2011年3月9日水曜日

Delinquent Generation

 私が,非常勤講師として大学で教え始めたのは,2005年です。当時,私は大学院を出たばかりの28歳であり,学生さんと年はあまり違いませんでした。しかし,それから6年を経て,私も34歳になり,学生さんとの年の差,少しキザにいうとGeneraiton Gapなるものを意識するようになりました。

 Generationとは,世代と訳されます。同じ時期に生まれ,育ってきた社会状況を等しく共有する集団のことです。私は1976年生まれであり,1986年に10歳になり,1992年に高校に入り,1995年に上京して大学に入り,それから10年間学生をやって,2005年に大学院を終えたという具合です。

 私は,青少年問題を研究テーマの一つにしており,今の子どもはああだこうだと(偉そうに)に言う機会があるのですが,「自分の頃も,結構ワルがいたよなあ…」と内心思うことがしばしばあります。私は,自分を少し客観視してみたいと思い,自分の世代が10代の間にどれほどワルをしてきたかを調べることにしました。

 私の世代は,1986年に10歳となりますが,この年に警察に補導された10歳少年は2,022人です。翌年は11歳になりますが,この年に補導された11歳少年は2,627人です。以後,年を重ね,1995年に19歳となりますが,この年に警察に検挙された19歳少年は9,294人です。こうしたデータをつなぎ合わせて,自分の世代の非行歴を整理してみました。統計の出所は,警察庁の『犯罪統計書』です。


 上記の表から,われわれの世代が10代の間に,どれほど非行をしでかしてきたかを知ることができます。10歳から19歳の合計は178,100人です。延べ数ですが,17万8千人もの非行者を輩出し,世間にご迷惑をかけたことになります。

 何歳で最もワルが多かったかというと,実数でみても人口あたりの比率でみても15歳であったようです。思春期の只中の難しいお年頃ですが,まあ,最近では,どの世代でもそうでしょう。

 では,他の世代ではどうなのでしょうか。私は,1972年から2009年までの各年について,年齢別の非行者出現率を計算し,例の社会地図形式で表現してみました。その上に,自分の世代の軌跡を引き,特徴を検出してみることにしました。


 1980年代前半の14~15歳あたりが黒く染まっています。この非行超多発ゾーンを通過するのは,1960年代後半から70年代初頭生まれの世代です。私の世代は,こういう超多発ゾーンとは離れた位置にあります。10歳下の1986年生まれ世代は,15~16歳の時,非行率20‰以上の準多発ゾーンを経てきています。私の世代は,青色ないしは黒色のゾーンを通っていないことに,少し安堵します。

 みなさんも,自分の世代の軌跡を上図に書き込んでみてはいかがでしょう。「最近の若いモンは…」と愚痴る前に,自分の世代の軌跡を冷静に振り返るというのも,また一興だと思います。