https://news.careerconnection.jp/?p=12704
そこで分かったのは,わが国の中高年男性の未婚者において,自分を不幸と考える者の割合が飛びぬけて高いことです。既婚者と未婚者の差は,世界一。いつまでも結婚できない男性の苦悩が,露わになったわけです。
人口のボリュームが多いこと,未婚率が高まっていることから,中高年の未婚男性は量的に増えていることでしょう。「まさに俺のことだ」という当事者意識を持たれた方も多いのでは,と推察します。
しかるに,「あなたは幸福ですか?」という意識調査の設問には,回答のバイアスがかかります。「幸福」といっても,人によって受け取り方は異なるでしょうしね。そこで今回は,客観的な行動頻度の統計によって,有配偶者と未婚者の危機量を比較してみようと思います。用いるメジャーは3つ。死亡率,生活習慣病死亡率,そして自殺率です。
厚労省の「人口動態統計」には,性別・年齢層別・配偶関係別の死亡者数が,主な死因ごとに掲載されています。2010年の資料によると,私の属性(30代後半の未婚男性)の全死亡者数は2698人,うち生活習慣病(がん,心臓病,脳卒中)の死亡者数は821人,自殺者は898人です。
2010年の「国勢調査」から分かる,同年10月時点の30代後半の未婚男性は172万1222人。よって,ベース人口当たりの死亡率にすると,全死亡率はベース1万人あたり15.7人,生活習慣病死亡率はベース1万人あたり4.8人,自殺率はベース10万人あたり52.2人と算出されます。
私はこのやり方で,3つの危機指標の値を,性別・年齢層別・配偶関係別(有配偶or未婚)に計算しました。下の表は,結果の一覧表です。
グラフにすると,様相がもっと分かりやすくなります。
トータルの死亡率と生活習慣病死亡率は,二次関数を思わせるきれいな曲線です。有配偶者と未婚者の差は,女性より男性で大きくなっています。生活習慣病は,食生活の乱れが効くのではないでしょうか。
一番下の自殺率は,男性にあっては,有配偶者と未婚者の差がもっと際立っています。「人は何らかの集団に属することなしに,自分自身を目的にしては生きていけない」。デュルケムの明言ですが(「自殺論」),男性あっては,家族が「生の目的」となる度合いが高いとみられます。前回の言葉でいうと,男性がいかに家族に依存しているかです。
社会的存在の人間は,集団に属することで情緒の安定を得ますが,ことにわが国の男性にあっては,それが得られる場が「家族」に集中してしまっているのではないか。こういう問題も提起できるでしょう。これは,職業集団や地域集団の機能不全に関わる問題でもあります。
昨日,前回の記事に関連して,某Web誌の電話取材に応じたのですが,その記事が週末に出るかと思います。そこにて,今述べた問題について触れられています。記事が出ましたら告知しますので,ご覧いただければと存じます。
ひとまず,幸福度というような主観の指標ではなく,死亡確率という客観的な危機指標でみても,未婚男性に危機が集中している構造があることを,ご報告しておこうと思います。