2019年7月12日金曜日

人口当たりの空き家数はどうなるか

 今年1月1日の日本人人口は1億2447万6364人で,前年に比して43万3239人減ったそうです。1年間で43万人も減ったのは初めてとのこと。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6329638

 どんどん縮んでいくニッポンですが,1年間で43万人も減少とは驚きです。私が住んでいる横須賀市の人口は39万6千人ほどですが,このレベルの都市がごっそり無くなっていることになります。たった1年間で。

 高齢化の影響で死亡者数が増え,出生数は減っています。両者の差分が自然減ですが,年々この数が増えていると。厚労省の『人口動態統計』から,両者の長期推移をとれます。また,国立社会保障・人口問題研究所のレポートから,将来推計も得られます。下図は,1900~2060年までのカーブです。


 明治期以降,長らく出生数が死亡数を上回る「自然増」の時代が続いてきました。私が生まれた1976年では,出生数183万人,死亡数70万人でした。しかしこの頃から前者が減り,後者が増え始め,2007年には逆転し,「自然減」の時代に突入。その差はじわじわ広がり,2018年の出生数は94万人,死亡数は136万人となっています(推計値)。この年の自然減は42万人。なるほど,冒頭の43万人という数値とほぼ一致しています。

 死亡数と出生数の差分,グラフの色付きのゾーンが自然減ですが,2020年以降,毎年50万人以上人口が減っていくと見込まれます。毎年,このクラスの大都市が消失していくわけです。ある論者が「静かなる有事」と言っていますが,言い得て妙です。

 気が滅入りますが,さぞ家は余るようになるだろうなと思います。住む人が死んでも,家は残りますので。2018年の『住宅土地統計』によると,総住宅数は6242万戸で,うち空き家が846万戸となっています。同年の人口は1億2618万人ほど。

 この3つの数値の推移と,将来予測値を出してみました。『住宅土地統計』の実施年(5年おき)のデータです。2023年以降の予測値は,2013~18年の増加倍率を適用して出しました。2013~18年にかけて住宅数は1.0295倍,空き家は1.0323倍に増えましたが,2018年の戸数にこの倍率をかけて,2023年の戸数を推し量った次第です。同様に2023年の戸数に上記の倍率をかけて2028年の戸数を出す。以下,同じです。人口は,2019年の『日本統計年鑑』に載っている数値を使っています。


 2018年のデータだと,人口100人あたりの住宅数は49.5戸,空き家は6.7戸です。これから人口が減るのは分かっていますが,住宅数・空き家数が今のペースで増え続けるとすると,2058年には人口100人あたりの住宅数が83.2戸,空き家数が11.5戸になると見込まれます。

 今後,空き家増加のスピードが増すとすると,人口100人につき空き家が20戸(5人に1戸)の時代になるかもしれません。戦後初期の住宅難の時代からすれば,夢のようですね。

 これは日本全国の予測値ですが,都道府県別の見積もりもできます。都道府県別の将来推計人口(『国勢調査』の実施年,5年間隔)は,2045年までしか得られません。2045年の推計人口を,2043年の住宅数・空き家数の推計値と照らしわせてみます。


 人口当たりの空き家数をみると,100人当たり20戸(5人に1戸)を超える県が5県あります。2013~18年の空き家増加ペースが続くと仮定した見積もりですので,被災3県(岩手,宮城,福島)は割り引いて考えないといけないですが,西の5県はそういう特殊事情とは無縁です。

 私の郷里の鹿児島は,2040年代には人口120.4万人,空き家30.6万戸,県民4人に1戸の空き家が出る計算になります。スゴイですね。

 皆さんは,このデータをどうご覧になられますか。近未来の日本は,朽ち果てた空き家だらけのゴーストタウンになる,国内外の犯罪者の巣窟になる…。こういう不穏な未来図を思い浮かべる人もおられるでしょう。

 家というのは,人が住まないと荒みますからね。しからば,人に住んでもらえばいいだけのこと。先進国ニッポンでも,住居に困っている人はたくさんいます。そういう人たちに安い賃料,ないしはタダで貸し出せばいいのです。ハウスキーパーの役割を果たしていただくと。

 今でも,タダで人様の家を借りている人はいます。2013年の『住宅土地統計』によると,家賃0円の借家に住んでいる世帯は36万世帯となっています。間もなく公開される2018年データでは,50万世帯を超えているかもしれません。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/0.php

 近い将来,黙っていても家が空から降ってくる時代になりそうですね。2043年の鹿児島県の推計住宅数は96万戸,うち空き家が31万戸,住宅の3分の1が空き家になると。放置しておいたら,地域全体がゴーストタウン化するのは必至。とにかく,人に住んでもらうしかないわけです。
 
 若い世代で,住宅ローンの残高が増えているそうです。住める家が余りまくる時代になるのに,長期ローンを組んでマイホームを建てるというのは,いかがなものでしょう。人口減少社会においては,新たなハコを作るのではなく,今あるハコを活かす。これが基本です。

 近未来の日本については悲観的な予測だらけですが,明るい展望もあります。黙っていても,家が空から降ってくるようになることです。