自社に必要な人材を自前で見抜く努力をするならば,2番目の図のような現状が,最初にみた,1960年の状況にバックすることもあり得るのではないでしょうか。そうなった時,好むと好まざるとに関係なく,万人が大学進学を強いられるような,学校化社会が克服されるかも知れません。
上記の2つの図を見較べて,どちらが健全であると思うかと問われたら,私なら,1960年の状況図を指差します。社会の多様性って,こういうものではないでしょうか。現在の状況には,それとは反対の「閉鎖性」という語を当てるのが適当ではないかと存じます。
このことは,どの職業でも大卒がマジョリティーになり,高卒や中卒がごく一部のマイノリティーに追いやられていることを示唆します。言葉を換えると,どの職業においても,大卒によって高卒や中卒が締め出しを食う,ということです。このことに関する統計をお見せしたいと思います。
私は,それぞれの職業に就いた新規学卒者(男子)の学歴構成が,時代と共にどう変わったのかを調べました。下図は,半世紀前の1960年の状況を示したものです。資料は,文部省『日本の教育統計-新教育の歩み-』(1966年)です。
学歴の区分は,大雑把に,大卒,高卒,そして中卒の3区分で捉えることとします。図をみると,当時にあっては,新規学卒入職者の学歴構成は多様だったようです。専門技術職では38%,事務職では68%,販売職では90%,サービス職では94%が高卒以下です。後2者では,中卒もかなりの比重を占めていることが注目されます。
ところが,50年の時を経た2010年現在では,状況が激変します。資料源は,文科省の『学校基本調査(高等教育機関編)』ですが,現在では,中卒就職者があまりに少ないためか,中卒の職業別就職者の数は計上されていません。よって,大卒と高卒の2区分でみることになります。
図をみると,大卒者のシェアの増加が一目瞭然です。販売職にあっても,あらたに入職してくる新卒者のほぼ9割が大卒です。サービス職になって,ようやく大卒と高卒が折半するという具合です。
このことは,高卒者や中卒者の就職機会が狭められていることを意味します。勉強が嫌いという理由や,経済的理由などで大学に行かない人間もいることでしょう。しかし,就職しようとすると,大卒学歴を暗に求められる。専門の知識や技術を要さないような職業であっても…こういう時代になっているものと思われます。
企業がなぜ大卒を好んで採るかというと,大卒の専門的な職業スキルに期待してのことではなく,大卒ならば間違いはないだろう(少ないだろう)という,曖昧な理由であることがほとんどです。要するに,人材選抜のための手ごろなシグナルとして学歴を使っている,というだけのことです。
企業の側が,そのような無精をしないで,自社に必要な人材を自前で見抜く努力をするならば,2番目の図のような現状が,最初にみた,1960年の状況にバックすることもあり得るのではないでしょうか。そうなった時,好むと好まざるとに関係なく,万人が大学進学を強いられるような,学校化社会が克服されるかも知れません。
上記の2つの図を見較べて,どちらが健全であると思うかと問われたら,私なら,1960年の状況図を指差します。社会の多様性って,こういうものではないでしょうか。現在の状況には,それとは反対の「閉鎖性」という語を当てるのが適当ではないかと存じます。
2011年3月4日金曜日
大卒者の職業
最近,「~力」という言葉をよく聞くようになりました。人間力,コミュニケーション力,云々…。「学士力」というのも,そのうちの一つです。大学を卒業すると学士という学位が得られますが,この学士の能力水準をきちんと保障すべく,大学教育をしっかりやれ,という通達が文科省より出ています。いわゆる「学士力の向上」です。
しかるに,大学で学んだ専門分野と関係のない仕事に就く学生が少なくないことを思うと,こうしたお上の通達も,いささか白々しく聞こえてきます。私が武蔵野大学で担当したゼミは,教育学・社会病理学ゼミですが,2年間のゼミ生35名のうち,教員や矯正関係の職に就いたものは皆無です。
