2015年6月7日日曜日

中高年未婚者の不幸感

 既婚者と未婚者に,「あなたはどれくらい幸福ですか」と尋ねたら,否定の回答はおそらく後者のほうが多いでしょう。

 毎度使っている「世界価値観調査」(2010~14年)では,各国の対象者に上記の事項を尋ねています。日本の30~50代男性のサンプルを既婚者と未婚者に分け,この設問に「あまり幸福でない」ないしは「全く幸福でない」と答えた者の比率を出すと,前者が6.5%,後者が43.5%と大きな差があります。

 「そんなものだろう」と思われる方もいるでしょうが,中高年の既婚者と未婚者の不幸感の差は,社会によって違います。また,ジェンダーの差もあります。

 私は,各国の30~50代男女の不幸感を,既婚・未婚別に出してみました。比較するのは,男性既婚,男性未婚,女性既婚,女性未婚の4群ですが,いずれかのサンプル数が40人に満たない国は,分析から除外することとします。*ここでいうサンプル数とは,幸福感の設問に有効回答を寄せた者です。

 この基準をクリアしているのは,わが国やアメリカなどの主要国を含む,23の社会です。これらの社会について,4つの群の不幸率をまとめてみました。「幸福か」という問いに対し,「あまり幸福でない」もしくは「全く幸福でない」と答えた者の割合(%)です。


 わが国と同様,多くの社会において,中高年の不幸感は既婚者より未婚者で高くなっています。男性における既婚者と未婚者の差は,日本が最大です(37.0ポイント)。一方,女性の既婚と未婚の差は,あまり大きくありません。未婚,すなわち家族を持てないことの不幸は,わが国あっては,男性に集中する度合いが高いようです。

 日・韓・米・独・瑞(スウェーデン)の主要国の数値をグラフにしてみましょう。男女の既婚・未婚者の不幸率を,シンプルな棒グラフにしました。


 日本の中高年未婚男性の不幸率がダントツです。どの社会でも,女性より男性,既婚者より未婚者という傾向はありますが,日本はそれがことに際立った社会といえます。

 家事力のない独身男性は生活が荒む,情緒安定の場を得られないなど,いろいろな事情が考えられますが,男女の役割差が大きい日本では,それがとくに顕著ということなのでしょうね。わが国の男性がいかに「家族」に依存しているか,いかに「弱い」存在であるかの証左ともいえましょう。

 家族が男性の「生」にとって重要な意味を持つことは,男性の離婚率と自殺率の観察からも知ることができます。男性と女性では,両指標の関連の仕方が異なることにも注意。この点については,日経デュアル誌に書きましたので,興味ある方はご覧ください。