昨年の12月26日と29日の記事では,東大・京大合格者の出身高校種別の偏りや,地域間の偏りについて明らかにしました。今回は,合格者上位校によって,どれほど寡占されているかをみてみようと思います。
サンデー毎日特別増刊号『完全版・高校の実力』(2010年6月12日)から,2010年春における,全国3,987校の東大・京大合格者を知ることができます。総計は5,928人です。合格者が多い順に各高校を並べ,その上位20位の高校のリストを示すと,下表のようになります。
20校のうち,私立が15校を占めています。と同時に,これら20校だけで,合格者の数が1,630人にもなり,全体(5,928人)の27.5%をも占有していることに驚かされます。これら20校は,3,987校の卒業生数のうちでは,わずか0.6%しか占めていないことを考えると,この寡占度は相当なものといってよいでしょう。では,上位50位まで幅を広げて,同じ統計をつくってみましょう。
上記の帯グラフは,東大・京大合格者5,928人と,3,987校の卒業生960,435人の組成を比較したものです。2010年春の東大・京大合格者は,合格者数上位50位の高校だけで46.8%,およそ半分が占められています。これらの高校は,卒業生全体ではほんの1.6%しか占めていないにもかかわらずです。
これら50校の多くが,受験勉強や入学に多額の費用を要する国私立高校であることを思うと,公正の観点からしていかがなものか,という疑義が出されます。以前は,こうした上位校に公立校も結構含まれていましたが,最近では,国私立校に寡占されている状況です。
わが国のエリート候補生は,出身高校の上でも,出身地域の上でも,単色化しつつあります。社会全体の多様な人間構成をあまり反映していません。今後,国際化,グローバル化,少子高齢化というような社会変動にさらされる中,異質な他者への共感性を持った指導者が求められるようになるかと思います,上記の事実は,こうした時代のながれに背いているような気がしないでもありません。