これはあまりにタイトな対応関係を想定した例ですが,では,少し基準を緩めて,大卒の就職者のうち,高度な専門知識・技術を要すると思われる専門・技術職に就く者はどれほどいるのでしょうか。私は,50年前の1960年と2010年現在について,大卒就職者が就いた職業の構成を比較しました。資料は,文部省『日本の教育統計』(1966年),および文科省『平成22年版・学校基本調査(高等教育機関編)』です。なお,男女比の変化の影響を除くため,男子に限定した統計を示します。
男子の大卒就職者の数は,この半世紀の間で,約9万人から17万人へと増えています。就いた職業はというと,専門技術職は39%から32%に減っています。ほか,減少が著しいのは事務職で,42%から29%に減っています。代わって,販売職やサービス職の比重の増加が明らかです。
学士力というのは,ある程度の語学力,コミュニケーション能力,学術的なプロセスを踏んだ問題解決能力などを含むものであって,こうした諸能力は,どの職業でも求められるものだ,といわれればそれまでです。しかし,そうした能力は全く要しない,むしろ邪魔にさえなる「え?」というような仕事を割り振られるケースのほうがはるかに多いのではないでしょうか。卒業生の何人かと話してみて,強く感じるところです。
実情がこうであるのに,新規入職者の全てに大卒学歴(=学士力)を要求する社会というのは,何とも窮屈です。わが国が,こういう社会になりつつあることは,職業を問わず,新規入職者のほとんどが大卒者によって浸食されている事実からうかがうことができます。このデータは,次回にお見せします。
しかるに,大学で学んだ専門分野と関係のない仕事に就く学生が少なくないことを思うと,こうしたお上の通達も,いささか白々しく聞こえてきます。私が武蔵野大学で担当したゼミは,教育学・社会病理学ゼミですが,2年間のゼミ生35名のうち,教員や矯正関係の職に就いたものは皆無です。
これはあまりにタイトな対応関係を想定した例ですが,では,少し基準を緩めて,大卒の就職者のうち,高度な専門知識・技術を要すると思われる専門・技術職に就く者はどれほどいるのでしょうか。私は,50年前の1960年と2010年現在について,大卒就職者が就いた職業の構成を比較しました。資料は,文部省『日本の教育統計』(1966年),および文科省『平成22年版・学校基本調査(高等教育機関編)』です。なお,男女比の変化の影響を除くため,男子に限定した統計を示します。
男子の大卒就職者の数は,この半世紀の間で,約9万人から17万人へと増えています。就いた職業はというと,専門技術職は39%から32%に減っています。ほか,減少が著しいのは事務職で,42%から29%に減っています。代わって,販売職やサービス職の比重の増加が明らかです。
学士力というのは,ある程度の語学力,コミュニケーション能力,学術的なプロセスを踏んだ問題解決能力などを含むものであって,こうした諸能力は,どの職業でも求められるものだ,といわれればそれまでです。しかし,そうした能力は全く要しない,むしろ邪魔にさえなる「え?」というような仕事を割り振られるケースのほうがはるかに多いのではないでしょうか。卒業生の何人かと話してみて,強く感じるところです。
実情がこうであるのに,新規入職者の全てに大卒学歴(=学士力)を要求する社会というのは,何とも窮屈です。わが国が,こういう社会になりつつあることは,職業を問わず,新規入職者のほとんどが大卒者によって浸食されている事実からうかがうことができます。このデータは,次回にお見せします。
2011年3月2日水曜日
難しくなる社会調査
私の研究スタイルは,統計を使った実証研究が主ですが,自前の調査はあまりしません。官公庁の既存統計を使うことが多いです。公的な調査のほうが,費用をかけている分,サンプリングなどがしっかりしており,信憑性が高いと考えられるからです。
とはいえ,問題によっては,自分で細かな調査をしなければならない時もあります。私は,大学院時代,鹿児島県の奄美群島内の一高校を事例として,卒業生の人生行路を追跡調査したことがあります。卒業生名簿から無作為にサンプルを取り出し,ハガキや電話で調査協力の依頼をしました。
