文科省と厚労省は,大学生等の就職内定状況を調査しています。それによると,2010年10月の時点で,就職を希望する大学生のうち,内定を得ている者の比率は57.6%だそうです。秋風が吹くこの時期になっても,希望者の約4割がまだ決まっていないとのこと。短大生に至っては,22.5%という大変厳しい数字が出ています。
私が大学4年生だった1998年10月時点の内定率は67.5%でした。ロスト・ジェネレーションといわれる私の世代よりも,今の学生さんは辛い状況に置かれているようです。
こういう状況の中,深く思い詰めてしまう学生さんがいるのでしょうか。最近,就職失敗を理由に自殺する大学生の数が増えています。警察庁が毎年公表する『自殺の概要資料』では,2007年版より,原因を細かく分類した表を載せています。就職失敗は,「経済・生活問題」という原因大分類の中に含まれています。
就職失敗を苦に自殺した大学生は,2007年では13人でした。それが,2008年では22人,2009年では23人になり,2010年では46人へと倍増しています。この統計は,3月3日の毎日新聞・東京夕刊でも報じられており,「『超氷河期』と言われる厳しい就職環境を反映したとみられる」と指摘されています。
2010年の自殺者の総数は31,690人であり,前年の32,845人を下回りました。しかし,これは全体の数字です。この裏では,「就職失敗」という,社会の側の責任ともとれる理由で,自らを殺める若者が増えているのです。46人というのは,自殺者全体の0.14%しか占めない存在ですが,この部分に,現代日本の病理が濃縮されているように思います。
自殺の統計については,これまでいろいろと分析してきたつもりでしたが,こういう原因の小分類の統計に注目することで,新たな発見もあるのだな,と思いました。今回の話に関連する情報を提供してくれたのは,私が今年度担当した卒論ゼミの学生さんです。武蔵野大学現代社会学部4年の佐藤喜則くんです。記して,感謝の意を表します。