2011年1月2日日曜日

発達加速現象

 みなさま,楽しいお正月をお過ごしのことと拝察いたします。久しぶりに帰省したお孫さんの,大きく成長した姿を目にして,びっくりされているご高齢の方も多いのではないでしょうか。統計でみても,子どもの平均体位は,昔に比べてかなり大きくなっています。

 
 上の図は,男子の平均身長が,年齢別にどう変化してきたかを示したものです。文部科学省『学校保健統計調査』のデータから作成しました。身長は,基本的に年齢現象ですので,ほぼ横シマ模様になっていますが,時代による変化も看取されます。12歳では,1950年では136㎝でしたが,60年を経た2010年では152cmまで伸びています。

 発達心理学では,こうした体位の向上のことを,発達加速現象と呼ぶようです。昔に比して,栄養状態がよくなったことなどが原因として挙げられましょう。

 しかし,最近の子どもをみるに,こうした身体の成熟速度に,精神の成熟速度が追いついていないように思えます。成熟する身体と未熟なままの心というのは,まあ,思春期の特性ともいえるものですが,近年,このようなギャップがますます大きくなっているのではないでしょうか。今の日本は,半分以上の若者を,20歳過ぎまで学校に囲い込む社会なのですから。

 現代青年の各種の逸脱行動は,身体が一人前になっているにもかかわらず,大人としての役割をいつまでも与えられないことに対する,抵抗としての意味合いを持っているのかもしれません。最近,インターンシップなど,在学中の青年を社会と接触させようという取組が盛んですが,こうした問題を認識してのことであると思います。