ところが,多くの人に難色を示されました。「宝くじに当たるのならいいけど,こういうのに当たるなんてねえ」という嫌味も浴びせられました。こうした拒否のほか,連絡がとれなかったケースなども除いて,最終的に調査に応じてくれたのは40人でした。当初,サンプルとして抽出したのが100人ですから,有効回答率は40%となります。
まあ,私のような,どこの馬の骨とも分からない個人からの依頼であったからかもしれません。しかし,公的機関やそれに準じる機関の調査であっても,有効回答率が下がってきています。NHK放送文化研究所が5年ごとに実施している『日本人の意識調査』でいうと,第1回調査(1973年)では有効回答率は78.1%でしたが,2008年の第8回調査では57.5%にまで落ちています(同研究所編『現代日本人の意識構造・第7版』NHKブックス,2010年,付録資料3頁)。
裏を返すと,2008年の調査不能率は42.5%。最初に選んだサンプルの4割以上が,音信不通や拒否などの理由で,調査ができなかったことになります。では,どの年齢層で,こうした調査不能率は高いのでしょうか。同調査の調査不能率(=100-有効回答率)を,男性の年齢層別に示すと,下図のようです。
1998年調査以降,20代の不能率は5割を超えており,このブラックゾーンが,2008年では,40代にまで垂れてきています。今後,こうした高率ゾーンがますます広がっていくのではないかと思われます。社会調査受難の時代の到来です。
ところで,調査不能の理由として,どういうものが多いのでしょうか。NHKの調査では,この点が明らかではないので,内閣府の『国民生活に関する世論調査』を例にみてみましょう。この調査でも,調査不能率は,1980年の16.3%から2010年の36.4%へと高まっています。
上図は,男性の対象者について,調査不能の理由の中身をみたものです。最も多いのは,調査員が訪問した時に不在であったという「一時不在」ですが,この30年間でその比重は減っています。変わって比率が増しているのは,「調査拒否」というものです。2010年では,理由全体の3割を占めます。この理由が首位に立つのも,時間の問題でしょう。
調査拒否の増加により,データに基づいた政策立案(evidence based policy)が危機に瀕する事態になるかも分かりません。国レベルの最大の社会調査ともいえる,『国勢調査』の2010年調査では,最終学歴など,かなり突っ込んだ事項も尋ねていますが,この事項の「不詳」率はどういうことになるのやら。この変数をキーにした分析を行う社会学の研究者にとっても,大きな関心事であることでしょう。
とはいえ,問題によっては,自分で細かな調査をしなければならない時もあります。私は,大学院時代,鹿児島県の奄美群島内の一高校を事例として,卒業生の人生行路を追跡調査したことがあります。卒業生名簿から無作為にサンプルを取り出し,ハガキや電話で調査協力の依頼をしました。
ところが,多くの人に難色を示されました。「宝くじに当たるのならいいけど,こういうのに当たるなんてねえ」という嫌味も浴びせられました。こうした拒否のほか,連絡がとれなかったケースなども除いて,最終的に調査に応じてくれたのは40人でした。当初,サンプルとして抽出したのが100人ですから,有効回答率は40%となります。
まあ,私のような,どこの馬の骨とも分からない個人からの依頼であったからかもしれません。しかし,公的機関やそれに準じる機関の調査であっても,有効回答率が下がってきています。NHK放送文化研究所が5年ごとに実施している『日本人の意識調査』でいうと,第1回調査(1973年)では有効回答率は78.1%でしたが,2008年の第8回調査では57.5%にまで落ちています(同研究所編『現代日本人の意識構造・第7版』NHKブックス,2010年,付録資料3頁)。
裏を返すと,2008年の調査不能率は42.5%。最初に選んだサンプルの4割以上が,音信不通や拒否などの理由で,調査ができなかったことになります。では,どの年齢層で,こうした調査不能率は高いのでしょうか。同調査の調査不能率(=100-有効回答率)を,男性の年齢層別に示すと,下図のようです。
1998年調査以降,20代の不能率は5割を超えており,このブラックゾーンが,2008年では,40代にまで垂れてきています。今後,こうした高率ゾーンがますます広がっていくのではないかと思われます。社会調査受難の時代の到来です。
ところで,調査不能の理由として,どういうものが多いのでしょうか。NHKの調査では,この点が明らかではないので,内閣府の『国民生活に関する世論調査』を例にみてみましょう。この調査でも,調査不能率は,1980年の16.3%から2010年の36.4%へと高まっています。
上図は,男性の対象者について,調査不能の理由の中身をみたものです。最も多いのは,調査員が訪問した時に不在であったという「一時不在」ですが,この30年間でその比重は減っています。変わって比率が増しているのは,「調査拒否」というものです。2010年では,理由全体の3割を占めます。この理由が首位に立つのも,時間の問題でしょう。
調査拒否の増加により,データに基づいた政策立案(evidence based policy)が危機に瀕する事態になるかも分かりません。国レベルの最大の社会調査ともいえる,『国勢調査』の2010年調査では,最終学歴など,かなり突っ込んだ事項も尋ねていますが,この事項の「不詳」率はどういうことになるのやら。この変数をキーにした分析を行う社会学の研究者にとっても,大きな関心事であることでしょう。
2011年3月1日火曜日
鉄道自殺④
前回は,自殺が多い鉄道会社,路線を明らかにしました。今回は,場所に着眼したいと思います。分析対象は,2009年度に東京都内で発生した鉄道自殺143件です。
私が入手した当局の資料には,自殺の場所が記録されています。3件以上起きているデンジャラス・スポットは,東武東上線の「大山~中板橋駅間」4件,地下鉄日比谷線の竹ノ塚駅構内3件,東京駅構内3件,有楽町駅構内3件,でした。このように細かくみても傾向がつかみにくいので,大雑把に,都内の市区町別に発生件数を集計し,地図化してみました。
黒色は,年度間に10件以上起きている地域です。板橋区と千代田区です。両区は,先ほど紹介したデンジャラス・スポットがある地域です。赤色(5~9件)の地域は,都心のターミナル駅からほど遠くない所に位置しています。郊外よりも,都心に近い地域で自殺は多発する傾向にあるようです。最近,中央線の国立から立川間が高架化されましたが,郊外では,高架路線が多いためでしょうか。
もっと多くのデータを集めれば,より明確な傾向が出てくることでしょう。国土交通省には,2002年度からの鉄道自殺のデータが保存されているようです。これらを全部集めれば,6,000件ほどのケースを擁する,すごいデータベースができ上がります。私1人では大変ですので,来年度の社会数学の授業で,学生さんの力を借りようかと思います。課題「みんなでつくろう。東京都内の鉄道自殺マップ」です。
私が入手した当局の資料には,自殺の場所が記録されています。3件以上起きているデンジャラス・スポットは,東武東上線の「大山~中板橋駅間」4件,地下鉄日比谷線の竹ノ塚駅構内3件,東京駅構内3件,有楽町駅構内3件,でした。このように細かくみても傾向がつかみにくいので,大雑把に,都内の市区町別に発生件数を集計し,地図化してみました。
黒色は,年度間に10件以上起きている地域です。板橋区と千代田区です。両区は,先ほど紹介したデンジャラス・スポットがある地域です。赤色(5~9件)の地域は,都心のターミナル駅からほど遠くない所に位置しています。郊外よりも,都心に近い地域で自殺は多発する傾向にあるようです。最近,中央線の国立から立川間が高架化されましたが,郊外では,高架路線が多いためでしょうか。
もっと多くのデータを集めれば,より明確な傾向が出てくることでしょう。国土交通省には,2002年度からの鉄道自殺のデータが保存されているようです。これらを全部集めれば,6,000件ほどのケースを擁する,すごいデータベースができ上がります。私1人では大変ですので,来年度の社会数学の授業で,学生さんの力を借りようかと思います。課題「みんなでつくろう。東京都内の鉄道自殺マップ」です。
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